柱となるのは事業は車載と住宅
パナソニックが事業方針を発表 - 売上10兆円にむけ1兆円を戦略投資
パナソニックは、2015年度事業方針説明会を開催し、2015年度の経営計画を発表した。同社代表取締役社長の津賀一宏氏は、2018年度における売上10兆円という目標を達成するために、1兆円規模の戦略投資を実行すると述べ、テレビ事業部が新設されることもあわせて発表した。
冒頭では2014年度の総括について紹介。2014年度の業績見通しは順調に推移しており、中期計画であるCV2015の目標数字3つのうち、営業利益3500億円以上、累計フリー・キャッシュフロー8000億円以上という目標は1年前倒しで達成できる見通しとした。残るは営業利益率5%以上の達成のみとなる。
構造改革については、赤字7事業の構造改革の方向付けが完了。2014年度は未だ赤字が残る事業もあるものの、黒字化への道筋を付け終えたという意味で、「中期における事業構造改革は完遂したと認識している」とした。また、家電を取り扱う社内カンパニーであるアプライアンス社の傘下にテレビ事業部を新設することも発表。テレビ事業における日本・欧州・アジア・中南米の4地域に集中した商品力強化と地域完結体制の構築による再成長に向け、「ホームエンターテイメント事業部」からテレビ事業関連の機能を移管。テレビ事業に最適な体制を構築していくという。
今後は2018年度の売上10兆円達成を最終目標としながら、目標として掲げた営業利益率5%以上を達成すること、売上成長による利益創出の実現へ大きく舵を切ることを目指していくとのこと。津賀社長は「成長に向けた投資も積極的に実行していく」ともコメントしていた。
2015年度の業績目標は、売上高8兆円、営業利益4300億円、営業利益率5.4%を目指す。そのために、2014年度に営業利益率5%未満だった6つ大規模事業部の売上・利益改善を行う。該当するのは、エアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテインメントシステム、二次電池、パナホームの6事業で、いずれも売上が3000億円以上ある6つの事業となる。これら事業部の収益性が改善できれば、全社における収益への貢献度が上げるとし、6事業部合計で2015年度は+1500億円の売上高、+390億円の営業利益(いずれも‘14年度比)の増加を見込んでいる。これを達成すれば6事業部の営業利益率の合計が従来の3%程度から5%へとアップするという。
営業利益を達成するためには、売上成長が増益を牽引する構造を実現していく。売上目標については、昨年3月の事業方針説明会より2018年度の売上目標を10兆円と掲げてきたが(関連ニュース)、その道のりとして各年度の売上を2015年度は8兆円、2016年度は8.4兆円、2017年度は9.1兆円と定めた。津賀社長は「10兆円達成への目標を明確にした。1年1年を勝負の年だと考えた決意の数字だ」とコメントしていた。
同社の成長を牽引する住宅事業・車載事業についても言及。住宅事業について津賀社長は「当社は家電、設備、そして住宅そのものを併せ持つある意味で唯一の会社」と表現した。新しい暮らしの価値を提供して強みを活かせる事業を展開していく。収益源である国内の住宅設備・サービス事業については強みの物販事業に加えて、“ショートステイ付き”介護サービスなどのエイジフリー事業、リフォーム事業を強化して、事業拡大を行っていく。海外については、ASEAN・台湾における住宅事業に本格的に取り込んでいく。
車載事業について津賀社長は「全社を牽引する事業になると考えている」とコメント。受注が着実に進捗したため、2018年度には2.1兆円規模へ拡大する見込み。15年度の取り組みとしては、ADAS(先進運転支援システム)への先行投資や、競争力のある車載電池の継続投入を行っていく。
海外戦略地域への取り組みについても言及し、開発・製造・販売を一体として、地域完結型経営で家電事業の成長を加速させていくとした。具体的には新たにAPアジアとAP中国を設立。APアジアでは“Japan Premium”で憧れを醸成する製品造りと重点国の徹底攻略、AP中国ではプレミアム商品による富裕層への訴求を行っていく。
