NHK技研、有機ELで高効率な3色発光を実現。折りたたみテレビへ
新素子は、燐光性高分子材料を用いた有機EL材料。高分子の有機EL材料では、これまで広く研究が進められてきた低分子の有機EL材料(柔軟性に乏しく丸めたりできない)に比べて、まだ発光の効率が低く寿命が短いという問題がある。つまり、大幅な高効率化・高輝度化は期待できないと言われていた。
新EL素子は、特殊な高分子構造を用いて新しい仕組みによる高効率な発光(燐光)が起こるように工夫したもので、原理的にはこれまでの4倍、発光効率20%が得られる。
この発光材料には以下の特徴がある。
1.分子の構造を制御することにより、従来の蛍光の限界(5%)を超える高効率のRGB発光が得られる。
2.印刷法やインクジェット法などの簡便な素子作製法が適用でき、大画面、高精細なディスプレイが低コストで実現できる。
3.添加物も含めて全て高分子材料なので、フレキシブルなディスプレイに好適。
現在の性能(輝度100cd/m2の条件)は以下の通り。赤色、緑色の効率は世界最高値、緑色は蛍光発光の理論限界値(5%)を越えている。
発光波長ピーク(nm) 発光効率(%)
赤色(R) 620nm 4.6%
緑色(G) 523nm 5.9%
青色(B) 476nm 2.7%
今後は、青色の発光を一層鮮やかな青色とする改善を行うとともに、RGBで20%の発光効率を目指してさらなる効率改善を進めていくという。また、ディスプレイ化技術を適用してフレキシブルな基板へのフルカラーパネルの試作を合わせて行う予定。今回は、燐光の実現を実証するためにガラス基板を用いた素子を試作したが、フレキシブルなポリマー基板に作製することもできる。(AVレビュー編集部)
(参考)発光効率
発光材料の特性をあらわす外部量子効率を用いる。外部量子効率は、1個の注入電子に対して外部に放射される光の粒子数をパーセントで表す変換確率。