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HDMI1.3 の技術説明会が開催 − 画質/音質を高めた対応機は来年CESに多数登場か

公開日 2006/11/10 19:39
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HDMIライセンシング社(HDMI Licensing, LLC)は本日、HDMI ver.1.3(以降HDMI1.3)の技術に関する記者向け説明会を都内で開催した。

説明会に出席したのは、HDMIライセンシング社マーケティング部門のバイスプレジデント スティーブ・ベヌーティ氏、シリコン・イメージング社のブレット・ケインズ氏、デビッド・クオ氏、ドルビーラボラトリーズ社のクレイグ・エガーズ氏の4名。HDMI1.3の概要や機能の説明のほか、映像表示のデモ、Dolby TrueHDの再生デモなどを行った。


シリコン・イメージング社 ブレット・ケインズ氏

HDMI搭載出荷数の推移と内訳

多くのPCメーカーも賛同している
初めに登壇し市場動向などを説明したのは、HDMIの開発に当初から携わっているケインズ氏。まず同氏は、HDMIはすでに事実上の家電製品のデファクトスタンダードになりつつあると語り、2006年9月現在で462社がライセンスを取得していることを明らかにした。本年度、これらのメーカーにより約6,000万台のHDMI対応機器の出荷が見込まれており、2009年度には約3億台の出荷数にまで達する見込みという。

「HDMIは多くの種類の機器に搭載できるのが特長である」と語る同氏は、HDMIを搭載するPCが急増していることもアピールし、これらの要因として、次世代ディスクドライブ搭載モデルが増えたことや、映像をテレビへ出力することが多くなったことを挙げた。

2006年から2007年にかけての動向としては、第一にHDMI搭載製品の低価格化が挙げられ、すでに北米では対応DVDプレーヤーの価格が70ドルまで下がってきているという。

対応製品のHDMI端子数に関しては、平均個数が増加傾向にあり、テレビでは2005年に平均1.3個だった端子数が2006年には1.45個まで上昇したと説明した。同氏は、「より多くの製品をテレビにつなぎたいというニーズが高まっている。最近では本体前面に端子を搭載した製品も出てきており、ゲーム機やビデオカメラなどを接続しやすくなってきている」と語った。

また最近では、ポータブル製品のHDMI採用も目立ってきており、ソニーのビデオカメラや東芝のノートPC、サムスンのデジカメなど、多くの製品がすでにHDMI端子を採用しいていると説明した。

HDMI1.3規格の概要が正式に発表されたのは本年6月(関連ニュース)で、そこから現在までスペックの向上、機能拡大を図ってきたという。

HDMI1.3は、帯域幅において1.2の165MHz(4.95Gbps)の2倍以上となる340MHz(12.2Gbps)を実現したのが大きな特長。これにより多くの情報を高速で伝送できるようになり、様々な新機能を実現している。

今回の本題であるHDMI1.3の説明は、映像に関してはデビッド・クオ氏が、音声に関してはクレイグ・エガーズ氏が行った。


<HDMI1.3 の映像機能>

映像信号の伝送においては、「ディープカラー」や「xvYCC」(関連ニュース)を新たにサポートしている。また、従来秒間60フレームが最大であったフレームレートは、1080pで120フレーム、720p/1080iで240フレームを実現。さらに画像解像度は、最大で2,560×1,536(WQXGA)を実現している。


シリコン・イメージング社 デビッド・クオ氏

ビット数を上げることで“自然の色”に近付けることができる

ディープカラーによりバンディングの低減を実現
本説明会ではディープカラーについて詳細な説明が行われた。ディープカラーは、RGB各色の信号処理を10ビット/12ビット/16ビットで行うことで、従来の8ビットの色数を超える色調表現が可能な技術。今回のHDMI1.3では、このディープカラーの伝送に対応し、カラーバンディングのない「より自然界に近い色」を再現できるとした。クオ氏は「バンディングをなくすには12ビットが必要。また、現状のHDコンテンツは製作段階の映像処理時に劣化が起こっており、元のクオリティを維持するには16ビットが必要だと考えている」と、16ビットまで対応した理由を説明した。会場では8ビットと10ビットの映像の差をデモ。10ビット時のグラデーションの表示能力を説明したほか、暗部での表示能力の高さを強調した。また同氏は、シリコン・イメージング社がディープカラー対応のチップをすでに提供開始していると紹介した。

