増田和夫が見た“Wooo”「W42P-HR9000」(2)1080ALISパネルで画質はどう変わったか
縦解像度が高い1080ALISパネルを活かした画づくり
最新1080ALISパネルの映像を視聴してみよう。まず、画面の明るさが印象的だ。ALISパネルは、以前から明るい印象があったが、本機の映像も縦1080ピクセルの高解像度でありながら輝度が十分に確保されている。オーバースキャンなしであるため「BS-hi」ロゴの外側も見えて、パノラマ感もわずかに増す印象だ。
描写は縦解像度の高さを活かしたシャープネス指向で、ビルの立ち並ぶ都会の遠景などにハイビジョンらしい緻密さが感じられる。
色再現は、緑や赤の純度の高さが印象的で、赤い薔薇が朱色がかったりすることなく深紅に表現される。色濃度が濃い目で、特に緑がやや派手な印象だが、後述するようにイコライジングすれば、映画などに適したレベルに追い込めるだろう。色域が広がったことが実感できる鮮やかさだ。
地上デジタルでは、ビビッドな色と明るい描写で、バラエティ番組やスポーツ中継を鮮やかに描く。スタンダード設定ではビデオソース向きかもしれない。
HD画質の映画ソースも滑らかに描写する
次に海外製の「オペラ座の怪人」HD DVD版を見てみよう。エンコードの良さで評価の高いタイトルで、1080ALISパネルで見ると、HDシネマならではの自然な粒状感と奥行き感が伝わってくる。重厚な舞台セットと華麗な衣装を堪能でき、巨大なシャンデリアの輝きも印象的だ。カラフルな映画だが、暗いシーンも多く、怪人がヒロインを連れて地下のラビリンスに逃げ込むシークエンスは霧やシャドウ部の連続になる。まさに心の闇を表すシーンで、こうした場面は、従来のALISではちょっと辛かったのだが、本機では階調の破綻なく描写する。暗部の階調を潰さずに、それでいて極端に浮かせる事なく、地下道の陰影と湿度の高さを表現できている。標準設定では、ややハイキーでハイライト寄りな印象なので、暗部を潰さない程度にクロマを数レベル落とすと腰のある映像になるだろう。
感心したのは疑似輪郭の少なさで、従来機と比べると大きく改善されている。人肌のアップや、夜霧の立ち込める川面といったグラデーションの多い場面でも、疑似輪郭が目につかなかった。高階調処理の効果が最も実感できる部分である。
DVDソースも巧みなスケーリング処理で自然に描写する
色の濃さが初期設定では、かなり濃くセットされているので、TV視聴で−4レベル、映画では-7レベルほど落とすと、筆者好みの落ち着いた色みになった。前モデルの色は派手な印象だったが、本機ではイコライジングで追い込んでいけば、しっとりとした表現もこなせるようになった。
DVDビデオの映画ソースも同じ傾向だ。パネルの表示解像度が上がったため、今まで以上に高度なスケーリング処理が要求されるが、贅沢な映像回路の効果で、画素変換に不自然さは感じられない。早い動きにも強くなり、DVDビデオ「エネミーライン」で、F18ジェット戦闘機を対空ミサイルがホーミングするアクロバティックなシークエンスも安定してトレースできている。フレーム単位で演出された空中ファイトのスピード感を再現し、映像が急激にパンするシーンでも、従来のインターレース表示にありがちなブレや描写の甘さを感じることはなかった。
音声で面白いのは、番組ジャンルに合わせて自動的に音声イコライジングをしてくれるオート音声モードだ。このモードは、内蔵SPのレベルではあるが、聞きやすい音声を楽しめるアイデア機能といえるだろう。サブウーファー出力を備え、簡単に2.1chシステムにアップグレードできるのも手軽だ。
全体的にみると、画質のレンジが広がり、懐が広くなった印象だ。着実な進歩が感じられるAVクオリティといえるだろう。
(増田和夫)
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第1回:高画質を支える数々の新技術
増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。