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2011年・ホームシアター展望<最終章>

【新春特別企画】ホームシアターファイル誌編集長・川嶋が指南! − 「ホームシアターの先へ。スマートハウスという未来」

公開日 2011/01/05 12:41 案内人/「ホームシアターファイル」編集長 川嶋隆寛
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省エネ時代のキー概念、スマートハウス

川嶋 第1部と第2部ではホームシアターについてお話しさせていただきました。最後に、第3部では、ホームシアターの先の世界、スマートハウスについてお話しましょう。

― スマートハウスとは何でしょうか?


『ホームシアターファイル』編集長 川嶋隆寛
川嶋 最近は環境問題との関係で、欧米ではひとつのムーブメントになっていますが。あ、中国でもそうですね。もともとスマートハウスとは、情報家電をつないでワンタッチでルームシーンを切り替えていく、文字どおり「賢い住まい」のことを指していました。北米では20年くらい前から使われている言葉です。

北米では20年くらい前からホームオートメーションが、たとえばクレストロンのようなホームコントロールシステムが出てきていて、AV機器、PCなどの情報家電、セキュリティ、照明、さらには温度や湿度の調整まで、家庭の中の電化製品をつないで制御して、自動的に、あるいはワンタッチで最適化することが一般化しています。これがスマートハウスです。

特に1990年代後半からはアメリカでは住宅バブルだったでしょ。お金持ちだけでなく、中流の家庭でも、ホームコントロールシステムでの自動制御化が進んできました。

― でも、住宅バブルははじけましたけど…。

川嶋 そう。3年ほど前に住宅バブルははじけました。はじけた結果、最近ではスマートハウスという言葉の意味も若干、いや大きくかな、いずれにしても意味合いが変わってきています。

住宅バブルがはじけた後もスマートハウスは伸長しています。もともと利便性の追求が第一の目的だったのですが、今度は環境問題と絡んで、省エネ化住宅、高エネルギー効率の住宅という形に変わってきました。それで伸びている。

ホームコントロールシステムで光、風、熱を制御することによって、より積極的に省エネ化を図っていこうとする動きが急速に立ち上がってきました。最近では、ホームコントロールシステムを使って、家庭内の電化製品をつないで制御し、省エネ化を積極的に図るだけでなく、ホームコントロールシステムを使って、ソーラーパネルや蓄電池、燃料電池などの制御も試みられたりしています。いずれにしても、家庭内でのエネルギーの最適化、省エネ化を図る住宅をスマートハウスと呼ぶようになってきました。

― 日本でもそうした動きは盛んですか?

川嶋 日本でも最近、温室効果ガスの削減を目指して、官民一体となってスマートハウス化を推進する動きが出ています。大手デベロッパーとかも政府から補助を受けていろいろと試みていますが、一番面白いのはやはり民間が独自に試みているものでして(笑)、パナソニックグループの有明のエコアイデアハウスはとても面白いですし、勉強になりました。あの、AVとかホームシアターに関係なく、少しでも未来の世界とか人類の将来について考えている方は、一度足を運んでみることをお薦めします。


スマートハウス化を担えるのはインストーラーのみ

― ええと、そのスマートハウスとやらはホームシアターやAVに何か関係があるのでしょうか?

川嶋 それが大ありなんです。『ホームシアターファイル』をお読みの方はよく次のような表現を目にすると思います。「リモコンのタッチパネルをサッとなでると、窓際のシェードがスーッと降りてきて、照明が徐々に消え、スクリーンが降りて、プロジェクターが灯り、裂ぱくのサウンドが響きわたる…」


ホームコントロールシステムAMXを活用したスマートハウス(AV Kansai堺本店 S邸<ホームシアターファイル54号掲載>インストール/岩元秀明氏)
『ホームシアターファイル』誌のひとつの紋切り型なのですが(笑)、ホームシアターの取材に行くと、度々目にする光景なんです。これ、AV機器と調光装置をつなぎあわせて、クレストロンなどのホームコントロールシステムで制御すると可能になるんです。コンパクトなものであればマランツのRC9001とRX9001でも可能です。

