ヒロ・アコースティックの10周年モデル
総額2億円超のハイエンドオーディオが集結。世界初公開モデルも登場、限界耐久イベント「マラソン試聴会」を徹底レポート
ダイナミックオーディオが主催するハイエンドオーディオの祭典「マラソン試聴会」が、10月12日(土)と13日(日)。の2日間、神田のKANDA SQUAREにて開催された。初日に取材にうかがったのでレポートしよう。
マラソン試聴会の大きな特徴は、「即売会」ではなく、ショップスタッフが熱く推薦する製品を独自の視点で紹介していく「劇場型」試聴会であることだ。ダイナミックオーディオ5555とトレードセンターの名物スタッフがそれぞれ時間を担当し、メーカーの垣根を超えた組み合わせや比較試聴を行っていく。
メインホールは300人以上が座れるかなり広めのスペースに、総額2億円を超えるハイエンドシステムが集結。スピーカーのみ、登壇者によって変わるためにステージ裏に隠されているが、アンプやプレーヤーの多くはステージ上に置かれている。パッと見ただけでも人気国産メーカーはもちろん、リン、ソウリューション、ゴールドムンド、ピリウム、CHプレシジョンなど錚々たる海外ハイエンド製品が勢揃いする。
2Fホールのトップバッターは、ダイナミックオーディオ5555 H.A.L.3担当の島 健悟さん。「オーディオの国宝」というテーマで、マランツ、アキュフェーズ、エソテリック、ラックスマンと国産人気ブランドをさまざまに聴き比べを行った。スピーカーはBowers&Wiliknsの「801 D4 Signature」で固定する。
アキュフェーズタイムでは、同社が得意とするA級アンプ「A-300」とAB級アンプ「P-7500」の聴き比べを実施。これほど広い会場ではAB級の方が有利か、と思われたが、浸透力と透明度の高いサウンドでA級ならではの魅力もたっぷり聴かせてくれる。
ラックスマンの時間では、サラ・オレイン「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を、レコード、CD、ハイレゾで聴き比べるという贅沢な体験。アナログプレーヤー「PD-191A」、CDプレーヤー「D-10X」、ネットワークプレーヤー「NT-07」「DA-07X」と自社製品であらゆるソースに対応できるのはラックスマンの大きな強みでもある。
今回は2Fのメインホールに加えて、3Fには比較的小さめな部屋を2部屋用意。3Fでは、トライオードやラックスマンなどブランドをフィーチャーした部屋や、「アナログでメタルを聴く」「EDMを聴く」など音楽ジャンルに特化したイベントを用意。1日中オーディオづくしで楽しめる。
3Fのカンファレンスホールでは、トライオード社長の山崎氏が「300B」の魅力を熱く語り倒す。山崎さんによると、トライオードはこれまで100台以上のアンプを世に送り出してきたが、そのうちの3割程度は300Bの搭載アンプで、長く愛されるモデルが多いという。今回はトライオード300Bの原点ともいえる「VP-300BD」(発売終了モデル)も登場、30年以上前の製品とは思えないみずみずしさに言葉を失う。
「アナログでメタル」は赤塚昭虎さんの担当。LINNの「LP12」をプレーヤーに、マジコ「M2」とダリ「EPIKORE」のスピーカーを用いて、1980年代から90年代のメタルをフィーチャー。アイアン・メイデンからスキッド・ロウ、メガデスまでメタルファンの血がたぎるレコードを次々再生する。個人的に一番印象に残ったのはマジコの「M2」で聴くメタリカ「エンターサンドマン」。マッシブでヘヴィで、それでいて感じる艶と色気は、メタルファンだけに許された贅沢な愉悦。
すっかり頭がメタルカラーになった状態で2Fのメインホールに降りてきたら、こちらではBays audioのスピーカー「Counterpoint 2.0」でグレン・グールドの時間。静謐で神々しくて、興奮した心をすっと鎮めてくれる内省のひととき。Bays audioもなかなか試聴機会の少ないスピーカーだが、ストレートでピュア、広い空間を豊かに満たすサウンドに心が洗われる。「オーディオコンサート」と言われる意味を改めて理解した。
そして最後は7F担当川又利明さんの時間。冒頭に「生のコンサートを超える、それ以上の体験を伝えたいと思います」と語り、オーディオでしか実現できない新しい世界への挑戦を宣言する。
最初はキソアコースティックの超小型スピーカー「HB-1」と、オーレンダーのネットワーク機能一体型プリメインアンプ「AP20」というシンプルなシステムをデモ。キソアコのスピーカーはギターと同じ木材でキャビネットを作成しており、響きの美しさが大きな特徴。反田恭平が若い頃に録音したドビュッシー「月の光」の余韻の残り方はあまりにも繊細。
