4K生中継のノウハウを紹介
スカパーJSAT、2度目の「J1リーグ戦・4Kライブ衛星伝送実験」に成功
スカパーJSAT(株)は3月9日、次世代サービスとして実用化を目指す4Kスポーツライブ映像の衛星伝送実験を実施。同日開催されたサッカーJ1リーグ戦の4K生中継を東京の調布=お台場間で実施し、成功を収めた。
今回の実験は、調布・味の素スタジアムで実施されたJ1リーグ戦「FC東京 対 柏レイソル」の試合生中継を、お台場メディアージュのシアターへ伝送。シアター会場に集まった関係者・プレス向けに公開された。
はじめにスカパーJSAT(株)の代表取締役 執行役員社長である高田真治氏が登壇し、挨拶を述べた。
高田氏は「スーパーハイビジョン放送については、総務省の“放送サービスの高度化に関する検討会”で官民を挙げての議論が進んでおり、当社もオールジャパン体制の枠に加わって全力を投じている」とコメント。同社は12年10月に初めて、同社が所有する通信衛星を利用した4K映像伝送を成功させた(関連ニュース)。当時の伝送実験を振り返り、高田氏は「4K放送のためには広い帯域が必要ということで私たちの通信衛星を提供させていただき、チャレンジングな実験を試みた。手探りでの挑戦だったが、当時は5台のカメラを使って実験を行い、仙台とお台場を結んでJリーグの4Kライブ放送を成功させた。ご覧いただいた皆様には大きな反響をいただいた」とした。
2回目の挑戦となる今回は、4Kカメラの台数を7台に増やし、中継のクオリティもさらにこだわったという。高田氏は「今後、日本のテレビ産業が発展するためには、4K/8Kへの取り組みがさらに重要性を増してくると考えている。この取り組みを成功させるためには、私たちが一丸となって進まなければならない。今回の中継を実現するにあたっても、多くのパートナーの方々に協力をいただいたことを感謝したい。今後も4K放送の成功に向けて邁進していきたい」と考えを述べた。
このたびの実験に使われた機材についての説明は、スカパーJSAT(株)プラットフォームサービス部 サービス開発担当主幹の今井豊氏が行った。
中継システムの説明に先駆けて、今井氏は4K映像のメリットについて言及。「4K放送映像は、画素数ではフルHDの4倍だが、ハイビジョン放送がインターレース方式であるのに対して、4K放送はプログレッシブ方式になる。そのため、実際の情報量は8倍にものぼる」とした。
また今回の実験に先駆けて、3月3日に撮影したばかりだという4Kのテスト映像を披露。カメラにはキヤノン「C500/30-300シネレンズ」を、SSD記録にはアストロ「HR-7510」をそれぞれ用いて記録した河津桜の4K撮影映像が紹介された。今井氏は「現在の4Kカメラがどの程度手軽に扱えるものか、試すため撮影を行った。映像編集はAdobe Premiere CS5.5で処理を行い、時間はかかるが、比較的簡単に編集が行えた」と手応えを語った。
続いて本日の4K中継システムの概略が紹介された。昨年実施された第一回目の実験から、今回は4Kカメラによる撮影体制を強化。キヤノン「C500」、アストロ「AH-4413」に加えて、今回はソニー「PMW-F55」とスローカメラのFOR-A「FT-ONE」を追加導入した。
4K撮影の映像は味の素スタジアムに派遣した衛星中継車から送信し、お台場メディアージュのビル屋上に設置したアンテナで受信。シアター常設の4Kプロジェクターで投映した。なお回線容量は約120Mbps、映像圧縮はH.264/MPEG-4 AVCで行い、4K/60pの映像を伝送した。アンテナには今回、可搬型の高い小型のものを使っている。
スタジアムにはキヤノンの4Kカメラ「C500」を配置し、4K撮影した映像をRAW信号のまま取り出して、中継車に搭載したアストロのレコーダー「HB-7513」へ送り込み、リアルタイムRAW現像処理を行う。今回は、4K映像をいったんフルHDの60p映像4枚分に分割してからスイッチャーやエンコーダーに送り出す仕組みを採用した。その理由について今井氏は「4K送信用インターフェースの規格化がまだであることも理由の一つだが、フルHD互換のあるインターフェースを使うことで、既存機器と組み合わせたシステム構築を行うこともできるということを紹介したかった」とした。
