ヘッドホンアンプにも注力
<IFA>ソニー、デジタル専用で“ES”技術継承の高級コンパクトオーディオ「CAS-1」
IFA2015に出展するソニーは、現地時間2日にプレスカンファレンスを開催。ハイレゾ対応のコンパクトHiFiオーディオシステム「CAS-1」を新製品として発表した。ヨーロッパでの発売時期は10月頃になる見込み。価格は900ユーロ(約12万円)前後での販売が予定されている。
■USB経由のハイレゾ再生、LDACを含むBluetooth再生に入力を絞ったシンプルな構成
本体はアンプとUSB-DAC機能を内蔵するセンターユニットとステレオスピーカーによるセパレートタイプの3ピース構成。ハイレゾ音源をスピーカーとヘッドホンの両方を使っていい音で楽しめるコンパクトオーディオシステムとして、ヘッドホンアンプも内蔵した。センターユニットとスピーカーの本体の高さは約178mm、奥行きは180mm。3ピースを横に並べた幅はおよそ250mmほど。デスクトップに置いてPCオーディオ環境をグレードアップしたり、LDAC対応のBluetoothワイヤレスオーディオ再生機能により、スマホやタブレットによるモバイルオーディオ再生もワンランク上の環境づくりが狙える。
ハイレゾ再生は本体背面のUSB-B端子にUSBケーブルでPCを接続したり、USBマスストレージに保存したファイルを、本体フロントパネルのUSB-A端子に接続して楽しめる。リニアPCM系は最大192kHz/24bitまでのWAV/FLAC/ALAC/AIFFをサポート。DSDは最大2.8MHzのファイルをリニアPCM変換により再生できる。
CDリッピングやBluetooth、音楽配信系のソースも最大192kHz/24bitまでアップスケーリング・ビット拡張する「DSEE HX」も搭載。機能はデフォルトでONになっているが、Bluetooth接続されたモバイル機器にインストールした「SongPal」アプリから切り替えることができる。
BluetoothのオーディオコーデックはLDACのほか、AACとSBCに対応。aptXには非対応とした。NFCによるワンタッチペアリングをサポートしており、タッチポイントはセンターユニットの天面にある。
シンプルに、かつ高音質にオーディオを楽しむためのコンポーネントとして用途を絞り込むため、あえてアナログ入力端子や光デジタル入力、ネットワーク端子などは設けられていないことが本機の特徴になっている。USB-A/USB-B/Bluetoothの入力切り替え操作はセンターユニットの上部ボタン、または付属のリモコン、SongPalアプリから行う。フロントパネルには3.5mmのステレオヘッドホン出力端子、背面には2段階のゲイン切り替えを設けた。
さらに夜間の音楽再生時にヘッドホンだけでなくスピーカーでもいい音が楽しめるよう、小音量再生時に高域・低域を補正して、しっかりと実の詰まった音楽再生を実現するオプティマイズ機能「Low Volume Mode(LVM)」が実装されている。
本体カラーはセンターユニットがマットなブラックフィニッシュ。スピーカーは木目を残したダークブラウンの落ち着いた色合いに仕上げている。
■上位グレード「ESシリーズ」の高音質化技術を盛り込んだ
ソニーのコンポーネントオーディオの上位グレードである「ESシリーズ」のエッセンスをそのままに、デスクトップで楽しめる小さな筐体に組み込むことが本機を開発する上の命題だったと語るのは、商品企画を担当したソニー(株)ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 企画マーケティング部門 Sound商品企画部 企画2課 プロダクトプランナーの三浦愛氏だ。
本機に投入された高音質再生のための技術を順に紹介していこう。まずはハイレゾを「スピーカーでも、ヘッドホンでも」楽しめるよう、それぞれの回路にソニー独自開発のフルデジタルアンプ「S-Master HX」を独立配置した「デュアルアンプ」だ。スピーカー出力時の最大出力は24W×2(5Ω)。ヘッドホンアンプは180mW×2(32Ω)。
