9/24-25に静岡県掛川市のつま恋リゾート彩の郷にて開催
三次元的なステージ感や楽器の正確な位置関係が高評価の鍵。第7回「ハイエンドカーオーディオコンテスト」をレポート
去る9月24日(土)、25日(日)の2日間に渡り、静岡県掛川市で「第7回ハイエンドカーオーディオコンテスト」が開催された。会場はつま恋リゾート彩の郷のカート場で、日本全国から135台の車両が集結し、6人の審査員がそれぞれの音を試聴し評点を行う、国内最大規模のカーオーディオ専門のコンテストとなった。
前日より非常に強い勢力を保った台風15号が静岡県を直撃し、掛川周辺の新幹線も高速道路も全面ストップ。開催も大いに危ぶまれたが、24日の午後には好天に恵まれ、初日の審査開始時間こそ大幅に遅れたものの、スタッフのスムーズな運営により当初の予定はすべて完了させることができた。
音質重視型のカーオーディオのマーケットは、各地で開催される「コンテスト」で音質を競うという特性から、ハイレゾソースへのいち早い取り組みがなされてきた。今年6月の「ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」でもレポートしている通り、送り出しのトランスポートにはハイレゾ音源をコピーしたDAPを使用することがほとんどで、DSPでタイムアライメントや位相をチューニングし、音源の持つ情報量をあますことなく引き出すことが求められる。
特に近年は「ホームオーディオ」において実現される立体的なサウンドステージ、音色感や絶対的な情報量に加えて、高さや奥行き方向の再現にも大きな関心が寄せられており、それは審査員が皆ホームオーディオの世界でも活躍するベテランのオーディオ評論家であることにも現れている。今回は、麻倉怜士氏、山之内 正氏、傅 信幸氏、小原由夫氏、土方久明氏、潮 晴男氏の6名が担当、いずれもオーディオ/ビジュアルの世界で大きな影響力を持つ評論家である。
ハイエンドカーオーディオコンテストは、初日に「ディーラーデモカー部門」の審査を6名の審査員全員で行い、6人の平均点が最も高かった車両が優勝、また上位10位までが入賞となる。
2日目は価格帯ごとにA/B/Cクラスの3つに分かれた「ユーザーカー部門」の審査。ケーブル等を含まない機器の総額が260万円以上の「ハイレゾ・エキスパート Aクラス」、180万円以上260万円未満の「Bクラス」、180万円未満の「Cクラス」という区分けとなっており、それぞれ2人の審査員のWチェックにより審査される。
さて初日の「ディーラーデモカー部門」は、文字通りショップの腕を競う最高峰クラスであり、価格の制約もない“ガチンコ対決”である。自分たちが1年間作り込んできた音がどう評価されるのか、緊迫感あるムードが漂いながらも、会場では到達までの苦労話や久しぶりの再会を喜ぶ声が溢れる。
交通事情のため多くの審査員が会場に到着できず、当初予定の10時審査開始から大幅に遅れて15時のスタートとなったが、審査員と運営スタッフの踏ん張りにより、18時過ぎには審査も終了し、ホテルに会場を移しての表彰式と食事会が開催された。
ディーラーデモカー部門で優勝を飾ったのは、昨年に引き続きAV KANSAI天王寺店の岩元秀明さん。他のコンテストでも上位入賞の常連であり、今回も「さすがAV KANSAI。強すぎる」という声がそこかしこから聞こえてくる。
今回の課題曲はノラ・ジョーンズの「Come Away With Me」(リマスター版)とトロンハイム交響楽団の『Ujamaa』から「III. America」の2曲。ノラ・ジョーンズは試聴楽曲としておなじみの曲だが、Ujamaaはノルウェー2Lレーベルの録音で、プリミティブで神秘的な雰囲気が漂い、巫女のような女性ボーカルも加わる珍しいタイプのクラシック楽曲。もともとはサラウンド用に録音した音源をステレオにダウンミックスしたものであり、それゆえに「空間再現力」が大きく問われる。それぞれの楽器の正確な位置関係や、奥行き方向のレイヤーをいかに表出するかが高得点を狙う上で大きな課題となる。
だが一方で、このUjamaaだけに絞って音質チューニングを行うと、リマスターされたノラ・ジョーンズのボーカルのニュアンス感が疎かになってしまう可能性があると審査員も指摘する。またよく知っている曲だからこそ先入観で音を聴いてしまう場合もあり、山之内氏も講評において「傾向の異なる2つの楽曲の表現の両立を、高い次元で実現したデモカーが上位を獲得していた」と振り返る。