10ビット表示(左)と8ビット表示の比較

10ビットでは暗部も潰れずに表現


<HDMI1.3 の音声機能>

音声信号の伝送では、新たに次世代オーディオフォーマット「ドルビーTrueHD」「DTS-HD」のビットストリーム信号の伝送に対応したのが大きな特長だ。これまでのBD、HD DVD再生機器ではこれらをビットストリーム出力することができなかったが、HDMI1.3に対応することで、AVアンプなどに直接信号を送り、アンプ側でデコードし、高音質、多チャンネルの次世代オーディオを体験することができるようになる。


ドルビーラボラトリーズ社 クレイグ・エガーズ氏

Dolbyの各フォーマットのビットレート範囲

同社はビットストリーム出力を「オーディオファン機能」と表現
登壇したエガーズ氏は「高品位な映像とスタジオ品質の音声を1本のケーブルで、しかも家庭で楽しめるようになったことを嬉しく思う」と語り、ドルビーTrueHD についての説明を行った。

ドルビーTrueHDは、可逆圧縮(ロスレス)のオーディオフォーマット。非圧縮音声の1/2〜1/4のデータ量を実現しており、同氏は「映画コンテンツなどでは映像の品質に影響を与えることなくディスクに収録できるのが強みである」と説明した。また、技術的には14chをサポートしており、将来的な拡張も視野に入れているという。

同氏は、「『HDMI1.3対応』ということが高い品質を表すものとして認知されていくだろう」と述べ、HDMI1.3対応機器が2007年中頃には多く登場してくるのではないかと語った。会場ではドルビーデジタルプラスやドルビーTrueHDの再生デモも実施。その再生能力の高さをアピールした。

HDMIのバージョンごとの対応音声

Dolbyのデモでは最新のBD映画コンテンツなどが使われた



明日発売のPS3がHDMI1.3対応プレーヤーの1号機となる

その他、発売をひかえる1.3対応製品
説明会の最後にはケインズ氏が再び登壇し、HDMI1.3に対応したの具体的な製品を紹介した。まず紹介したのはあす(11日)発売となる「PS3」。「HDMI1.3技術を導入することにより、オーディオビジュアルの品質の限界を押し上げるでしょう」という、SCEの久多良木CEOのコメントを紹介した。また、北米で発売予定の東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA2」や、12月に発売を控えたエプソンの液晶プロジェクター「EMP-TW1000」、1,440pの表示解像度を実現したChi Mei Optolectronics社の液晶テレビなどを紹介し、「2007年のCESでは、さらに多くの対応機が発表されることになるだろう」と締めくくった。


以下に、説明会で行われた質疑応答の主な内容を掲載する。

Q.HDMI1.3対応製品は「1.3」であることを明示して販売を行っていくのか?
A.我々が消費者に対して推奨しているのはバージョンではなく、フィーチャーセット。製品のフィーチャーを選択基準とするよう推奨していきたい。また、1.3対応であることが判るように明示するため、準備をする段階にある。

Q.SEDテレビはHDMI1.3対応で発売される?
A.発表されていない製品に関してはコメントできないが、多くのメーカーがCESで対応に関する発表を行うだろう。

Q.今年のCEATECなどで「4K2K」のディスプレイが数多く出展されたが、今後これらの高解像度への対応はどうするか?
A.HDMIはまだ伝送能力を高める余地があり、すでに市場の先をいっている。現在のテレビは1080が最大なので、当面は市場のニーズに合わせて展開していく。

Q.ハードの対応状況は説明してもらったが、コンテンツの対応・普及状況はどうなっているか?
A.ディープカラーに初めに対応するのはゲームだと思う。ゲームの映像はコンピューター上でレンダリングを行うので対応が容易。PS3がその能力を持っている。映画に関しては、すでに映画館での上映をディープカラーで行っているが、家庭用のテレビ、ディスプレイが8ビットにとどまっているのが現状だ。10ビット、12ビットのディスプレイが徐々に普及してきており、その普及にあわせてコンテンツメーカーも製作を勧めていくだろう。コンテンツの普及は時間の問題だ。(ケインズ氏)

Dolby TrueHDに関しては、すでに収録したタイトルが市場に出てきた。メジャーなスタジオがBD、HD DVDの製作を進めており、年末にも多くのタイトルが発売されるだろう。(エガーズ氏)

Q.HDMI1.3に対応するチップはシリコン・イメージング社以外のメーカーも開発するのか?
A.HDMIはオープンスタンダードな規格なので、HDMI1.2をつくっているメーカーは近い将来、自分たちの計画を発表するだろう。

Q.チップのコストはHDMI1.2よりも高くなるのか?
A.チップ自体のコストはほとんど上がらない。HDMI1.3の新技術に対応するためにハードのコストが上がるのではないかと思う。

(Phile-web編集部)

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