「偉大な作曲家の業績を次世代につなげたい」
加藤訓子『Tribute to Miyoshi』の新作発表会をレポート。三善 晃のマリンバ作品を網羅した集大成
パーカッショニスト加藤訓子のLINN Records10周年記念となる6枚目のアルバム、『Tribute to Miyoshi』が9月25日に発売となる。その発売に先駆けて、メディア向けの記者会見ならびに試聴会が開催された。
三善 晃という作曲家について、加藤さんは「三善 晃は日本を代表する作曲家であると同時に、マリンバ奏者にとっては身近な存在です。(今作にも収録されている)『会話』は、子供がマリンバを学ぶときに、レパートリーとして必ずやる作品です」とマリンバ奏者にとっての三善の偉大さを強調する。
とは言え、三善をフィーチャーした録音はあまり多くはなく、若い世代に彼の業績がきちんと伝わっていないのではないか、という危機感が加藤さんにはあったようだ。三善は彼女の母校である桐朋学園の学長を務めていたという縁もあり、三善の名や作品がもっと世界的に知られて欲しい、という思いからこのアルバムの制作に取り組んだ。
このアルバム制作のきっかけとなったのは、3年前にベルギーのLOD muziektheaterというシアターカンパニーから、加藤さんにコラボレーションの提案があったことだという。この作品は谷崎潤一郎の『鍵』という日本の小説が題材となっていたことから、作品の中で三善の楽曲を取り上げたい、と加藤さんは考えたそうだ。
このLODのシアターでは、組曲「会話」、「トルスIII」、「リップル」の3曲を器用。これらに加え、アルバムでは2本マレットのための「六つの練習前奏曲」も収録している。これは、マリンバ奏者吉岡孝悦のために三善が書き下ろした未出版の作品で、コピー譜しか存在しないものを入手して収録に望んだ。
もうひとつこのアルバムの方向性を決定付けた重要な楽曲は、スコティッシュ・オーケストラと共演した「マリンバと弦楽合奏のための協奏曲」。これは、彼女も在学中に桐朋学園オーケストラで演奏したことがある、非常に思い入れの深い楽曲だという。
「この協奏曲は絶対に入れたいものとして、(リンレコーズ・プロデューサーの)フィリップ・ホップスさんに相談しました。この曲は学校の試験などで演奏されることはありますが、演奏会で取り上げられたり、レコーディングされることはほとんどありません。すると、ホップスさんからスコティッシュ・アンサンブルと一緒にやるのはどうか、と提案がありました」
スコティッシュ・アンサンブルは指揮者のいないオーケストラで、場合によっては全員立ったままで演奏するなど、非常に個性的なオーケストラとして知られている。加藤さんは、三善の世界観をグローバルにアピールする機会としても、非常に期待を持って収録に挑んだのだという。
収録はグラスゴーのRSNOセンターで行われた。スコティッシュ・アンサンブルは指揮者がいないため、加藤訓子さんを中心に、12人のメンバーが半円的に並んで演奏された。ステージ向かって一番左に、第一ヴァイオリンであり、オーケストラを主導するジョナサン・モートンが立ち、加藤さんとアイコンタクトを取りながら演奏を進めていった。
先行して音源を試聴した山之内氏は、「マリンバのソロ曲は、相模湖交流センターのアコースティックな空間の中で、マリンバの美しい響きを追い込んでいます。その一方で、スコティッシュ・アンサンブルとの協奏曲では、作品の構造やリズムがよく見えるリアルな音という印象です」と語る。非常に対照的なサウンドが一枚のアルバムの中に成立している面白さも、このアルバムの魅力のひとつとも述べた。
発表会では、192kHz/24bitのハイレゾ音源が、LINNのEXKATスピーカーを通して再生された。「会話」は、子供と母親のたわいのない会話がテーマになっているということで、マリンバサウンドの柔らかく、それでいて深い響きを持った摩訶不思議な世界に引き込まれていく。また、「マリンバと弦楽合奏のための協奏曲」では、弦楽とマリンバ、一見まったく異なる音色を持った楽器同士が、ときに争うように、ときに絡み合い推進していく緊張感たっぷりな世界が表現される。
加藤さんは、11月5日にはトッパンホール、11月8日には豊橋市民文化会館でのコンサートを予定している。当初はスコティッシュ・アンサンブルを招聘しての発売記念コンサートという位置だったが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延を受けて招聘を中止。代わりに、若手のマリンバ奏者との共演として計画されている。
