15年度見通しも下方修正
パナソニック、売上10兆円目標は撤回し利益重視へ。'16年度は“意思を込めた減益”に
パナソニック(株)は本日、2016年度事業方針説明会を開催した。会見では同社代表取締役社長の津賀一宏氏が登壇し、2015年度の総括と2016年度の経営計画を発表。また、昨年時点で2018年度の売上目標に掲げていた10兆円という金額規模を引き下げ、利益成長を重視した経営にシフトする旨を語った。
■「増収による増益の構図」を作れず。'15年度通期売上高・営業利益とも下方修正
パナソニックでは、2014年度が終了した段階で営業利益3,500億円以上/利益率5%以上、フリーキャッシュ・フロー6,000億円以上という中期経営計画を前倒しで達成しており、そこから続く2015年度を「売上成長による利益創出の年」と位置づけていた。
2018年度の売上高10兆円を目標に、2015年は大規模6事業部(エアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテインメントシステム、二次電池、パナホーム)における戦略投資の仕込みを実施。しかし、当初掲げていた売上げ目標は結果的に大幅な未達に終わり、大規模6事業部とも売上げを牽引できなかった。その他の事業部も、当初の売上げ目標を下回った。
これにより同社では、2015年度の通期業績見通しを、売上高・営業利益とも当初発表していた数値から下方修正。売上高は当初の8兆円から4,500億円減の7兆5,500億円、営業利益は当初の4,300億円から200億円減の4,100億円に、それぞれ修正した。
津賀氏は「“増収による増益”の構図を作れなかった。経営環境変化への社内の対応力に問題があったことが大きい」とコメント。しかし「経営体質は着実に強化されてきており、合理化・構成差等で前年比からの増益は確保できた。また、ハスマン社の買収など将来の成長に向けた仕込みも進展している」とし、各事業部における体制は見直しつつも、「増収増益の実現」に向けた成長戦略は今後も変わらないことを語った。
「お客様へのお役立ちを創出する会社であることが、パナソニックの目指す姿。お客様へのお役立ちを提供した報酬として利益があると思っている。つまりお客様へのお役立ちを創出し続けることが、利益の継続的な創出を意味する。中期的に目指すのは利益成長であり、売上げはその1つの方法である」(津賀氏)。
■'18年度の売上目標10兆円は8.8兆円に引き下げ。利益成長重視に
続いて津賀氏は、グループ内における事業領域の見直しについて説明した。これまでは「家電」「住宅」「車載」「BtoBソリューション」「デバイス」という5つで考えていたが、今後は新たな成長を作る「家電/住宅/車載」と、高収益を実現する「BtoB」に分けて考え、「デバイス」に関しては各事業部それぞれで該当する部分を担い、専業メーカーに対抗していく。
「家電/住宅/車載」は明確に成長の軌道に乗りつつあるとのことで、2020年度以降に営業利益3,000億円以上(利益率5%以上)の規模へ成長を目指す。BtoBの方は、より地域を明確にして確実に高収益がとれるビジネスモデルの構築を目指しており、2020年に、やはり営業利益3,000億円規模で利益率10%を目標に取り組むという。
また、今後とも個別事業部での取り組みを重要視し、立地・競争力に応じた事業戦略を実行する。「家電/住宅/車載」を含む高成長事業には、思い切ってリソースを集中させ、積極的な先行投資を実施し、1兆円戦略投資を継続して実施。ここで売上げと利益成長を牽引していく。また安定成長事業では、競争力を強化し、着実な売上げと利益創出を目指す。
なお、デジタルAV事業が含まれる収益改善事業では、売上げを追わず利益率の向上を追求していくという。そのため具体的にどうするかという部分については、あくまでもたくさんある可能性の1つとして「将来の発展に向けた事業売却もオプションの1つではある」と語った。人員削減の可能性については、「小規模なテコ入れは各事業部とも継続的に行う必要があるが、大規模なものは既に終えたという認識」と述べた。なお、姫路に工場を構える液晶パネル事業に関しては「非常に難しい事業」とし、「テレビでの改善は現実的ではない」と、パネル供給で運営する可能性を検討しているようだ。
これら事業領域の見直しに伴い、2018年度の売上げ目標も変更された。既述の通り、昨年時点では2018年度に売上高10兆円を目指していたが、これを8.8兆円に引き下げる。事業領域別の内訳は、家電で2.3兆円、住宅で1.6兆円、車載で2.0兆円、BtoBで2.9兆円を、それぞれ目標にしている。
