“Beyond TV”で活路を開く
【情報追加】シャープ、12年度の通期連結業績予想を修正 − 純損益は2,500億円の赤字を見込む
シャープは4月27日に発表した12年度の通期連結業績予想を修正。通期の最終損益を300億円の赤字から、2,500億円の赤字へ下方修正した。
本日シャープは都内にて12年度第1四半期の決算発表会を開催し、代表取締役社長の奥田隆司氏が出席。決算内容の説明と、今後の取り組みに関する詳細を語った。
通期の売上高については、前回の発表から2,000億円減となる2兆5,000億円へ予測値を修正。営業利益は1,000億円の赤字、経常利益は1,400億円の赤字にそれぞれ修正している。
当期の第1四半期については国内、および中国で液晶テレビの需要が想定を上回るほどに減少したほか、液晶分野は中小型液晶でユーザーからの受注のずれ込みと工場の操業低下、大型液晶で適正在庫の実現を最優先した事による生産調整も影響を及ぼした。その結果、売上高は前年同期比で28.4%減の4,568億円、営業利益は941億円の損失となった。また経常損失は1,038億円を計上する。
加えて液晶分野での「IGZO液晶」の生産転換や、欧州拠点の再編の事業構造改革費用、和解金等の特別損失を当期で計325億円発生させたことからも、四半期の純損失は1,384億円に上った。
部門別では液晶テレビやスマートフォンなどが含まれる「AV・通信機器」は、当期の売上高が1,341億円で、前年同期比で54.9%減に、営業利益も202億円の損失になった。
液晶テレビはASEANなど新興国での販売は好調に推移したものの、中国市場での販売低迷、国内市場の大幅な需要減少により伸び悩んだ。当期売上高の実績は777億円、販売台数は166万台。年間の売上高予想は5,000億円から3,500億円に、販売台数予測は1,000万台から800万台へ下方修正された。第2四半期以降は、いっそうの市場拡大が期待される新興国地域への取り組みを強化する。
スマートフォンなど携帯電話は、海外携帯メーカーとの競争が激化したことと、主要デバイスの供給不足による販売台数減が響いたことから、売上高が前年同期から68.4%も減じ、292億円の実績となった。販売台数は77万台。これに伴い、年間の売上高予想は2,800億円から2,400億円に、販売台数予測は770万台から630万台へと修正された。第2四半期以降は、必要部材の安定確保による早期販売回復の達成と、「IGZO液晶」搭載の新商品を市場投入する方向で立て直しを図る。
「液晶デバイス」部門は当期の売上高が1,459億円。前年同期比では22.4%のマイナスとなり、営業利益も634億円の損失になった。悪化の背景には中小型液晶は大手ユーザーからの受注がズレ込んで工場操業度が低下したことと、大型液晶では在庫適正化を優先したことによる工場の稼働調整を余儀なくされたことが影響した。第2四半期以降は、中小型液晶についてはWindows 8の発売に伴う需要拡大と、亀山第一工場の量産化開始による好転を図る。大型液晶は需要動向を見据えながら、生産・販売を促進して在庫適正化の取り組みを強化する。また鴻海グループとの提携に基づく安定操業を維持していく考えだ。
このほか、同社が展開する「健康・環境機器」「太陽電池」などの事業分野についても、それぞれ年間の売上高と営業利益に関する12年度の連結業績に関する修正予測が改めて示された。
また、事業環境の急回復が見込みにくい中で、今後の収益改善をより確実なものとするため、規模に見合った経営体制への移行と、人件費を含めた固定費削減等の構造改革も行う。取り組みの詳細な内容については別記事で紹介している通りだ。
今期末までには「大型液晶事業のオフバランス化」「第三者割当増資」「在庫の適正化と固定資産の圧縮」「設備投資の圧縮」などのメニューを含んだ、合計4,000億円規模の財務体質改善対策に取り組む。これらの取り組みにより、2012年度末に棚卸資産、ならびに有利子負債を削減するための目標値も示された。奥田氏は「2013年度の転換社債2,000億円の償還を見据えた資金の安定調達を図るため、主要金融機関によるバックアップ体制も検討していると」と説明を付け加えた。
