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ソニー“BRAVIA Jシリーズ”を鈴木桂水氏が速攻チェック− 高画質・多機能の魅力に迫る

公開日 2007/04/11 16:48
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ソニーの薄型テレビ“BRAVIA”に新たなラインナップとなる「Jシリーズ」が発表された。今回はシリーズのハイエンドモデル「KDL-40J5000」をライターの鈴木桂水氏がテストし、本機に搭載された“モーションフロー”や“アプリキャスト”など話題の機能を検証した。

■ソニーの先進技術を満載した多機能テレビ“BRAVIA Jシリーズ”の魅力に迫る

ソニーの薄型テレビBRAVIAブラビアシリーズにスタンダードモデルのJシリーズが追加された(既報)。Jシリーズの目玉となる機能は、動きの速い映像でブレを軽減できる液晶パネルの120Hz駆動機能「モーションフロー」とグラデーションなどの階調表現も高めた10bitパネルの搭載だ。

パネルの解像度はフルHDではなく1,366×768ドットにとどまるが、映像全体の美しさを高めている。これらの機能はサイズとグレードで搭載機に違いがあるが、全機種に搭載されたネットワーク機能にも注目したい。Jシリーズは全機種がDLNA対応になり、LAN接続した対応機器(テレビ、レコーダー等)を接続することで録画やチューナーを共有できる。新機能の「アプリキャスト」を使えば、インターネットを使ったテレビポータルサービス「アクトビラ」や、Yahoo!オークション、楽天、アマゾンなどの専用サイトを表示可能。新しいテレビの使い方を提案するユニークな構成になっている。今回はJシリーズのハイエンドモデル「KDL-40J5000」を視聴する機会を得たので、その概要と機能について迫ってみることにした。

今回は「120Hz駆動」、「10bitパネル」、「アプリキャスト」、「ルームリンク」のすべてが揃ったJ5000シリーズの40V型「KDL-40J5000」を視聴した

今回の取材はソニー本社のデモルームで行った

操作の基本となるメニュー画面は同社のレコーダーやSCEのゲーム機、PS3やPSPで採用されているクロスメディアバー(XMB)を採用。操作したいことを横軸、コンテンツなどの選択を縦軸に配置するので、多彩な機能を整理して操作できる。ただしこのメニュー表示は高いグラフィックス機能を求めるので、テレビの処理能力では限界がありそうだった。PS3など、同社の他のクロスメディアバー搭載機器ほど滑らかには動かないのがやや気になった。

ゲーム好きにはおなじみのクロスメディアバー表示をJシリーズの全機種で採用。最初はとまどうが、馴れるとキビキビ操作できる

■J5000シリーズ搭載の独自技術“モーションフロー”の効果とは

動画表示機能からチェックをする。液晶テレビが苦手とする動きの速い映像を表示したときのブレを軽減するのがモーションフロー機能だ。原理は秒間60コマのテレビ映像のコマとコマの間に、動きを予測した映像を独自のアルゴリズムから作り、それを差し込む事で滑らかな映像を表示するというものだ。一般的に表示されるコマ数が多いほど映像が滑らかになるので、サッカーや高速で表示されるテロップなどでもブレを軽減した映像表示が可能になる。

デモ表示で確認したところ、ヨコ方向に高速で動く映像だけでなく、斜め方向のブレも抑えているようで、その効果は実感できた。

モーションフローのデモでは、揺れるハンモックの細かな編み目のブレも抑えられていることが確認できた

地図を表示し横方向へ動かす映像でブレ軽減を確認した。テレビのスタッフを表示するテロップよりも少し遅い程度の動きだったが、小さな文字まで確認できた

モーションフローの効果はその強弱を好みに合わせて3段階に調節が可能だ

モーションフローは1秒間24コマの映画までも滑らかに表示できる。この場合は1秒間24コマの映像に間に4コマ分の映像を作り、挿入する。フィルム素材独特のカクカクとした動きを、まるでテレビドラマのように滑らかな映像で表示できる。

映画らしい質感が失われるのが嫌な場合は、映画専用の「シネマモード」も備えている。発色などの調整をソニー・ピクチャーズエンタテインメントと共同で行うことで、劇場で上映される雰囲気を優先した表示が可能だ。『チャーリーとチョコレート工場』のワンシーンを使ったデモでは、絶妙なフィルターワークが醸し出す、ウィリー・ウォンカがいる工場の不思議な雰囲気を再現していた。映画館で上映される雰囲気を楽しむならこのモードがオススメだ。

J5000シリーズの専用リモコン

効果を実感できたシネマモードだが、今回は映画ソフトの著作権保護により残念ながらデモ映像はご紹介できない。モードの選択はJ5000シリーズが採用するリモコンの「シアターボタン」を押して表示を切り替える

「シアター」ボタンを押すことで「HDMIコントロール」も利用できる。「HDMIコントロール」では、HDMI接続に対応したスピーカー内蔵のシアタースタンド「RHT-G800」との連携動作にも対応する

■Jシリーズのインターネット機能を検証してみた

テレビから専用のインターネットサイトにアクセスして情報ページを表示するのがアプリキャスト機能だ。20型から40型までのすべてのJシリーズで利用できる。見たいアプリをクロスメディアバーで選択するとテレビ画面が小さくなり、アプリメニューが起動する。テレビ画面を見ながら、これらのアプリを使って天気予報、占い、ニュースなどが利用でき、テレビとネットの“ながら見”を提案する機能だ。アプリにはインターネット対応テレビ向けのサイト「アクトビラ」のほかに、Yahoo!オークションや楽天などのサイトが用意されている。

