<山之内正のIFA2007レポート(3)>“スサノオ”SC-LX90はAVアンプの次元を超えるスケール感
ディスプレイを中心に映像機器の展示が主役を占めるIFAの会場で、画と音の両方で中身の濃い展示を展開したメーカーの代表がパイオニアである。今年の同社ブースはレイアウトや配色を工夫して黒基調のモノトーンに統一し、色鮮やかな他のブースよりも逆に目立っていたのが面白い。
この演出はいうまでもなく新しいプラズマテレビ「KURO」シリーズの黒表現をアピールすることが狙いで、画面に映し出す映像も強いインパクトのあるモノクローム画像で統一した。その狙いは見事に成功していて、たとえば壁面に並んだ複数のPDPのアレイに黒が一斉に映し出された瞬間など、ハッとするような新鮮なビジュアル効果を作り出していた。
艶のあるブラックボディでプレミアム感を漂わせているのはディスプレイだけではない。日本でも発表済みのBDプレーヤーやAVアンプの上位モデルもすべて黒で統一され、スピーカーもブラックモデルを揃えるなど、なかなか気合いが入っている。
その黒の美しさとマッシブな筐体でひときわ存在感を放っていたのが、AVアンプの新世代フラグシップモデルのSC-LX90である。各社の新世代AVアンプはHDMI1.3a対応を機に大幅なリファインを試みているが、その生まれ変わり方が最も大胆なのが、このSC-LX90であることは間違いない。
型名の前半がサウンドコントローラーを意味するSCに生まれ変わっていることが、その変化の大きさを物語っている。かつてパイオニアのアンプにSCの型名がついていたのは1960年代にさかのぼるという。同社の原点を意識した命名なのである。
既存モデルとの比較では、コンセプトが一新され、パワー素子が変わり、コンストラクションも大幅に変更された。もちろんMCACCやエアスタジオとの共同作業などは継承しているが、アンプとしての基本構成は完全にリファインされたとみるべきだろう。
出力素子にICEpowerを採用したことが最大の話題を呼びそうだが、これは同社設計陣の弁ではアナログからデジタルに大きく舵を切ったというよりも、数ある出力デバイスのなかから、今回のコンセプトと動作条件に合致するデバイスを選び抜いた結果、ICEpowerにたどり着いたというのが実情のようだ。そうはいってもICEpower社との2年間にわたる共同作業はAVアンプへの搭載を前提とした独立プロジェクトだったというから、ICEpowerの導入を決めたのがかなり早い時期だったことは間違いなさそうだ。
実際のところ、全チャンネル同時駆動時で計1400W(定格)という異例の大出力をこの筐体サイズで実現するためには、ICEpowerは最良の選択だと思う。なお、パワーアンプ部は本体下部約1/3のブロックに集約されており、サイドの放熱孔を介して冷却される。既存の出力素子でこの離れ業はできない。計10チャンネルに及ぶパワーアンプは自在にアサインできるので、280W×5チャンネルのアンプとして大型スピーカーを駆動させることも可能だ。
ブース内の視聴室で聴いた再生音は、端的に言って一体型AVアンプの次元を超えるスケール感をそなえた超弩級の音である。力強い低音と瞬発力をベースにハイスピードな音が次々に繰り出され、聴き手を爽快な気分にさせる。HDオーディオのメリットの一つは広大なダイナミックレンジにあるが、本機の音はそのレンジ感を余すところなく再現してくるのである。音楽と台詞や効果音が重層的に重なったときの分解能の高さも、やはりセパレートアンプでなければ実現できないレベルに到達しているし、S/Nの良さも際立っていた。試作機レベルでこれだけの水準に達しているのだから、完成時にどこまで表現力を高めてくるのか、非常に楽しみである。
(山之内 正)
[IFA2007REPORT]
この演出はいうまでもなく新しいプラズマテレビ「KURO」シリーズの黒表現をアピールすることが狙いで、画面に映し出す映像も強いインパクトのあるモノクローム画像で統一した。その狙いは見事に成功していて、たとえば壁面に並んだ複数のPDPのアレイに黒が一斉に映し出された瞬間など、ハッとするような新鮮なビジュアル効果を作り出していた。
艶のあるブラックボディでプレミアム感を漂わせているのはディスプレイだけではない。日本でも発表済みのBDプレーヤーやAVアンプの上位モデルもすべて黒で統一され、スピーカーもブラックモデルを揃えるなど、なかなか気合いが入っている。
その黒の美しさとマッシブな筐体でひときわ存在感を放っていたのが、AVアンプの新世代フラグシップモデルのSC-LX90である。各社の新世代AVアンプはHDMI1.3a対応を機に大幅なリファインを試みているが、その生まれ変わり方が最も大胆なのが、このSC-LX90であることは間違いない。
型名の前半がサウンドコントローラーを意味するSCに生まれ変わっていることが、その変化の大きさを物語っている。かつてパイオニアのアンプにSCの型名がついていたのは1960年代にさかのぼるという。同社の原点を意識した命名なのである。
既存モデルとの比較では、コンセプトが一新され、パワー素子が変わり、コンストラクションも大幅に変更された。もちろんMCACCやエアスタジオとの共同作業などは継承しているが、アンプとしての基本構成は完全にリファインされたとみるべきだろう。
出力素子にICEpowerを採用したことが最大の話題を呼びそうだが、これは同社設計陣の弁ではアナログからデジタルに大きく舵を切ったというよりも、数ある出力デバイスのなかから、今回のコンセプトと動作条件に合致するデバイスを選び抜いた結果、ICEpowerにたどり着いたというのが実情のようだ。そうはいってもICEpower社との2年間にわたる共同作業はAVアンプへの搭載を前提とした独立プロジェクトだったというから、ICEpowerの導入を決めたのがかなり早い時期だったことは間違いなさそうだ。
実際のところ、全チャンネル同時駆動時で計1400W(定格)という異例の大出力をこの筐体サイズで実現するためには、ICEpowerは最良の選択だと思う。なお、パワーアンプ部は本体下部約1/3のブロックに集約されており、サイドの放熱孔を介して冷却される。既存の出力素子でこの離れ業はできない。計10チャンネルに及ぶパワーアンプは自在にアサインできるので、280W×5チャンネルのアンプとして大型スピーカーを駆動させることも可能だ。
ブース内の視聴室で聴いた再生音は、端的に言って一体型AVアンプの次元を超えるスケール感をそなえた超弩級の音である。力強い低音と瞬発力をベースにハイスピードな音が次々に繰り出され、聴き手を爽快な気分にさせる。HDオーディオのメリットの一つは広大なダイナミックレンジにあるが、本機の音はそのレンジ感を余すところなく再現してくるのである。音楽と台詞や効果音が重層的に重なったときの分解能の高さも、やはりセパレートアンプでなければ実現できないレベルに到達しているし、S/Nの良さも際立っていた。試作機レベルでこれだけの水準に達しているのだから、完成時にどこまで表現力を高めてくるのか、非常に楽しみである。
(山之内 正)
[IFA2007REPORT]