HD映像無線伝送方式「WirelessHD」の実用化に向けた新技術を米SiBEAMが発表
米SiBEAM,Inc(サイビーム)は、60GHz帯を利用した無線伝送技術「OmniLink60」を開発し、同技術を導入したチップセットの製品化を進めていることを発表した。
SiBEAMは2004年12月に設立された、無線半導体ソリューションを扱うベンチャー企業で、シリコンイメージ社の元ゼネラルマネージャー、ジョン・E・レモンチェック氏が社長兼CEOを務める。2006年秋に、松下電器、ソニー、東芝、NEC、サムスン、LG電子とともに「WirelessHDコンソーシアム」を設立し、AV機器間の大容量・高速無線伝送方式「WirelessHD」の技術開発を進めている。
本日同社は都内で記者会見を開催した。会見には社長兼CEOのレモンチェック氏が出席し、同技術の概要と今後の展開について説明を行った。
今回発表したOmniLink60は、スタンダードCMOSチップセットで60GHz帯の送受信を実現する技術。前述のWirelessHDに利用することが可能で、ハイビジョン映像をはじめとする高品位コンテンツの非圧縮伝送が可能となる。
「WirelessHDはメディア機器の接続に焦点を当てた規格で、ハイビジョン映像や音声信号を、再生機からディスプレイに非圧縮で伝送することができる。複数機器によるネットワークを構築することができ、著作権保護にも対応する。仕様に準拠していれば、ソニーやパナソニックといった違うメーカー同士の製品でも互換性が保たれるのが大きな特徴だ」と同氏は語る。
現行では、UWBや802.11nといった方式が高速、大容量を実現している。同氏は「これらの方式には利用可能帯域幅に制限があったり、十分なスピードが得られないといった欠点がある。WirelessHDは、7GHzという広い帯域幅を用意しているほか、最大25,000Mbpsという高いローデータレートを実現している。また、CMOSに実装することで、民生機器でも搭載できる価格にまで下げることができた」と説明し、優位性をアピールした。
また、本技術の最大の特長といえるのが「見通し外」での接続性。送信機と受信機の間に障害物がある場合でも、信号の送信を中断することなく接続を保つ「ビームステアリング技術」が盛り込まれている。
このビームステアリングでは、マイクロアレイアンテナ技術などを用いて信号源から受信装置までの最適経路を動的に確立することが可能。アンテナが経路内で人間などの障害物による信号の遮断を検知した場合に、自動的に周辺を再スキャンして新たに最適な経路を見つけ出し、ビームの方向を再調整することができる。
発表会では、家庭内でWirelessHDのネットワークを組んだ様子をデモ映像で紹介した。デモではまず、ネットワークの中心となるディスプレイが部屋の中をスキャンし、WirelessHD対応機器を検知。その後、機器同士で相互の情報を取得しあう。再生機器をプレイすると映像信号をディスプレイが受信して表示するといった流れだ。また、対応機器が新たに部屋に持ち込まれると、その機器は自動的にネットワークに組み込まれる。さらに、伝送経路上を人が横切った際にビームステアリングが働き、天井や壁を反射させる伝送経路に変更される様子が紹介された。
なお、WirelessHDの最終的なスペックはこの夏までに確定する予定だという。
発表会で行われた質疑応答の主な内容は以下の通り。
Q.WirelessHDはオープンな規格というが、それはコンソーシアム内でオープンということか?
A.コンソーシアム内でオープンということ。入会すれば平等な対応ができる。
Q.チップセットとして提供開始される時期と価格は?
A.今回はあくまでテクノロジーの発表。その点は向こう3〜4ヶ月で発表できる。CMOSを採用していることから安価で提供できる。
Q.WirelessHDは国際標準規格か、民間による規格か?
A.民間による標準規格。国際標準に比べ、素早く動けるのがメリットだ。IEEEなどの協力は受けている。Bluetoothは同じようなスタートを切ったが、最終的には国際規格になった。
Q.同チップセットを内蔵にするのではなく、外付けとして既存の製品で利用することは可能か?
A.可能だ。アダプターというかたちで実現できる。
Q.ハイパワーであることを強調しているが、安全性は確保されているか?
