話題のソフトを“Wooo”で観る − 第8回『スーパーマン』シリーズ (BD)
この連載「話題のソフトを“Wooo”で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo”薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。DVDソフトに限らず、放送や次世代光ディスクなど、様々なコンテンツをご紹介していく予定です。第8回はBlu-ray Discソフト『スーパーマン』シリーズをお届けします。
2002年に『スパイダーマン』が公開され、週刊誌に載った映画評論家のO氏(というか女史というか…)の評は「ヒロインの女優が考えられないくらいブス」というものだった。
映画を見てみると確かに美人とはいえず、その女優キルスティン・ダンストが『インタビュー・ウィズ・バンパイア』の名子役だと分かり、今野雄二さんのお宅に伺った折に水を向けてみたら、「彼女は演技派女優として、これからもやっていくでしょう」といつものようにニコニコととぼけている。
結局、筆者はこう結論付けた。『スパイダーマン』の主人公は、労働者階級の家庭に育ったあまりパッとしない努力型の若者で、“ガール・ネクスト・ドア”で幼馴染のヒロインも同じ世界の住人である。『スパイダーマン』は「凡」なる世界を描くヒーロー映画で、偶然と呼ぶにもバカバカしい運命が生み出すミラクルと歪みを描いている。だから、ヒロインも神から美貌を授けられたようなハリウッドビューティではダメで、いなたい町娘の味のあるオンナでないといけないのである。
そんなことを思い出したのは他でもない。『スーパーマン』シリーズがブルーレイディスクで発売され、それを日立の最新のフルハイビジョンプラズマテレビ「P50-XR01」で見たからだ。スーパーマンが惚れるオンナも、やっぱりブスなのである。
『スーパーマン』の主人公は、クリプトン惑星最高の知性であるジョー=エルの一人息子。滅亡寸前に地球へと脱出、アメリカの人のよい農夫夫妻を養い親にしながらも、父の残留意思によって最高の知性と能力を授けられたスーパーヒーロー中のエリートで、クモに噛まれて突然変異を起こした下町のお兄ちゃんとは育ちが違う。それなのに、オンナの趣味がやっぱりヘン。まあ確かに、パワーも人気もあって、その上お相手がゴージャス美女では観客が白けてしまうし、マーゴット・キダー演じるアグレッシブで気取りのないアメリカ女の新聞記者、ロイス・レーンは、地球の垢に汚れていない純朴なスーパーマンと好一対ということもある。偉丈夫のスーパーマンとフェロモン全開の相手役では、ちょっと鬱陶しいし…。
ヒロインの造型から話を始めたが、1978年に第一作がスタートした映画版『スーパーマン』は、かように後代のスーパーヒーロー映画の手本になりながら、そのほのぼのとした純朴な味わいは、現代の同ジャンル作品とは隔世の感がある。その理由は、思うに『スーパーマン』が製作された時代のアメリカの世相にある。
時代背景がスーパーマンの明るい主人公像を要請した
1978年は冷戦末期の民主党カーター政権の時代、アメリカが戦後最も自信喪失していた時代だった。読者の皆さんは「デタント」(緊張緩和)という言葉をご存知だろうか。
世界中のデタントの掛け声とは裏腹にソビエトがアフガニスタンに侵攻し、核兵器の包括的削減交渉でもアメリカは風下に立っていた。屈辱外交を強いられた時代である。経済も、日本や西ドイツの急伸長に脅かされ、工業製品は競争力を失い停滞を続け、失業問題が暗雲のようにアメリカ社会を覆っていた。
こうした暗い世相のさ中にあって、旧来の特殊撮影に変わって銀幕に登場したばかりのSFXの魔法で復活したスーパーマンは、ダークサイドを微塵も感じさせない、明るく純朴で心優しく力強いものでなければならなかった。主人公はアメリカを救うばかりでなく世界のすべてにとっての善意でなければならなかった。これが映画『スーパーマン』の基調をなす世界観だったのである。逆にこの時代の世相の暗さを舞台に人間の深淵を描いた映画が、ジョナサン・デミの『羊たちの沈黙』(1990)である。