コンパクトでスリムなセンターユニットには、スピーカーとヘッドホンそれぞれに独立したアンプを内蔵。スピーカー用のアンプと電源部を搭載する基板、マイコン系とDSP、USBインターフェースコントローラーにヘッドホンアンプを乗せた基板を内部で向かい合わせに配置している。デジタルとアナログの回路が重なるような内部配置になっているが、スピーカーとヘッドホンの回路を排他動作として、片側が駆動している時にはもう片側の回路の電源をシャットダウンすることで互いに影響を及ぼさないよう設計している。なお、ヘッドホンとスピーカーのリスニングを切り替える操作方法は、本体にヘッドホンを接続すればヘッドホン側が、外すとスピーカー側の出力がアクティブになる仕組みだ。
フルデジタルアンプの「S-Master HX」はソニーが10年以上前から開発を続けてきた技術を集めて、今回PWMプロセッサーを新規に設計した。この3〜4年の間にも半導体技術が格段に進化したため、その好影響がノイズシェイパーやサンプル周波数コンバーターの性能向上に表れているという。最新のチップはスピードとパワーが向上していることから、40kHz付近までノイズを抑え、以降のノイズの立ち上がりも緩いまま制御できる。デジタルデータの演算処理により、ノイズを高域に追いやって全体にノイズフロアを低く下げた。この技術進化により、CAS-1ではコンパクトながらリアルな音場感をつくり出すことを可能にしている。
小音量時のデータ欠損を防ぐため、スピーカーをドライブするためのパワーアンプの電源電圧を可変させ、ビットを圧縮することで音量調整を行う「パルスハイトボリューム」を採用。ハイレゾを含むデジタル音源の情報量を残したままボリュームを調節するという、同社のESシリーズで培ってきた技術が、CAS-1の特徴である「Low Volume Mode」での高品位再生につながっている。
CAS-1では本体を小さくするため、AC/DCアダプターが付属している。ACアダプターから供給されるノイズを含んだ電源を、パッシブとアクティブフィルターによりノイズ成分を2Wayで除去しながら低ノイズ化し、同時に音量調節のための電源電圧可変も行いながらパワーアンプに供給する「コンビネーション電源回路」も採用した。これをアンプ基板内に搭載することで、ダンピングファクターの改善も図っている。
「Low Volume Mode」はソニーがサウンド・オプティマイザーと呼び、ラウドネスカーブを制御する技術としてAVアンプやサウンドバーの製品に搭載してきたものを応用して完成させたものだ。CAS-1の特性に合わせてアルゴリズムの再調整を行い、「ボリュームが小さいときにも十分に音楽を聴いている感覚」が楽しめる音に仕上げた。聴感上の音圧を確保しながら、ボリュームを下げても聴こえやすいボーカルの帯域には変更を加えず、反対に聴きづらくなる高域・低域のみを適切な量に補正する。本機能はメインボリュームを50%以下に落としてスピーカー再生で音楽を聴いている時に有効となるもので、付属リモコンに設けられた「LVM」のボタンを押してON/OFFを切り替える。
■CAS-1のために最適な部品も新規に開発
本体の音質を磨き上げるため、部品の選定にもこだわった。クロックはAVアンプのESシリーズでも採用されているハイグレードな低位相ノイズの水晶発振器がそのまま搭載されている。水晶発振子だけを購入し、独自に選定したアンプを付けた方が製造コストを抑えられるが、低位相ノイズの水晶発振器は、発振子だけではなくアンプとの組み合わせで性能が引き出されることに同社のエンジニアは着目。そのため、最初から発振子とアンプがワンチップになっている水晶発振器を採用して、安定した性能を出すことを優先した。