またアストロのレコーダー「HB-7513」は8Kによる記録やスロー再生にも対応する。今井氏は「本機は4KやフルHDとの互換性にも優れているので、色々と使い勝手が良いことがわかった。スイッチャーとの接続にも3G-SDIの4バンド接続ができ、全5本の出力のうち4Kで4本、フルHD1本が同時に混在しながらリンクもできる。今回はフルHDの1バンドをディレクターのスイッチング用途に使っている」と説明を加えた。
カメラはメインにキヤノン「C500」と「30-300 CineLens」の組み合わせを3台用意。1台はスタジアム全体を見渡せるメインカメラに、もう1台はセンターカメラに配置して、試合中はピッチ全体の様子やボールの動きを4Kで余すところなく捉える。今井氏は「今回は400インチのシネマスクリーンを使っているため、なるべく画角を広くとって、多くの選手が写せるようなセッティングにした」という。またスタンドからピッチを鋭角に捉えるメインカメラの1台として、アストロの「AH-4413」も使われた。そしてもう1台のキヤノン機は、ピッチをタテ位置で撮るカメラとして配置し、コーナーキックやリプレイ映像の撮影の他、選手たちの表情を捉まえるためのカメラとした。
ピッチ上ゴール裏にはソニーの「PMW-F55」を配置。サポータースタンドを見上げる位置から撮り、サポーターの表情を捉えたり、コーナーキックやゴール付近での臨場感あるプレイを撮影する。
さらに今回は4Kのスローカメラとして「FT-ONE」を導入。今井氏は「このカメラを、4Kで素のままで使うのはたぶん初めて」と語る。本機では通常の4K収録を行いながら、360コマ/秒のスーパースロー撮影も行える。中継の間はシュートシーンなどハイライトのリプレイ映像の記録に活躍した。
中継車については「HD制作用の中継車を使って、4K映像にどこまで対応できるのかを検討している段階」だと、今井氏は話す。本日の中継車は音声用と映像用の2台が用意され、可搬性の高いコンパクトなアンテナで送受信を行ったという。
今井氏は「4Kの映像制作は、当社としても経験不足な面が色々あるが、今後もぜひ皆様からのご意見や力添えをいただきながら、4K放送の発展に貢献していきたい」と説明を結んだ。
今回の実験は、調布・味の素スタジアムで実施されたJ1リーグ戦「FC東京 対 柏レイソル」の試合生中継を、お台場メディアージュのシアターへ伝送。シアター会場に集まった関係者・プレス向けに公開された。
はじめにスカパーJSAT(株)の代表取締役 執行役員社長である高田真治氏が登壇し、挨拶を述べた。
高田氏は「スーパーハイビジョン放送については、総務省の“放送サービスの高度化に関する検討会”で官民を挙げての議論が進んでおり、当社もオールジャパン体制の枠に加わって全力を投じている」とコメント。同社は12年10月に初めて、同社が所有する通信衛星を利用した4K映像伝送を成功させた(関連ニュース)。当時の伝送実験を振り返り、高田氏は「4K放送のためには広い帯域が必要ということで私たちの通信衛星を提供させていただき、チャレンジングな実験を試みた。手探りでの挑戦だったが、当時は5台のカメラを使って実験を行い、仙台とお台場を結んでJリーグの4Kライブ放送を成功させた。ご覧いただいた皆様には大きな反響をいただいた」とした。
2回目の挑戦となる今回は、4Kカメラの台数を7台に増やし、中継のクオリティもさらにこだわったという。高田氏は「今後、日本のテレビ産業が発展するためには、4K/8Kへの取り組みがさらに重要性を増してくると考えている。この取り組みを成功させるためには、私たちが一丸となって進まなければならない。今回の中継を実現するにあたっても、多くのパートナーの方々に協力をいただいたことを感謝したい。今後も4K放送の成功に向けて邁進していきたい」と考えを述べた。
このたびの実験に使われた機材についての説明は、スカパーJSAT(株)プラットフォームサービス部 サービス開発担当主幹の今井豊氏が行った。
中継システムの説明に先駆けて、今井氏は4K映像のメリットについて言及。「4K放送映像は、画素数ではフルHDの4倍だが、ハイビジョン放送がインターレース方式であるのに対して、4K放送はプログレッシブ方式になる。そのため、実際の情報量は8倍にものぼる」とした。