ジョン・ウィリアムスによる『スター・ウォーズ』の二番煎じ、といってしまえばそれまでの勇壮な音楽をまとってカムバックしたスーパーマンは世界中で好評を博し、3年後に第二作が公開され(ただし、大半の撮影は第一作と同時進行)、1987年までに全4作が製作される人気シリーズになった。ブルーレイディスクでレストアされた『スーパーマン』のI、IIに、ついしみじみと見入ってしまうのは、映画の温かく優しいトーンのせいだけでなく、主役を演じたクリストファー・リーブのその後の運命を私たちが知っているからである。
「鋼鉄の男」を凛々しく演じた俳優が実人生で病に勝つことが出来す世を去り、しかし、彼の演じたヒーローは映像の中で若々しい男神のように力強く生き続ける、その巧まざる円環が胸を打つ。ダークサイドの華ばかりが強調されるきらいのある昨今のスーパーヒーロー映画に食傷したら、原点である『スーパーマン』シリーズの純朴な味わいがきっとオアシスのように癒してくれる。ディスプレイが日立のフルハイビジョンプラズマテレビであれば、その感動と味わいはさらに深く豊かなものになるだろう。
なお今回、ワーナー・ホーム・ビデオから最近作『スーパーマン・リターンズ』(2006)のブルーレイディスクも同時に発売された。『X-MEN』のブライアン・シンガーが監督しCG時代に二度目の復活を果たした新シリーズ第一作である。
こちらは5年間の故郷への旅の後に地球へ帰ってきた、さまよい人のように懊悩するヒーローが主人公の今日的テイストの映画である。スーパーマン映画の最大の魅力は「空を飛ぶ」という人間の願望を描いてみせることにあるが、何より、新スーパーマン役者、ブランドン・ラウスが競泳選手だった水中感覚を生かしたという飛行演技が素晴らしい。原作コミックが描かれた1940年代、それが映画になった1970年代、そして現代と、スーパーヒーローが活躍する各時代を混淆したユニークな世界観による美術と、『X‐MEN』譲りのサイキックで幻想的な映像美が魅力的だ。余計なお世話のようだが、ロイス役のケイト・ボスワースはかなりの美人女優である(マーゴット・キッダーとキルスティン・ダンストのファンにはゴメンナサイ)。
この新作はスーパーマンがいない間に起こってしまった(?) 9・11事件でアメリカが受けた喪失感を織り込んでいて、スーパーマンは宿敵の企みで窮地に落ち一度は生死をさまようのだが、ロイスやその夫、ニューヨーク市民たちの思いによって甦る。『自分は必要とされていないのではないか』という疎外感を味わう主人公の周囲に一体感が生まれていくという新趣向である(ネタバレになって恐縮だが)。ロイスはスーパーマンの息子をひそかに産み育てていく女というシリアスな設定なので、映画の中で浮き上がってはいけなかったのだろう。こちらも悪くない出来、1978年版と対照的に現代的でシャープな画質(VC1)をハイビジョンでご覧いただきたい。
“Wooo”最新フルHDプラズマテレビ「P50-XR01」で視聴
筆者自宅の二階仕事場に日立のフルハイビジョンプラズマテレビ「P50-XR01」(製品データベース)が入った。「フルHD ALISパネル」(水平1,920×垂直1,080)は、1100cd/m2の高輝度と10,000:1のコントラスト(暗所)を実現、周辺を固める映像回路も1080p入力に対応した“Picture Master Full HD”に発展した、世界第一級のフルハイビジョンプラズマテレビである。テレビでは世界で初めてiVDR-Sを搭載した点も特筆したい。前回まで視聴に使った「W42P-HR9000」には250GBのHDDが搭載されていたが、01系は変わって著作権保護技術SAFIAに対応したHDD“iVDR-Secure Built-in”(250GB)を内蔵し、着脱可能なHDD“iIVDR-S”に対応した「iVポケット」を本体に設けた。内蔵HDDに録画した番組は、スロットに挿入したカートリッジタイプのiVDR-Secureに本体内でムーブすることが出来る。