トロイダルコイルは新規に開発。CAS-1のセットの本体を小型化するため、同社のエンジニアは改めて様々なタイプのコイルを試聴。コアの材料の種類、導線のメーカーやワニスのかけ方、チューブの被せ方など様々な条件のサンプルを試作、リスニングを繰り返しながらCAS-1の目指す音にフィットした大型トロイダルコイルを開発・搭載した。
本機に搭載する電解コンデンサーも新開発のパーツだ。一般的な電解コンデンサーは、部品を装着する工程ではんだ層に入れる際、高熱による内圧でケースが膨張するのを抑えるためにアルミケースの外側に高張力のPETフィルムをかけているが、これが内部のエレメントにストレスをかけてしまうことで音質の劣化を招くと言われている。今回新しく開発された電解コンデンサーは、電解液や電解紙、スリーブまでをそれぞれのメーカーと共同に検討しながら高音質部品として作り上げたものを採用している。部品の開発中には、試作したコンデンサーを基板に熱処理をかけて装着したものを一つ一つ試聴するという、ESグレードの製品で培ってきた開発のノウハウを注ぎ込んできた。
このコイルとコンデンサーが最終的にS-Masterから出力されるパルスを滑らかにしながらアナログ信号に戻すため、両方の部品がセットの音に与える影響は大きいという。そのため、同社のエンジニアは今回、従来品をそのまま利用するのではなく「CAS-1にふさわしいものが無ければ、新規に起こす」という一歩踏み込んだスタンスのもと手間をかけて音質を練り上げてきた。
ヘッドホンアンプ部には同社のポータブルヘッドホンアンプ「PHA-2」と同じ主要デバイスを採用。DACチップにはTIの「PCM1795」が選ばれているほか、電子ボリュームICは新日本無線の「NJW1194」、ヘッドホンアンプICはTIの「TPA6120」としている。
■デスクトップリスニングでの高音質を徹底追求したスピーカー
セットのスピーカーには「SS-HW5」という型番が与えられているが単品販売はなさそうだ。形式はバスレフ型2ウェイ・スピーカー。ESシリーズの上位スピーカーを継承する明確な音像定位とサウンドステージの創出を追求した。
62mmのウーファーユニットには高比重のモールドフレームを採用。磁性体のフレームで発生する渦電流をモールドフレームにすることで防ぎながら歪みを低減。高比重なモールド樹脂がユニットの振動を抑える効果ももたらしている。コーンの素材にはカーボンファイバーを採用。固く軽量な素材が強力な磁気回路とバランスを取りながら芯のある低音再生を可能にする。さらにスピーカー動作時のインダクタンスの増減や歪みを抑えるため、ショートリングの役割を担う銅リングと銅キャップを装着している。
トゥイーターは14mm口径のソフトドーム。広指向性のユニットとすることで、ハイレゾならではの空気感やワイドな音場を再現する。再生周波数帯域は60Hzから上は50kHzまでをカバーしている。
ネットワークにはフィルムコンデンサーや上質なコイルを使用。音楽情報の欠損を最小限に抑えながら歪みを低減、繊細なニュアンスの再現を可能にする。
キャビネットはバッフル板に12mm厚のMDFを採用。キャビネット自体にも美しい響きを持たせるため、天板と胴板にはバーチ合板が使われている。内部には補強のためのブレージングを施し、吸音材で響きもコントロールしている。塗装も高級感を重視して、木目を残しながら丁寧に仕上げている。
バスレフポートは本体の底面に配置。さらに前と左右に開口部のフレアを広げたデザインとすることで、デスクトップなどリスナーの側に効果的に音を広げる工夫も凝らした。口径の小さいダクトで発生しがちな風切り音やダクトノイズもフレアを大きくすることで回避ができ、ニアフィールドでのリスニング感向上につなげられる。
スピーカー底部には4点の制振スパイクを採用。真鍮製のスパイクは着脱可能として、前面側は通常の仰角0度のものを交換し、付属する仰角8度のスパイクに履き替えることで、スピーカーの角度をリスナー側に向けて最適な方向に振ることができる。さらに本体パッケージには鉄製のスピーカーベース(鉄板)を同梱。デスクトップリスニング時のテーブルの鳴きが効果的に抑えられる。