経営体制の改善を図るため、堺工場の稼働率も年度末までに高めていくプランが示された。当期時点では需要減と在庫消化優先による操業不足のため、稼働率が「30%」程度に留まっているが、第2四半期は鴻海のパネル引き取りが着実に進捗するものと予測。シャープの外販先からも受注が拡大することを当て込みつつ、稼働率「80%」程度をシュミレーションする。この状態を安定化させながら「第3四半期以降は80〜90%の稼働率を常態化させたい」と奥田氏は語った。
中小型液晶については、多気・天理工場は車載/スマートフォンを中心に好調に推移していることから、現在フル操業の状態にある。亀山第1工場は8月からスマートフォン専用工場として量産開始が予定されている。亀山第2工場についても、タブレットやウルトラPCなどの成長による安定稼働に期待を寄せる。奥田氏が課題として挙げるのは、大口顧客からの受注減による大幅な操業ダウンと、操業損の発生だ。また「IGZO」新パネルのデザインイン先や、ウルトラPCなどの新規顧客先へのローンチ時期がずれたことも指摘をしながら、これらの対策としてデザインインの拡大や大口顧客の受注を増やすことで、操業損を解消していく考えを示した。
その他、別記事でも紹介したとおり、事業の再編や人員削減、業務システムの変更などにより筋肉質の経営体質づくりを目指す。奥田氏は「前例のない構造改革に、不退転の決意をもってスピーディーに取り組む。いち早く業績の回復を実現していきたい」と決意を語った。
以下に本日の決算発表会場で執り行われた質疑応答の内容を紹介する。
Q:6月に年度の経営戦略(関連ニュース)を発表したばかりなのに、あれから約2ヶ月で業績の下方修正を行わざるを得なかったのはなぜか。
A:当初から第1四半期の厳しさは予測していた。実際にスタートしてから状況を観察してきたが、業績の悪化に歯止めがかからなかったため、このまま手を打たないでいれば当社の「次の成長」が見込めないだろうと判断した。この機会に現状を的確に捉えて、出来るだけ早く構造改革に踏み込むことを優先すべきと考えた。まずは経営・財務体制を改善して足下を固めることが大事。一方で次の成長に向けて事業グループも再編した。4つのグループは互いに壁をつくるのではなく、フュージョンしながら新しいカテゴリーや、事業分野を創造していく関係にしていきたい。これを実現するための組織変更に他ならない。
Q:業績の下方修正は今回で本当に終わると見ているか。
A:現時点で中身をしっかりと精査した上で今回の内容を発表している。確かに経済環境はめまぐるしく変化しているが、その都度で最良の対策を打っていく所存だ。
Q:創業以来の大規模な人員削減となるが、今回実施する理由は何か。
A:当社ではこれまで、1950年に一度希望退職を実施したことがある。あれから62年ぶりに大規模なリストラをすることになってしまった。私も社長に就任してから約3ヶ月間ほど当社の状況を見てきたが、売上高が現時点ほどに下がってくると、固定費というものが非常に重くなってきて、やむなく人員削減を決断することとなった。経営者として断腸の思いだ。しかし、それでも今やらなければ次のシャープはないという経営判断を行った。私も不退転の覚悟でこれを実行する所存だ。役員報酬については20〜50%カットする。私自身は50%のカットを受けるつもりだ。
Q:約5,000人の人員削減を実施するということだが、希望退職者はどのくらいの人数を見込んでいるか。改革に充てる費用はどの程度か。また国内・海外の比率はどの程度か。費用は通期でどのくらいを見込んでいるのか。