実は、第2部でお話しした、スマートフォンをATMのような対話式にカスタマイズしてリモコンとして用いるというものがこれに当たるんです。
これを応用することによって、スマートハウス化が可能になります。

どういうことかと言うと、AV、照明(調光装置)、電動カーテン(シェード)、空調、床暖房、セキュリティ、給湯器、ソーラーパネルなどをつなぎあわせて、クレストロンのようなホームコントロールシステムで制御して、ATMのように誰でも使える画面をプログラミングしたスマートフォンを端末にして、ワンタッチで、あるいは自動的に、住まいの光、熱、風、音、映像を制御する。結果的に省エネにつながりますし、エネルギー効率のよい住まいになります。既に技術的には可能です。ふう…。

― 一気にお話しされましたね。

川嶋 いや、まだ終わっていません(笑)。それで、何が重要かというと、では誰がそういうシステムを組んでいくのか、制御をプログラミングするのか、「誰が」が重要になる。では、質問です。誰だと思います?

― う〜ん、う〜ん…、あ、わかった! わかりました。ホームシアターのインストーラーですね。

川嶋 おお、できるね(笑)。

― そりゃ、インタビューしながら学習しましたからね。第2部の話じゃないけれども、AVから住まいからネットワークから内窓からプログラミングまで、そんなことわかっている人ってインストーラー以外にいませんものね。

川嶋 ぼくみたいな語り口だな(笑)。実際ね、去年、エコ関係の見本市とかによく足を運んだの。出展されているプロダクトをひとつひとつを見ると、そのどれもが素晴らしいです。ニッポンの技術ってすごいな、と単純に思うの。ひとつひとつはね。でもね、どれもバラバラなんです。どうせならば、つないで制御しちゃえばいいのになって思ったんだけれども。そうした方がもっと効率よく、しかもカスタマイズすればより賢く省エネ化が図れ、エネルギー効率もよくなるはずじゃない。

でも、現状では点なんです。線にも面にもなっていない。要するに立体的ではない。第2部でも似たような言いまわしをしましたが、「省エネグッズが増えてきたね」で終わってしまう。つながっていない。いや、仮につながってもカスタマイズできない。これではせっかくの日本の技術が活かしきれていないんです。ダメです。

― おー、ダメ出し。

川嶋 いや、ダメ出ししたくもなりますよ。仮に省エネプロダクトをつなげていてもね、カスタマイズできていないの。

去年ある見本市で、ある企業がスマートハウスみたいなものを展示していたの。電気メーカーの協力を得てね。燃料電池を使って、給湯器や空調をケータイで操作するという…。それだけ取ってみると、なかなかおもしろそうなんだけど、ぼくも意地悪だから、わざと何も知らない振りして、いろいろと聞いてみたのよ。「えー、これ何ですか?」とか、「わー、すごいですねー」とか(笑)。そう言いながら、「で、これって、一軒一軒家族構成やライフスタイルに合わせてカスタマイズするんですよね。エネルギー効率を本当に上げるにはそれぞれの住まいに最適にカスタマイズしないといけませんよね。で、カスタマイズは誰がやるのよ」と。

― あんたも人が悪い(笑)。

川嶋 いや、向こうがカスタマイズをまったく考えていないんで…。インストーラーの仕事に敬意を払うわたくしの義侠心というか。

― 漢だね。

川嶋 漢でしょ。話を戻すと、自分がそう聞くと、向こうは「いえ、ちょっと…」とか言って、次々にちがう担当者が出てきて説明したり(笑)。で、結論は「カスタマイズはいまのところするつもりはありません(キリっ)」。

実際、スマートハウスをやることになると、カスタマイズしなきゃ意味ないし、それができる人は簡単に養成できません。現場の数をこなしていないとならない。電気やAVからネットワークまで知識を持っていて、建築の知識もあってCAD描けて、プログラミングもできる人ってインストーラー以外には見当たらないんだよね。

― そう考えると、インストーラーってスーパーマンみたいですよね。

川嶋 いや、本当にスーパーマンなんです。というか、エコが叫ばれている現代において、スマートハウスのキーを握っているのってインストーラーなんです。

― もしかしたらインストーラー自身も気づいていない?