インターネット対応テレビ向けのサイト「アクトビラ」に対応するJシリーズ

このアプリキャストは、いわばテレビ版のiモードといった機能だ。その中でも「iチャンネル」に似ていると感じた。NTTドコモのFOMA端末が対応する「iチャンネル」とは、待ち受け画面上に文字ニュースを配信し、興味があるニュースや情報に対しては、iモードサイトを表示して確認できる機能。ニュースや情報の“気づき”を促す機能だ。

「iチャンネル」は待ち受け画面にテロップ式の情報を送るプシュ型のサービス。気になるニュースは端末のボタン操作でインデックスを表示でき、詳細はパケット料の発生する情報サイトで見られる

アプリキャストはインターネットを使ったサービスだが、利用するにはブラビアJシリーズのように対応する端末が必要になる。「アプリ」サイトの作成には専用のページが必要になるところもiモードに似ている。今回の取材時点ではサービスの開始前と言うことで実機を使ったテストはできなかったが、エミュレーション上で動作する「Yahoo!オークション」のアプリキャスト上の動作画面を見せていただいた。残念ながらこれも撮影NGという事だったが、いくつかのできること、できないことがあることがわかった。

アプリキャストは「アプリ」と呼ばれる専用サイトへアクセスして利用する機能。クロスメディアバーから表示したいアプリを選んで選択すると、表示画面に切り替わる

アプリキャストが起動した画面。右側に表示できるアプリが並び、そこから見たいコンテンツを選べば詳しい内容を確認できる

さらに深掘りしたいときはブラウザモードに切替えて一般のインターネットサイトを表示できる

Yahoo!オークションサイトでは、キーワードもしくはランキングによる出品物について入札価格を確認できる。筆者はヤフオク利用者なので、この機能を使ってウォッチリストに登録した製品の入札価格をテレビで確認できるものだと思っていた。しかし現在ではYahoo!のID入力などに対応していないので、個人の情報を表示できない。また落札機能がないので、オークションに参加するには画面上のQRコードを携帯電話に読み込ませて、携帯電話から入札する仕組みになっていた。

そのほかに今回はテストできなかったのだが、Jシリーズは全機種がDLNAに対応したルームリンク機能を備えている。この機能を使えばリビングに設置したレコーダーに録画した番組を書斎のテレビで楽しめたり、書斎のVAIOに録画した番組や音楽をリビングのテレビで楽しめる。すでにDLNA環境が整っていれば、2台目以降のテレビを購入するユーザーにとってメリットの多い機能だろう。

■アプリキャストの成功は魅力的なコンテンツの登場がカギ

ブラビアJシリーズはフルHD搭載機など、画質の頂点を目指すのではなく、普段使いテレビという立ち位置にいる。ただ、この手のスタンダードクラスの薄型テレビが、コスト削減で実用一辺倒に走る中、アプリキャスト、DLNA対応など、ネットワークを使ったテレビの新しい使い方を提案するチャーミングさも備えている。とくにクロスメディアバーとのシームレスな操作性が実に良くて来ており、とても使いやすいと感じた。筆者が実際に使った感じでは、アプリキャストの今後には大きな期待感が持てる。


インターネットへの接続後にはソフトウェアキーボード機能とリモコンを使ってインターネット検索も可能になる
その一方で心配な部分もある。アプリのコンテンツ拡大には、アプリキャスト専用サイトの作成が必須条件になる。これが敷居になりかねないと危惧している。たとえば同社のネットワーク対応のコンパ「ネットジューク」が対応する「エニーミュージック」などは、既にこれと近しい機能を備えている。エニーミュージックの目玉機能はFMで放送中の音楽が画面にリアルタイムで表示され、さらにサイトにアクセスすることで音楽の購入もできることだ。クレジットカードの番号を登録すればパソコンを使わずにコンポだけで音楽配信やCDが購入できる。しかし実際はこの機能に対して曲データを提供する放送局がわずか(東京ではFM東京のみ)なので、いまひとつ盛り上がりに欠けている。システムが便利でも、コンテンツがついてきていないのが残念だ。

そのほかに特定の機器に対するサービスとして、So-netがウォークマン、PSP対応の動画を配信する「P-TV」や、ソニースタイル・ジャパンが運営する「みんなのビデオ屋さん」などもある。筆者はPSP、ウォークマンのどちらも所有してはいるものの、どちらのサービスも興味のあるコンテンツが見つからず、実際に利用するのはまれだ。

船出する前のアプリキャストに接した限り、いままで数々の機器が成功し得なかった「ネットとテレビの共存」に少しだけ近づいたようだ。今回はわずかな時間の中での取材だったが、その素養はあると実感することができた。とはいえこの手の機能、一度使ってつまらないと、そのあといくらバージョンをアップしてもそっぽを向かれることが多い。いかに魅力的なアプリを“時間と質の同時進行による垂直立ち上げ”ができるかが成功のカギだ。

【取材協力】

ソニーマーケティング(株)ディスプレイマーケティング部 ディスプレイMK課 シニアマーケティングマネージャー 久我徳明氏

ソニーマーケティング(株)ディスプレイマーケティング部 ディスプレイMK課 マーケティングマネージャー 小板秀昭氏




鈴木桂水(Keisui Suzuki)
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら

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