このアルバムを通して「トータルとしての三善 晃の世界が伝わって欲しいと思います。日本人が演奏することによって生まれるスピリチュアルもあります。ぜひこの作曲家の思いを、次世代につなげていきたいです」と、三善 晃の再評価にかける熱意を語ってくれた。
三善 晃という作曲家について、加藤さんは「三善 晃は日本を代表する作曲家であると同時に、マリンバ奏者にとっては身近な存在です。(今作にも収録されている)『会話』は、子供がマリンバを学ぶときに、レパートリーとして必ずやる作品です」とマリンバ奏者にとっての三善の偉大さを強調する。
とは言え、三善をフィーチャーした録音はあまり多くはなく、若い世代に彼の業績がきちんと伝わっていないのではないか、という危機感が加藤さんにはあったようだ。三善は彼女の母校である桐朋学園の学長を務めていたという縁もあり、三善の名や作品がもっと世界的に知られて欲しい、という思いからこのアルバムの制作に取り組んだ。
このアルバム制作のきっかけとなったのは、3年前にベルギーのLOD muziektheaterというシアターカンパニーから、加藤さんにコラボレーションの提案があったことだという。この作品は谷崎潤一郎の『鍵』という日本の小説が題材となっていたことから、作品の中で三善の楽曲を取り上げたい、と加藤さんは考えたそうだ。
このLODのシアターでは、組曲「会話」、「トルスIII」、「リップル」の3曲を器用。これらに加え、アルバムでは2本マレットのための「六つの練習前奏曲」も収録している。これは、マリンバ奏者吉岡孝悦のために三善が書き下ろした未出版の作品で、コピー譜しか存在しないものを入手して収録に望んだ。
もうひとつこのアルバムの方向性を決定付けた重要な楽曲は、スコティッシュ・オーケストラと共演した「マリンバと弦楽合奏のための協奏曲」。これは、彼女も在学中に桐朋学園オーケストラで演奏したことがある、非常に思い入れの深い楽曲だという。
「この協奏曲は絶対に入れたいものとして、(リンレコーズ・プロデューサーの)フィリップ・ホップスさんに相談しました。この曲は学校の試験などで演奏されることはありますが、演奏会で取り上げられたり、レコーディングされることはほとんどありません。すると、ホップスさんからスコティッシュ・アンサンブルと一緒にやるのはどうか、と提案がありました」
スコティッシュ・アンサンブルは指揮者のいないオーケストラで、場合によっては全員立ったままで演奏するなど、非常に個性的なオーケストラとして知られている。加藤さんは、三善の世界観をグローバルにアピールする機会としても、非常に期待を持って収録に挑んだのだという。
収録はグラスゴーのRSNOセンターで行われた。スコティッシュ・アンサンブルは指揮者がいないため、加藤訓子さんを中心に、12人のメンバーが半円的に並んで演奏された。ステージ向かって一番左に、第一ヴァイオリンであり、オーケストラを主導するジョナサン・モートンが立ち、加藤さんとアイコンタクトを取りながら演奏を進めていった。
先行して音源を試聴した山之内氏は、「マリンバのソロ曲は、相模湖交流センターのアコースティックな空間の中で、マリンバの美しい響きを追い込んでいます。その一方で、スコティッシュ・アンサンブルとの協奏曲では、作品の構造やリズムがよく見えるリアルな音という印象です」と語る。非常に対照的なサウンドが一枚のアルバムの中に成立している面白さも、このアルバムの魅力のひとつとも述べた。
発表会では、192kHz/24bitのハイレゾ音源が、LINNのEXKATスピーカーを通して再生された。「会話」は、子供と母親のたわいのない会話がテーマになっているということで、マリンバサウンドの柔らかく、それでいて深い響きを持った摩訶不思議な世界に引き込まれていく。また、「マリンバと弦楽合奏のための協奏曲」では、弦楽とマリンバ、一見まったく異なる音色を持った楽器同士が、ときに争うように、ときに絡み合い推進していく緊張感たっぷりな世界が表現される。
加藤さんは、11月5日にはトッパンホール、11月8日には豊橋市民文化会館でのコンサートを予定している。当初はスコティッシュ・アンサンブルを招聘しての発売記念コンサートという位置だったが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延を受けて招聘を中止。代わりに、若手のマリンバ奏者との共演として計画されている。
このアルバムを通して「トータルとしての三善 晃の世界が伝わって欲しいと思います。日本人が演奏することによって生まれるスピリチュアルもあります。ぜひこの作曲家の思いを、次世代につなげていきたいです」と、三善 晃の再評価にかける熱意を語ってくれた。
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