川嶋 そうですね。自分たちがどれだけすごいことをしているのか、現代社会のキーマンになっていることに気付いていないかもしれない。…いや、そんなことないか。

― どっちだよ(笑)。

川嶋 いやいや(笑)。

ホームエンターテイメントを切り口に「スマートハウス」化する

川嶋 ちょっと話がそれますが、ホームシアターとかオーディオってエコから離れているように感じるでしょ。

― なんかエネルギーを使いまくるイメージがありますよね。

川嶋 述語で表すと「迸る」だから(笑)。本当はそんなことないんだけどね。それこそホームコントロールシステムで制御すれば、エネルギーの最適化・省エネ化は図れます。エコのイメージで言うと、エコって脱色化された感じで、色で言うと…。

― 黄緑。

川嶋 そう、葉っぱとか樹木のイメージ。自転車とかジョギングみたいな。でも、AVやホームシアターといったホームエンターテイメントを切り口にスマートハウスを考えてみると、イメージがまったく変わってくるんです。要するに、大音量でガンガン好きなオーディオを楽しんだり、部屋いっぱいの大画面で映像を楽しんだりと、エネルギーを大量消費しているイメージがあるんだけど、実は結果として省エネにつながっている。そうなると、エコとか省エネとかのイメージももっと変わってくるんじゃないかと思うんですよね。

ホームエンターテイメントって贅沢なイメージがあるじゃない。エネルギー使いまくりという…。でも、それが結果としてエコにつながっていると、これは面白いと思うんですよね。イメージもこれまでの草食系エコから、肉食系エコ(?)に変わると思うんです。

スマートハウスでは、「住宅の光、熱、風の制御」がよく言われますが、ちょっと追加して順番を変えて「住宅の音、映像、光、熱、風の制御」という感じにね。音と映像が最初に来る。そうすることによって「スマートハウスもおもしろそうじゃない」と一般の人に思ってもらえるんじゃないか。「頑張って省エネしている」じゃあ、誰も付いてこないよ。もっと違うイメージでないと。

― 肉食系エコですか。

川嶋 うん。肉食系エコというか快楽系エコ(笑)。トランスをJBLでガンガン鳴らしてラリっているのに実はエコとか。ダンスホール(レゲエ)でもいいよ(笑)。これはまじめに言っているんだけど、ホームエンターテイメントを切り口にしたスマートハウスって考えは今までなかったと思うんですよ。おそらく政府の何とか審議会ではそんな話は出てこないでしょ。オフィスの温度は何度にしよう、とかは言っても。

プリウスとかハイブリッド車の流行の初期は、ハリウッドのセレブたちが、それに乗ってレッドカーペットに駆けつけて、エコな車を乗りこなすってかっこいい、みたいなイメージをつくりあげたのが寄与していますよね。脱色化されたイメージではない。それと同様に、ホームエンターテイメントが切り口ならば、スマートハウスのイメージも変わるはずです。政府の補助金とかが付けば、イメージ+実利でさらに良い。

で、ホームエンターテイメントを切り口にしたスマートハウスのキーを握っているのがインストーラーであると強調しておきたい。スマートハウスが気になったら、インストールショップに相談すべきです。新聞報道に惑わされてヘンなところに行かないで欲しい。

結論は第2部と同様ですが、いずれにしても、これから10年先を考えると、電気やAVやネットワークや建築や照明や通信の知識を持っているインストーラーがますます重要になると思います。住まいの電気設備・ネットワーク設備のアドバイザーとして、住まいづくりやリフォームの時は、インストールショップに足を運ぶことをお薦めします。

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