亀山第2工場と共に新しい一歩踏み出す ― シャープ“AQUOS”新モデル6機種発表会
シャープ(株)は、亀山第2工場モデルの液晶テレビ“AQUOS”の新モデル6機種の発表会を開催した。
同社専務取締役 AV・大型液晶事業統括 兼 AVシステム事業本部長 片山幹雄氏が、今後の液晶テレビ事業の展望と戦略を述べた。今回の発表会の内容は日本・中国・ドイツ・アメリカの世界四カ国でほぼ同時に発表され、発表された6機種は世界同時発売となる。
■液晶テレビの現状と新たに生産を開始した「亀山第2工場」について
2001年1月にアクオスを発売して以来、同社は輝度や視野角の向上と大画面化を積極的に押し進めてきた。2004年1月に稼働を始めた亀山第1工場では第6世代マザーガラスを採用。32型で年間500万台を供給したという実績を挙げ、「今日の液晶テレビ市場を開拓し、ブラウン管から液晶テレビへのリプレイスに貢献することができた」と同氏は述べた。
今回生産を始めた亀山第2工場では、世界最大の第8世代マザーガラス(2,160×2,460mm)を採用。このガラス1枚から50型クラスを6面取り、40型クラスを8面取りすることが可能になった。これにより、従来供給が追いつかないこともあった海外向けも含め、安定したパネル供給体制の強化が実現した。マザーガラス投入能力は現在月間15,000枚だが、2007年3月には第2期生産ラインの導入により月30,000枚に増強する予定。さらに2008年中頃までには月90,000枚を投入する予定だという。
「同業他社でも第8世代を来年秋に稼働させる計画があるようだが、1年先駆けることの意味は大きい」と同氏は自信をみせた。
また、工場内の搬送距離や生産リードタイムを1/2以下に短縮し、主要部材の技術や原価を見直した。これにより第1工場に比べ2倍の高効率化を実現することができたという。第2工場に導入した新たな部材のひとつである「インクジェット式カラーフィルター」は、(株)フューチャービジョンの技術を導入した、大幅にコストダウンできる技術である。その他(独)産業総合研究所、東北大学などと共同して開発した技術の導入により、コントラスト比や応答速度は世界最高レベルを実現。今回発表した製品にもこの技術を既に使用している。
■液晶市場の展望と同社の今後の商戦
同社の調査によると2006年度の液晶テレビの世界需要は前年比の1.8倍の4,200万台と見られ、今後も2桁増の伸び率が続き、2008年度には8,000万台程度まで伸びるとしている。さらに、放送インフラの整備や高精細なコンテンツの配給などにより、今後40型から50型クラスの新しい市場が形成されると予想。将来的に市場は40〜50型、30型クラス、20型クラスの3つに分化していくと考えているという。
さらに、国内から海外にスピーディーに製品を供給するために、世界5極生産体制を実施。国内向け製品は液晶パネル・液晶モジュール・液晶テレビ全てを亀山工場にて一貫生産するが、海外向けの製品は液晶パネルのみ亀山工場で生産し、液晶モジュール・液晶テレビに関してはその消費地(ポーランド・スペイン・マレーシア・南京・メキシコ)の工場で組み立てるという物流体制を実施。輸送コストやリードタイム面などの問題を克服した。
クリスマス商戦に向け同社は「大画面化」と「高精細化」をキーワードに商品ラインナップを強化していく展望だ。2006年末まで国内37型以上の製品はすべてフルHD対応にする計画であるという。
今回の第2工場の稼働により、アクオスのラインナップは13型から65型に渡る39機種になった。これだけの画面領域をカバーし製品化できるのは液晶ならではの特長である、と同氏は述べ、「シャープは亀山第2工場と共に新しい一歩を踏み出した。21世紀のデジタル放送時代にふさわしい高画質・高精細な大画面製品を作っていく」と意欲をあらわにした。
以下、発表会で行われた質疑応答の内容を掲載する。