そして真打、川又さんが惚れ込む静岡県のスピーカーブランド、ヒロ・アコースティックの最新スピーカー「CCCS」が世界初公開される。ブランド創業10周年を記念したもので、クロスオーバーが外付けとなっており、ケーブルをそれぞれ専用に開発したモデル。川又さんも、「これならば10周年にふさわしいモデルと考えて製品化しました」と誇らしげに語る。
大貫妙子の「四季」のレコードを、DSオーディオの光カートリッジ+DSフォノイコライザー、光カートリッジ+エソテリックの「Grandioso E1」、オーディオテクニカのMCカートリッジ「ART-1000X」の3種類で贅沢に聴き比べを実施。移ろいゆく季節を描く切ないメロディの美しさは極上で、光カートリッジの繊細な表現力もさることながら、テクニカのフラグシップカートリッジの実直なサウンドにも改めて聴き惚れる。
ほかにも、まもなく創業100周年を迎えるラックスマンの歴史を語る時間や、TADのフルシステムの魅力を味わう時間、日本音響エンジニアリングのルームチューニングアイテム「シルヴァン」「アンク」の聴き比べといったイベントも用意されていた。
最後に、今回のマラソン試聴会は初のKANDA SQUAREでの開催となったが、少し会場の裏方を案内してもらったので紹介しよう。これほどの大量の機器を駆動するための電源、そしてステージにも特別な工夫が凝らされている。
大容量アンプを駆動させるための強烈な電源ケーブルも専用で対応。KANDA SQUAREの電源コンセントからステージまで8本の専用ケーブルを新たに作成し、電源を確保している。
またステージ上には「トン単位」の製品がおかれることになるため、通常のステージ強度では危ないと考え、ステージ上全てにフェルトを貼った金属板を配置。さらにステージ下(特にスピーカーが配置されるあたりにはより念入りに)に補強を追加。これらは運送担当の池田ピアノ運送と日本音響エンジニアリングも協力して作成したものだという。
ショップスタッフはもちろん、メーカー、商社、そして重量級荷物を運んでくれる運送屋さんも含め、多くの人々の専門的スキルが結集されて実現されるマラソン試聴会。まさにマラソンの名にふさわしい「耐久レース」であり、心地よい疲労とともに、音の余韻が残る会場を後にした。
マラソン試聴会の大きな特徴は、「即売会」ではなく、ショップスタッフが熱く推薦する製品を独自の視点で紹介していく「劇場型」試聴会であることだ。ダイナミックオーディオ5555とトレードセンターの名物スタッフがそれぞれ時間を担当し、メーカーの垣根を超えた組み合わせや比較試聴を行っていく。
メインホールは300人以上が座れるかなり広めのスペースに、総額2億円を超えるハイエンドシステムが集結。スピーカーのみ、登壇者によって変わるためにステージ裏に隠されているが、アンプやプレーヤーの多くはステージ上に置かれている。パッと見ただけでも人気国産メーカーはもちろん、リン、ソウリューション、ゴールドムンド、ピリウム、CHプレシジョンなど錚々たる海外ハイエンド製品が勢揃いする。
2Fホールのトップバッターは、ダイナミックオーディオ5555 H.A.L.3担当の島 健悟さん。「オーディオの国宝」というテーマで、マランツ、アキュフェーズ、エソテリック、ラックスマンと国産人気ブランドをさまざまに聴き比べを行った。スピーカーはBowers&Wiliknsの「801 D4 Signature」で固定する。
アキュフェーズタイムでは、同社が得意とするA級アンプ「A-300」とAB級アンプ「P-7500」の聴き比べを実施。これほど広い会場ではAB級の方が有利か、と思われたが、浸透力と透明度の高いサウンドでA級ならではの魅力もたっぷり聴かせてくれる。
ラックスマンの時間では、サラ・オレイン「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を、レコード、CD、ハイレゾで聴き比べるという贅沢な体験。アナログプレーヤー「PD-191A」、CDプレーヤー「D-10X」、ネットワークプレーヤー「NT-07」「DA-07X」と自社製品であらゆるソースに対応できるのはラックスマンの大きな強みでもある。
今回は2Fのメインホールに加えて、3Fには比較的小さめな部屋を2部屋用意。3Fでは、トライオードやラックスマンなどブランドをフィーチャーした部屋や、「アナログでメタルを聴く」「EDMを聴く」など音楽ジャンルに特化したイベントを用意。1日中オーディオづくしで楽しめる。
