<山之内正のCES2008レポート>ディスプレイの大型化、超薄型化を考察する
CESで目を引いた試作品と技術展示を紹介する2回目は、ディスプレイの大型化と超薄型化の話題を取り上げよう(関連記事)。
パナソニックのブースで150インチのプラズマテレビが公開されたのはすでに報じられた通り。抜群の存在感で見る者を圧倒したが、その画質はどうだったのだろうか。
まずは大きいだけで強烈なインパクトがあるし、会場ではじっくり視聴できないので厳密な評価は難しいのだが、4k×2kといえばフルHD画面を4枚並べた解像度だけに、これだけ大きくてもとりあえずハイビジョンの精細感はしっかり伝わってくる。なにしろ画面の大きさが150インチだから、いくら4kとはいえ画素ピッチはそれなりだが、画面全体を見るには最低でも4mは離れることになるから、ハイビジョンレベルでは精細感に不満は出ないのである。
そのうえであえて不満を上げるとすれば、視聴ソースのクオリティがパネル解像度に追い付いていない。屋内外で撮影したコントラストの強い映像を主に流していたのだが、特に屋外のシーンは輪郭が強めで、4kパネルの良さを引き出すには役不足と言わざるを得ない。これまで体験してきた4k映像では、目の前にあたかも現実の風景が広がっているかのような臨場感が体験でき、ハイビジョンとは次元の異なる世界が実感できたのだが、そこまでのリアリティが感じられないのは、やはりソース側に問題があるのだと思う。写真で紹介した劇場内部の映像も含めて、4kパネルにしては、解像感があと一歩物足りない印象を拭い切れないのである。今後はフルHDを超える高精細パネルが各社から登場すると思われるが、再生ソースのクオリティがそこでの最大の課題になりそうだ。
薄型を超えるスリムな超薄型テレビが並んだことで、ディスプレイの展示コーナーは雰囲気が従来とは一変した。
今回のCESにおいて、薄さで一番強いインパクトを与えたのは僅か9mmのパネルを展示したパイオニア。次点は厚さ1インチのPDPを水平、垂直方向にそれぞれスイングさせてその薄さを強調する展示を行ったパナソニックのブースである。シャープは65型の液晶パネル、日立は液晶とPDPそれぞれについて超薄型の試作機を展示して、いずれも現地で大きな注目を集めたが、日本の消費者はCEATECですでにその新しさを一部は体験済みということもあり、それほど大きな驚きはなかった。液晶はその気になればかなり薄くできるということがわかってしまったからだろうか。
しかし、ディスプレイの薄型化は技術的に難度が高いと言われつつも、昨年後半から各社が一気に試作機の開発を終え、CESの会場に多数の展示が出揃ったことには大いに感心した。発売まで1〜2年はかかるかもしれないが、PDPでも超薄型モデルが視野に入ってきた。その努力には敬意を表したい。パイオニアもパナソニックも背面は放熱孔を最小に抑えてすっきりしたデザインにまとめており、壁に近付けて設置したり、奥行きの浅いブラケットに取り付けて壁掛け設置を行っても動作に問題がないように設計されていることがわかる。
そうした技術の進化を受けて、いずれは日本を含む世界中のテレビ市場でこの形態のディスプレイが主流になり、壁掛け設置が急速に進むことになるのだろう。薄型化は軽量化なくして実現できないし、軽量化は資源の有効利用に直結するので、超薄型化が進む流れ自体は大いに歓迎すべきものである。
超薄型ディスプレイが居並ぶコンベンションセンターのなかを歩きながらあらためて実感したのは、やはりテレビは画質が肝心だという当たり前の事実である。昨年のCESでソニーが有機ELディスプレイを公開し、CEATECで日立が試作品を展示したときはいずれも大きな驚きがあったが、超薄型のディスプレイが各社から出てくることが確実になると、薄いだけでは激烈な競争が続くテレビ市場を生き抜くことはできないだろう。前回紹介したような超高コントラスト性能や際立った色再現性能など、画質のブレークスルーを果たした時点で、初めて薄さのインパクトが強固なものになるに違いない。
各社の超薄型ディスプレイを見て、もうひとつのメリットにも思い当たった。薄く軽くなれば壁掛け設置が容易になる。壁掛けが実現すれば、部屋の音響特性上、フラットディスプレイに由来するデメリットが現在よりもかなり小さくなることが期待される。フロントスピーカーの間に大きな平面のガラス板が存在し、共振しやすい筐体が存在することによって、ステレオイメージが曖昧になったり、音場の広がりが小さくなってしまうことはよく知られている。試作機を見る限り、超薄型テレビは本体の剛性も改善が期待できるので、余計な共振を起こすことは少なくなるに違いない。壁掛け設置で前面ガラスの反射を抑え、筐体の剛性を上げることで不要共振を減らす。超薄型テレビの見逃せないメリットとして、今後の動きに注目していきたいと思う。