背面のスピーカー端子はケーブル交換が楽しめるスクリュータイプ。バナナプラグにも対応する。
■USB経由のハイレゾ再生、LDACを含むBluetooth再生に入力を絞ったシンプルな構成
本体はアンプとUSB-DAC機能を内蔵するセンターユニットとステレオスピーカーによるセパレートタイプの3ピース構成。ハイレゾ音源をスピーカーとヘッドホンの両方を使っていい音で楽しめるコンパクトオーディオシステムとして、ヘッドホンアンプも内蔵した。センターユニットとスピーカーの本体の高さは約178mm、奥行きは180mm。3ピースを横に並べた幅はおよそ250mmほど。デスクトップに置いてPCオーディオ環境をグレードアップしたり、LDAC対応のBluetoothワイヤレスオーディオ再生機能により、スマホやタブレットによるモバイルオーディオ再生もワンランク上の環境づくりが狙える。
ハイレゾ再生は本体背面のUSB-B端子にUSBケーブルでPCを接続したり、USBマスストレージに保存したファイルを、本体フロントパネルのUSB-A端子に接続して楽しめる。リニアPCM系は最大192kHz/24bitまでのWAV/FLAC/ALAC/AIFFをサポート。DSDは最大2.8MHzのファイルをリニアPCM変換により再生できる。
CDリッピングやBluetooth、音楽配信系のソースも最大192kHz/24bitまでアップスケーリング・ビット拡張する「DSEE HX」も搭載。機能はデフォルトでONになっているが、Bluetooth接続されたモバイル機器にインストールした「SongPal」アプリから切り替えることができる。
BluetoothのオーディオコーデックはLDACのほか、AACとSBCに対応。aptXには非対応とした。NFCによるワンタッチペアリングをサポートしており、タッチポイントはセンターユニットの天面にある。
シンプルに、かつ高音質にオーディオを楽しむためのコンポーネントとして用途を絞り込むため、あえてアナログ入力端子や光デジタル入力、ネットワーク端子などは設けられていないことが本機の特徴になっている。USB-A/USB-B/Bluetoothの入力切り替え操作はセンターユニットの上部ボタン、または付属のリモコン、SongPalアプリから行う。フロントパネルには3.5mmのステレオヘッドホン出力端子、背面には2段階のゲイン切り替えを設けた。
さらに夜間の音楽再生時にヘッドホンだけでなくスピーカーでもいい音が楽しめるよう、小音量再生時に高域・低域を補正して、しっかりと実の詰まった音楽再生を実現するオプティマイズ機能「Low Volume Mode(LVM)」が実装されている。
本体カラーはセンターユニットがマットなブラックフィニッシュ。スピーカーは木目を残したダークブラウンの落ち着いた色合いに仕上げている。
■上位グレード「ESシリーズ」の高音質化技術を盛り込んだ
ソニーのコンポーネントオーディオの上位グレードである「ESシリーズ」のエッセンスをそのままに、デスクトップで楽しめる小さな筐体に組み込むことが本機を開発する上の命題だったと語るのは、商品企画を担当したソニー(株)ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 企画マーケティング部門 Sound商品企画部 企画2課 プロダクトプランナーの三浦愛氏だ。
本機に投入された高音質再生のための技術を順に紹介していこう。まずはハイレゾを「スピーカーでも、ヘッドホンでも」楽しめるよう、それぞれの回路にソニー独自開発のフルデジタルアンプ「S-Master HX」を独立配置した「デュアルアンプ」だ。スピーカー出力時の最大出力は24W×2(5Ω)。ヘッドホンアンプは180mW×2(32Ω)。
