来日を断念したアーティストの有料配信も
コロナ禍で音楽イベントをどう継続するか?リアルと配信を共存させる「東京・春・音楽祭」の取り組み
3月19日にスタートしたクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭」は、新型コロナウイルスの再拡大を受け、コンサートの中止や形態変更を余儀なくされている。しかしそんな中でも来日を果たしたマエストロ、リッカルド・ムーティ氏をはじめとする音楽を愛する関係者たちの惜しみない尽力により、新たな取り組みもスタートしている。
「東京・春・音楽祭 2021」の記者会見が開催され、実行委員長でありIIJの会長でもある鈴木幸一氏と、事務局長の芦田尚子さんが登場。コロナ禍におけるグローバルな音楽フェスティバル実現の難しさと、この状況だからこそ実現した新たなプログラムについて発表した。また、隔離期間中のリッカルド・ムーティ氏もオンラインで登場し、自身が力を入れる若手音楽家育成プログラム「イタリア・オペラ・アカデミー」の意義を語った。
昨年の「東京・春・音楽祭 2020」は会期途中でほぼ中止となってしまったことを受け、今年は全公演のオンライン配信を実現。リアルの客席チケットも販売するが、自宅から有料ストリーミングで視聴することもできる。複数の会場からの配信を実現する技術的なサポートについては既報の通りだが、あくまでコンサートの座席に、新たに「ネット席」が加わったという考えから、アーカイブ配信等は行わず、リアルタイムのみの配信となっている。
記者会見では、来日が叶わなかった音楽家たちによる新たなストリーミング配信(ドイツ国内で収録されたものを決まった時間に配信)や子どものためのコンサートのオンデマンド配信、「イタリア・オペラ・アカデミー」の聴講プログラムならびにリハーサルの無料配信などが発表された。
イタリア・オペラ・アカデミーは、毎年夏にイタリア・ラヴェンナで開催されているが、東京でも2019年よりスタート。第1回目はヴェルディの《リゴレット》を取り上げたが、昨年予定していた《マクベス》は新型コロナの蔓延を受け中止。今年はまさにリベンジの年となる。
ムーティ氏はこれまで「ヴェルディという作曲家に対する裏切り」と戦い続けてきたと語り、若い音楽家にヴェルディのメッセージを正しく伝えていきたいと考えているという。本来の予定では、世界中からオーディションで選ばれた4名の受講生がムーティ氏の直接の指導を受け、会場に聴講生を受け入れる予定であったが、今年は防疫上の観点から聴講生の受け入れを断念、代わりに「東京・春・音楽祭」のサイトで無料配信することになった。なお、ムーティによる《マクベス》演奏会と、受講生によるプログラムは予定通り行われる(来場/有料配信)。
今回の「東京・春・音楽祭」の配信では、4Kやハイレゾ、マルチチャンネルでの配信といったさまざまな取り組みがなされている。芦田さんは、「配信だけがすべてではないが、配信の力を借りながら音楽を届ける機会を減らさないようにしていきたい」と、新たな取り組みに期待を寄せる。
鈴木氏は、「音楽フェスティバルは続けることが難しいが、続けないとグローバルな音楽祭にはならない」と、海外の一流ミュージシャンの招聘にこだわったことを強調。ムーティ氏は、「世界が危機的な状況にあるなかでフェスティバルを開催する勇気、そしてその困難を乗り越えてきた鈴木さんと皆様に感謝します」とこれらの取り組みに称賛を送った。
新たに開催/配信が決まったプログラムは以下の通り。なお、それぞれのチケットの購入方法や視聴方法などは、「東京・春・音楽祭」の公式サイトを確認して欲しい。
【オンラインのみの配信】
・4月10日(土)〜4月16日(金)
「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 聴講プログラム/リハーサル」
演目:ヴェルディ「マクベス」
※無料配信
・4月18日(日)20:00〜
「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 演奏会の一部を特別配信」
ズービン・メータ指揮
ブルックナー:交響曲第9番
※無料配信
・4月23日まで
「東京春祭 for Kids」
子どものための絵本と音楽の会「5ひきのすてきなねずみ おんがくかいのよる」
※オンデマンド、無料配信
・4月17日(土)20:00〜
「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」
樫本大進(ヴァイオリン)、オラフ・マニンガー(チェロ)、オハッド・ベン=アリ(ピアノ)
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第6番 ほか
・5月上旬予定
「東京春祭 歌曲シリーズ vol.29」
クリスティアン・エルスナー(テノール)&ゲロルト・フーバー(ピアノ)
シューベルト:冬の旅
・5月上旬予定
「東京春祭 歌曲シリーズ vol.33」
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ)
シューベルト:白鳥の歌 ほか
【リアル開催(有料ストリーミング配信もあり)】
・4月11日(日)15:00〜 東京文化会館
「東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.8」
シュテファン・ショルテス指揮
シューベルト:交響曲第4番、モーツァルト:レクイエム
・4月9日(金) 19:00〜 東京文化会館
「リッカルド・ムーティによる《マクベス》作品解説」
・4月19日(月) 18:30〜 東京文化会館
・4月21日(水) 18:30〜 東京文化会館
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ
ヴェルディ:《マクベス》
・4月20日(火)19:00〜 ミューザ川崎シンフォニーホール
「リッカルド・ムーティ introduces 若い音楽家による《マクベス》」