これに伴い、2018年度の営業利益は「家電/住宅/車載」で3,000億円、「BtoB」で2,000億円を目指す。同社では主に、住宅と車載の領域で成長を見込んでいる。そしてグループ全体における2018年度の目標は、営業利益5,000億円、純利益2,500億円以上。津賀氏は「ここ数年の構造改革で経営体質が改善し、やっと純利益の成長を考えられるようになった」と語った。「2018年の売上げ10兆円という目標は、従業員全体で成長を見いだすために掲げた数値だった。それが2015年の通期業績の下方修正で発射台が下がったこともあり、また、必ずしも売上げを追うことが適切なわけではないことも見えてきた」とし、成長戦略は継続しながら、より適切な目標値に変更したことを説明した。
■'16年度は将来の利益に繋がる先行投資の年。「意思を込めた減益」
津賀氏は、上述の中期経営計画に基づく2016年度を「成長への足場固めの年」と位置づけた。
2016年通期の売上高は7兆5,000億円、営業利益は3,750億円を目標にする。これはハスマン買収による効果や、ICTの成長が続くこと等を見込んだ上での目標数値となる。売上高は前年並み、営業利益は減益となるが、津賀氏は「将来の成長に向けた積極的な先行投資を行うため」とその理由を述べた。
2016年は、将来の売上げ・利益につながる先行投資を積極的に行う予定であるため、結果的に固定費増になり減益を見込むという形だ。主に車載、住宅等の分野が先行投資の対象で、500億円規模の固定費増を見込んでいる。津賀氏はこれを「意思を込めた減益」と表現した。
なお、質疑応答で上がった「現在機構改革を行っているソニー(関連ニュース)の動きから学びはあったか?」との問いに津賀氏は、「多くを学ばせて頂いている。しかし改革に着手したのは私たちの方が早かった。ソニーさんの方が出遅れたが、いま一気にやられている形だと思うので、私たちも負けずに改革したい。そういう意味でも、ソニーさんを良きライバルと思って取り組みたい」と答えた。
改めて津賀氏は今後について、「積極的な先行投資と1兆円の戦略投資を引き続き行う。2017年には増収/増益を実現し、2018年には増収/増益体質をしっかり定着させる」とコメント。そして「2020年にパナソニックが目指す姿を実現する」と語った。
■「増収による増益の構図」を作れず。'15年度通期売上高・営業利益とも下方修正
パナソニックでは、2014年度が終了した段階で営業利益3,500億円以上/利益率5%以上、フリーキャッシュ・フロー6,000億円以上という中期経営計画を前倒しで達成しており、そこから続く2015年度を「売上成長による利益創出の年」と位置づけていた。
2018年度の売上高10兆円を目標に、2015年は大規模6事業部(エアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテインメントシステム、二次電池、パナホーム)における戦略投資の仕込みを実施。しかし、当初掲げていた売上げ目標は結果的に大幅な未達に終わり、大規模6事業部とも売上げを牽引できなかった。その他の事業部も、当初の売上げ目標を下回った。
これにより同社では、2015年度の通期業績見通しを、売上高・営業利益とも当初発表していた数値から下方修正。売上高は当初の8兆円から4,500億円減の7兆5,500億円、営業利益は当初の4,300億円から200億円減の4,100億円に、それぞれ修正した。
津賀氏は「“増収による増益”の構図を作れなかった。経営環境変化への社内の対応力に問題があったことが大きい」とコメント。しかし「経営体質は着実に強化されてきており、合理化・構成差等で前年比からの増益は確保できた。また、ハスマン社の買収など将来の成長に向けた仕込みも進展している」とし、各事業部における体制は見直しつつも、「増収増益の実現」に向けた成長戦略は今後も変わらないことを語った。
「お客様へのお役立ちを創出する会社であることが、パナソニックの目指す姿。お客様へのお役立ちを提供した報酬として利益があると思っている。つまりお客様へのお役立ちを創出し続けることが、利益の継続的な創出を意味する。中期的に目指すのは利益成長であり、売上げはその1つの方法である」(津賀氏)。
■'18年度の売上目標10兆円は8.8兆円に引き下げ。利益成長重視に
