レーベル主催の評論家、麻倉怜士氏・潮 晴男氏が登壇
香港でも注目を集める「日本の高音質盤」。「KEF Music Gallery 香港」で開催、UAレコード試聴会レポート
8月9日から香港にて開催された「香港ハイエンドオーディオショウ」の前哨戦として、香港にある「KEF MUSIC Gallery」にて、麻倉怜士氏と潮 晴男氏による特別セッションが開催された。
KEFはいま、KEFスピーカーの魅力をたっぷり楽しめるKEF MUSIC Galleryのグローバル展開に力を入れており、香港に世界第1号店を設立(ちなみにKEFはイギリス発祥のブランドだが、現在のヘッドユニットは香港に置かれている)。世界第2号店として東京・青山のギャラリーを2023年12月にオープン、そして今年6月にはロンドンギャラリーもオープンしている。
香港のギャラリーは、香港最大の繁華街である中環(セントラル)の近く、高級ブティックなどが立ち並ぶエリアにあるビルの12Fに店を構えている。奥にはフラグシップスピーカー「MUON」を従えたメイン試聴室、手前には小型のデスクトップスピーカー「LSX」シリーズや、スリムなアクティブスピーカー「LS60 Wireless」など複数のリスニングスペースを設けている。ワンフロアだが高級感のある内装で、青山のギャラリーにも近い構成となっている。
香港ギャラリーのマネージャーであるフランコ・ウォンさんによると、「KEFのモットーである“Listen and believe”、一度聴いたら確信できる、という思いを感じていただける場所として運営しています。このコンセプトは、世界中どこのギャラリーでも共通してお伝えしていきたい思いです」と教えてくれた。
麻倉・潮両氏が主催するUAレコードから発売されているアルバムは、その音質の良さで香港の市場でも大ヒットを飛ばしているとのこと。今回のイベントは、最新アルバム、情家みえの『エトレーヌ』をSACD、レコードで聴き比べるのに加えて、特別にラッカー盤のサウンドも披露された。現地のスタッフが招待した20名ほどの香港在住のオーディオファンとともに、KEFのサウンドを記者もたっぷり楽しませてもらった。
麻倉氏のデモンストレーション時間では、KEF「Rシリーズ」のトップエンドである「R11 Meta」を使用。麻倉氏も「KEFのスピーカーは個人的にとても好きな音です」と語り、特に「Rシリーズ」について「KEFの中でも特に艶感があるスピーカーなので、その魅力を引き出せる楽曲を選びました」と選曲の理由を語る。
由紀さおりの「夜明けのスキャット」のSACD盤は、1970年代に録音したとは思えないみずみずしさと鮮度感に溢れている。この音源を選んだ理由について、「UAレコードと同じ“コンプレッサーなし、イコライザーなし、編集なしの一発録り”で撮られているからです」と解説。まさに音が収録された現場からそのまま届けられたかのようなダイレクト感に息を呑む。
続けて4チャンネル録音された音源からDSD化したブラスバンドNEW SOUNDS WIND ENSEMBLEのアルバムから、ビートルズのカバー曲「オブラディ・オブラダ」。それぞれの楽器の位置関係を正確に表現し、金管楽器それぞれの音色の違いもリアルに聴こえてくる。ショルティ&ウィーン・フィルの名盤「ニーベルングの指環」の「ワルキューレの騎行」では、テープに遺されたすべての音を引き出そうという現代のエンジニアの執念までも感じさせてくれる。
続けて潮氏の時間では、スピーカーを「Reference 5 Meta」に交換してレコード再生を楽しむデモに。潮氏はKEFの魅力について、「独自のポイントソース再生を実現するUNI-Qドライバーはボーカルの定位感に大きな魅力があります。そして、低音の豊かさもしっかり引き出してくるので、ぜひそこを聴いてください」と紹介する。
大植英次とミネソタ管弦楽団による「コープランド:市民のためのファンファーレ」では、スピーカーのグレードがひとつ上がったことも影響してか、高域の伸びやかさと各楽器のハーモニーの溶け合い感が素晴らしく、わずかな空気感の揺らぎすら感じさせてくれる。怒涛のグランカッサも、Reference 5 Metaなればこその迫力。
荒井由美の「優しさに包まれたなら」は、香港でも人気の高いジブリ映画『魔女の宅急便』の主題歌。人生で何度となく聴いたことのある楽曲だが、ギターのフレーズやベースの刻みなどに、ハッとする新鮮さを聴かせてくれる。これもまた、最新のアブソーバーMetaによる解像度の高さの成せる技か。
そして最後にはスピーカーをフラグシップモデル「MUON」に切り替え、お楽しみの「ラッカー盤」試聴時間。情家みえの『エトレーヌ』から、B面3曲目の「キャラバン」を通常盤とラッカー盤で聴き比べを行った。低域の立ち上がりの切れ味の良さ、音の太さや濃さは明らかにラッカー盤に軍配が上がる。来場者からも「おおおー」という衝撃の声が溢れていた。麻倉氏も、「ラッカー盤の音の凄さを皆様に聴いていただきたいので、クラウドファンディングのような企画ができないかと検討しています」と明かした。
最後は映像付きで、レディ・ガガの『ザ・モンスター・ボール・ツアー・アット・マディソン・スクエア・ガーデン』の爆音再生で締め。ハチャメチャなレディ・ガガのパフォーマンスに圧倒されつつ、ステレオ再生とは思えない豊かな空間表現、ホールの広さまで感じさせてくれる観客の歓声や音の広がり感は圧巻のひとこと。
ヨーロッパやアジア、世界中のオーディオショウやオーディオショップを取材して常に感じることは、「オーディオマニア、世界中どこに行っても同じメンタリティで生きているな」ということ。音楽が好きで、わずかな音の違いにも敏感に反応し、自分自身が本当に好きな音をどこまでも探求しないではいられない業の深さ。
