4Kソフト普及のキーポイント
【海上忍のAV注目キーワード辞典】第18回:4K時代のビデオコーデック「HEVC」「XAVC」とは?
【第18回:4K時代のビデオコーデック】
■4Kソフト普及のカギは「ビデオコーデック」
2013 International CES(関連記事一覧)で各社が新モデルを発表するなど、新年早々話題をさらった「4Kテレビ」。解像度はフルHDテレビの約4倍、大画面でも粗さを感じさせない緻密な映像は、すでに多くのA&Vファンを魅了している。
その4Kテレビを支える要素には、高解像度/高精細なパネルの製造技術、単純計算でフルHDの4倍に増加した映像データを転送する技術、まだまだ数が少ない4K映像ソースを補う役割が期待されるアップコンバート技術が挙げられる。しかし、より着実に「ネイティブ4K映像」を増やそうとすれば、ソフト面での対応も欠かせない。
ここで問題になるのが「ビデオコーデック」だ。ビデオコーデックは、現在のところテレビ放送ではMPEG-2 TS、Blu-rayディスクではH.264/AVCが主流だが、データ量がフルHDの約4倍に増える4K映像においては、より高い圧縮率が望まれる。圧縮率が高いほうがビットレートを節約でき、効率よくデータ伝送できるぶん、画質にも影響するからだ。
ビデオコーデックは、SoCなどハードウェアレベルで実装されることが多いが、MPEG-2にしてもH.264/AVCにしても「動画の符号化(エンコード)と復号化(デコード)」に関する仕様であり、その仕様に基づいた演算処理を行うソフトウェアだ。ネイティブ4Kの映像リソースが順調に増えるためには、4K時代に即したより高効率なビデオコーデックが必要といえる。
■H.264の後継規格「HEVC」
現在BDソフトなどで主流になっている「H.264/AVC」と呼ばれるビデオコーデックは、ITU(国際通信連合)の電気通信標準化部門である「ITU-T」のビデオ符号化専門家グループと、ISO/IECの動画像符号化専門家グループの共同開発により、2003年に策定された国際標準規格。2004年頃には後継規格についての議論がスタートしており、当初は「H.265/HVC」などの仮称が与えられていたが、2010年には「HEVC(High Efficiency Video Coding)」という名称に落ち着いた。
HEVCの特徴は、その圧縮効率の高さにある。映像の複雑度に合わせ、正方形の画像領域を田の字状(四分木構造)に繰り返し分割することで、高解像度の映像も効率よく圧縮できる。予測技術の高精度化など計算が複雑化することと引き換えに、同等の画質であれば半分程度のビットレートで記録できるとされる。つまり、フルHD比で画素数が約4倍になる4Kネイティブ映像も、約2倍程度のデータ増で符号化できるというのだ。
HEVCが採用されれば、圧縮効率が倍増するためビットレートおよびネットワーク負荷が半減する。一方、計算が複雑になるため、動画のエンコードには2倍程度、デコードには数割程度負荷が増すとされる。まもなく国際標準規格化されることが見込まれており、そうなればネイティブ4K映像の普及にも弾みがつくはずだ。
■ビデオカメラ向け新フォーマット「XAVC」
一方、業務用に4K対応ビデオカメラを展開しているソニーが、4K映像用の新しいビデオフォーマット「XAVC」を発表した(関連ニュース)。近日発売予定の4Kビデオカメラ「PMW-F55」および「PMW-F5」での採用が決定しており、オープンな技術フォーマットとして、まずは映像制作メーカーにライセンスされる予定だ。
XAVCは、コーデックの基盤技術そのものを見直したHEVCとは異なり、従来のH.264/AVCをベースに利用する。データ容量を一定レベルに抑えながら高画質化することを目指しており、8〜12bitまでの映像サンプリング処理を施すことにより、高い階調表現や色再現性を実現する。
XAVCは業務用ビデオカメラへのアプローチであり、60fps(HD撮影は180fpsまで可)というフレームレートや、カラーサンプリング方式は4:4:4と4:2:2、4:2:0に対応するなど、圧縮効率向上にターゲットしたHEVCと目指すところは異なる。
しかし、4Kネイティブ映像資産の増加は大きな課題であり、ファイルフォーマットにMXFをサポートするなど既存の映像制作ワークフローを活用できるという意味で、XAVCもまた4K時代を牽引するコーデックのひとつになると考えられる。民生用AV機器への採用も検討されており、XAVCで記録するポータブルな4Kビデオカメラが発売されそうだ。事実、1月のCESではソニーがXAVCで記録する民生用の4Kビデオカメラ試作機を展示していた。