ONKYO製AVアンプで最新ソフトを再生
オンキヨー&パイオニア、ドルビーアトモス体験会を実施 - 映画音響の歴史も紹介
オンキヨーとパイオニアは本日7日、「オブジェクトオーディオ体験会」をプレス向けに開催。ONKYOのドルビーアトモス対応AVアンプによるデモを交えつつ、オブジェクトオーディオの仕組みや楽しみ方についてレクチャーした。
冒頭では、オンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの八重口能孝氏が挨拶。「日本国内では、ホームシアターやサラウンドを家庭で楽しんでいる方はまだまだ少ないです。オブジェクトオーディオによる新しい体験を通じて、サラウンドがいかに魅力的なものなのか伝えていきたいと考えています」と述べた。
■ドルビー 林氏がトーキーからアトモスに至るまでの映画音響を歴史を紹介
体験会には、DOLBY JAPANから林 正樹氏がゲストとして登場。まずは映画音響について、その誕生から最新のオブジェクトオーディオに至るまでの歴史を、ドルビーを軸に紹介していった。
林氏はプレゼンの最初に、「第88回アカデミー賞」において作品賞や音響編集賞にノミネートされた『レヴェナント:蘇えりし者』の音響制作を担当したランディ・トム氏による下記の発言を引用。映画作品において、映像と音響が不可分な要素であることを紹介した。
「映画とは『映像メディア』ではない。かっこいい場面(映画)とは、優れた映像と音声の相乗効果の結果であり、両者を切り離して判断するようなことは不可能である」(ランディ・トム氏)
続いて、映画音響の進化の歴史を紹介してくれた。最初に映画に音声がついたトーキー時代においては、フィルムに直接録音する方法、フィルムと同時に再生するディスクに録音する方法という2つの方式が登場。結果、フィルムに直接録音するサウンド・オン・フィルム方式が主流になったという。
1970年代までは、ほとんどの映画の音声はモノラルだった。これらの時代においては、各作品ごとにクリエーターが映像と音の相乗効果を模索していった。そして各作品で用いられた方式が、汎用的な仕組みになっていった。
史上初のステレオ音声作品であるディズニー映画『ファンタジア』のために作られた「ファンタサウンド」方式は、機材の制約もあって全米14ヶ所の劇場で使用されたのみだったが、その技術は革新的なものだった。こうした音声方式として他にも、増幅された低周波によって劇場内を振動させるセンサラウンド方式(『大地震』など)や、光学式サウンドトラックの代わりに磁気ストライプに音声を記録して4chの音を作り出したシネマスコープ(『聖衣』など)が挙げられた。
1970年代には『スターウォーズ』をひとつの境として、ドルビーステレオが普及した。これは2chしか記録できるスペースがないフィルムに、4ch音声を2chにダウンミックスして収録して、再生時に4ch音声としてデコードする技術だ。
ちなみに、ドルビーによるマルチチャンネル音響は、ドルビーステレオ70mmフィルムで採用された5.1ch音声から始まったとのこと。ドルビーノイズリダクション技術を70mmフィルムの磁気サウンドトラックに用いることで、5.1chサラウンドを完成させたのがドルビーステレオ70mmだ(『地獄の黙示録』など)。90年代に入ると、5.1chデジタル音声に加えて、予備のアナログ音声を記録できるドルビーデジタルが登場する。1993年にはdtsも『ジュラシックパーク』でデビューを飾った。
その他、マルチチャンネル時代の劇場音声としてドルビーサラウンド7.1、ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド(SDDS)、THXなども挙げられていた。
そして2012年、オブジェクトオーディオであるドルビーアトモスが劇場に登場する。ドルビーアトモスは、1つ1つの音に3次元座標データ(X/Y/Z)を付加して「オブジェクト」として扱うことで、高さ方向の音の表現(3次元表現)を可能とした。
■ONKYOとPIONEERの製品でドルビーアトモスをデモ
林氏はドルビーアトモスの原理についても紹介した。ドルビーアトモスは従来のチャンネルの概念による「ベッド(7.1ch+天井2ch)」と、「オブジェクト+位置情報」で構成されている。
オブジェクトとは、個別に記録された1つ1つの「音」のこと。このオブジェクトには座標データ(位置情報)が設定されている。ベースとなる「ベッド」と「オブジェクト+位置情報」をリアルタイム・レンダリングすることで、スピーカーの位置に囚われず空間にオブジェクトを配置することができる。
なお上述のように、ドルビーアトモスは全ての音がオブジェクトで構成されているわけではない。この点について林氏は「全ての音源をオブジェクトで構成する必要はないとドルビーは考えています」と説明。面や列で音を鳴らすことができるベッドを下地に、オブジェクトを配置していくという方法を採っているのだという。
