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カッパーの発売日は後日発表

Astell&Kern「A&Ultima SP1000」ステンレスモデル、7月7日に発売。約50万円

公開日 2017/06/16 11:00 編集部:小澤貴信
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アユートは、Astell&Kernの新フラグシップとなるポータブルプレーヤー「A&Ultima SP1000」(Stainless Steel)を7月7日より発売する。価格はオープンだが、直販サイト価格は499,980円(税込)となる。

「A&Ultima SP1000」(Stainless Steel)


なお、「A&Ultima SP1000」(Copper)については、発売日は決定し次第アナウンスされる。近日中の発売が予定されており、価格はStainless Steelと同じとなる。

「A&Ultima SP1000」(Copper)

今月1日、アユートはA&Ultima SP1000のプレス向け説明会を開催。Astell&Kernからは、CEOのジェームズ・リー氏、グローバルマーケティング担当のアレックス・アン氏が来日。本製品のプレゼンテーションを行った。

ジェームス・リー氏

アレックス・アン氏

「A&Ultima SP1000」は、ミュンヘンで開催されたHIGH END 2017に合わせて5月16日にグローバル発表(関連ニュース)。HIGH ENDにて初披露されていた(関連ニュース)。今回、Stainless Steelモデルの国内発売日と価格が決定したかたちだ。

第四世代の最上位ライン「A&Ultima」

「A&Ultima SP1000」は、第4世代の最初のモデルにしてフラグシップモデルとなる。従来の第3世代の旗艦モデル「AK380」から、DACやオーディオ回路はもちろん、筐体デザインとその素材、GUIに至るまでを刷新した。再生対応スペックは引き続き、最大で11.2MHzのDSD、384kHz/32bitのPCMをネイティブ再生できる。

「A&Ultima SP1000」(右)と「AK380」(左)」

こちらは背面。「A&Ultima SP1000」(右)と「AK380」(左)」

モデル名の頭に冠されている「A&Ultima」(エー・アンド・ウルティマ)は、そのモデルのセグメントを示す、いわばシリーズ名であるという。

第3世代では「AK380」「AK320」「AK300」をコア・ライン、「AK70」をカジュアルラインと位置付けていた。

対して第4世代では、「A&ultima」が最上位ラインで、この後には「A&〇〇」「A&〇〇」とその下に位置するラインナップが登場していく予定なのだという(A&の「A」はAstell&KernのAだ)。

「A&Ultima SP1000」は第四世代という位置付けになる

今後も「A&〇〇」の名を関したシリーズが登場予定

A&Ultima SP1000をはじめとする第4世代モデルの登場に伴って、第3世代モデルは順次販売終了になっていく。なお、パフォーマンスラインに位置付けられるKANNは第3世代だが、「A&」とは別ラインのモデルとして今後も継続していく。

本機においてはフラグシップということで、「A&ultima」(ultimaは究極・最高の意味)というシリーズ名を冠したという。また、SP1000の「SP」は「Supreme Performance」の略であると説明された。

通常モデルとして「ステンレス」と「カッパー」をラインナップ

主な仕様についてはこちらの記事でもすでに紹介している。ここでは、プレゼンでも強調されていたポイントについて説明していく。

A&Ultima SP1000(以下SP1000)においては、通常モデルとして「Stainless Steel(ステンレス)」と「Copper(銅)」モデルを用意する。従来のAK380では通常モデルがジェラルミン製筐体で、ステンレス筐体モデルおよびカッパー筐体モデルは「限定モデル」としてのラインナップだった。

ステンレス(右)とカッパー(左)

Astell&Kernとしては、「ステンレス」および「カッパー」筐体の方が、音質面では優位と考えているとのこと。しかし従来では、その製造の難しさから、いずれも「限定モデル」としての展開にとどまっていた。しかしA&Ultima SP1000では、新たなフラグシップとして音質的な進化を目指して、かつ旗艦機としての新たな付加価値を与えるべく、通常モデルで「ステンレス」および「カッパー」筐体を採用することを実現したのだという。

なお、ステンレスおよびカッパー素材を用いたこと、さらには筐体が大型化したこともあって、通常モデルとしては質量が大幅にアップ。ジェラルミン製の「AK380」通常モデルが約230gだったのに対して、A&Ultima SP1000では通常モデルとしてラインナップされるステンレスが約386.6g、カッパーが387.9gとなる。

ディスプレイは第三世代の4インチ(800×480)から、5インチ(1,280×720)へと大型化された。ベゼルレスデザインを採用することで、本体のフロントパネルを最大限用いて5インチ・ディスプレイを納めている。後述するようにユーザーインターフェースも刷新された。

ボリュームも変更。ホイールタイプのデザインは継承しつつ、電源ボタンを兼用とした。これにより、ボリュームホイールを垂直に押すことで、ディスプレイのオン/オフ、長押しで電源のオン・オフ操作が可能になる。ちなみにこのボリュームホイールは、ダイヤモンドカットされた宝石をイメージしてデザインされたという。

宝石をモチーフにしたというボリュームホイール。電源ボタンも兼ねる

ヘッドホン出力は引き続き、3.5mm端子と2.5mmバランス端子を搭載する。

この電源ボタン変更に伴い、SDカードスロットは第3世代モデルで電源ボタンがあったトップ右側に移動された。また、トレイ方式によるフタ付きのスロットに変更された。トレイは付属のピンを使って開閉できる。

SDカードスロットはトレイ式、専用ピンで開けたところ

SP1000(右)はUSB type C端子を搭載

USB端子は従来のmicro Bからtype Cへと変更された。これにより、最大10Gbps(理論値)のファイル転送速度を実現。従来機の2倍の早さでデータ転送が行えるという。また、高速充電にも対応。市販の9V/1.67Aの高速充電対応USB-ACアダプターを用いれば、約2時間の充電で、最大約12時間の連続再生が可能になる。

