ソニー第2四半期決算は7四半期振りに増益に
発表を行うソニー執行役副社長兼グループCSO&CFO 井原勝美氏 |
しかし、柱となるエレクトロニクス分野では、売上げは前年同期比2.5%の減少となる12,133億円。世界レベルで市場が拡大するデジタルカメラと薄型テレビ、米国を中心に液晶リアプロジェクションテレビが増収となる一方、薄型画面へのシフトが進むブラウン管テレビや携帯型オーディオプレーヤーが減収となった。
とりわけ営業利益は72億円で、同83.4%の大幅減となった。価格下落による原価率の悪化や円高、構造改革費用の増加が影響した。製品別には、売上げが減少した携帯型オーディオプレーヤー、単価下落が影響したDVDレコーダー、ビデオカメラ、薄型テレビが減益要因となった。同社執行役常務・湯原隆男氏は「構造改革を進めておりますが、まだ、価格下落にコストが追いついていないのが現状です。今後、デジタルAV分野に新しい商品をどんどん投入していくことで、原価率の改善に寄与するとともに、売上げ増と相俟って、収益力を高めていきたいと考えています。それが、第3四半期の姿だと思います」と、収益性改善に対する取り組みを説明した。
一方、7四半期ぶりの増益転換への柱となったのは映画分野。売上高は前年同期比2.3%増の1,917億円。損益面では、同46億円の損失から320億円改善し、274億円の営業利益を計上した。前年同期に比べ、劇場公開の作品数は少なかったが、『スパイダーマン2』が大ヒットするなど劇場興行収入が好調に推移。DVD/VHSソフトの売上げ、有料テレビ収入も増加する一方で、広告宣伝費も減少した。
井原氏は「私が担当して4ヵ月の間にも随分と変わってきました。特にカンパニー間の戦略の整合性という面から、デバイス開発とセットの商品開発の整合に現在相当な力を注いでいます。従来、他社に出ていた半導体の設計をソニーの中で設計し、生産する内製化へと、舵取りが変わってきています。例えば、この秋導入した新商品のフラットテレビには、バックライトパネルや薄型で大出力のオーディオアンプの技術が採り入れられている。こうした商品が今後どんどん出てきます。現在、ソニーの半導体の売上げの50%強が、ソニーのセット商品のために使用されています」と、課題のひとつである内製化に対する積極的な取り組みと改善を強調した。
アテネ五輪商戦という商機を掴み損ねた第2四半期のエレクトロニクス分野だけに、年末商戦を要する第3四半期で巻き返しを期す。湯原氏は「昨年と今年の年末商戦で大きく異なる点は、昨年は薄型テレビの投入が10月、DVDレコーダーの投入が11月となり、費用対効果が予想したほど現れなかった。それに対して今年は薄型テレビを8月、DVDレコーダーを9月に導入。2ヵ月の前倒しとなり、昨年よりはるかに効率よい導入が実現し、第3四半期に売り切る体制が整いました。販売店への導入もスムーズに進んでおり、デジタルAVを中心に、年末商戦に強い期待を持っています」と語る。
井原氏は、「下期の期待はなんと言ってもディスプレイのビジネスです。ここが強くならないことには、全体のAVの回復感が出てきません。液晶リアプロジェクションテレビ・グランドベガも米国で好調に推移しています。また、ゲーム機のPSPでは、相当思い切った戦略的価格を実現しました。こうしたところに、ソニーのひとつの勢い、覚悟を見ていただきたい」と力強く語った。