第2位には石川・アンティフォンのBMW「225XE」、第3位には青森・イングラフのBMW「530」、第4位は岩手・サウンドフリークス、第5位は大阪・カーオーディオクラブが入賞。上位1〜4位までをBMWが独占、5位はアウディと外国車の入賞が目立つが、国産車ではAV KANSAI 堺のSUBARU「レヴォーグ」が6位入賞を果たした。
上位入賞の車は、翌日の会場で参加者が自由に聴けるように開放される。AV KANSAI天王寺は、morelの4ウェイとaudisonのサブウーファーをBRAXのDSPとQUARTORIGOのマルチアンプで駆動する構成。実際に音を聴かせてもらうと、さまざまな楽器が飛び交うUjamaaのステージ感、楽器の掛け合いのダイナミックさ、女性ボーカルの憑依されたような叫びなど、「こんなに面白い楽曲だったのか!」と新たな魅力が次々に発見される。一方のノラ・ジョーンズはボーカル表現の包まれるような温かさが魅力的で、新鮮なノラに出会ったような爽やかさがある。
5位入賞までの車両を全台試聴したが、いずれも高い次元で2つの楽曲の魅力を引き出していることは間違いない。だが、優勝したAV KANSAI天王寺店の車はステージングの作り込みが精緻で、楽曲の解釈にも踏み込むような一歩進んだカーオーディオの可能性を提示しているようにも感じられた。
2日目のコンテスト会場は、全国からカーオーディオに情熱を傾けるクルマ&音楽好きが集結し、お祭りのような雰囲気に。コンテストという緊張感はありながらも、友人の車をお互いに聴いて感想を述べ合ったり、ブース出展するメーカーのデモカーの音を聴いたり技術的な説明に耳を傾けたりと、和気藹々とした雰囲気でコンテストが進行していく。
審査台数はコースによって異なるが約35〜40台前後。こちらは2人の審査員による平均点によって算出されるが、2日目のコンテストでやはり一番注目が高いのは、やはりトップクラスの「ハイレゾ・エキスパート Aクラス」(山之内氏・麻倉氏が審査員)の審査結果だろう。
このクラスでは、イングラフがチューニングした須田山徹雄さん所有のBMW「X6」が優勝を獲得した。2位以下を圧倒する60点オーバーという高評価を獲得。初日の「ディーラーデモカー部門」では3位と涙を飲んだイングラフだけに、ユーザークラスでの優勝は喜びもひとしお。須田山さんと担当のイングラフ木村さんはお互いの健闘を讃えあい、優勝の喜びを噛み締める。
カーオーディオのために総計1000万円以上を投入したという「X6」の音も聴かせてもらった。ダッシュボードに広がる広いステージ感、楽器の音色感の違いも明確で、さりげなく添えられるパーカッションまで手にとるように見えてくる。圧倒的な情報量と三次元的なステージ感でオーケストラがまさにその場にいるようなリアリティが車内に構築されており、カーオーディオの世界はここまでのレベルに達しているのかと衝撃を受ける。
会場内では、イース・コーポレーション、国産スピーカーブランドのDEER、DYNAUDIOのカー部門を取り扱う佐藤商事、パイオニアのカーオーディオチーム、測定機で培った技術をカーオーディオのDSPとアンプにも投入するエタニ電機などもそれぞれブースを出展し自社のデモカーをお披露目する。
さらにはホームオーディオで話題沸騰中の「仮想アース」はカーオーディオ市場でも盛り上がっており、KOJO TECHNOLOGYの「ve-02」などを取り付けた車両がいくつも見られた。サエクもトライムブース内に自社のラインナップを展開、「SGS-020」の30分間の貸し出しサービスを実施するなど、“アース対策”はカーオーディオ市場でもホットなキーワードとなっている模様。
もうひとつ注目トピックは「静音化技術」。フェリソニブランドでは、コンテストのみならず、日常の足である車の環境をより快適に過ごすための静音シートなどを多数展開。分厚さや素材の異なる複数のラインナップを展開しており、天井やドア内といった設置場所に合わせて使用することができる。また、イスラエル・MORELは「トレードインスピーカー」として純正スピーカーからの交換だけで音質グレードアップが図れる“入門者向け”ラインナップにも力を入れる。
昨今のカーオーディオ事情についてディーラーが口を揃えるのは、「新車の納品の目処が全く立たない」ということ。カーオーディオは新車を購入したタイミングに合わせて施工する場合が多いが、昨今の部材不足や価格高騰により、納車が半年から1年後になるということも少なくないという。さらにその影響で中古車の価格も上昇しており、なかなか大型の受注に繋がりにくい状況が続いているという。