ドルビーアトモスの製作ツールも紹介。「Dolby Atomos Panner Plug-in」は、オブジェクトのサイズ、位置情報と移動を3次元でコントロールできるソフトウェア。「Dolby Atomos Monitor Application」は、オブジェクトを視覚的にモニターすることができる。なお劇場用アトモスにおいて、オブジェクトは1つの空間で最大で118個まで使うことが可能だという。
会場となったオンキヨー&パイオニアの八重洲試聴室では、ドルビーアトモスによるオブジェクトの空間配置を、トップスピーカー4基による7.2.4システムでデモ。蚊やハエの羽音を空間に再現しつつオブジェクトの位置を映像化するデモソフトを用いて、音を空間に自由に定位させることができ、かつ移動できることをアピールしていた。
また、イネーブルドスピーカーについても改めて紹介された。ユニットを天井に向け、かつ音をよりリアルに感じられる独自フィルターを備えた専用スピーカーをグランドレベルのスピーカーの上に設置することで、天井にスピーカーを設置することなくアトモス再生を楽しめる。
デモでは、イネーブルドスピーカー4基を用いた7.2.4システムを用いて、6月3日に発売されたばかりの『ミッション:インポッシブル ローグネーション』や7月12日発売『シーズンズ 2万年の地球旅行』を再生した。
ドルビーアトモス収録の音楽BD『BIGIN 25周年コンサート「Sugar Cane Cable Network」ツアー 2015-2016 at 両国国技館』を再生して、ドルビーアトモスがライブの臨場感を再現するのにも好適であることを紹介された。デモを担当したオンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの上田賢司氏は、「本作のようなアトモスで製作されたライブ盤では、より正確な空間表現が可能なので会場の独特の響きもしっかりと再現されます。一方で各楽器はしっかり分離して鳴っていて、より近くでライブを見るような、生に近い臨場感を得ることができます」とコメントしていた。
ドルビーアトモス再生では、ONKYOブランドのAVアンプ「TX-NR3030」を、PIONEERブランドのEXシリーズのスピーカーシステムや、ONKYOのイネーブルドスピーカーが用いられた。また、ONKYOのAVアンプならば、2.1.2chという前方完結システムでもオブジェクトオーディオが楽しめることも紹介されていた。
冒頭では、オンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの八重口能孝氏が挨拶。「日本国内では、ホームシアターやサラウンドを家庭で楽しんでいる方はまだまだ少ないです。オブジェクトオーディオによる新しい体験を通じて、サラウンドがいかに魅力的なものなのか伝えていきたいと考えています」と述べた。
■ドルビー 林氏がトーキーからアトモスに至るまでの映画音響を歴史を紹介
体験会には、DOLBY JAPANから林 正樹氏がゲストとして登場。まずは映画音響について、その誕生から最新のオブジェクトオーディオに至るまでの歴史を、ドルビーを軸に紹介していった。
林氏はプレゼンの最初に、「第88回アカデミー賞」において作品賞や音響編集賞にノミネートされた『レヴェナント:蘇えりし者』の音響制作を担当したランディ・トム氏による下記の発言を引用。映画作品において、映像と音響が不可分な要素であることを紹介した。
「映画とは『映像メディア』ではない。かっこいい場面(映画)とは、優れた映像と音声の相乗効果の結果であり、両者を切り離して判断するようなことは不可能である」(ランディ・トム氏)
続いて、映画音響の進化の歴史を紹介してくれた。最初に映画に音声がついたトーキー時代においては、フィルムに直接録音する方法、フィルムと同時に再生するディスクに録音する方法という2つの方式が登場。結果、フィルムに直接録音するサウンド・オン・フィルム方式が主流になったという。
1970年代までは、ほとんどの映画の音声はモノラルだった。これらの時代においては、各作品ごとにクリエーターが映像と音の相乗効果を模索していった。そして各作品で用いられた方式が、汎用的な仕組みになっていった。
史上初のステレオ音声作品であるディズニー映画『ファンタジア』のために作られた「ファンタサウンド」方式は、機材の制約もあって全米14ヶ所の劇場で使用されたのみだったが、その技術は革新的なものだった。こうした音声方式として他にも、増幅された低周波によって劇場内を振動させるセンサラウンド方式(『大地震』など)や、光学式サウンドトラックの代わりに磁気ストライプに音声を記録して4chの音を作り出したシネマスコープ(『聖衣』など)が挙げられた。