A:オフバランスに伴うところでは1,300人ほど。残りの3,700人は労働組合と協議しながら詳細を詰めていく。改革に充てる費用は全体で500億円ほどをみている。人員削減は国内中心だが、一部海外を含んでいる。
Q:栃木工場、葛城工場の縮小化のプランも示されたが、それぞれの拠点で中心となるテレビセット事業と太陽電池事業が縮小されていくと捉えて良いのか。
A:栃木工場の戦略については、テレビと通信システムを統合して“Beyond TV”のような新しいジャンルのアプリケーション、およびPCやスマートフォンを強化していくことが主目的。太陽電池についても当社の重要な戦略分野であることは変わりない。商品企画、技術が融合しながら、切磋琢磨して新しい商品ができることを期待しての改革だと理解して欲しい。
Q:海外にもテレビのセット工場は構えているが、これらの規模縮小などについては考えているか。
A:基本的にその計画はない。
Q:テレビ事業については、第1四半期で販売台数が大きく落ち込んでいるが、この苦しい状況は続くと見ているか、それとも改善するのだろうか。
A:液晶テレビについては、販売台数が落ち込んだのは国内と中国だ。ともに流通在庫が多過ぎて、中国では新規の仕入れができなくなってしまった。現在はまず在庫を消化することに注力しており、解決すれば販売は若干好転すると見ている。国内はアナログ停波による駆け込み需要があったため、ここしばらくは業界全体のテレビ需要が急激に戻るということはないと見ている。したがって、これまでにない“新たなテレビ”を提案することを目標に、当社としては今回の構造改革を発表した次第だ。
Q:シャープは液晶テレビの市場を立ち上げてリードしてきたブランド。社長が提言する次世代の“Beyond TV”も期待したいと思うし、鴻海グループとの提携による効果も注目すべきと思う。でも一方で、鴻海の主要顧客の中で、価格競争力の強いメーカーから60インチ以上の液晶テレビがシャープの生産ラインを使って、今後つくられる計画があるという話も聞こえてくる。“Beyond TV”が具現化するまでに、現在のシャープのテレビの位置づけを確保していくのと、グローバルな価格競争に立ち向かっていくことについてはどう取り組んでいくのか。
A:確かに有名テレビメーカーがコスト競争力の強い商品を計画しているという話もあるが、鴻海グループとは一緒のビジネスモデルでマーケットを切り開いていくという姿勢を保ちながら協業していく必要があると考えている。そうすると、確かに既存のテレビの世界では差別化が難しくなっていくのかもしれないが、シャープとしては次世代のテレビに活路を見いだしたいと考えている。
Q:テレビ事業については、現在のテレビを作り続けていても将来がないというコメントだが、これは「脱テレビ」という意味合いなのか。
A:鴻海グループとの提携を発表した際にもご説明したが、当社はこれからもデジタル家電分野は逃げるのではなく、戦略協業の中でグローバルに攻めていくという考えを打ち出した。自分たちでつくる製品と、協業を中心とした製品を上手く組み合わせて展開していく。ただ、国内で従来のテレビを、今後作り続けているばかりでは採算が合わないと見ている。従来のテレビの定義を見直しつつ、「IGZO」など独自の新しい技術を活かしながら、場合によっては他の製品ジャンルとフュージョンをして、新しい産業や技術がつくれるものと私は確信している。誤解の無いように言っておくが、当社はテレビ事業をやめるつもりはない。既存のテレビについては規模を縮小していくこともあるだろうが、次世代テレビについては強化していく。その生産を日本で行うことがもっともフィットするのであれば、日本での生産を継続しても良いと考えている。
Q:今の日本の電機業界の大きな課題は何だと捉えている。
A:電機業界はジャパンスペックから、グローバルスペックに変わらなければならないと思う。エレクトロニクスには様々な技術があるが、これを地域のニーズに合わせて、うまく需要を創出しながら地域を拡大していくことも大切だ。これをスピーディーに実現することも必要。まだまだ日本の電機業界にとって、やるべきことはたくさんある。異分野と融合することで、新しい需要が必ず生まれてくると思う。
