斎賀和彦のハイブリッドカム「DZ-HS503」長期試用レポート<2> − ダビング機能をチェック
ビデオカメラ使用の主目的は「撮ること」だが、楽しいのは「見るとき」だ。子供のイベントや旅行の様子をリビングのテレビで皆で見る楽しさはビデオカメラの醍醐味。ところが、これまでのビデオカメラは、撮った映像を見たり編集したりする機能に関しては完全に後回しにされてきた。
早送り巻き戻しが必須なテープはもちろん、HDDタイプは再生にカメラそのものが必要だし、編集にはパソコンやレコーダーが必須だ。DVDタイプは、カメラからDVDを取り出してDVDプレーヤーに入れればいいので便利だが、1枚当たりの収録時間が短く、また複数のDVDから映像をまとめようとするとお手上げに近い。
ハイブリッドカムはHDDとDVDを両方搭載することで、その問題を解決したと言えよう。
撮影時の収録はHDDとDVDのどちらでも可能だが、前回述べたように大容量HDDのメリットを生かす意味ではどんどんHDDに撮って、必要な部分をDVDにダビングするといった使い方がベストだろう。DVD収録時に比べ少し消費電力が低いので、HDD収録メインの方が有利という面もある。
HDDに収録した映像は、ディスクナビゲーションボタンを押すだけで撮影カット毎にサムネイルが一覧表示される(写真1)。これをカーソルキーで選ぶだけで即座に好きなシーンが再生できるのはHDDなどディスクタイプの大きなアドバンテージだ。DZ-HS503をテレビに繋げば、HDDだけに快適なスピードで動作するプレーヤーとなる。
だが、再生するたびににカメラ本体が必要になってしまうのでは不便。HDDオンリーカメラはここがウイークポイントになってしまうのだが、DZ-HS503はカメラ本体でDVDにコピーできる。この「カメラだけでコピーが作れる」のが、ハイブリッドカムが大ヒットした最大の理由だと感じる。編集が趣味でない限り、わざわざパソコンやレコーダーに取り込まないとコピーも作れないというのはあまりに面倒な話ではないか。
DZ-HS503でのコピー作業は、操作も実に簡単だ。記録可能なDVDを入れ、ダビングボタンを押すだけで、ダビング準備が完了。どのようなダビングを行うかの選択肢(モード)が表示される(写真2)。
HDDの映像すべてをダビングする「まるごと」、好きなシーンだけを選択してダビングする「えらんで」。旧モデルではこの2つだったが、DZ-HS503では大きく機能向上した。過去にDVDにダビングしたクリップをカメラが記憶していて、まだDVDにダビングしていないシーンだけ自動選択する「はじめて」、指定した日の撮影分だけダビングする「ひにちで」モードの追加である。使ってみると、この新モードが実に強力で実用性が高い。「はじめて」はダビング漏れや重複を無くしてくれるし、「ひにちで」は例えば入学式だけのDVDをボタンひとつで作成できるのだ。この快適さはこれまでのビデオカメラが持ち得なかったもの。DZ-HS503最大のポイントと言っても良いだろう。
さらに感心したのが、これらのダビング作業をリモコンから操作できること(写真3)。録画や再生が可能なリモコンが付属するのはいまや当たり前だが、メニューや設定操作ができる機種はほとんどない。その中でDZ-HS503は編集操作までリモコンでできるよう工夫されていることは特筆に値する。惜しむらくはボタンがみな同じ形状で、指先の感覚だけでは判断できないこと。ボタン配置を含め、もう一段の改良を望みたい。なお、ダビング操作は必ずACアダプターを繋いで行う必要があるので注意したい。
さて、パソコン不要でDVDが作成できるのが本機の大きなメリットだが、当然ながら作成できるのは8cmDVDのみで、一般的な12cmDVDに較べ容量も小さく割高になってしまう。また、DZ-HS503本体で作成できるDVDはメニューなしの、映像本編のみのもの。だが、凝ったDVDを作りたければパソコンを使えばよい。しかもそのためのソフトウエアはあらかじめ同梱されているので追加出費も不要だ(ソフトはWindows用、Macintosh用両方が付属)。
パソコンとDZ-HS503をUSB2.0で繋ぎ、アプリを起動すると、簡単な操作で映像ファイルをパソコン側にコピーしたり、編集、DVD作成などの作業が行える(写真4)。さらに、各チャプターに名前を付けることもできる(写真5)し、メニュー画面を作成することもできる(写真6,7)。ただし、使えるのはあらかじめ用意されたデザインのみで、オリジナルのメニュー画面は作れない。同じDVDを複数枚作成するのも簡単なので、たとえば両方の実家用に孫の運動会ビデオを送るときなどは楽だろう。
撮影機としてしか進歩してこなかったビデオカメラにおいて、編集や複製の機能を大きく充実させ、さらにそれらを簡単に操作できるDZ-HS503は、撮ったら撮りっぱなしで放置されがちだったホームビデオに、見る楽しみ、配る楽しさを取り戻したと言っても決して過言ではない。
(斎賀和彦)
バックナンバー
・第1回…本機の概要をチェック
斎賀和彦 プロフィール
1963年名古屋生まれ、東京都在住。東京ムービー新社で劇場映画「AKIRA」参加後、CF制作会社井出プロダクションで企画演出として多くのコマーシャルフィルムに携わる中で、ノンリニア映像編集の黎明期に立ち会う形となる。「デジタルスケープ」チーフトレーナーを経て、様々な大学、大学院で理論と実践の両面から映像を教える。並行して写真・映像等の企画・制作を行うほか、デジタル編集を中心にビデオ専門誌等に執筆。デジタルハリウッド大学院准教授。