A.無線に関しては1990年代から各種実験が行われており、高帯域の方が人体への影響がより少ないという結果が出ている。
(Phile-web編集部)
SiBEAMは2004年12月に設立された、無線半導体ソリューションを扱うベンチャー企業で、シリコンイメージ社の元ゼネラルマネージャー、ジョン・E・レモンチェック氏が社長兼CEOを務める。2006年秋に、松下電器、ソニー、東芝、NEC、サムスン、LG電子とともに「WirelessHDコンソーシアム」を設立し、AV機器間の大容量・高速無線伝送方式「WirelessHD」の技術開発を進めている。
本日同社は都内で記者会見を開催した。会見には社長兼CEOのレモンチェック氏が出席し、同技術の概要と今後の展開について説明を行った。
今回発表したOmniLink60は、スタンダードCMOSチップセットで60GHz帯の送受信を実現する技術。前述のWirelessHDに利用することが可能で、ハイビジョン映像をはじめとする高品位コンテンツの非圧縮伝送が可能となる。
「WirelessHDはメディア機器の接続に焦点を当てた規格で、ハイビジョン映像や音声信号を、再生機からディスプレイに非圧縮で伝送することができる。複数機器によるネットワークを構築することができ、著作権保護にも対応する。仕様に準拠していれば、ソニーやパナソニックといった違うメーカー同士の製品でも互換性が保たれるのが大きな特徴だ」と同氏は語る。
現行では、UWBや802.11nといった方式が高速、大容量を実現している。同氏は「これらの方式には利用可能帯域幅に制限があったり、十分なスピードが得られないといった欠点がある。WirelessHDは、7GHzという広い帯域幅を用意しているほか、最大25,000Mbpsという高いローデータレートを実現している。また、CMOSに実装することで、民生機器でも搭載できる価格にまで下げることができた」と説明し、優位性をアピールした。
また、本技術の最大の特長といえるのが「見通し外」での接続性。送信機と受信機の間に障害物がある場合でも、信号の送信を中断することなく接続を保つ「ビームステアリング技術」が盛り込まれている。
このビームステアリングでは、マイクロアレイアンテナ技術などを用いて信号源から受信装置までの最適経路を動的に確立することが可能。アンテナが経路内で人間などの障害物による信号の遮断を検知した場合に、自動的に周辺を再スキャンして新たに最適な経路を見つけ出し、ビームの方向を再調整することができる。
発表会では、家庭内でWirelessHDのネットワークを組んだ様子をデモ映像で紹介した。デモではまず、ネットワークの中心となるディスプレイが部屋の中をスキャンし、WirelessHD対応機器を検知。その後、機器同士で相互の情報を取得しあう。再生機器をプレイすると映像信号をディスプレイが受信して表示するといった流れだ。また、対応機器が新たに部屋に持ち込まれると、その機器は自動的にネットワークに組み込まれる。さらに、伝送経路上を人が横切った際にビームステアリングが働き、天井や壁を反射させる伝送経路に変更される様子が紹介された。
なお、WirelessHDの最終的なスペックはこの夏までに確定する予定だという。
発表会で行われた質疑応答の主な内容は以下の通り。
Q.WirelessHDはオープンな規格というが、それはコンソーシアム内でオープンということか?
A.コンソーシアム内でオープンということ。入会すれば平等な対応ができる。
Q.チップセットとして提供開始される時期と価格は?
A.今回はあくまでテクノロジーの発表。その点は向こう3〜4ヶ月で発表できる。CMOSを採用していることから安価で提供できる。
Q.WirelessHDは国際標準規格か、民間による規格か?
A.民間による標準規格。国際標準に比べ、素早く動けるのがメリットだ。IEEEなどの協力は受けている。Bluetoothは同じようなスタートを切ったが、最終的には国際規格になった。
Q.同チップセットを内蔵にするのではなく、外付けとして既存の製品で利用することは可能か?
A.可能だ。アダプターというかたちで実現できる。
Q.ハイパワーであることを強調しているが、安全性は確保されているか?
A.無線に関しては1990年代から各種実験が行われており、高帯域の方が人体への影響がより少ないという結果が出ている。
(Phile-web編集部)