本日シャープは都内にて12年度第1四半期の決算発表会を開催し、代表取締役社長の奥田隆司氏が出席。決算内容の説明と、今後の取り組みに関する詳細を語った。
通期の売上高については、前回の発表から2,000億円減となる2兆5,000億円へ予測値を修正。営業利益は1,000億円の赤字、経常利益は1,400億円の赤字にそれぞれ修正している。
当期の第1四半期については国内、および中国で液晶テレビの需要が想定を上回るほどに減少したほか、液晶分野は中小型液晶でユーザーからの受注のずれ込みと工場の操業低下、大型液晶で適正在庫の実現を最優先した事による生産調整も影響を及ぼした。その結果、売上高は前年同期比で28.4%減の4,568億円、営業利益は941億円の損失となった。また経常損失は1,038億円を計上する。
加えて液晶分野での「IGZO液晶」の生産転換や、欧州拠点の再編の事業構造改革費用、和解金等の特別損失を当期で計325億円発生させたことからも、四半期の純損失は1,384億円に上った。
部門別では液晶テレビやスマートフォンなどが含まれる「AV・通信機器」は、当期の売上高が1,341億円で、前年同期比で54.9%減に、営業利益も202億円の損失になった。
液晶テレビはASEANなど新興国での販売は好調に推移したものの、中国市場での販売低迷、国内市場の大幅な需要減少により伸び悩んだ。当期売上高の実績は777億円、販売台数は166万台。年間の売上高予想は5,000億円から3,500億円に、販売台数予測は1,000万台から800万台へ下方修正された。第2四半期以降は、いっそうの市場拡大が期待される新興国地域への取り組みを強化する。
スマートフォンなど携帯電話は、海外携帯メーカーとの競争が激化したことと、主要デバイスの供給不足による販売台数減が響いたことから、売上高が前年同期から68.4%も減じ、292億円の実績となった。販売台数は77万台。これに伴い、年間の売上高予想は2,800億円から2,400億円に、販売台数予測は770万台から630万台へと修正された。第2四半期以降は、必要部材の安定確保による早期販売回復の達成と、「IGZO液晶」搭載の新商品を市場投入する方向で立て直しを図る。
「液晶デバイス」部門は当期の売上高が1,459億円。前年同期比では22.4%のマイナスとなり、営業利益も634億円の損失になった。悪化の背景には中小型液晶は大手ユーザーからの受注がズレ込んで工場操業度が低下したことと、大型液晶では在庫適正化を優先したことによる工場の稼働調整を余儀なくされたことが影響した。第2四半期以降は、中小型液晶についてはWindows 8の発売に伴う需要拡大と、亀山第一工場の量産化開始による好転を図る。大型液晶は需要動向を見据えながら、生産・販売を促進して在庫適正化の取り組みを強化する。また鴻海グループとの提携に基づく安定操業を維持していく考えだ。
このほか、同社が展開する「健康・環境機器」「太陽電池」などの事業分野についても、それぞれ年間の売上高と営業利益に関する12年度の連結業績に関する修正予測が改めて示された。
また、事業環境の急回復が見込みにくい中で、今後の収益改善をより確実なものとするため、規模に見合った経営体制への移行と、人件費を含めた固定費削減等の構造改革も行う。取り組みの詳細な内容については別記事で紹介している通りだ。
今期末までには「大型液晶事業のオフバランス化」「第三者割当増資」「在庫の適正化と固定資産の圧縮」「設備投資の圧縮」などのメニューを含んだ、合計4,000億円規模の財務体質改善対策に取り組む。これらの取り組みにより、2012年度末に棚卸資産、ならびに有利子負債を削減するための目標値も示された。奥田氏は「2013年度の転換社債2,000億円の償還を見据えた資金の安定調達を図るため、主要金融機関によるバックアップ体制も検討していると」と説明を付け加えた。