他の方式でデジタルムーブする場合に比べて高速であることも特長だ。i.LINKを使うと等速、ブルーレイの書き込みは2倍速だが、iVDRは約4倍である。地デジならレートが低いので約6倍、HDDの容量を仮想的に2倍にする日立のテレビ独自の機能“XCodeHD”で録画した地デジの番組をムーブする場合、実に約9倍速になる。他人のiVDRに入れることもできるし、テレビに入力中の、例えばカメラ撮りした映像やビデオテープなどアナログ映像をを録画することもできる。ただし、セキュア非対応のサードパーティ製iVDRを挿入した場合、コピーワンスのデジタル番組は録れない。また、コンテンツの複製はできない。リーディングメーカー日立の50V型フルハイビジョンとして、唯一無比の機能の搭載という点で、今最も注目されているテレビである。
30年前の映像がハイビジョンによって新たな生命を吹き込まれた
日立「P50-XR01」で『スーパーマン』、『スーパーマンII(冒険編)』と『スーパーマン リターンズ』を見た。前二作と後者では製作年代が違いトーンも違う。また、『スーパーマンII冒険編』は、製作者サルキンドとの対立で第一作の監督リチャード・ドナーが途中降板し、ビートルズ映画や『三銃士』のリチャード・レスターが引継いで完成させ公開したが、今回のディレクターズカットはドナーが当初のアイデア通りに復元したバージョンである。未使用カットからスクリーンテストのフィルムまで引っ張り出して作り直したため画質にムラがあり、今回は第一作の視聴印象と使いこなしを紹介する。
1978年製作の本作は、ビデオグラムというメディアの出始めの時代で、現代のハリウッド映画のように家庭という新しい市場を重視してはいなかった。したがって本作の映像のトーンは、テレビでの鑑賞を考慮して変わっていった現代のエンターテインメント映画とは画質をかなり異にしている。
階調表現はなだらかである。惑星クリプトンを脱出したカル=エルがケント家の養子に迎えられ、のどかな少年時代を送るアメリカの田園風景はとても美しい。日立のプラズマテレビはフルハイビジョンを達成する前から隅々までフォーカスが行き届いた鮮鋭感あふれる映像に魅力があったが、P50-XR01でフルハイビジョンらしい落ち着きとスムースネスが加わった。この新しい持ち味が『スーパーマン』の良質なフィルムテイストとなめらかなコントラストを上手に引き出した。日立のテレビらしい輝度の余裕を活かした映像の輝きは変わらず、50V型の大画面とあいまって、シネスコの大作にふさわしい雄大な映像美を味あわせ、30年近くも前の映像がハイビジョンという新しい生命を得て新たな感動を呼ぶ。今回、P50-XR01を下記のように設定し、『スーパーマン』全編を感慨深く時を忘れて楽しんで見ることができた。
映像モード:シネマティック
明るさ:-3
黒レベル:+2
色の濃さ:-2
色合い:0
画質:-1
色温度:低
ディテール:切
コントラスト:リニア
黒補正:切
LTI:弱
CTI:切
YNR:切
CNR:切
色温度調節:する
MPEG NR:切
映像クリエーション:なめらかシネマ
デジタルY/C:入
色再現:リアル
しかし、先に挙げたクラーク・ケントことカル=エルの少年時代のシーンはやや赤みが強い。あえて調整するならば、色合いを+3とするといい。
P50-XR01には、新たに映像クリエーション機能が搭載された。DVDやハイビジョンディスクなどの入力ソースから24コマで収められた映画ソフトを検出し、動作の切り替えを選べる機能である。通常の24-60変換(2-3プルダウン)を行うのが「フィルムシアター」、動きを予測して中間的なフレームを生成して挿入する「なめらかシネマ」、「切」ではビデオ映像と同等の60コマのまま処理を行う。
今回スーパーマンの飛行シーンやその他の演技場面で「なめらかシネマ」と「フィルムシアター」を切り替えて視聴したが、自然でストレスなく見られるという点で一長一短であった。前者の方が被写体の動きの連続的なつながりとなめらかさで上だが、輪郭の処理で不得手な場面があり、後者は前者と比較すると動きがぎこちなく見えるシーンがある。この新機能については、今後さまざまなタイプのソフトで検証していきたい。
(大橋伸太郎)