Q.10月1日より世界同時発売ということだが、その効果はどんなものだと考えているのか。
A.シャープが過去やったことのないことにチャレンジしている。世界的に見てAV製品が一番よく売れるのは11・12月である。この時期に世界同時発売しないとマーケットに対し供給がうまくいかない事態になってしまうと考えた。効果はクリスマス商戦が終わるころ明らかになるだろう。
Q.亀山第2工場の立ち上げは従来の工場立ち上げとどのように違ったのか。苦労した点は何か。
A.最先端技術を実現するためラインや設備を一新したので、技術陣の苦労はかなり多かった。亀山第1工場立ち上げの際得た教訓を活かしたが、ガラスの運搬方法などにはやはり苦労した。
Q.液晶テレビは年々価格が下落していくが、それに対する対策は何かあるのか。
A.一消費者の観点からすると適正価格まで下がるのは望ましいことであり、あらゆる家庭に普及する値段になるようコストダウンに努めるのはメーカーの使命だと思う。アクオスは13型から65型まで多岐に渡るラインナップを取り揃えている。それぞれに適正な価格をつければ、相対的に適切な値段になるのではないか。
Q.海外市場での拡販策を具体的に教えて欲しい。
A.北米市場でニーズの高い40型以上の大型ディスプレイを生産するようになった。これを適切な価格で提供することにより、現地電器店での売り場面積を多く獲得していきたい。消費地ごとに製品デザインを変更し、一般消費者に対する存在感を出すことが目標だ。販売広告費を海外向けへ重点的に配し、ブランドイメージを高めシェアを獲得していきたいと考えている。
Q.液晶事業におけるシャープのシェアの現状と今後の展望を教えて欲しい。
A.グローバルなシェアは去年に比べ20%から12%弱にダウンした。国内シェアは50%程度にまでアップしたので、海外におけるシェアが減少したものと考えている。10月以降多様なラインナップを提供することで、海外シェアを15%程度に回復したい。大型液晶テレビをリリースしたので、これを中心に大きなシェアをとっていきたいと考えている。
(Phile-web編集部)
同社専務取締役 AV・大型液晶事業統括 兼 AVシステム事業本部長 片山幹雄氏が、今後の液晶テレビ事業の展望と戦略を述べた。今回の発表会の内容は日本・中国・ドイツ・アメリカの世界四カ国でほぼ同時に発表され、発表された6機種は世界同時発売となる。
■液晶テレビの現状と新たに生産を開始した「亀山第2工場」について
2001年1月にアクオスを発売して以来、同社は輝度や視野角の向上と大画面化を積極的に押し進めてきた。2004年1月に稼働を始めた亀山第1工場では第6世代マザーガラスを採用。32型で年間500万台を供給したという実績を挙げ、「今日の液晶テレビ市場を開拓し、ブラウン管から液晶テレビへのリプレイスに貢献することができた」と同氏は述べた。
今回生産を始めた亀山第2工場では、世界最大の第8世代マザーガラス(2,160×2,460mm)を採用。このガラス1枚から50型クラスを6面取り、40型クラスを8面取りすることが可能になった。これにより、従来供給が追いつかないこともあった海外向けも含め、安定したパネル供給体制の強化が実現した。マザーガラス投入能力は現在月間15,000枚だが、2007年3月には第2期生産ラインの導入により月30,000枚に増強する予定。さらに2008年中頃までには月90,000枚を投入する予定だという。
「同業他社でも第8世代を来年秋に稼働させる計画があるようだが、1年先駆けることの意味は大きい」と同氏は自信をみせた。
また、工場内の搬送距離や生産リードタイムを1/2以下に短縮し、主要部材の技術や原価を見直した。これにより第1工場に比べ2倍の高効率化を実現することができたという。第2工場に導入した新たな部材のひとつである「インクジェット式カラーフィルター」は、(株)フューチャービジョンの技術を導入した、大幅にコストダウンできる技術である。その他(独)産業総合研究所、東北大学などと共同して開発した技術の導入により、コントラスト比や応答速度は世界最高レベルを実現。今回発表した製品にもこの技術を既に使用している。