香港の熱いオーディオファンの声を、しかと胸に受け止めた夜であった。
KEFはいま、KEFスピーカーの魅力をたっぷり楽しめるKEF MUSIC Galleryのグローバル展開に力を入れており、香港に世界第1号店を設立(ちなみにKEFはイギリス発祥のブランドだが、現在のヘッドユニットは香港に置かれている)。世界第2号店として東京・青山のギャラリーを2023年12月にオープン、そして今年6月にはロンドンギャラリーもオープンしている。
香港のギャラリーは、香港最大の繁華街である中環(セントラル)の近く、高級ブティックなどが立ち並ぶエリアにあるビルの12Fに店を構えている。奥にはフラグシップスピーカー「MUON」を従えたメイン試聴室、手前には小型のデスクトップスピーカー「LSX」シリーズや、スリムなアクティブスピーカー「LS60 Wireless」など複数のリスニングスペースを設けている。ワンフロアだが高級感のある内装で、青山のギャラリーにも近い構成となっている。
香港ギャラリーのマネージャーであるフランコ・ウォンさんによると、「KEFのモットーである“Listen and believe”、一度聴いたら確信できる、という思いを感じていただける場所として運営しています。このコンセプトは、世界中どこのギャラリーでも共通してお伝えしていきたい思いです」と教えてくれた。
麻倉・潮両氏が主催するUAレコードから発売されているアルバムは、その音質の良さで香港の市場でも大ヒットを飛ばしているとのこと。今回のイベントは、最新アルバム、情家みえの『エトレーヌ』をSACD、レコードで聴き比べるのに加えて、特別にラッカー盤のサウンドも披露された。現地のスタッフが招待した20名ほどの香港在住のオーディオファンとともに、KEFのサウンドを記者もたっぷり楽しませてもらった。
麻倉氏のデモンストレーション時間では、KEF「Rシリーズ」のトップエンドである「R11 Meta」を使用。麻倉氏も「KEFのスピーカーは個人的にとても好きな音です」と語り、特に「Rシリーズ」について「KEFの中でも特に艶感があるスピーカーなので、その魅力を引き出せる楽曲を選びました」と選曲の理由を語る。
由紀さおりの「夜明けのスキャット」のSACD盤は、1970年代に録音したとは思えないみずみずしさと鮮度感に溢れている。この音源を選んだ理由について、「UAレコードと同じ“コンプレッサーなし、イコライザーなし、編集なしの一発録り”で撮られているからです」と解説。まさに音が収録された現場からそのまま届けられたかのようなダイレクト感に息を呑む。
続けて4チャンネル録音された音源からDSD化したブラスバンドNEW SOUNDS WIND ENSEMBLEのアルバムから、ビートルズのカバー曲「オブラディ・オブラダ」。それぞれの楽器の位置関係を正確に表現し、金管楽器それぞれの音色の違いもリアルに聴こえてくる。ショルティ&ウィーン・フィルの名盤「ニーベルングの指環」の「ワルキューレの騎行」では、テープに遺されたすべての音を引き出そうという現代のエンジニアの執念までも感じさせてくれる。
続けて潮氏の時間では、スピーカーを「Reference 5 Meta」に交換してレコード再生を楽しむデモに。潮氏はKEFの魅力について、「独自のポイントソース再生を実現するUNI-Qドライバーはボーカルの定位感に大きな魅力があります。そして、低音の豊かさもしっかり引き出してくるので、ぜひそこを聴いてください」と紹介する。
大植英次とミネソタ管弦楽団による「コープランド:市民のためのファンファーレ」では、スピーカーのグレードがひとつ上がったことも影響してか、高域の伸びやかさと各楽器のハーモニーの溶け合い感が素晴らしく、わずかな空気感の揺らぎすら感じさせてくれる。怒涛のグランカッサも、Reference 5 Metaなればこその迫力。
荒井由美の「優しさに包まれたなら」は、香港でも人気の高いジブリ映画『魔女の宅急便』の主題歌。人生で何度となく聴いたことのある楽曲だが、ギターのフレーズやベースの刻みなどに、ハッとする新鮮さを聴かせてくれる。これもまた、最新のアブソーバーMetaによる解像度の高さの成せる技か。
そして最後にはスピーカーをフラグシップモデル「MUON」に切り替え、お楽しみの「ラッカー盤」試聴時間。情家みえの『エトレーヌ』から、B面3曲目の「キャラバン」を通常盤とラッカー盤で聴き比べを行った。低域の立ち上がりの切れ味の良さ、音の太さや濃さは明らかにラッカー盤に軍配が上がる。来場者からも「おおおー」という衝撃の声が溢れていた。麻倉氏も、「ラッカー盤の音の凄さを皆様に聴いていただきたいので、クラウドファンディングのような企画ができないかと検討しています」と明かした。
最後は映像付きで、レディ・ガガの『ザ・モンスター・ボール・ツアー・アット・マディソン・スクエア・ガーデン』の爆音再生で締め。ハチャメチャなレディ・ガガのパフォーマンスに圧倒されつつ、ステレオ再生とは思えない豊かな空間表現、ホールの広さまで感じさせてくれる観客の歓声や音の広がり感は圧巻のひとこと。
ヨーロッパやアジア、世界中のオーディオショウやオーディオショップを取材して常に感じることは、「オーディオマニア、世界中どこに行っても同じメンタリティで生きているな」ということ。音楽が好きで、わずかな音の違いにも敏感に反応し、自分自身が本当に好きな音をどこまでも探求しないではいられない業の深さ。
香港の熱いオーディオファンの声を、しかと胸に受け止めた夜であった。
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