また今回の実験に先駆けて、3月3日に撮影したばかりだという4Kのテスト映像を披露。カメラにはキヤノン「C500/30-300シネレンズ」を、SSD記録にはアストロ「HR-7510」をそれぞれ用いて記録した河津桜の4K撮影映像が紹介された。今井氏は「現在の4Kカメラがどの程度手軽に扱えるものか、試すため撮影を行った。映像編集はAdobe Premiere CS5.5で処理を行い、時間はかかるが、比較的簡単に編集が行えた」と手応えを語った。
続いて本日の4K中継システムの概略が紹介された。昨年実施された第一回目の実験から、今回は4Kカメラによる撮影体制を強化。キヤノン「C500」、アストロ「AH-4413」に加えて、今回はソニー「PMW-F55」とスローカメラのFOR-A「FT-ONE」を追加導入した。
4K撮影の映像は味の素スタジアムに派遣した衛星中継車から送信し、お台場メディアージュのビル屋上に設置したアンテナで受信。シアター常設の4Kプロジェクターで投映した。なお回線容量は約120Mbps、映像圧縮はH.264/MPEG-4 AVCで行い、4K/60pの映像を伝送した。アンテナには今回、可搬型の高い小型のものを使っている。
スタジアムにはキヤノンの4Kカメラ「C500」を配置し、4K撮影した映像をRAW信号のまま取り出して、中継車に搭載したアストロのレコーダー「HB-7513」へ送り込み、リアルタイムRAW現像処理を行う。今回は、4K映像をいったんフルHDの60p映像4枚分に分割してからスイッチャーやエンコーダーに送り出す仕組みを採用した。その理由について今井氏は「4K送信用インターフェースの規格化がまだであることも理由の一つだが、フルHD互換のあるインターフェースを使うことで、既存機器と組み合わせたシステム構築を行うこともできるということを紹介したかった」とした。
またアストロのレコーダー「HB-7513」は8Kによる記録やスロー再生にも対応する。今井氏は「本機は4KやフルHDとの互換性にも優れているので、色々と使い勝手が良いことがわかった。スイッチャーとの接続にも3G-SDIの4バンド接続ができ、全5本の出力のうち4Kで4本、フルHD1本が同時に混在しながらリンクもできる。今回はフルHDの1バンドをディレクターのスイッチング用途に使っている」と説明を加えた。
カメラはメインにキヤノン「C500」と「30-300 CineLens」の組み合わせを3台用意。1台はスタジアム全体を見渡せるメインカメラに、もう1台はセンターカメラに配置して、試合中はピッチ全体の様子やボールの動きを4Kで余すところなく捉える。今井氏は「今回は400インチのシネマスクリーンを使っているため、なるべく画角を広くとって、多くの選手が写せるようなセッティングにした」という。またスタンドからピッチを鋭角に捉えるメインカメラの1台として、アストロの「AH-4413」も使われた。そしてもう1台のキヤノン機は、ピッチをタテ位置で撮るカメラとして配置し、コーナーキックやリプレイ映像の撮影の他、選手たちの表情を捉まえるためのカメラとした。
ピッチ上ゴール裏にはソニーの「PMW-F55」を配置。サポータースタンドを見上げる位置から撮り、サポーターの表情を捉えたり、コーナーキックやゴール付近での臨場感あるプレイを撮影する。
さらに今回は4Kのスローカメラとして「FT-ONE」を導入。今井氏は「このカメラを、4Kで素のままで使うのはたぶん初めて」と語る。本機では通常の4K収録を行いながら、360コマ/秒のスーパースロー撮影も行える。中継の間はシュートシーンなどハイライトのリプレイ映像の記録に活躍した。
中継車については「HD制作用の中継車を使って、4K映像にどこまで対応できるのかを検討している段階」だと、今井氏は話す。本日の中継車は音声用と映像用の2台が用意され、可搬性の高いコンパクトなアンテナで送受信を行ったという。
今井氏は「4Kの映像制作は、当社としても経験不足な面が色々あるが、今後もぜひ皆様からのご意見や力添えをいただきながら、4K放送の発展に貢献していきたい」と説明を結んだ。