・4月22日(木)19:00〜 ミューザ川崎シンフォニーホール
・4月23日(金)19:00〜 紀尾井ホール
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ
モーツァルト:交響曲第35番《ハフナー》、交響曲第41番《ジュピター》
「東京・春・音楽祭 2021」の記者会見が開催され、実行委員長でありIIJの会長でもある鈴木幸一氏と、事務局長の芦田尚子さんが登場。コロナ禍におけるグローバルな音楽フェスティバル実現の難しさと、この状況だからこそ実現した新たなプログラムについて発表した。また、隔離期間中のリッカルド・ムーティ氏もオンラインで登場し、自身が力を入れる若手音楽家育成プログラム「イタリア・オペラ・アカデミー」の意義を語った。
昨年の「東京・春・音楽祭 2020」は会期途中でほぼ中止となってしまったことを受け、今年は全公演のオンライン配信を実現。リアルの客席チケットも販売するが、自宅から有料ストリーミングで視聴することもできる。複数の会場からの配信を実現する技術的なサポートについては既報の通りだが、あくまでコンサートの座席に、新たに「ネット席」が加わったという考えから、アーカイブ配信等は行わず、リアルタイムのみの配信となっている。
記者会見では、来日が叶わなかった音楽家たちによる新たなストリーミング配信(ドイツ国内で収録されたものを決まった時間に配信)や子どものためのコンサートのオンデマンド配信、「イタリア・オペラ・アカデミー」の聴講プログラムならびにリハーサルの無料配信などが発表された。
イタリア・オペラ・アカデミーは、毎年夏にイタリア・ラヴェンナで開催されているが、東京でも2019年よりスタート。第1回目はヴェルディの《リゴレット》を取り上げたが、昨年予定していた《マクベス》は新型コロナの蔓延を受け中止。今年はまさにリベンジの年となる。
ムーティ氏はこれまで「ヴェルディという作曲家に対する裏切り」と戦い続けてきたと語り、若い音楽家にヴェルディのメッセージを正しく伝えていきたいと考えているという。本来の予定では、世界中からオーディションで選ばれた4名の受講生がムーティ氏の直接の指導を受け、会場に聴講生を受け入れる予定であったが、今年は防疫上の観点から聴講生の受け入れを断念、代わりに「東京・春・音楽祭」のサイトで無料配信することになった。なお、ムーティによる《マクベス》演奏会と、受講生によるプログラムは予定通り行われる(来場/有料配信)。
今回の「東京・春・音楽祭」の配信では、4Kやハイレゾ、マルチチャンネルでの配信といったさまざまな取り組みがなされている。芦田さんは、「配信だけがすべてではないが、配信の力を借りながら音楽を届ける機会を減らさないようにしていきたい」と、新たな取り組みに期待を寄せる。
鈴木氏は、「音楽フェスティバルは続けることが難しいが、続けないとグローバルな音楽祭にはならない」と、海外の一流ミュージシャンの招聘にこだわったことを強調。ムーティ氏は、「世界が危機的な状況にあるなかでフェスティバルを開催する勇気、そしてその困難を乗り越えてきた鈴木さんと皆様に感謝します」とこれらの取り組みに称賛を送った。
新たに開催/配信が決まったプログラムは以下の通り。なお、それぞれのチケットの購入方法や視聴方法などは、「東京・春・音楽祭」の公式サイトを確認して欲しい。
【オンラインのみの配信】
・4月10日(土)〜4月16日(金)
「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 聴講プログラム/リハーサル」
演目:ヴェルディ「マクベス」
※無料配信
・4月18日(日)20:00〜
「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 演奏会の一部を特別配信」
ズービン・メータ指揮
ブルックナー:交響曲第9番
※無料配信
・4月23日まで
「東京春祭 for Kids」
子どものための絵本と音楽の会「5ひきのすてきなねずみ おんがくかいのよる」
※オンデマンド、無料配信
・4月17日(土)20:00〜
「ベルリン・フィルのメンバーによる室内楽」
樫本大進(ヴァイオリン)、オラフ・マニンガー(チェロ)、オハッド・ベン=アリ(ピアノ)
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第6番 ほか
・5月上旬予定
「東京春祭 歌曲シリーズ vol.29」
クリスティアン・エルスナー(テノール)&ゲロルト・フーバー(ピアノ)
シューベルト:冬の旅
・5月上旬予定
「東京春祭 歌曲シリーズ vol.33」
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ)
シューベルト:白鳥の歌 ほか
【リアル開催(有料ストリーミング配信もあり)】
・4月11日(日)15:00〜 東京文化会館
「東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.8」
シュテファン・ショルテス指揮
シューベルト:交響曲第4番、モーツァルト:レクイエム
・4月9日(金) 19:00〜 東京文化会館
「リッカルド・ムーティによる《マクベス》作品解説」
・4月19日(月) 18:30〜 東京文化会館
・4月21日(水) 18:30〜 東京文化会館
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ
ヴェルディ:《マクベス》
・4月20日(火)19:00〜 ミューザ川崎シンフォニーホール
「リッカルド・ムーティ introduces 若い音楽家による《マクベス》」
・4月22日(木)19:00〜 ミューザ川崎シンフォニーホール
・4月23日(金)19:00〜 紀尾井ホール
リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ
モーツァルト:交響曲第35番《ハフナー》、交響曲第41番《ジュピター》