岩井喬氏がハンドリングレポート
高C/Pの本格派・ロジテックのiPod/Walkman用録音マイクで簡単&便利に高音質録音!
■意外と知らない!iPodやWalkmanで録音ができる!
「iPod」や「Walkman」はこれまで再生専用のプレーヤーという認識をお持ちの方は多いと思うが、iPodには“ボイスメモ”(iPhoneには標準装備。iPodでは通常メニューに表示されないが、マイクを内蔵したイヤホンやDockコネクター経由で接続されたマイク付き機器など、対応機器を接続すると使用できる)、「Walkman」には“ダイレクトエンコーディング機能”(PCを介さず、WM-PORTに接続した専用ケーブルによってMD/CDプレーヤーの音声を録音できる)を持った機種があり、それらを利用することでちょっとしたPCMレコーダーに変身できるのである。ただ、これまで本格的な録音用アダプターが少なかったため、あくまでメモ程度の録音機能であるとの認識が強かったことも否めない。
しかしながら、普段再生専用機として使っていたツールが録音できるようになることで、他にレコーダーを持ち歩かずにすむだけでなく、iPodやWalkmanでの楽しみ方が一層広がるのである。
■ロジテックから高C/Pの本格派録音マイクユニットが登場
このたびロジテックから発売された「LIC-iREC03P」(iPod用)と「LIC-WMREC03P」(Walkman用)は、昨今のコンパクトリニアPCMレコーダーでも多く見かけるようになってきたX-Y方式のステレオマイクを内蔵したユニットを搭載。重要となるマイク素子には、小型コンデンサーマイクユニットとして評判の良い、パナソニック製のWM-55A103を採用している。マイクレイアウトは録音対象からの平均距離を考慮し、左右の指向角は90度、マイクユニット間の距離は20mmとし、仰角をつけることでバウンダリー効果を軽減できるよう工夫されている。
マイクのみではなく、LINE入力も装備し幅広い録音が可能になっている点も好ましい。USBminiB端子も設けられ、音楽ファイル共有のほか、ACアダプターによる充電にも対応できる。また、iPod touchやiPhoneを使った場合は、録音ユーティリティーアプリを使って、コンパクトレコーダーでは実現が難しい高性能なMTRとしても活用できるというメリットもあるのは面白い。
同社は以前も録音用マイクユニット「LIC-iREC01/LIC-WMREC01」を発売。好評を得たが、その際、当初想定していなかった、バンドや楽器練習を録音する用途で使われるケースが多かったことに驚いたという。それを考慮して、「LIC-iREC03P」「LIC-WMREC03P」では音割れや音質の問題を改善するなど、昨今のPCMレコーダーを意識した本格的な仕様を目指した。
音割れについては、“AGC”(オートゲインコントロール)、“ATT”(アッテネーター)の二つの機能を追加している。当初は音量調整ボリュームを設けるかどうか検討されたそうであるが、このサイズで音質的に満足できる素子がないため、定評のあるマキシム製の音量制御デバイスを採用し、ATTは0、-10dB、-20dBの3段階に対応。AGCはマニュアル録音となるOFF、オート録音ではLo(小音量)とHi(大音量)の2段階切り替えに対応し、赤いLEDによるピークインジケーターによってレベル管理も一目瞭然だ。レコーダー操作で一番ネックとなるレベル調整を簡素化できるため、より手軽に録音を楽しめる。また、-20dB以上の大音量の際は、マイクレベル切り替えをLINEにすれば-60dB相当のアッテネーションが可能となるので(ATT、AGC設定は無効)、ライブハウスのような大音量環境では効果を発揮するだろう。マイクレベル切り替えをMICに戻し、外部マイクを接続する場合はプラグインパワーに対応するので、録音用アダプターとしての機能性も高いほか、ウインドスクリーンも付属するため、屋外の録音では風切り音も軽減できる。
■楽器の定位や空間の表現力も十分
手軽に持ち歩きいろいろな音を録音して楽しもう
実際に手持ちのiPod nano(第3世代)に「LIC-iREC03P」を接続し、録音してみることにした。これまで一切ボイスメモ機能を使ったことがなかったので、本機を接続して初めてその項目を目にした。すんなりと認識され、すぐにでも録音が行える簡単さは初心者にもありがたい。今回はアマチュアオーケストラの練習にお邪魔させていただき、40人強編成のオーケストラを収録。また自然音としては、帰省の折に立ち寄った長野県諏訪市の「諏訪大社・本宮」境内で収録を行った。