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。
バックナンバー
・第1回『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』
・第2回『アンダーワールド2 エボリューション』
・第3回『ダ・ヴィンチ・コード』
・第4回『イノセンス』 (Blu-ray Disc)
・第5回『X-MEN:ファイナル デシジョン』 (Blu-ray Disc)
・第6回『16ブロック』 (Blu-ray Disc)
・第7回『イルマーレ』 (Blu-ray Disc)
2002年に『スパイダーマン』が公開され、週刊誌に載った映画評論家のO氏(というか女史というか…)の評は「ヒロインの女優が考えられないくらいブス」というものだった。
映画を見てみると確かに美人とはいえず、その女優キルスティン・ダンストが『インタビュー・ウィズ・バンパイア』の名子役だと分かり、今野雄二さんのお宅に伺った折に水を向けてみたら、「彼女は演技派女優として、これからもやっていくでしょう」といつものようにニコニコととぼけている。
結局、筆者はこう結論付けた。『スパイダーマン』の主人公は、労働者階級の家庭に育ったあまりパッとしない努力型の若者で、“ガール・ネクスト・ドア”で幼馴染のヒロインも同じ世界の住人である。『スパイダーマン』は「凡」なる世界を描くヒーロー映画で、偶然と呼ぶにもバカバカしい運命が生み出すミラクルと歪みを描いている。だから、ヒロインも神から美貌を授けられたようなハリウッドビューティではダメで、いなたい町娘の味のあるオンナでないといけないのである。
『スーパーマン』の主人公は、クリプトン惑星最高の知性であるジョー=エルの一人息子。滅亡寸前に地球へと脱出、アメリカの人のよい農夫夫妻を養い親にしながらも、父の残留意思によって最高の知性と能力を授けられたスーパーヒーロー中のエリートで、クモに噛まれて突然変異を起こした下町のお兄ちゃんとは育ちが違う。それなのに、オンナの趣味がやっぱりヘン。まあ確かに、パワーも人気もあって、その上お相手がゴージャス美女では観客が白けてしまうし、マーゴット・キダー演じるアグレッシブで気取りのないアメリカ女の新聞記者、ロイス・レーンは、地球の垢に汚れていない純朴なスーパーマンと好一対ということもある。偉丈夫のスーパーマンとフェロモン全開の相手役では、ちょっと鬱陶しいし…。
ヒロインの造型から話を始めたが、1978年に第一作がスタートした映画版『スーパーマン』は、かように後代のスーパーヒーロー映画の手本になりながら、そのほのぼのとした純朴な味わいは、現代の同ジャンル作品とは隔世の感がある。その理由は、思うに『スーパーマン』が製作された時代のアメリカの世相にある。
時代背景がスーパーマンの明るい主人公像を要請した
1978年は冷戦末期の民主党カーター政権の時代、アメリカが戦後最も自信喪失していた時代だった。読者の皆さんは「デタント」(緊張緩和)という言葉をご存知だろうか。
世界中のデタントの掛け声とは裏腹にソビエトがアフガニスタンに侵攻し、核兵器の包括的削減交渉でもアメリカは風下に立っていた。屈辱外交を強いられた時代である。経済も、日本や西ドイツの急伸長に脅かされ、工業製品は競争力を失い停滞を続け、失業問題が暗雲のようにアメリカ社会を覆っていた。
こうした暗い世相のさ中にあって、旧来の特殊撮影に変わって銀幕に登場したばかりのSFXの魔法で復活したスーパーマンは、ダークサイドを微塵も感じさせない、明るく純朴で心優しく力強いものでなければならなかった。主人公はアメリカを救うばかりでなく世界のすべてにとっての善意でなければならなかった。これが映画『スーパーマン』の基調をなす世界観だったのである。逆にこの時代の世相の暗さを舞台に人間の深淵を描いた映画が、ジョナサン・デミの『羊たちの沈黙』(1990)である。
