MQAチームの最新技術QRONO/FOQUSも解説

“ストリーミング時代のHiFiを追求” プロダクトマネージャーが語るBLUESOUNDのブランド理念

公開日 2025/04/07 10:00 筑井真奈
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MQAの開発チームによる新技術の詳細も公開

コストパフォーマンスの高いネットワークオーディオ機器を展開するカナダのBLUESOUND(ブルーサウンド)。同社のプロダクト・マネージャーのマット・シモンズ氏が来日、BLUESOUNDのブランド理念について、またMQAの最新情報についてたっぷり語っていただいた。

BLUESOUNDのプロダクト・マネージャーのマット・シモンズさん。インタビューは2度目!

2023年に、BLUESOUNDの親会社であるLenbrook社はMQAの開発チームを買収、その技術的成果も、最新のBLUESOUNDプロダクトには投入されている。その点についても詳しい話を伺った。

BLUESOUNDは、昨年「NODE ICON」「NODE」「NODE NANO」の3製品をリリース、日本国内ではすでに、トップモデルである「NODE ICON」と、エントリーモデルとなる「NODE NANO」の2製品の展開がスタートしている。

マットさんはBLUESOUNDの狙いとして、「ストリーミングをHiFiクオリティで楽しむ」という理念を改めて強調する。そのために、「ハードウェアをきちんと開発できることは大切ですが、それに加えてソフトウェアも自社で開発できることができ、それに伴うエコシステムを構築できること」がBLUESOUNDの強みであると訴える。

「NODE ICON」には、MQAの技術チームが新たに開発したDAコンバーターのテクノロジー、「QRONO」(クロノ)が世界初搭載されている。クロノという名前から想像される通り、“時間軸方向の正確性”に重きを置いた技術となっており、「デジタルとアナログオーディオをさらに進化させることができる技術です」と解説する。

MQAが開発を進めているDAコンバーター技術のQRONOと、ADコンバーター技術FOQUS

QRONOは、DAチップなどのハードウェアと連携して動く独自のフィルターとなっている。「人間の耳は、8μ秒ずれた音の違いを聴き取ることができるとされています。それは人間の進化の過程で発展してきた聴覚の能力です。しかし、いまのデジタルオーディオではまだまだ限界があり、192kHzの音源でも120μ秒程度までしかコントロールできません。つまりデジタルの音楽再生にはまだまだ進化できる余地があると考えており、そのための技術のひとつがQRONOとなります」。

人間の耳や脳は8μ秒の音の違いを聞き分けることができるが、192kHzでもまた120μ秒までしか分離できないという研究結果

あくまでそれを音楽再生のため、オーディオのために活用したい、というのがMQA、そしてLenbrookチームの願いである。「クラシック音楽でも、エレクトリックな音楽でもなんでも良いのですが、非常に複雑に構成された生の音楽を、いかにデジタルの力を活用して再現することができるのか、ということを追及し続けています」とQRONO開発の背景について言及する。

ちなみにNODE ICONに搭載されるDACチップは、ESS社の「ES9039Q2M」だが、QRONOはESS社との組み合わせというわけではなく、他の会社のDACチップと組み合わせて活用できるものとなっている。

また、QRONOはDA変換のための技術だが、その“裏返し”となるAD変換の技術についてもMQAチームは開発を進めている。こちらは「FOQUS」(フォーカス)と呼ばれており、AD変換時の精度を高めるフィルターとなっているそうだ。こちらはまだ具体的なプロダクトには落とし込まれていないが、まもなく新情報が公開できそうとのことだ。

価格ごとに3グレード用意された最新ラインナップ

続けてマットさんは、最新のBLUESOUNDの3プロダクトについて改めて解説する。「NODE NANO」(国内価格:約6万円)「NODE」(国内未導入:近日展開予定)「NODE ICON」(国内価格:約20万円)について、“Good”“Better”“Best”と説明、徐々にグレードアップしていくことができるストリーミングプレーヤーとして開発を進めてきたと説明する。

左から「NODE ICON」「NODE」「NODE NANO」。サイズはもちろん、機能や音質面でも差別化されている

いずれもBluOSのプラットフォームを共通して採用しているが、DACチップのグレードや電源部、出力端子もそれぞれグレードごとに異なっており、設置環境や予算に合わせて選択することができる。たとえばDACチップについても、ES9039Q2Mは共通に搭載されるが、NODE NANOとNODEは1基に対し、NODE ICONではデュアルモノとして2基搭載。

また電源部については、NODE NANOではUSB typeCの入力となっているが、NODE ICONでは低ノイズレギュレーターとπフィルターを装備するといった差が設けられている。そのほか、NODEとNODE ICONのみ、ドルビーデジタルのダウンミックス機能を搭載するほか(HDMIによるテレビとの連携を想定)、Dirac Liveによるルーム補正機能にも対応する。

3モデルの電源部のグレードもそれぞれ異なっている

またNODE ICONのみ5インチの大型ディスプレイを搭載、バランスXLR出力を搭載するといった機能差も設けられている。

最上位グレードのNODE ICONには最新の技術を惜しみなく搭載

マットさんはこれまでのBluOSのアップデートについても振り返る。「BLUESOUNDはストリーミングサービスを主眼に置いたプロダクトですが、市場の要望を受けてさまざまなアップデートを実施してきました。たとえばリッピングしたCDのデータを再生したい、という声がありましたので、ローカルファイル再生にも対応しましたし、新しくDSD再生にも対応しました」。市場の声を踏まえながら柔軟にソフトウェアをアップデートしていけるのはやはりBLUESOUNDの技術力の高さでもある。

ちなみにNODE ICONはバランス出力にも対応しており、XLR出力は搭載されているが、残念ながらヘッドホン出力は6.3mmのアンバランス出力が2系統。「せっかく2系統あるのだから、片方は4.4mmのバランス出力にしてほしい」と要望を出すと、マットさんも少し考えて、「ふーむ、ランニングチェンジできる可能性がないか探ってみます」とのこと。期待したい。

最後に、昨年老舗ハイレゾダウンロードサイトのHDtracksが、MQAと組んでストリーミングサービスをスタートする、という発表がなされた件についてもマットさんに尋ねてみたところ、「コンテンツソリューションについて考えていることはありますが、おそらく違う形で実現されることになるでしょう」とのこと。こちらも続報待ちといったところだ。

ソフトウェアとハードウェアの双方に強みを持ち、「エコシステム」を構築できることがBLUESOUNDの強みと語るマットさん

昨年秋にQobuzがスタートしたことで、改めて注目の高まるBLUESOUND。今後の展開からもますます目が離せない。

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