2015年度においてはBtoBソリューション事業も全社の柱とし、そのポテンシャルが大きいと考える米国を拠点に活動。AVCネットワークス社の榎戸社長を米国に置き、脱・日本発想によって、グローバルな顧客と密接に関わっていくという。また、M&Aではないについても北米基軸で行うとした。
最後に、2018年度に向け、1兆円規模の戦略投資を実行していくことも発表された。2014年度は2550億の通常設備投資を行ったが、2015年度では通常設備投資を約2800億円、戦略投資を約2000億円行う見通しとした。津賀社長は「大規模投資によって結果的に減損に至った過去を反省し、メリハリを付けて戦略的に投資を行う」と述べた。
以下、質疑応答の模様をお伝えする。
Q.1兆円の戦略投資を行うということは、大型のM&Aも検討しているということか。
A.現時点で具体的な大規模M&Aのイメージはない。数百億円規模のM&Aを基本に、必要なもののみを行っていく。ただし、BtoBソリューションや車載については大規模なM&A対象となる企業が存在する領域であり、可能性はあり得る。しかし、1兆円の戦略投資イコール大規模M&Aを意味するということではない。
Q.1兆円の戦略投資について、各分野でどのような投資を行っていくのか。
A.家電と海外戦略地域については、きっちりとした組織体制を作っていくこと、M&Aでやることではないと考えている。これまで投資を絞ってきた宣伝投資、マーケティング投資については地域と商品を厳選して強化していく。日本の住宅については、リフォームとエイジフリーが中心だが、この分野についてはかなり成熟した領域なので、M&Aも手段としてあり得るとは思っている。車載については、すでに発表している電子ミラーからセイフティー分野へ参入していくので、これを優先させたい。他の分野でもM&Aの対象はあるが、マネージメントが追いつくかどうかという問題もあるので、慎重に進めていく。
Q.テレビについてはどのように採算を改善させていくのか。
A.
テレビについては、マジックがあるわけではない。いかに我々のオペレーションを軽くしていくか。そしてテレビというのはリードタイムが長いため市場のエンドーズに対して不良在庫を産むということに繋がる。いかにマーケットと呼吸を合わせた事業展開ができるのかがポイントとなる。また、新たな価値という点では、テレビの常識を覆すような住空間にマッチしたテレビが開発できるかが問題。やることは限られていると考えている。開発コストや製造拠点をよりライトにしてきつつオペレーション力を高めていく必要がある。
Q/家電の売上については、14年度の2兆円から18年度の2.3兆円に拡大すると目標を掲げているが、どのような方法でこの目標を実現するのか。
2.3兆円という目標はそれほど大きくないと考えている。この目標は、事業の組み替えなど組織の新たな枠組みを作ることで生み出すことだけで達成できる見込みだ。また、家電のコアとなるアジア・中国において、我々はいままで中級以上、あるいはプレミアム価格帯において、本気で勝負できる製品を投入してこなかった。これは「できなかった」のではなく「やらなかった」ということで、今までは日本に過度な注力を行っていた。そこにこれから手を付けていく予定だ。
Q. 10兆円にどこまで近づいてこれたかという手応え
A. 昨年10兆円という目標を掲げた際には、各メディアから「できるわけがないだろう」とぼろくそに言われた。我々はそれに反発して、達成に向けて様々なことをやっている。2014年度については売上高が横ばいなので「10兆円に近づいていないではないか」と言われるかもしれないが、現時点では売上を落としつつ構造改革を行わなくてはならない事業が多かった。しかし構造改革は着実に進んでおり、2015年度は成長する事業の方が多いという状況に持って行く。やるべきことは明確になってきているので、正念場は2016年度になると思う。
Q. なぜ1兆円の戦略投資を行うという決定をこのタイミングで行ったのか。
A.4000億円の社債発行を終えて、各事業からキャッシュを生み出せる体質担ってきた。伸ばせるチャンスがあるときは一気呵成に投資を行う必要がある。これまでは構造改革中心の利益改善を行ってきたが、それが一段落した今、難しい曲面にきていることは十分に認識している。単に売上を上げて利益を上げていくということではなく、パナソニック100周年に向けてどのような戦略を立てていくのかが重要。そういう意味でも10億円という目標を掲げている。