ジョン・ウィリアムスによる『スター・ウォーズ』の二番煎じ、といってしまえばそれまでの勇壮な音楽をまとってカムバックしたスーパーマンは世界中で好評を博し、3年後に第二作が公開され(ただし、大半の撮影は第一作と同時進行)、1987年までに全4作が製作される人気シリーズになった。ブルーレイディスクでレストアされた『スーパーマン』のI、IIに、ついしみじみと見入ってしまうのは、映画の温かく優しいトーンのせいだけでなく、主役を演じたクリストファー・リーブのその後の運命を私たちが知っているからである。
「鋼鉄の男」を凛々しく演じた俳優が実人生で病に勝つことが出来す世を去り、しかし、彼の演じたヒーローは映像の中で若々しい男神のように力強く生き続ける、その巧まざる円環が胸を打つ。ダークサイドの華ばかりが強調されるきらいのある昨今のスーパーヒーロー映画に食傷したら、原点である『スーパーマン』シリーズの純朴な味わいがきっとオアシスのように癒してくれる。ディスプレイが日立のフルハイビジョンプラズマテレビであれば、その感動と味わいはさらに深く豊かなものになるだろう。
なお今回、ワーナー・ホーム・ビデオから最近作『スーパーマン・リターンズ』(2006)のブルーレイディスクも同時に発売された。『X-MEN』のブライアン・シンガーが監督しCG時代に二度目の復活を果たした新シリーズ第一作である。
こちらは5年間の故郷への旅の後に地球へ帰ってきた、さまよい人のように懊悩するヒーローが主人公の今日的テイストの映画である。スーパーマン映画の最大の魅力は「空を飛ぶ」という人間の願望を描いてみせることにあるが、何より、新スーパーマン役者、ブランドン・ラウスが競泳選手だった水中感覚を生かしたという飛行演技が素晴らしい。原作コミックが描かれた1940年代、それが映画になった1970年代、そして現代と、スーパーヒーローが活躍する各時代を混淆したユニークな世界観による美術と、『X‐MEN』譲りのサイキックで幻想的な映像美が魅力的だ。余計なお世話のようだが、ロイス役のケイト・ボスワースはかなりの美人女優である(マーゴット・キッダーとキルスティン・ダンストのファンにはゴメンナサイ)。
この新作はスーパーマンがいない間に起こってしまった(?) 9・11事件でアメリカが受けた喪失感を織り込んでいて、スーパーマンは宿敵の企みで窮地に落ち一度は生死をさまようのだが、ロイスやその夫、ニューヨーク市民たちの思いによって甦る。『自分は必要とされていないのではないか』という疎外感を味わう主人公の周囲に一体感が生まれていくという新趣向である(ネタバレになって恐縮だが)。ロイスはスーパーマンの息子をひそかに産み育てていく女というシリアスな設定なので、映画の中で浮き上がってはいけなかったのだろう。こちらも悪くない出来、1978年版と対照的に現代的でシャープな画質(VC1)をハイビジョンでご覧いただきたい。
“Wooo”最新フルHDプラズマテレビ「P50-XR01」で視聴
筆者自宅の二階仕事場に日立のフルハイビジョンプラズマテレビ「P50-XR01」(製品データベース)が入った。「フルHD ALISパネル」(水平1,920×垂直1,080)は、1100cd/m2の高輝度と10,000:1のコントラスト(暗所)を実現、周辺を固める映像回路も1080p入力に対応した“Picture Master Full HD”に発展した、世界第一級のフルハイビジョンプラズマテレビである。テレビでは世界で初めてiVDR-Sを搭載した点も特筆したい。前回まで視聴に使った「W42P-HR9000」には250GBのHDDが搭載されていたが、01系は変わって著作権保護技術SAFIAに対応したHDD“iVDR-Secure Built-in”(250GB)を内蔵し、着脱可能なHDD“iIVDR-S”に対応した「iVポケット」を本体に設けた。内蔵HDDに録画した番組は、スロットに挿入したカートリッジタイプのiVDR-Secureに本体内でムーブすることが出来る。