早送り巻き戻しが必須なテープはもちろん、HDDタイプは再生にカメラそのものが必要だし、編集にはパソコンやレコーダーが必須だ。DVDタイプは、カメラからDVDを取り出してDVDプレーヤーに入れればいいので便利だが、1枚当たりの収録時間が短く、また複数のDVDから映像をまとめようとするとお手上げに近い。
ハイブリッドカムはHDDとDVDを両方搭載することで、その問題を解決したと言えよう。
撮影時の収録はHDDとDVDのどちらでも可能だが、前回述べたように大容量HDDのメリットを生かす意味ではどんどんHDDに撮って、必要な部分をDVDにダビングするといった使い方がベストだろう。DVD収録時に比べ少し消費電力が低いので、HDD収録メインの方が有利という面もある。
HDDに収録した映像は、ディスクナビゲーションボタンを押すだけで撮影カット毎にサムネイルが一覧表示される(写真1)。これをカーソルキーで選ぶだけで即座に好きなシーンが再生できるのはHDDなどディスクタイプの大きなアドバンテージだ。DZ-HS503をテレビに繋げば、HDDだけに快適なスピードで動作するプレーヤーとなる。
だが、再生するたびににカメラ本体が必要になってしまうのでは不便。HDDオンリーカメラはここがウイークポイントになってしまうのだが、DZ-HS503はカメラ本体でDVDにコピーできる。この「カメラだけでコピーが作れる」のが、ハイブリッドカムが大ヒットした最大の理由だと感じる。編集が趣味でない限り、わざわざパソコンやレコーダーに取り込まないとコピーも作れないというのはあまりに面倒な話ではないか。
DZ-HS503でのコピー作業は、操作も実に簡単だ。記録可能なDVDを入れ、ダビングボタンを押すだけで、ダビング準備が完了。どのようなダビングを行うかの選択肢(モード)が表示される(写真2)。
HDDの映像すべてをダビングする「まるごと」、好きなシーンだけを選択してダビングする「えらんで」。旧モデルではこの2つだったが、DZ-HS503では大きく機能向上した。過去にDVDにダビングしたクリップをカメラが記憶していて、まだDVDにダビングしていないシーンだけ自動選択する「はじめて」、指定した日の撮影分だけダビングする「ひにちで」モードの追加である。使ってみると、この新モードが実に強力で実用性が高い。「はじめて」はダビング漏れや重複を無くしてくれるし、「ひにちで」は例えば入学式だけのDVDをボタンひとつで作成できるのだ。この快適さはこれまでのビデオカメラが持ち得なかったもの。DZ-HS503最大のポイントと言っても良いだろう。
さらに感心したのが、これらのダビング作業をリモコンから操作できること(写真3)。録画や再生が可能なリモコンが付属するのはいまや当たり前だが、メニューや設定操作ができる機種はほとんどない。その中でDZ-HS503は編集操作までリモコンでできるよう工夫されていることは特筆に値する。惜しむらくはボタンがみな同じ形状で、指先の感覚だけでは判断できないこと。ボタン配置を含め、もう一段の改良を望みたい。なお、ダビング操作は必ずACアダプターを繋いで行う必要があるので注意したい。
さて、パソコン不要でDVDが作成できるのが本機の大きなメリットだが、当然ながら作成できるのは8cmDVDのみで、一般的な12cmDVDに較べ容量も小さく割高になってしまう。また、DZ-HS503本体で作成できるDVDはメニューなしの、映像本編のみのもの。だが、凝ったDVDを作りたければパソコンを使えばよい。しかもそのためのソフトウエアはあらかじめ同梱されているので追加出費も不要だ(ソフトはWindows用、Macintosh用両方が付属)。
パソコンとDZ-HS503をUSB2.0で繋ぎ、アプリを起動すると、簡単な操作で映像ファイルをパソコン側にコピーしたり、編集、DVD作成などの作業が行える(写真4)。さらに、各チャプターに名前を付けることもできる(写真5)し、メニュー画面を作成することもできる(写真6,7)。ただし、使えるのはあらかじめ用意されたデザインのみで、オリジナルのメニュー画面は作れない。同じDVDを複数枚作成するのも簡単なので、たとえば両方の実家用に孫の運動会ビデオを送るときなどは楽だろう。
撮影機としてしか進歩してこなかったビデオカメラにおいて、編集や複製の機能を大きく充実させ、さらにそれらを簡単に操作できるDZ-HS503は、撮ったら撮りっぱなしで放置されがちだったホームビデオに、見る楽しみ、配る楽しさを取り戻したと言っても決して過言ではない。
(斎賀和彦)
バックナンバー
・第1回…本機の概要をチェック
斎賀和彦 プロフィール
1963年名古屋生まれ、東京都在住。東京ムービー新社で劇場映画「AKIRA」参加後、CF制作会社井出プロダクションで企画演出として多くのコマーシャルフィルムに携わる中で、ノンリニア映像編集の黎明期に立ち会う形となる。「デジタルスケープ」チーフトレーナーを経て、様々な大学、大学院で理論と実践の両面から映像を教える。並行して写真・映像等の企画・制作を行うほか、デジタル編集を中心にビデオ専門誌等に執筆。デジタルハリウッド大学院准教授。