(山之内 正)
パナソニックのブースで150インチのプラズマテレビが公開されたのはすでに報じられた通り。抜群の存在感で見る者を圧倒したが、その画質はどうだったのだろうか。
まずは大きいだけで強烈なインパクトがあるし、会場ではじっくり視聴できないので厳密な評価は難しいのだが、4k×2kといえばフルHD画面を4枚並べた解像度だけに、これだけ大きくてもとりあえずハイビジョンの精細感はしっかり伝わってくる。なにしろ画面の大きさが150インチだから、いくら4kとはいえ画素ピッチはそれなりだが、画面全体を見るには最低でも4mは離れることになるから、ハイビジョンレベルでは精細感に不満は出ないのである。
そのうえであえて不満を上げるとすれば、視聴ソースのクオリティがパネル解像度に追い付いていない。屋内外で撮影したコントラストの強い映像を主に流していたのだが、特に屋外のシーンは輪郭が強めで、4kパネルの良さを引き出すには役不足と言わざるを得ない。これまで体験してきた4k映像では、目の前にあたかも現実の風景が広がっているかのような臨場感が体験でき、ハイビジョンとは次元の異なる世界が実感できたのだが、そこまでのリアリティが感じられないのは、やはりソース側に問題があるのだと思う。写真で紹介した劇場内部の映像も含めて、4kパネルにしては、解像感があと一歩物足りない印象を拭い切れないのである。今後はフルHDを超える高精細パネルが各社から登場すると思われるが、再生ソースのクオリティがそこでの最大の課題になりそうだ。
薄型を超えるスリムな超薄型テレビが並んだことで、ディスプレイの展示コーナーは雰囲気が従来とは一変した。
今回のCESにおいて、薄さで一番強いインパクトを与えたのは僅か9mmのパネルを展示したパイオニア。次点は厚さ1インチのPDPを水平、垂直方向にそれぞれスイングさせてその薄さを強調する展示を行ったパナソニックのブースである。シャープは65型の液晶パネル、日立は液晶とPDPそれぞれについて超薄型の試作機を展示して、いずれも現地で大きな注目を集めたが、日本の消費者はCEATECですでにその新しさを一部は体験済みということもあり、それほど大きな驚きはなかった。液晶はその気になればかなり薄くできるということがわかってしまったからだろうか。
しかし、ディスプレイの薄型化は技術的に難度が高いと言われつつも、昨年後半から各社が一気に試作機の開発を終え、CESの会場に多数の展示が出揃ったことには大いに感心した。発売まで1〜2年はかかるかもしれないが、PDPでも超薄型モデルが視野に入ってきた。その努力には敬意を表したい。パイオニアもパナソニックも背面は放熱孔を最小に抑えてすっきりしたデザインにまとめており、壁に近付けて設置したり、奥行きの浅いブラケットに取り付けて壁掛け設置を行っても動作に問題がないように設計されていることがわかる。
そうした技術の進化を受けて、いずれは日本を含む世界中のテレビ市場でこの形態のディスプレイが主流になり、壁掛け設置が急速に進むことになるのだろう。薄型化は軽量化なくして実現できないし、軽量化は資源の有効利用に直結するので、超薄型化が進む流れ自体は大いに歓迎すべきものである。
超薄型ディスプレイが居並ぶコンベンションセンターのなかを歩きながらあらためて実感したのは、やはりテレビは画質が肝心だという当たり前の事実である。昨年のCESでソニーが有機ELディスプレイを公開し、CEATECで日立が試作品を展示したときはいずれも大きな驚きがあったが、超薄型のディスプレイが各社から出てくることが確実になると、薄いだけでは激烈な競争が続くテレビ市場を生き抜くことはできないだろう。前回紹介したような超高コントラスト性能や際立った色再現性能など、画質のブレークスルーを果たした時点で、初めて薄さのインパクトが強固なものになるに違いない。
各社の超薄型ディスプレイを見て、もうひとつのメリットにも思い当たった。薄く軽くなれば壁掛け設置が容易になる。壁掛けが実現すれば、部屋の音響特性上、フラットディスプレイに由来するデメリットが現在よりもかなり小さくなることが期待される。フロントスピーカーの間に大きな平面のガラス板が存在し、共振しやすい筐体が存在することによって、ステレオイメージが曖昧になったり、音場の広がりが小さくなってしまうことはよく知られている。試作機を見る限り、超薄型テレビは本体の剛性も改善が期待できるので、余計な共振を起こすことは少なくなるに違いない。壁掛け設置で前面ガラスの反射を抑え、筐体の剛性を上げることで不要共振を減らす。超薄型テレビの見逃せないメリットとして、今後の動きに注目していきたいと思う。
(山之内 正)