他の方式でデジタルムーブする場合に比べて高速であることも特長だ。i.LINKを使うと等速、ブルーレイの書き込みは2倍速だが、iVDRは約4倍である。地デジならレートが低いので約6倍、HDDの容量を仮想的に2倍にする日立のテレビ独自の機能“XCodeHD”で録画した地デジの番組をムーブする場合、実に約9倍速になる。他人のiVDRに入れることもできるし、テレビに入力中の、例えばカメラ撮りした映像やビデオテープなどアナログ映像をを録画することもできる。ただし、セキュア非対応のサードパーティ製iVDRを挿入した場合、コピーワンスのデジタル番組は録れない。また、コンテンツの複製はできない。リーディングメーカー日立の50V型フルハイビジョンとして、唯一無比の機能の搭載という点で、今最も注目されているテレビである。
30年前の映像がハイビジョンによって新たな生命を吹き込まれた
日立「P50-XR01」で『スーパーマン』、『スーパーマンII(冒険編)』と『スーパーマン リターンズ』を見た。前二作と後者では製作年代が違いトーンも違う。また、『スーパーマンII冒険編』は、製作者サルキンドとの対立で第一作の監督リチャード・ドナーが途中降板し、ビートルズ映画や『三銃士』のリチャード・レスターが引継いで完成させ公開したが、今回のディレクターズカットはドナーが当初のアイデア通りに復元したバージョンである。未使用カットからスクリーンテストのフィルムまで引っ張り出して作り直したため画質にムラがあり、今回は第一作の視聴印象と使いこなしを紹介する。
1978年製作の本作は、ビデオグラムというメディアの出始めの時代で、現代のハリウッド映画のように家庭という新しい市場を重視してはいなかった。したがって本作の映像のトーンは、テレビでの鑑賞を考慮して変わっていった現代のエンターテインメント映画とは画質をかなり異にしている。
階調表現はなだらかである。惑星クリプトンを脱出したカル=エルがケント家の養子に迎えられ、のどかな少年時代を送るアメリカの田園風景はとても美しい。日立のプラズマテレビはフルハイビジョンを達成する前から隅々までフォーカスが行き届いた鮮鋭感あふれる映像に魅力があったが、P50-XR01でフルハイビジョンらしい落ち着きとスムースネスが加わった。この新しい持ち味が『スーパーマン』の良質なフィルムテイストとなめらかなコントラストを上手に引き出した。日立のテレビらしい輝度の余裕を活かした映像の輝きは変わらず、50V型の大画面とあいまって、シネスコの大作にふさわしい雄大な映像美を味あわせ、30年近くも前の映像がハイビジョンという新しい生命を得て新たな感動を呼ぶ。今回、P50-XR01を下記のように設定し、『スーパーマン』全編を感慨深く時を忘れて楽しんで見ることができた。
映像モード:シネマティック
明るさ:-3
黒レベル:+2
色の濃さ:-2
色合い:0
画質:-1
色温度:低
ディテール:切
コントラスト:リニア
黒補正:切
LTI:弱
CTI:切
YNR:切
CNR:切
色温度調節:する
MPEG NR:切
映像クリエーション:なめらかシネマ
デジタルY/C:入
色再現:リアル
しかし、先に挙げたクラーク・ケントことカル=エルの少年時代のシーンはやや赤みが強い。あえて調整するならば、色合いを+3とするといい。
P50-XR01には、新たに映像クリエーション機能が搭載された。DVDやハイビジョンディスクなどの入力ソースから24コマで収められた映画ソフトを検出し、動作の切り替えを選べる機能である。通常の24-60変換(2-3プルダウン)を行うのが「フィルムシアター」、動きを予測して中間的なフレームを生成して挿入する「なめらかシネマ」、「切」ではビデオ映像と同等の60コマのまま処理を行う。
(大橋伸太郎)
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。
バックナンバー
・第1回『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』
・第2回『アンダーワールド2 エボリューション』
・第3回『ダ・ヴィンチ・コード』
・第4回『イノセンス』 (Blu-ray Disc)
・第5回『X-MEN:ファイナル デシジョン』 (Blu-ray Disc)
・第6回『16ブロック』 (Blu-ray Disc)
・第7回『イルマーレ』 (Blu-ray Disc)