3Fのカンファレンスホールでは、トライオード社長の山崎氏が「300B」の魅力を熱く語り倒す。山崎さんによると、トライオードはこれまで100台以上のアンプを世に送り出してきたが、そのうちの3割程度は300Bの搭載アンプで、長く愛されるモデルが多いという。今回はトライオード300Bの原点ともいえる「VP-300BD」(発売終了モデル)も登場、30年以上前の製品とは思えないみずみずしさに言葉を失う。
「アナログでメタル」は赤塚昭虎さんの担当。LINNの「LP12」をプレーヤーに、マジコ「M2」とダリ「EPIKORE」のスピーカーを用いて、1980年代から90年代のメタルをフィーチャー。アイアン・メイデンからスキッド・ロウ、メガデスまでメタルファンの血がたぎるレコードを次々再生する。個人的に一番印象に残ったのはマジコの「M2」で聴くメタリカ「エンターサンドマン」。マッシブでヘヴィで、それでいて感じる艶と色気は、メタルファンだけに許された贅沢な愉悦。
すっかり頭がメタルカラーになった状態で2Fのメインホールに降りてきたら、こちらではBays audioのスピーカー「Counterpoint 2.0」でグレン・グールドの時間。静謐で神々しくて、興奮した心をすっと鎮めてくれる内省のひととき。Bays audioもなかなか試聴機会の少ないスピーカーだが、ストレートでピュア、広い空間を豊かに満たすサウンドに心が洗われる。「オーディオコンサート」と言われる意味を改めて理解した。
そして最後は7F担当川又利明さんの時間。冒頭に「生のコンサートを超える、それ以上の体験を伝えたいと思います」と語り、オーディオでしか実現できない新しい世界への挑戦を宣言する。
最初はキソアコースティックの超小型スピーカー「HB-1」と、オーレンダーのネットワーク機能一体型プリメインアンプ「AP20」というシンプルなシステムをデモ。キソアコのスピーカーはギターと同じ木材でキャビネットを作成しており、響きの美しさが大きな特徴。反田恭平が若い頃に録音したドビュッシー「月の光」の余韻の残り方はあまりにも繊細。
そして真打、川又さんが惚れ込む静岡県のスピーカーブランド、ヒロ・アコースティックの最新スピーカー「CCCS」が世界初公開される。ブランド創業10周年を記念したもので、クロスオーバーが外付けとなっており、ケーブルをそれぞれ専用に開発したモデル。川又さんも、「これならば10周年にふさわしいモデルと考えて製品化しました」と誇らしげに語る。
大貫妙子の「四季」のレコードを、DSオーディオの光カートリッジ+DSフォノイコライザー、光カートリッジ+エソテリックの「Grandioso E1」、オーディオテクニカのMCカートリッジ「ART-1000X」の3種類で贅沢に聴き比べを実施。移ろいゆく季節を描く切ないメロディの美しさは極上で、光カートリッジの繊細な表現力もさることながら、テクニカのフラグシップカートリッジの実直なサウンドにも改めて聴き惚れる。
ほかにも、まもなく創業100周年を迎えるラックスマンの歴史を語る時間や、TADのフルシステムの魅力を味わう時間、日本音響エンジニアリングのルームチューニングアイテム「シルヴァン」「アンク」の聴き比べといったイベントも用意されていた。
最後に、今回のマラソン試聴会は初のKANDA SQUAREでの開催となったが、少し会場の裏方を案内してもらったので紹介しよう。これほどの大量の機器を駆動するための電源、そしてステージにも特別な工夫が凝らされている。
大容量アンプを駆動させるための強烈な電源ケーブルも専用で対応。KANDA SQUAREの電源コンセントからステージまで8本の専用ケーブルを新たに作成し、電源を確保している。
またステージ上には「トン単位」の製品がおかれることになるため、通常のステージ強度では危ないと考え、ステージ上全てにフェルトを貼った金属板を配置。さらにステージ下(特にスピーカーが配置されるあたりにはより念入りに)に補強を追加。これらは運送担当の池田ピアノ運送と日本音響エンジニアリングも協力して作成したものだという。
ショップスタッフはもちろん、メーカー、商社、そして重量級荷物を運んでくれる運送屋さんも含め、多くの人々の専門的スキルが結集されて実現されるマラソン試聴会。まさにマラソンの名にふさわしい「耐久レース」であり、心地よい疲労とともに、音の余韻が残る会場を後にした。
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