コンパクトでスリムなセンターユニットには、スピーカーとヘッドホンそれぞれに独立したアンプを内蔵。スピーカー用のアンプと電源部を搭載する基板、マイコン系とDSP、USBインターフェースコントローラーにヘッドホンアンプを乗せた基板を内部で向かい合わせに配置している。デジタルとアナログの回路が重なるような内部配置になっているが、スピーカーとヘッドホンの回路を排他動作として、片側が駆動している時にはもう片側の回路の電源をシャットダウンすることで互いに影響を及ぼさないよう設計している。なお、ヘッドホンとスピーカーのリスニングを切り替える操作方法は、本体にヘッドホンを接続すればヘッドホン側が、外すとスピーカー側の出力がアクティブになる仕組みだ。
フルデジタルアンプの「S-Master HX」はソニーが10年以上前から開発を続けてきた技術を集めて、今回PWMプロセッサーを新規に設計した。この3〜4年の間にも半導体技術が格段に進化したため、その好影響がノイズシェイパーやサンプル周波数コンバーターの性能向上に表れているという。最新のチップはスピードとパワーが向上していることから、40kHz付近までノイズを抑え、以降のノイズの立ち上がりも緩いまま制御できる。デジタルデータの演算処理により、ノイズを高域に追いやって全体にノイズフロアを低く下げた。この技術進化により、CAS-1ではコンパクトながらリアルな音場感をつくり出すことを可能にしている。
小音量時のデータ欠損を防ぐため、スピーカーをドライブするためのパワーアンプの電源電圧を可変させ、ビットを圧縮することで音量調整を行う「パルスハイトボリューム」を採用。ハイレゾを含むデジタル音源の情報量を残したままボリュームを調節するという、同社のESシリーズで培ってきた技術が、CAS-1の特徴である「Low Volume Mode」での高品位再生につながっている。
CAS-1では本体を小さくするため、AC/DCアダプターが付属している。ACアダプターから供給されるノイズを含んだ電源を、パッシブとアクティブフィルターによりノイズ成分を2Wayで除去しながら低ノイズ化し、同時に音量調節のための電源電圧可変も行いながらパワーアンプに供給する「コンビネーション電源回路」も採用した。これをアンプ基板内に搭載することで、ダンピングファクターの改善も図っている。
「Low Volume Mode」はソニーがサウンド・オプティマイザーと呼び、ラウドネスカーブを制御する技術としてAVアンプやサウンドバーの製品に搭載してきたものを応用して完成させたものだ。CAS-1の特性に合わせてアルゴリズムの再調整を行い、「ボリュームが小さいときにも十分に音楽を聴いている感覚」が楽しめる音に仕上げた。聴感上の音圧を確保しながら、ボリュームを下げても聴こえやすいボーカルの帯域には変更を加えず、反対に聴きづらくなる高域・低域のみを適切な量に補正する。本機能はメインボリュームを50%以下に落としてスピーカー再生で音楽を聴いている時に有効となるもので、付属リモコンに設けられた「LVM」のボタンを押してON/OFFを切り替える。
■CAS-1のために最適な部品も新規に開発
本体の音質を磨き上げるため、部品の選定にもこだわった。クロックはAVアンプのESシリーズでも採用されているハイグレードな低位相ノイズの水晶発振器がそのまま搭載されている。水晶発振子だけを購入し、独自に選定したアンプを付けた方が製造コストを抑えられるが、低位相ノイズの水晶発振器は、発振子だけではなくアンプとの組み合わせで性能が引き出されることに同社のエンジニアは着目。そのため、最初から発振子とアンプがワンチップになっている水晶発振器を採用して、安定した性能を出すことを優先した。
トロイダルコイルは新規に開発。CAS-1のセットの本体を小型化するため、同社のエンジニアは改めて様々なタイプのコイルを試聴。コアの材料の種類、導線のメーカーやワニスのかけ方、チューブの被せ方など様々な条件のサンプルを試作、リスニングを繰り返しながらCAS-1の目指す音にフィットした大型トロイダルコイルを開発・搭載した。