「AK4497EQ」をデュアル搭載。測定上の出力やS/Nも向上

DACやオーディオ回路も刷新された。AK380から引き続きL/Rで個別のDACを搭載するデュアルDAC仕様を採用するが、DACは変更。AK380がAKM(旭化成エレクトロニクス)「AK4490」だったのに対して、SP1000では同社最新世代の旗艦DAC「AK4497EQ」が搭載された。

さらに従来からオーディオ回路を新規設計して、さらなる低歪みと高S/Nを実現しつつ、出力もアップさせた。AK380とのスペック比較は以下のようになる。

AK380とSP1000のスペック比較。SP1000はS/Nや出力が測定値レベルで向上した

バランス出力時のS/Nは、AK380が117dBからSP1000は122dBへ。アンバランス出力時についても、AK380の116dBからSP1000は120dBへと向上した(いずれも@1kHz)。

バランス出力時の出力もアップ。AK380が2.3Vrmsだったのが、SP1000では3.9Vrmsへと向上した(アンバランス時は同様の2.2Vrms)。

バランス出力時のTHD+Nは、AK380が0.0007%だったのがSP1000では0.0008%となった。アンバランス出力時では、AK380の0.0008%だったがのあSP1000では0.0005%となった(@1kHz)。

グラフィック・ユーザーインターフェースも刷新

SP1000では、第3世代モデルからグラフィック・ユーザーインターフェース(GUI)も刷新された。「音楽専用プレーヤー」「音楽ファイル保管場所」「ストレスフリーの操作性」の3点をテーマに、GUIの設計が行われたという。

各メニューは、ディスプレイの四方をスワイプすることで呼び出せる。左サイドをスワイプするとメニュー一覧が、右サイドをスワイプすると再生リストが表示できる。

画面の上下左右をスワイプすることで各画面を表示できる

こちらはホーム画面

上側をスワイプすると、通知およびWi-FiやBluetoothなどの機能のクイック設定アイコンが表示される。下側をスワイプすると、新機能となる再生履歴が表示される。

こちらはメニュー画面

左から「ボリューム」「アルバム一覧」「EQ」の画面


高級皮革を用いた専用ケースが付属。木箱パッケージも

SP1000には専用ケースが付属。「タルンショ ファルヴェーリ」製のベジタブルタンニングを施した天然皮革を使用。タルンショ ファルヴェーリは、1873年の創業以来、スウェーデン・タルンショの工場で140年以上レザーの生産を続けている伝統ある皮革ブランドとのことだ。また、スペシャル仕様の木製パッケージを採用している。


「タルンショ ファルヴェーリ」製の天然皮革レザーケースを採用

パッケージは木箱になっている

外付けヘッドホンアンプが「他社から提供される」可能性も

本体下部を見るとわかるとおり、外部機器用の接点端子が搭載されている。AK380のような専用ヘッドホンアンプを発売する予定があるのかと質問を向けると「検討はしているが、SP1000のヘッドホン出力を強化しており、アンプを用いなくてもSP1000本体で十分な駆動力が得られるように設計している」と自信を見せていた。

その一方で「接点端子のピンマッピングやサイズなどの情報は他社へ提供していく予定。他社とのコラボ、あるいはサードパーティー製のSP1000用アンプが登場することも想定している」とのことだった。ちなみに、SP1000発売時点ではこの接点端子に対応するデバイスは用意されていない。

なお、第三世代向けのCDリッパーについては、変換端子を用いることでSP1000でも利用できるという。

改めて「SP1000」ステンレス&カッパーを試聴する

説明会では、SP1000を比較的ゆっくりと試聴する時間も設けられた。本誌では、ミュンヘンHIGH ENDにてSP1000とAK380を比較試聴した(レポート記事をすでに掲載している。今回はそのときにあまり試聴ができなかったバランス出力の音質を軸に試聴を行ったので、その印象をレポートしたい。

AK T1pを組み合わせて試聴

まずは前回のレポートと同じくUnique MelodyのカスタムIEM「MASON II」で、SP1000のサウンドを確認した。まずはSP1000のステンレスを聴いたが、圧倒的なS/Nの良さに改めて驚かされる。高解像度なのはいわずもがななのだが、音がほぐれてやわらかく、カリカリとした解像感を強調するような音とは正反対の、シルキーと言ってもよい音だ。その点はAK380のモニターライクで高解像度指向の音とは一線を画すもので、改めて聴くとキャラクターのちがいも大きい。

次に、Astell&Kernとベイヤーダイナミックのコラボヘッドホン「AK T1p」をバランス接続でSP1000のステンレスに組み合わせてみた。AK380のバランス接続に比べて明かに駆動力に余裕がある。やはり高解像度で情報量が多いのだが、音は伸びやか。弱音と強音を豊かに描き分けてくれ、同じ音源を聴いても表情が豊かだ。音場も明かに広く、楽器の音離れが良い。音がほぐれているという表現はここでもぴったりで、各楽器やボーカルのセパレーションが良い上に、ゆとりを持って空間に配置されているような印象だ。

それではステンレスとカッパーの間にはどのような音のちがいがあるのか。聴き比べると極端なキャラクターのちがいはない。しかし、カッパーのほうが低域が濃厚で、ベースギターの粘りや密度感をより感じさせてくれる。ボーカルは、強いて言うならステンレスの方がよりすっきりと抜けがよく、カッパーはちょっと湿っていて温もりがある。いずれにしろ、その差は優劣ではなく好みの範疇であると感じた。

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