経営体制の改善を図るため、堺工場の稼働率も年度末までに高めていくプランが示された。当期時点では需要減と在庫消化優先による操業不足のため、稼働率が「30%」程度に留まっているが、第2四半期は鴻海のパネル引き取りが着実に進捗するものと予測。シャープの外販先からも受注が拡大することを当て込みつつ、稼働率「80%」程度をシュミレーションする。この状態を安定化させながら「第3四半期以降は80〜90%の稼働率を常態化させたい」と奥田氏は語った。
中小型液晶については、多気・天理工場は車載/スマートフォンを中心に好調に推移していることから、現在フル操業の状態にある。亀山第1工場は8月からスマートフォン専用工場として量産開始が予定されている。亀山第2工場についても、タブレットやウルトラPCなどの成長による安定稼働に期待を寄せる。奥田氏が課題として挙げるのは、大口顧客からの受注減による大幅な操業ダウンと、操業損の発生だ。また「IGZO」新パネルのデザインイン先や、ウルトラPCなどの新規顧客先へのローンチ時期がずれたことも指摘をしながら、これらの対策としてデザインインの拡大や大口顧客の受注を増やすことで、操業損を解消していく考えを示した。
その他、別記事でも紹介したとおり、事業の再編や人員削減、業務システムの変更などにより筋肉質の経営体質づくりを目指す。奥田氏は「前例のない構造改革に、不退転の決意をもってスピーディーに取り組む。いち早く業績の回復を実現していきたい」と決意を語った。
以下に本日の決算発表会場で執り行われた質疑応答の内容を紹介する。
Q:6月に年度の経営戦略(関連ニュース)を発表したばかりなのに、あれから約2ヶ月で業績の下方修正を行わざるを得なかったのはなぜか。
A:当初から第1四半期の厳しさは予測していた。実際にスタートしてから状況を観察してきたが、業績の悪化に歯止めがかからなかったため、このまま手を打たないでいれば当社の「次の成長」が見込めないだろうと判断した。この機会に現状を的確に捉えて、出来るだけ早く構造改革に踏み込むことを優先すべきと考えた。まずは経営・財務体制を改善して足下を固めることが大事。一方で次の成長に向けて事業グループも再編した。4つのグループは互いに壁をつくるのではなく、フュージョンしながら新しいカテゴリーや、事業分野を創造していく関係にしていきたい。これを実現するための組織変更に他ならない。
Q:業績の下方修正は今回で本当に終わると見ているか。
A:現時点で中身をしっかりと精査した上で今回の内容を発表している。確かに経済環境はめまぐるしく変化しているが、その都度で最良の対策を打っていく所存だ。
Q:創業以来の大規模な人員削減となるが、今回実施する理由は何か。
A:当社ではこれまで、1950年に一度希望退職を実施したことがある。あれから62年ぶりに大規模なリストラをすることになってしまった。私も社長に就任してから約3ヶ月間ほど当社の状況を見てきたが、売上高が現時点ほどに下がってくると、固定費というものが非常に重くなってきて、やむなく人員削減を決断することとなった。経営者として断腸の思いだ。しかし、それでも今やらなければ次のシャープはないという経営判断を行った。私も不退転の覚悟でこれを実行する所存だ。役員報酬については20〜50%カットする。私自身は50%のカットを受けるつもりだ。
Q:約5,000人の人員削減を実施するということだが、希望退職者はどのくらいの人数を見込んでいるか。改革に充てる費用はどの程度か。また国内・海外の比率はどの程度か。費用は通期でどのくらいを見込んでいるのか。
A:オフバランスに伴うところでは1,300人ほど。残りの3,700人は労働組合と協議しながら詳細を詰めていく。改革に充てる費用は全体で500億円ほどをみている。人員削減は国内中心だが、一部海外を含んでいる。