本機に搭載する電解コンデンサーも新開発のパーツだ。一般的な電解コンデンサーは、部品を装着する工程ではんだ層に入れる際、高熱による内圧でケースが膨張するのを抑えるためにアルミケースの外側に高張力のPETフィルムをかけているが、これが内部のエレメントにストレスをかけてしまうことで音質の劣化を招くと言われている。今回新しく開発された電解コンデンサーは、電解液や電解紙、スリーブまでをそれぞれのメーカーと共同に検討しながら高音質部品として作り上げたものを採用している。部品の開発中には、試作したコンデンサーを基板に熱処理をかけて装着したものを一つ一つ試聴するという、ESグレードの製品で培ってきた開発のノウハウを注ぎ込んできた。
このコイルとコンデンサーが最終的にS-Masterから出力されるパルスを滑らかにしながらアナログ信号に戻すため、両方の部品がセットの音に与える影響は大きいという。そのため、同社のエンジニアは今回、従来品をそのまま利用するのではなく「CAS-1にふさわしいものが無ければ、新規に起こす」という一歩踏み込んだスタンスのもと手間をかけて音質を練り上げてきた。
ヘッドホンアンプ部には同社のポータブルヘッドホンアンプ「PHA-2」と同じ主要デバイスを採用。DACチップにはTIの「PCM1795」が選ばれているほか、電子ボリュームICは新日本無線の「NJW1194」、ヘッドホンアンプICはTIの「TPA6120」としている。
■デスクトップリスニングでの高音質を徹底追求したスピーカー
セットのスピーカーには「SS-HW5」という型番が与えられているが単品販売はなさそうだ。形式はバスレフ型2ウェイ・スピーカー。ESシリーズの上位スピーカーを継承する明確な音像定位とサウンドステージの創出を追求した。
62mmのウーファーユニットには高比重のモールドフレームを採用。磁性体のフレームで発生する渦電流をモールドフレームにすることで防ぎながら歪みを低減。高比重なモールド樹脂がユニットの振動を抑える効果ももたらしている。コーンの素材にはカーボンファイバーを採用。固く軽量な素材が強力な磁気回路とバランスを取りながら芯のある低音再生を可能にする。さらにスピーカー動作時のインダクタンスの増減や歪みを抑えるため、ショートリングの役割を担う銅リングと銅キャップを装着している。
トゥイーターは14mm口径のソフトドーム。広指向性のユニットとすることで、ハイレゾならではの空気感やワイドな音場を再現する。再生周波数帯域は60Hzから上は50kHzまでをカバーしている。
ネットワークにはフィルムコンデンサーや上質なコイルを使用。音楽情報の欠損を最小限に抑えながら歪みを低減、繊細なニュアンスの再現を可能にする。
キャビネットはバッフル板に12mm厚のMDFを採用。キャビネット自体にも美しい響きを持たせるため、天板と胴板にはバーチ合板が使われている。内部には補強のためのブレージングを施し、吸音材で響きもコントロールしている。塗装も高級感を重視して、木目を残しながら丁寧に仕上げている。
バスレフポートは本体の底面に配置。さらに前と左右に開口部のフレアを広げたデザインとすることで、デスクトップなどリスナーの側に効果的に音を広げる工夫も凝らした。口径の小さいダクトで発生しがちな風切り音やダクトノイズもフレアを大きくすることで回避ができ、ニアフィールドでのリスニング感向上につなげられる。
スピーカー底部には4点の制振スパイクを採用。真鍮製のスパイクは着脱可能として、前面側は通常の仰角0度のものを交換し、付属する仰角8度のスパイクに履き替えることで、スピーカーの角度をリスナー側に向けて最適な方向に振ることができる。さらに本体パッケージには鉄製のスピーカーベース(鉄板)を同梱。デスクトップリスニング時のテーブルの鳴きが効果的に抑えられる。
背面のスピーカー端子はケーブル交換が楽しめるスクリュータイプ。バナナプラグにも対応する。