それでも、コンテストへの参加者の熱意は高い。ハイレゾ音源の登場により、DSPやアンプの性能がさらに洗練されてきたことに加え、さまざまな静音素材が充実してきたことで、車内という“劣悪”な環境を跳ね返し、まさにホームオーディオにも迫る贅沢な音響空間が実現してきている。“趣味性の高い”カーオーディオの世界は、コンテストという客観的な指標によって評価されることで、さらなる高みを目指す飽くなき探求の場でもあるのだと感じさせてくれた。
前日より非常に強い勢力を保った台風15号が静岡県を直撃し、掛川周辺の新幹線も高速道路も全面ストップ。開催も大いに危ぶまれたが、24日の午後には好天に恵まれ、初日の審査開始時間こそ大幅に遅れたものの、スタッフのスムーズな運営により当初の予定はすべて完了させることができた。
音質重視型のカーオーディオのマーケットは、各地で開催される「コンテスト」で音質を競うという特性から、ハイレゾソースへのいち早い取り組みがなされてきた。今年6月の「ヨーロピアンカーオーディオコンテスト」でもレポートしている通り、送り出しのトランスポートにはハイレゾ音源をコピーしたDAPを使用することがほとんどで、DSPでタイムアライメントや位相をチューニングし、音源の持つ情報量をあますことなく引き出すことが求められる。
特に近年は「ホームオーディオ」において実現される立体的なサウンドステージ、音色感や絶対的な情報量に加えて、高さや奥行き方向の再現にも大きな関心が寄せられており、それは審査員が皆ホームオーディオの世界でも活躍するベテランのオーディオ評論家であることにも現れている。今回は、麻倉怜士氏、山之内 正氏、傅 信幸氏、小原由夫氏、土方久明氏、潮 晴男氏の6名が担当、いずれもオーディオ/ビジュアルの世界で大きな影響力を持つ評論家である。
ハイエンドカーオーディオコンテストは、初日に「ディーラーデモカー部門」の審査を6名の審査員全員で行い、6人の平均点が最も高かった車両が優勝、また上位10位までが入賞となる。
2日目は価格帯ごとにA/B/Cクラスの3つに分かれた「ユーザーカー部門」の審査。ケーブル等を含まない機器の総額が260万円以上の「ハイレゾ・エキスパート Aクラス」、180万円以上260万円未満の「Bクラス」、180万円未満の「Cクラス」という区分けとなっており、それぞれ2人の審査員のWチェックにより審査される。
さて初日の「ディーラーデモカー部門」は、文字通りショップの腕を競う最高峰クラスであり、価格の制約もない“ガチンコ対決”である。自分たちが1年間作り込んできた音がどう評価されるのか、緊迫感あるムードが漂いながらも、会場では到達までの苦労話や久しぶりの再会を喜ぶ声が溢れる。
交通事情のため多くの審査員が会場に到着できず、当初予定の10時審査開始から大幅に遅れて15時のスタートとなったが、審査員と運営スタッフの踏ん張りにより、18時過ぎには審査も終了し、ホテルに会場を移しての表彰式と食事会が開催された。
ディーラーデモカー部門で優勝を飾ったのは、昨年に引き続きAV KANSAI天王寺店の岩元秀明さん。他のコンテストでも上位入賞の常連であり、今回も「さすがAV KANSAI。強すぎる」という声がそこかしこから聞こえてくる。
今回の課題曲はノラ・ジョーンズの「Come Away With Me」(リマスター版)とトロンハイム交響楽団の『Ujamaa』から「III. America」の2曲。ノラ・ジョーンズは試聴楽曲としておなじみの曲だが、Ujamaaはノルウェー2Lレーベルの録音で、プリミティブで神秘的な雰囲気が漂い、巫女のような女性ボーカルも加わる珍しいタイプのクラシック楽曲。もともとはサラウンド用に録音した音源をステレオにダウンミックスしたものであり、それゆえに「空間再現力」が大きく問われる。それぞれの楽器の正確な位置関係や、奥行き方向のレイヤーをいかに表出するかが高得点を狙う上で大きな課題となる。
だが一方で、このUjamaaだけに絞って音質チューニングを行うと、リマスターされたノラ・ジョーンズのボーカルのニュアンス感が疎かになってしまう可能性があると審査員も指摘する。またよく知っている曲だからこそ先入観で音を聴いてしまう場合もあり、山之内氏も講評において「傾向の異なる2つの楽曲の表現の両立を、高い次元で実現したデモカーが上位を獲得していた」と振り返る。
第2位には石川・アンティフォンのBMW「225XE」、第3位には青森・イングラフのBMW「530」、第4位は岩手・サウンドフリークス、第5位は大阪・カーオーディオクラブが入賞。上位1〜4位までをBMWが独占、5位はアウディと外国車の入賞が目立つが、国産車ではAV KANSAI 堺のSUBARU「レヴォーグ」が6位入賞を果たした。