冒頭では2014年度の総括について紹介。2014年度の業績見通しは順調に推移しており、中期計画であるCV2015の目標数字3つのうち、営業利益3500億円以上、累計フリー・キャッシュフロー8000億円以上という目標は1年前倒しで達成できる見通しとした。残るは営業利益率5%以上の達成のみとなる。
構造改革については、赤字7事業の構造改革の方向付けが完了。2014年度は未だ赤字が残る事業もあるものの、黒字化への道筋を付け終えたという意味で、「中期における事業構造改革は完遂したと認識している」とした。また、家電を取り扱う社内カンパニーであるアプライアンス社の傘下にテレビ事業部を新設することも発表。テレビ事業における日本・欧州・アジア・中南米の4地域に集中した商品力強化と地域完結体制の構築による再成長に向け、「ホームエンターテイメント事業部」からテレビ事業関連の機能を移管。テレビ事業に最適な体制を構築していくという。
今後は2018年度の売上10兆円達成を最終目標としながら、目標として掲げた営業利益率5%以上を達成すること、売上成長による利益創出の実現へ大きく舵を切ることを目指していくとのこと。津賀社長は「成長に向けた投資も積極的に実行していく」ともコメントしていた。
2015年度の業績目標は、売上高8兆円、営業利益4300億円、営業利益率5.4%を目指す。そのために、2014年度に営業利益率5%未満だった6つ大規模事業部の売上・利益改善を行う。該当するのは、エアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテインメントシステム、二次電池、パナホームの6事業で、いずれも売上が3000億円以上ある6つの事業となる。これら事業部の収益性が改善できれば、全社における収益への貢献度が上げるとし、6事業部合計で2015年度は+1500億円の売上高、+390億円の営業利益(いずれも‘14年度比)の増加を見込んでいる。これを達成すれば6事業部の営業利益率の合計が従来の3%程度から5%へとアップするという。
営業利益を達成するためには、売上成長が増益を牽引する構造を実現していく。売上目標については、昨年3月の事業方針説明会より2018年度の売上目標を10兆円と掲げてきたが(関連ニュース)、その道のりとして各年度の売上を2015年度は8兆円、2016年度は8.4兆円、2017年度は9.1兆円と定めた。津賀社長は「10兆円達成への目標を明確にした。1年1年を勝負の年だと考えた決意の数字だ」とコメントしていた。
同社の成長を牽引する住宅事業・車載事業についても言及。住宅事業について津賀社長は「当社は家電、設備、そして住宅そのものを併せ持つある意味で唯一の会社」と表現した。新しい暮らしの価値を提供して強みを活かせる事業を展開していく。収益源である国内の住宅設備・サービス事業については強みの物販事業に加えて、“ショートステイ付き”介護サービスなどのエイジフリー事業、リフォーム事業を強化して、事業拡大を行っていく。海外については、ASEAN・台湾における住宅事業に本格的に取り込んでいく。
車載事業について津賀社長は「全社を牽引する事業になると考えている」とコメント。受注が着実に進捗したため、2018年度には2.1兆円規模へ拡大する見込み。15年度の取り組みとしては、ADAS(先進運転支援システム)への先行投資や、競争力のある車載電池の継続投入を行っていく。
海外戦略地域への取り組みについても言及し、開発・製造・販売を一体として、地域完結型経営で家電事業の成長を加速させていくとした。具体的には新たにAPアジアとAP中国を設立。APアジアでは“Japan Premium”で憧れを醸成する製品造りと重点国の徹底攻略、AP中国ではプレミアム商品による富裕層への訴求を行っていく。
2015年度においてはBtoBソリューション事業も全社の柱とし、そのポテンシャルが大きいと考える米国を拠点に活動。AVCネットワークス社の榎戸社長を米国に置き、脱・日本発想によって、グローバルな顧客と密接に関わっていくという。また、M&Aではないについても北米基軸で行うとした。