オーケストラ収録では第1バイオリン側に本機を置かせていただき、練習の模様を録音。AGCはOFF、ATTは-20dBとした。録音品質は44.1kHzのWAVファイルである。響きの少ない視聴覚室での収録ということもあり、ハーモニーはデッドであるが、弦楽器のミュートの弾かれるニュアンス、管楽器の定位感は自然に聴こえてくる。収録の場の空気感もそのままストレートに表現してくれる点は、本機の価格から考えると非常にポテンシャルの高いものであると思う。設置場所の影響もあるが、多少音像はコンパクトにまとまり、フォルテシモでびりつきも感じるので、もう少し離した方が理想的であるようだ。程よい左右の広がり感が得られ、センターに音がナチュラルに重なってくれる。レコーダーとして十分な質感描写だ。
諏訪大社境内では、ATTは0dB、AGCはOFFとし、ウインドスクリーンを装着しての収録である。拍手を打つ音とともに、奥から聴こえる滝の水音、セミの声も細やかに聴こえてくる。滝に近付いたときは鮮やかな水音が楽しめ、林の中では観光客の足音、話し声もすっきりと耳に届いてくる。近くの道を走る車の音も自然で、距離感の表現も巧みで非常に空間表現性も高い。もう少し様々なシチュエーションでも試してみたいと思えるほど、高いクオリティを有していた。
これまで様々なコンパクトレコーダーを手にしてきたが、iPod nanoと組み合わせた本機の小型さはその比ではない。DAPとレコーダーを両方持ち歩くことのナンセンスさへの解答とも言える、一つのブレイクスルーではないかと感じる製品である。価格もリーズナブルで、追加ユニットとして考慮した場合でも決して高いとは感じさせない、高C/Pで音質・品質の良さが光る。
本機とiPod、Walkmanを持ち歩くことで、デジカメのように街中をスナップするのと同じ感覚で、街中の音を録音してみるのも面白い。例えば定点観測で5年、10年同じ場所の音を録音してデータベース化すれば、その時々でしかない何かの音に気付ける。写真と違って音は様々な想像を膨らますことのできる理知的な要素であるので、過去の記憶も当時の音によって、より鮮やかに蘇ってくるものである。本機をきっかけにして新たなサウンドライフをはじめてみてはいかがだろうか。
「iPod」や「Walkman」はこれまで再生専用のプレーヤーという認識をお持ちの方は多いと思うが、iPodには“ボイスメモ”(iPhoneには標準装備。iPodでは通常メニューに表示されないが、マイクを内蔵したイヤホンやDockコネクター経由で接続されたマイク付き機器など、対応機器を接続すると使用できる)、「Walkman」には“ダイレクトエンコーディング機能”(PCを介さず、WM-PORTに接続した専用ケーブルによってMD/CDプレーヤーの音声を録音できる)を持った機種があり、それらを利用することでちょっとしたPCMレコーダーに変身できるのである。ただ、これまで本格的な録音用アダプターが少なかったため、あくまでメモ程度の録音機能であるとの認識が強かったことも否めない。
しかしながら、普段再生専用機として使っていたツールが録音できるようになることで、他にレコーダーを持ち歩かずにすむだけでなく、iPodやWalkmanでの楽しみ方が一層広がるのである。
■ロジテックから高C/Pの本格派録音マイクユニットが登場
このたびロジテックから発売された「LIC-iREC03P」(iPod用)と「LIC-WMREC03P」(Walkman用)は、昨今のコンパクトリニアPCMレコーダーでも多く見かけるようになってきたX-Y方式のステレオマイクを内蔵したユニットを搭載。重要となるマイク素子には、小型コンデンサーマイクユニットとして評判の良い、パナソニック製のWM-55A103を採用している。マイクレイアウトは録音対象からの平均距離を考慮し、左右の指向角は90度、マイクユニット間の距離は20mmとし、仰角をつけることでバウンダリー効果を軽減できるよう工夫されている。
LOGITEC ポータブルプレーヤー用録音アダプター iPod/iPhone用モデル:LIC-iREC03P 【製品の詳細】【使用イメージ】 | |
LOGITEC ポータブルプレーヤー用録音アダプター Walkman用モデル:LIC-WMREC03P 【製品の詳細】【使用イメージ】 |
マイクのみではなく、LINE入力も装備し幅広い録音が可能になっている点も好ましい。USBminiB端子も設けられ、音楽ファイル共有のほか、ACアダプターによる充電にも対応できる。また、iPod touchやiPhoneを使った場合は、録音ユーティリティーアプリを使って、コンパクトレコーダーでは実現が難しい高性能なMTRとしても活用できるというメリットもあるのは面白い。