1970年代には『スターウォーズ』をひとつの境として、ドルビーステレオが普及した。これは2chしか記録できるスペースがないフィルムに、4ch音声を2chにダウンミックスして収録して、再生時に4ch音声としてデコードする技術だ。
ちなみに、ドルビーによるマルチチャンネル音響は、ドルビーステレオ70mmフィルムで採用された5.1ch音声から始まったとのこと。ドルビーノイズリダクション技術を70mmフィルムの磁気サウンドトラックに用いることで、5.1chサラウンドを完成させたのがドルビーステレオ70mmだ(『地獄の黙示録』など)。90年代に入ると、5.1chデジタル音声に加えて、予備のアナログ音声を記録できるドルビーデジタルが登場する。1993年にはdtsも『ジュラシックパーク』でデビューを飾った。
その他、マルチチャンネル時代の劇場音声としてドルビーサラウンド7.1、ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド(SDDS)、THXなども挙げられていた。
そして2012年、オブジェクトオーディオであるドルビーアトモスが劇場に登場する。ドルビーアトモスは、1つ1つの音に3次元座標データ(X/Y/Z)を付加して「オブジェクト」として扱うことで、高さ方向の音の表現(3次元表現)を可能とした。
■ONKYOとPIONEERの製品でドルビーアトモスをデモ
林氏はドルビーアトモスの原理についても紹介した。ドルビーアトモスは従来のチャンネルの概念による「ベッド(7.1ch+天井2ch)」と、「オブジェクト+位置情報」で構成されている。
オブジェクトとは、個別に記録された1つ1つの「音」のこと。このオブジェクトには座標データ(位置情報)が設定されている。ベースとなる「ベッド」と「オブジェクト+位置情報」をリアルタイム・レンダリングすることで、スピーカーの位置に囚われず空間にオブジェクトを配置することができる。
なお上述のように、ドルビーアトモスは全ての音がオブジェクトで構成されているわけではない。この点について林氏は「全ての音源をオブジェクトで構成する必要はないとドルビーは考えています」と説明。面や列で音を鳴らすことができるベッドを下地に、オブジェクトを配置していくという方法を採っているのだという。
ドルビーアトモスの製作ツールも紹介。「Dolby Atomos Panner Plug-in」は、オブジェクトのサイズ、位置情報と移動を3次元でコントロールできるソフトウェア。「Dolby Atomos Monitor Application」は、オブジェクトを視覚的にモニターすることができる。なお劇場用アトモスにおいて、オブジェクトは1つの空間で最大で118個まで使うことが可能だという。
会場となったオンキヨー&パイオニアの八重洲試聴室では、ドルビーアトモスによるオブジェクトの空間配置を、トップスピーカー4基による7.2.4システムでデモ。蚊やハエの羽音を空間に再現しつつオブジェクトの位置を映像化するデモソフトを用いて、音を空間に自由に定位させることができ、かつ移動できることをアピールしていた。
また、イネーブルドスピーカーについても改めて紹介された。ユニットを天井に向け、かつ音をよりリアルに感じられる独自フィルターを備えた専用スピーカーをグランドレベルのスピーカーの上に設置することで、天井にスピーカーを設置することなくアトモス再生を楽しめる。
デモでは、イネーブルドスピーカー4基を用いた7.2.4システムを用いて、6月3日に発売されたばかりの『ミッション:インポッシブル ローグネーション』や7月12日発売『シーズンズ 2万年の地球旅行』を再生した。
ドルビーアトモス収録の音楽BD『BIGIN 25周年コンサート「Sugar Cane Cable Network」ツアー 2015-2016 at 両国国技館』を再生して、ドルビーアトモスがライブの臨場感を再現するのにも好適であることを紹介された。デモを担当したオンキヨー&パイオニア マーケティングジャパンの上田賢司氏は、「本作のようなアトモスで製作されたライブ盤では、より正確な空間表現が可能なので会場の独特の響きもしっかりと再現されます。一方で各楽器はしっかり分離して鳴っていて、より近くでライブを見るような、生に近い臨場感を得ることができます」とコメントしていた。
ドルビーアトモス再生では、ONKYOブランドのAVアンプ「TX-NR3030」を、PIONEERブランドのEXシリーズのスピーカーシステムや、ONKYOのイネーブルドスピーカーが用いられた。また、ONKYOのAVアンプならば、2.1.2chという前方完結システムでもオブジェクトオーディオが楽しめることも紹介されていた。