最後に、2018年度に向け、1兆円規模の戦略投資を実行していくことも発表された。2014年度は2550億の通常設備投資を行ったが、2015年度では通常設備投資を約2800億円、戦略投資を約2000億円行う見通しとした。津賀社長は「大規模投資によって結果的に減損に至った過去を反省し、メリハリを付けて戦略的に投資を行う」と述べた。
以下、質疑応答の模様をお伝えする。
Q.1兆円の戦略投資を行うということは、大型のM&Aも検討しているということか。
A.現時点で具体的な大規模M&Aのイメージはない。数百億円規模のM&Aを基本に、必要なもののみを行っていく。ただし、BtoBソリューションや車載については大規模なM&A対象となる企業が存在する領域であり、可能性はあり得る。しかし、1兆円の戦略投資イコール大規模M&Aを意味するということではない。
Q.1兆円の戦略投資について、各分野でどのような投資を行っていくのか。
A.家電と海外戦略地域については、きっちりとした組織体制を作っていくこと、M&Aでやることではないと考えている。これまで投資を絞ってきた宣伝投資、マーケティング投資については地域と商品を厳選して強化していく。日本の住宅については、リフォームとエイジフリーが中心だが、この分野についてはかなり成熟した領域なので、M&Aも手段としてあり得るとは思っている。車載については、すでに発表している電子ミラーからセイフティー分野へ参入していくので、これを優先させたい。他の分野でもM&Aの対象はあるが、マネージメントが追いつくかどうかという問題もあるので、慎重に進めていく。
Q.テレビについてはどのように採算を改善させていくのか。
A.
テレビについては、マジックがあるわけではない。いかに我々のオペレーションを軽くしていくか。そしてテレビというのはリードタイムが長いため市場のエンドーズに対して不良在庫を産むということに繋がる。いかにマーケットと呼吸を合わせた事業展開ができるのかがポイントとなる。また、新たな価値という点では、テレビの常識を覆すような住空間にマッチしたテレビが開発できるかが問題。やることは限られていると考えている。開発コストや製造拠点をよりライトにしてきつつオペレーション力を高めていく必要がある。
Q/家電の売上については、14年度の2兆円から18年度の2.3兆円に拡大すると目標を掲げているが、どのような方法でこの目標を実現するのか。
2.3兆円という目標はそれほど大きくないと考えている。この目標は、事業の組み替えなど組織の新たな枠組みを作ることで生み出すことだけで達成できる見込みだ。また、家電のコアとなるアジア・中国において、我々はいままで中級以上、あるいはプレミアム価格帯において、本気で勝負できる製品を投入してこなかった。これは「できなかった」のではなく「やらなかった」ということで、今までは日本に過度な注力を行っていた。そこにこれから手を付けていく予定だ。
Q. 10兆円にどこまで近づいてこれたかという手応え
A. 昨年10兆円という目標を掲げた際には、各メディアから「できるわけがないだろう」とぼろくそに言われた。我々はそれに反発して、達成に向けて様々なことをやっている。2014年度については売上高が横ばいなので「10兆円に近づいていないではないか」と言われるかもしれないが、現時点では売上を落としつつ構造改革を行わなくてはならない事業が多かった。しかし構造改革は着実に進んでおり、2015年度は成長する事業の方が多いという状況に持って行く。やるべきことは明確になってきているので、正念場は2016年度になると思う。
Q. なぜ1兆円の戦略投資を行うという決定をこのタイミングで行ったのか。
A.4000億円の社債発行を終えて、各事業からキャッシュを生み出せる体質担ってきた。伸ばせるチャンスがあるときは一気呵成に投資を行う必要がある。これまでは構造改革中心の利益改善を行ってきたが、それが一段落した今、難しい曲面にきていることは十分に認識している。単に売上を上げて利益を上げていくということではなく、パナソニック100周年に向けてどのような戦略を立てていくのかが重要。そういう意味でも10億円という目標を掲げている。