Q:栃木工場、葛城工場の縮小化のプランも示されたが、それぞれの拠点で中心となるテレビセット事業と太陽電池事業が縮小されていくと捉えて良いのか。
A:栃木工場の戦略については、テレビと通信システムを統合して“Beyond TV”のような新しいジャンルのアプリケーション、およびPCやスマートフォンを強化していくことが主目的。太陽電池についても当社の重要な戦略分野であることは変わりない。商品企画、技術が融合しながら、切磋琢磨して新しい商品ができることを期待しての改革だと理解して欲しい。
Q:海外にもテレビのセット工場は構えているが、これらの規模縮小などについては考えているか。
A:基本的にその計画はない。
Q:テレビ事業については、第1四半期で販売台数が大きく落ち込んでいるが、この苦しい状況は続くと見ているか、それとも改善するのだろうか。
A:液晶テレビについては、販売台数が落ち込んだのは国内と中国だ。ともに流通在庫が多過ぎて、中国では新規の仕入れができなくなってしまった。現在はまず在庫を消化することに注力しており、解決すれば販売は若干好転すると見ている。国内はアナログ停波による駆け込み需要があったため、ここしばらくは業界全体のテレビ需要が急激に戻るということはないと見ている。したがって、これまでにない“新たなテレビ”を提案することを目標に、当社としては今回の構造改革を発表した次第だ。
Q:シャープは液晶テレビの市場を立ち上げてリードしてきたブランド。社長が提言する次世代の“Beyond TV”も期待したいと思うし、鴻海グループとの提携による効果も注目すべきと思う。でも一方で、鴻海の主要顧客の中で、価格競争力の強いメーカーから60インチ以上の液晶テレビがシャープの生産ラインを使って、今後つくられる計画があるという話も聞こえてくる。“Beyond TV”が具現化するまでに、現在のシャープのテレビの位置づけを確保していくのと、グローバルな価格競争に立ち向かっていくことについてはどう取り組んでいくのか。
A:確かに有名テレビメーカーがコスト競争力の強い商品を計画しているという話もあるが、鴻海グループとは一緒のビジネスモデルでマーケットを切り開いていくという姿勢を保ちながら協業していく必要があると考えている。そうすると、確かに既存のテレビの世界では差別化が難しくなっていくのかもしれないが、シャープとしては次世代のテレビに活路を見いだしたいと考えている。
Q:テレビ事業については、現在のテレビを作り続けていても将来がないというコメントだが、これは「脱テレビ」という意味合いなのか。
A:鴻海グループとの提携を発表した際にもご説明したが、当社はこれからもデジタル家電分野は逃げるのではなく、戦略協業の中でグローバルに攻めていくという考えを打ち出した。自分たちでつくる製品と、協業を中心とした製品を上手く組み合わせて展開していく。ただ、国内で従来のテレビを、今後作り続けているばかりでは採算が合わないと見ている。従来のテレビの定義を見直しつつ、「IGZO」など独自の新しい技術を活かしながら、場合によっては他の製品ジャンルとフュージョンをして、新しい産業や技術がつくれるものと私は確信している。誤解の無いように言っておくが、当社はテレビ事業をやめるつもりはない。既存のテレビについては規模を縮小していくこともあるだろうが、次世代テレビについては強化していく。その生産を日本で行うことがもっともフィットするのであれば、日本での生産を継続しても良いと考えている。
Q:今の日本の電機業界の大きな課題は何だと捉えている。
A:電機業界はジャパンスペックから、グローバルスペックに変わらなければならないと思う。エレクトロニクスには様々な技術があるが、これを地域のニーズに合わせて、うまく需要を創出しながら地域を拡大していくことも大切だ。これをスピーディーに実現することも必要。まだまだ日本の電機業界にとって、やるべきことはたくさんある。異分野と融合することで、新しい需要が必ず生まれてくると思う。