■液晶市場の展望と同社の今後の商戦
同社の調査によると2006年度の液晶テレビの世界需要は前年比の1.8倍の4,200万台と見られ、今後も2桁増の伸び率が続き、2008年度には8,000万台程度まで伸びるとしている。さらに、放送インフラの整備や高精細なコンテンツの配給などにより、今後40型から50型クラスの新しい市場が形成されると予想。将来的に市場は40〜50型、30型クラス、20型クラスの3つに分化していくと考えているという。
さらに、国内から海外にスピーディーに製品を供給するために、世界5極生産体制を実施。国内向け製品は液晶パネル・液晶モジュール・液晶テレビ全てを亀山工場にて一貫生産するが、海外向けの製品は液晶パネルのみ亀山工場で生産し、液晶モジュール・液晶テレビに関してはその消費地(ポーランド・スペイン・マレーシア・南京・メキシコ)の工場で組み立てるという物流体制を実施。輸送コストやリードタイム面などの問題を克服した。
クリスマス商戦に向け同社は「大画面化」と「高精細化」をキーワードに商品ラインナップを強化していく展望だ。2006年末まで国内37型以上の製品はすべてフルHD対応にする計画であるという。
今回の第2工場の稼働により、アクオスのラインナップは13型から65型に渡る39機種になった。これだけの画面領域をカバーし製品化できるのは液晶ならではの特長である、と同氏は述べ、「シャープは亀山第2工場と共に新しい一歩を踏み出した。21世紀のデジタル放送時代にふさわしい高画質・高精細な大画面製品を作っていく」と意欲をあらわにした。
以下、発表会で行われた質疑応答の内容を掲載する。
Q.10月1日より世界同時発売ということだが、その効果はどんなものだと考えているのか。
A.シャープが過去やったことのないことにチャレンジしている。世界的に見てAV製品が一番よく売れるのは11・12月である。この時期に世界同時発売しないとマーケットに対し供給がうまくいかない事態になってしまうと考えた。効果はクリスマス商戦が終わるころ明らかになるだろう。
Q.亀山第2工場の立ち上げは従来の工場立ち上げとどのように違ったのか。苦労した点は何か。
A.最先端技術を実現するためラインや設備を一新したので、技術陣の苦労はかなり多かった。亀山第1工場立ち上げの際得た教訓を活かしたが、ガラスの運搬方法などにはやはり苦労した。
Q.液晶テレビは年々価格が下落していくが、それに対する対策は何かあるのか。
A.一消費者の観点からすると適正価格まで下がるのは望ましいことであり、あらゆる家庭に普及する値段になるようコストダウンに努めるのはメーカーの使命だと思う。アクオスは13型から65型まで多岐に渡るラインナップを取り揃えている。それぞれに適正な価格をつければ、相対的に適切な値段になるのではないか。
Q.海外市場での拡販策を具体的に教えて欲しい。
A.北米市場でニーズの高い40型以上の大型ディスプレイを生産するようになった。これを適切な価格で提供することにより、現地電器店での売り場面積を多く獲得していきたい。消費地ごとに製品デザインを変更し、一般消費者に対する存在感を出すことが目標だ。販売広告費を海外向けへ重点的に配し、ブランドイメージを高めシェアを獲得していきたいと考えている。
Q.液晶事業におけるシャープのシェアの現状と今後の展望を教えて欲しい。
A.グローバルなシェアは去年に比べ20%から12%弱にダウンした。国内シェアは50%程度にまでアップしたので、海外におけるシェアが減少したものと考えている。10月以降多様なラインナップを提供することで、海外シェアを15%程度に回復したい。大型液晶テレビをリリースしたので、これを中心に大きなシェアをとっていきたいと考えている。
(Phile-web編集部)