続いて津賀氏は、グループ内における事業領域の見直しについて説明した。これまでは「家電」「住宅」「車載」「BtoBソリューション」「デバイス」という5つで考えていたが、今後は新たな成長を作る「家電/住宅/車載」と、高収益を実現する「BtoB」に分けて考え、「デバイス」に関しては各事業部それぞれで該当する部分を担い、専業メーカーに対抗していく。
「家電/住宅/車載」は明確に成長の軌道に乗りつつあるとのことで、2020年度以降に営業利益3,000億円以上(利益率5%以上)の規模へ成長を目指す。BtoBの方は、より地域を明確にして確実に高収益がとれるビジネスモデルの構築を目指しており、2020年に、やはり営業利益3,000億円規模で利益率10%を目標に取り組むという。
また、今後とも個別事業部での取り組みを重要視し、立地・競争力に応じた事業戦略を実行する。「家電/住宅/車載」を含む高成長事業には、思い切ってリソースを集中させ、積極的な先行投資を実施し、1兆円戦略投資を継続して実施。ここで売上げと利益成長を牽引していく。また安定成長事業では、競争力を強化し、着実な売上げと利益創出を目指す。
なお、デジタルAV事業が含まれる収益改善事業では、売上げを追わず利益率の向上を追求していくという。そのため具体的にどうするかという部分については、あくまでもたくさんある可能性の1つとして「将来の発展に向けた事業売却もオプションの1つではある」と語った。人員削減の可能性については、「小規模なテコ入れは各事業部とも継続的に行う必要があるが、大規模なものは既に終えたという認識」と述べた。なお、姫路に工場を構える液晶パネル事業に関しては「非常に難しい事業」とし、「テレビでの改善は現実的ではない」と、パネル供給で運営する可能性を検討しているようだ。
これら事業領域の見直しに伴い、2018年度の売上げ目標も変更された。既述の通り、昨年時点では2018年度に売上高10兆円を目指していたが、これを8.8兆円に引き下げる。事業領域別の内訳は、家電で2.3兆円、住宅で1.6兆円、車載で2.0兆円、BtoBで2.9兆円を、それぞれ目標にしている。
これに伴い、2018年度の営業利益は「家電/住宅/車載」で3,000億円、「BtoB」で2,000億円を目指す。同社では主に、住宅と車載の領域で成長を見込んでいる。そしてグループ全体における2018年度の目標は、営業利益5,000億円、純利益2,500億円以上。津賀氏は「ここ数年の構造改革で経営体質が改善し、やっと純利益の成長を考えられるようになった」と語った。「2018年の売上げ10兆円という目標は、従業員全体で成長を見いだすために掲げた数値だった。それが2015年の通期業績の下方修正で発射台が下がったこともあり、また、必ずしも売上げを追うことが適切なわけではないことも見えてきた」とし、成長戦略は継続しながら、より適切な目標値に変更したことを説明した。
■'16年度は将来の利益に繋がる先行投資の年。「意思を込めた減益」
津賀氏は、上述の中期経営計画に基づく2016年度を「成長への足場固めの年」と位置づけた。
2016年通期の売上高は7兆5,000億円、営業利益は3,750億円を目標にする。これはハスマン買収による効果や、ICTの成長が続くこと等を見込んだ上での目標数値となる。売上高は前年並み、営業利益は減益となるが、津賀氏は「将来の成長に向けた積極的な先行投資を行うため」とその理由を述べた。
2016年は、将来の売上げ・利益につながる先行投資を積極的に行う予定であるため、結果的に固定費増になり減益を見込むという形だ。主に車載、住宅等の分野が先行投資の対象で、500億円規模の固定費増を見込んでいる。津賀氏はこれを「意思を込めた減益」と表現した。
なお、質疑応答で上がった「現在機構改革を行っているソニー(関連ニュース)の動きから学びはあったか?」との問いに津賀氏は、「多くを学ばせて頂いている。しかし改革に着手したのは私たちの方が早かった。ソニーさんの方が出遅れたが、いま一気にやられている形だと思うので、私たちも負けずに改革したい。そういう意味でも、ソニーさんを良きライバルと思って取り組みたい」と答えた。
改めて津賀氏は今後について、「積極的な先行投資と1兆円の戦略投資を引き続き行う。2017年には増収/増益を実現し、2018年には増収/増益体質をしっかり定着させる」とコメント。そして「2020年にパナソニックが目指す姿を実現する」と語った。