同社は以前も録音用マイクユニット「LIC-iREC01/LIC-WMREC01」を発売。好評を得たが、その際、当初想定していなかった、バンドや楽器練習を録音する用途で使われるケースが多かったことに驚いたという。それを考慮して、「LIC-iREC03P」「LIC-WMREC03P」では音割れや音質の問題を改善するなど、昨今のPCMレコーダーを意識した本格的な仕様を目指した。
音割れについては、“AGC”(オートゲインコントロール)、“ATT”(アッテネーター)の二つの機能を追加している。当初は音量調整ボリュームを設けるかどうか検討されたそうであるが、このサイズで音質的に満足できる素子がないため、定評のあるマキシム製の音量制御デバイスを採用し、ATTは0、-10dB、-20dBの3段階に対応。AGCはマニュアル録音となるOFF、オート録音ではLo(小音量)とHi(大音量)の2段階切り替えに対応し、赤いLEDによるピークインジケーターによってレベル管理も一目瞭然だ。レコーダー操作で一番ネックとなるレベル調整を簡素化できるため、より手軽に録音を楽しめる。また、-20dB以上の大音量の際は、マイクレベル切り替えをLINEにすれば-60dB相当のアッテネーションが可能となるので(ATT、AGC設定は無効)、ライブハウスのような大音量環境では効果を発揮するだろう。マイクレベル切り替えをMICに戻し、外部マイクを接続する場合はプラグインパワーに対応するので、録音用アダプターとしての機能性も高いほか、ウインドスクリーンも付属するため、屋外の録音では風切り音も軽減できる。
■楽器の定位や空間の表現力も十分
手軽に持ち歩きいろいろな音を録音して楽しもう
実際に手持ちのiPod nano(第3世代)に「LIC-iREC03P」を接続し、録音してみることにした。これまで一切ボイスメモ機能を使ったことがなかったので、本機を接続して初めてその項目を目にした。すんなりと認識され、すぐにでも録音が行える簡単さは初心者にもありがたい。今回はアマチュアオーケストラの練習にお邪魔させていただき、40人強編成のオーケストラを収録。また自然音としては、帰省の折に立ち寄った長野県諏訪市の「諏訪大社・本宮」境内で収録を行った。
オーケストラ収録では第1バイオリン側に本機を置かせていただき、練習の模様を録音。AGCはOFF、ATTは-20dBとした。録音品質は44.1kHzのWAVファイルである。響きの少ない視聴覚室での収録ということもあり、ハーモニーはデッドであるが、弦楽器のミュートの弾かれるニュアンス、管楽器の定位感は自然に聴こえてくる。収録の場の空気感もそのままストレートに表現してくれる点は、本機の価格から考えると非常にポテンシャルの高いものであると思う。設置場所の影響もあるが、多少音像はコンパクトにまとまり、フォルテシモでびりつきも感じるので、もう少し離した方が理想的であるようだ。程よい左右の広がり感が得られ、センターに音がナチュラルに重なってくれる。レコーダーとして十分な質感描写だ。
諏訪大社境内では、ATTは0dB、AGCはOFFとし、ウインドスクリーンを装着しての収録である。拍手を打つ音とともに、奥から聴こえる滝の水音、セミの声も細やかに聴こえてくる。滝に近付いたときは鮮やかな水音が楽しめ、林の中では観光客の足音、話し声もすっきりと耳に届いてくる。近くの道を走る車の音も自然で、距離感の表現も巧みで非常に空間表現性も高い。もう少し様々なシチュエーションでも試してみたいと思えるほど、高いクオリティを有していた。
これまで様々なコンパクトレコーダーを手にしてきたが、iPod nanoと組み合わせた本機の小型さはその比ではない。DAPとレコーダーを両方持ち歩くことのナンセンスさへの解答とも言える、一つのブレイクスルーではないかと感じる製品である。価格もリーズナブルで、追加ユニットとして考慮した場合でも決して高いとは感じさせない、高C/Pで音質・品質の良さが光る。
本機とiPod、Walkmanを持ち歩くことで、デジカメのように街中をスナップするのと同じ感覚で、街中の音を録音してみるのも面白い。例えば定点観測で5年、10年同じ場所の音を録音してデータベース化すれば、その時々でしかない何かの音に気付ける。写真と違って音は様々な想像を膨らますことのできる理知的な要素であるので、過去の記憶も当時の音によって、より鮮やかに蘇ってくるものである。本機をきっかけにして新たなサウンドライフをはじめてみてはいかがだろうか。