折原一也のCES2009レポート
急増したデモに感じた3D映像実用化への波
■LG電子はデバイス3種で3Dデモ
LG電子のブースでは、PDP、液晶テレビ、DLPプロジェクタの3つの表示デバイスを使用して3Dデモを実施。3Dソースの方式はチェッカーサンプリングで、BDプレイヤーから再生していた。上映していた作品は、PDPが『U2 3D』などの音楽ライブ、液晶は『BOLT』、DLPはタイトル不明の3DCGアニメーション映画だ。
同社ブースの3DデモのうちPDPと液晶テレビによる上映は、日を変えて会期中に3回ほど見たのだが、実は3回いずれも数分みただけで少々気分が悪くなってしまった。家庭向けの3Dの研究領域として、気分の悪くならない3Dの基準を見極めるという部分も重要であると痛感した。DLPは混雑のためため5分程度しか視聴していないが、大画面のスクリーンに若干柔らかい描写で自然な奥行き感を出せていた。
■サムスンは2D映像をリアルタイムで3D変換
サムスンのブースでは、2D映像をリアルタイムで3Dへと変換するという、他社のブースには見られないデモを実施していた。
3D上映部分のデモは、PDPに映像と赤外線で同期して左右を切り替えるアクティブシャッター方式の3Dメガネを使用。映像ソースは1080pの映画とゲームを用意していた。残念ながら、3D方式は質問しても不明だった。
2Dから3Dへのリアルタイムの変換と聞くと気になるのは精度だが、デモの映像を見る限りでは3D化の精度はなかなか良い。
レースゲームの奥行きも最初から3Dのように自然で、ゲームのメニューまでも浮き出るように立体化している。映画に関しても、2D制作の通常の作品から3D化しても自然な奥行きを出している。全体に奥行きは浅くはあるものの、極端な3D化はどれも気持ち悪くなるため、控えめなところがよく見える理由かもしれない。
今回は技術デモとしての展示であったが、2010年の実用化を目指しているとのことだ。
■招待客へ特別に3Dシアターを設置したドルビー
BDやDVD、映画館など映画の音響フォーマットで知られるドルビーのブースは、一般向けには各種音声技術のみを公開していた。しかし、一部プレスのみを招待してドルビーによる家庭向け3D上映技術のデモを実施しており、筆者も参加することができた。
ドルビーブースの機材は、三菱電機のDLPリアプロジェクションテレビとヒュンダイ電子による液晶テレビで50型クラスのものを使用していた。視聴に際して、DLPはアクティブシャッター方式の3Dメガネを使用。そして、液晶は円偏向の3Dグラスを着用するソースの方式で、左右の映像を1画素ごと交互に千鳥配置するチェッカーサンプリング方式を採用。この場合、映像はフルHDの半分の画素に低下することになるが、見た目上は7割程度の低下にとどまるという。
デモの映像はCGアニメーション映画を用いており、フルHDではないもののHDクオリティの精細さを出している。映像は短時間しか視聴していないが、派手過ぎない立体感で違和感なく楽しむことができた。
なお、ドルビーでは自社の方式を、現行の機材にほとんど手を加えずにBDへ収録できる方式としてアピールしている。詳しい情報は改めて記事としてまとめる予定だ。
以上、Intenational CES 2009の会場で展示されていた3Dのデモを紹介してみた。米国の劇場で3Dが流行しているとは知っていたが、ここまで多数のブースで3Dの展示を行っているのを見ると日本でもブレイク寸前という予感がしてきた。
今回冒頭で簡単に解説した通り、一言に3Dの技術といっても、各社の展示している部分は3D化の技術だったり、ディスプレイ技術だったりと様々。
しかし、現在のこのような多種多彩な方式も、BDでの規格化の過程で整理されていくはずだ。2009年度中に規格化が行われば、2010年にはビジネスとなり一般家庭への進出も見えてくる。このようにして考えてみると、家庭で楽しむ3D映画も、もうすぐそこにある体験と思えてくるのではないだろうか。