上位入賞の車は、翌日の会場で参加者が自由に聴けるように開放される。AV KANSAI天王寺は、morelの4ウェイとaudisonのサブウーファーをBRAXのDSPとQUARTORIGOのマルチアンプで駆動する構成。実際に音を聴かせてもらうと、さまざまな楽器が飛び交うUjamaaのステージ感、楽器の掛け合いのダイナミックさ、女性ボーカルの憑依されたような叫びなど、「こんなに面白い楽曲だったのか!」と新たな魅力が次々に発見される。一方のノラ・ジョーンズはボーカル表現の包まれるような温かさが魅力的で、新鮮なノラに出会ったような爽やかさがある。
5位入賞までの車両を全台試聴したが、いずれも高い次元で2つの楽曲の魅力を引き出していることは間違いない。だが、優勝したAV KANSAI天王寺店の車はステージングの作り込みが精緻で、楽曲の解釈にも踏み込むような一歩進んだカーオーディオの可能性を提示しているようにも感じられた。
2日目のコンテスト会場は、全国からカーオーディオに情熱を傾けるクルマ&音楽好きが集結し、お祭りのような雰囲気に。コンテストという緊張感はありながらも、友人の車をお互いに聴いて感想を述べ合ったり、ブース出展するメーカーのデモカーの音を聴いたり技術的な説明に耳を傾けたりと、和気藹々とした雰囲気でコンテストが進行していく。
審査台数はコースによって異なるが約35〜40台前後。こちらは2人の審査員による平均点によって算出されるが、2日目のコンテストでやはり一番注目が高いのは、やはりトップクラスの「ハイレゾ・エキスパート Aクラス」(山之内氏・麻倉氏が審査員)の審査結果だろう。
このクラスでは、イングラフがチューニングした須田山徹雄さん所有のBMW「X6」が優勝を獲得した。2位以下を圧倒する60点オーバーという高評価を獲得。初日の「ディーラーデモカー部門」では3位と涙を飲んだイングラフだけに、ユーザークラスでの優勝は喜びもひとしお。須田山さんと担当のイングラフ木村さんはお互いの健闘を讃えあい、優勝の喜びを噛み締める。
カーオーディオのために総計1000万円以上を投入したという「X6」の音も聴かせてもらった。ダッシュボードに広がる広いステージ感、楽器の音色感の違いも明確で、さりげなく添えられるパーカッションまで手にとるように見えてくる。圧倒的な情報量と三次元的なステージ感でオーケストラがまさにその場にいるようなリアリティが車内に構築されており、カーオーディオの世界はここまでのレベルに達しているのかと衝撃を受ける。
会場内では、イース・コーポレーション、国産スピーカーブランドのDEER、DYNAUDIOのカー部門を取り扱う佐藤商事、パイオニアのカーオーディオチーム、測定機で培った技術をカーオーディオのDSPとアンプにも投入するエタニ電機などもそれぞれブースを出展し自社のデモカーをお披露目する。
さらにはホームオーディオで話題沸騰中の「仮想アース」はカーオーディオ市場でも盛り上がっており、KOJO TECHNOLOGYの「ve-02」などを取り付けた車両がいくつも見られた。サエクもトライムブース内に自社のラインナップを展開、「SGS-020」の30分間の貸し出しサービスを実施するなど、“アース対策”はカーオーディオ市場でもホットなキーワードとなっている模様。
もうひとつ注目トピックは「静音化技術」。フェリソニブランドでは、コンテストのみならず、日常の足である車の環境をより快適に過ごすための静音シートなどを多数展開。分厚さや素材の異なる複数のラインナップを展開しており、天井やドア内といった設置場所に合わせて使用することができる。また、イスラエル・MORELは「トレードインスピーカー」として純正スピーカーからの交換だけで音質グレードアップが図れる“入門者向け”ラインナップにも力を入れる。
昨今のカーオーディオ事情についてディーラーが口を揃えるのは、「新車の納品の目処が全く立たない」ということ。カーオーディオは新車を購入したタイミングに合わせて施工する場合が多いが、昨今の部材不足や価格高騰により、納車が半年から1年後になるということも少なくないという。さらにその影響で中古車の価格も上昇しており、なかなか大型の受注に繋がりにくい状況が続いているという。
それでも、コンテストへの参加者の熱意は高い。ハイレゾ音源の登場により、DSPやアンプの性能がさらに洗練されてきたことに加え、さまざまな静音素材が充実してきたことで、車内という“劣悪”な環境を跳ね返し、まさにホームオーディオにも迫る贅沢な音響空間が実現してきている。“趣味性の高い”カーオーディオの世界は、コンテストという客観的な指標によって評価されることで、さらなる高みを目指す飽くなき探求の場でもあるのだと感じさせてくれた。
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