PS4+ネットワーク連携でゲーム事業促進
ソニー、'15年にモバイル事業を構造改革 − ゲームはクラウドTV「PS Vue」などで収益強化
■モバイル・コミュニケーション分野は、構造改革による“収益の安定”が最優先
次に、ソニーモバイルコミュニケーションズ(株)代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹氏が登壇。改めてモバイル・コミュニケーション分野の今後について具体的な施策を語った。
「Xperia Z3」を中心とした高価格帯スマートフォンの販売増などを理由に、同事業は現時点で2014年度通期の売上高を前年比約2,000億円増の1兆3,500億円と見込んでいる。一方で営業権の減損1,760億円の計上や、マーケティング費用の増加、為替の悪影響、構造改革費用の増加により、営業利益は2,040億円の赤字を見込む。これについて十時氏は「深くお詫び申し上げるとともに、安定した経営の回復に取り組んでいく」と語った。
なお、本年5月時点では営業権の減損影響は除いて1兆5,300億円の売上を見込んでいたが、中国や欧州市場を中心に他社の激しい価格攻勢を受けたことで売上が落ち、上記の通りマイナス1,800億円の下方修正を行った。費用の削減を図るも、期初の利益計画から損益状況は大きく悪化している。
10月に行われた同社の2Q決算発表会時、ソニー(株)業務執行役員SVPとして出席していた十時氏は、「私がやらなければいけないのは収益事業の安定化、強化。具体的には、環境変化の激しい市場なので経営のスピードを上げていけるようにしたい」と意気込みをコメントしていた。
今回語られた施策としては、同事業では市場の成長にあわせてシェアを高めるのではなく、利益率を上げて収益の安定を図るという。そのため2015年に構造改革を実行し、2016年度には安定収益の確保を目指す。具体的には「集中」と「選択」をキーワードに掲げ、大きく4つの取り組みを行う。
1つめは、地域ごとに最適なセールスマーケティング戦略の構築。十時氏によれば現在の本市場は、オープン市場における低価格帯モデルの伸長が著しい一方、オペレーター市場における中・高価格帯の伸びが限定的であるという。現在同社では世界に13の営業組織を設置しているが、十時氏は「各地域におけるオペレーターごとに戦略は異なる」とし、それぞれの投資効率を高め集積管理を強化する目的で、必要に応じて再編も検討する旨を語った。
2つめは、価格競争力の強化のため、商品モデル数の厳選等を通じてハードウェアおよびソフトウェアの開発効率を高める。十時氏は「経営資源を集中し、モデルあたりの収益性改善に取り組むことが重要だ」とした。
3つめは、広告宣伝費の費用対効果の向上を目的に、データベースマーケティングの比重を高め、既存顧客にアプローチすることで継続購買率を高めていく。十時氏によれば「実際にXperiaは既存顧客の満足度が高く、継続購買率は上がっている。既存顧客が周囲にXperia端末を推奨することで、ユーザーを拡大していけるようにしたい」と語った。
そして4つめは、本社機能や間接組織等の再編等の構造改革の推進。十時氏は「何よりも安定した収益を確保できるようにすることが急務」と述べ、「2016年度は損益分岐点を引き下げ、OPEXを約30%削減する。利益率も商品ポートフォリオの見直しを通じて2〜3ポイント改善していく」とした。なお、セールスマーケティング組織再編の具体的な内容や構造改革費用については決まっておらず「今期中のしかるべきタイミングで説明する」という。加えて「売上が30〜40%落ちても収益確保できる体質をつくりたい。具体的な人員数はいえないが、削減の可能性がないとは言い切れない」と述べた。
製品に関しては、「ハイエンドモデルについては、日本において高い利益率を維持することが重要」とコメントし、今後ともハイエンド市場に注力しリソースを割いていくという。一方で、成長率の高いローエンドモデルの扱いについては、「オープン市場では価格競争だけになるため、今までのやり方を踏襲するだけでは難しいだろう。新しい技術を仕込み、新しいコンセプトのプロダクトを作るようなことをしないと、大きな収益はあげられない」と見解を示した。現状におけるスマホ製品のコモディティ化についても触れ、「自社製品にどういう特徴を出していくか、極めて重要なテーマと認識している」とした。
また最後に、ここで語られた「安定した収益とは何か?」という疑問に対して十時氏は、「まず、上場会社として株主へのリターンは常に意識しなくてはならない。それは最低限のこと。加えてソニー全体の中における意味では、“新機能を持ったプロダクト”が、コンシューマーにとってより身近なものとなるこの分野は大事なビジネスであり、それに取り組んでいくことで収益を安定させる。ただ、現在のやり方では事業リスクも高く、成功の安定度合いも低いため、構造改革を実行して新しい取り組みが色々できるようにしたい」とし、「当たり前だが、構造改革は目的でなく手段。変化に耐え、次の事業を実施するために構造改革を実行する。通信機能をもったデバイスはまだまだ色々な発展の可能性がある。そこにチャレンジして、リスクに耐えられる構造を実現したい」と語った。