「VW555」もレポート
関係者が語るソニー新4Kプロジェクター「VPL-VW855」の特徴。その画質を記者が体験
先日から発売が開始されたソニーのネイティブ4K対応SXRDプロジェクター新モデル「VPL-VW855/VW555/VW255」(関連ニュース)。開発者に話を聞く機会をもてたのでレポートしたい。
今回の3モデルは、ソニー独自のネイティブ4K(4,096×2,169)パネルの『SXRD』を搭載していることに加え、回路や基板のチップなどを共通化。VPL-VW855だけでなく、VPL-VW555・VPL-VW255といった標準・入門モデルにもハイエンド機種である「VPL-VW5000」と同じ回路を搭載して画質にこだわったという。また、同じ回路を使用することで、3機種とも18Gbps入力に対応。HDMI 2.0に対応し、4K/60fpsの信号伝送が可能としている。
新しい機能として、より快適なゲームが楽しめるという「遅延低減モード」を搭載。このモードをオンにすることにより、遅延を通常の80msから27msまで少なくすることができる。これはネイティブ4Kパネル搭載機の中では最速の値とのことだ。また、4K用のモーションフローを搭載し、滑らかな映像を楽しむことができ、強度は強/弱/オフで切り替えが可能としている。
データベース型の超解像処理LSI「リアリティークリエーション」や「フルHD 3Dグラス イニシアチブ」準拠の無線方式3Dは、従来機種同様に全機種搭載。HDR10やHLGにも対応する。カラースペースのモードは、BT.2020とBT.709を選ぶことが可能。
■“パーフェクトモデル”のVW855
「VW745にVW1000のレンズを搭載した製品が欲しいという声にこたえた製品だが、性能的にはVW1000の後継機と名乗ってもよい」と商品設計を担当した宮野京介氏は話す。
レンズにはハイエンド機種のVW5000(800万円/税抜)と同じ、湾曲を抑えスクリーンの「すみずみまでカキっとフォーカスが合う」というARC-Fレンズ(VPLL-Z7013)を搭載。このレンズは150万円ほどするもので、前モデル「VPL-VW745」が170万円だったことを考えると、本機種の300万円という価格は単純な合計よりも安い。
ARC-Fレンズは、4Kデジタルシネマ、フローティングフォーカスシステム、大口径エクストラ低分散ガラスなどの技術を用いた15群/18枚のガラスレンズから構成されたもの。フローティングフォーカスレンズは、5年ほど前である1000番台の機種から用いられているものだが、「最新技術ではないが、とてもいい技術」として現在まで採用してきているという。また、レンズは短焦点レンズ「VPLL-Z7008(約150万円/税抜)」に交換することも可能。
レーザーダイオードの光源は、VW745から200lm向上し、2,200lmとなった。明るさを上げると排熱でファンノイズが大きくなるが、調整により従来と同じ24dBを維持したという。VW745以上の機種で採用されている全面吸気、背面排気方式は、本機にも採用。排気の熱された空気がスクリーン上に映る“陽炎(かげろう)現象”の影響による画質低下を抑えた。
ダイナミックレンジの表現では、VW745に搭載の「ダイナミックレーザーコントロール」に加え、アイリスコントロール「アドバンスドアイリス3」を搭載。2つの機能が連動して動くことで、より広いダイナミックレンジを表現し、ダイナミックコントラスト∞:1を実現した。
今回、新機能として「デジタルフォーカスオプティマイザー」が初搭載。前述のARC-Fレンズにより画面全域にわたり隅まで安定した画質を実現しているが、シフトによりレンズの周辺部を使用した場合、レンズの収差により解像感の低下が起こってしまう。これは光学上避けられないことであり、それを改善するために、従来のデータベース型超解像処理LSI「リアリティークリエーション」に加えるかたちで、デジタルフォーカスオプティマイザーが搭載されている。
デモでは、岩が地面にある森の写真が映し出されたが、この機能をオンにした途端、全体的に解像感が増した印象を受けた。木々の葉の細かさはもちろんのこと、岩のざらざらとした質感がより伝わってくる。補正するためのデータは事前に計測された座標と収差による画質のパターンのデータを用いており、シフトやズームを使用といった設置状況にかかわらず、安定した映像を実現できるという。
ちなみにシフトは、垂直±80%、水平±31%まで対応する。なお、このデジタルフォーカスオプティマイザーの効果は、再生する映像によって変えるとのこと。解像度が高くないシーンや、部分に対しては効果を弱め、もともとの映像に影響を与えないように配慮されている。
また、製作時の設定に忠実な映像を再現するという「HDRリファレンスモード」を搭載。これは同社製造のマスターモニター「BVM-X300」と同じ特性になるように1,000nitで切られたカーブを搭載するものだ。現在の映画製作では400〜4,000nitピークが混在しており、HDR10ではそれをカバーするカーブとなっている。しかし今後は1,000nitピークであるBVM-X300に集約する見通しがあり、このHDRリファレンスモードを使用することにより、製作者の意図に近いHDRを再現できるという。
『スパイダーマン:ホームカミング』でこの機能を試してみたが、明るさのピークに近いネオンの看板の部分で顕著な差がみられた。HDR10では白く飛んでいるようで、わずかに薄いブルーの色が付いていることがわかるくらいであったが、HDRリファレンスモードでは青が濃くなり、その中に描かれていた女性の色まではっきりとわかる。このHDRリファレンスモードは、HDRのオート設定では選択されず、ユーザーが個別に設定する必要があるとのこと。
さらに暗部の階調表現にも改善が行われた。「昨年のモデルではHDRにおいて、暗部が微妙という声があり、それを改善させた」と広報の相澤眞人氏は話す。
HDR10のPQカーブは、BVM-X300のものが用いられているが、BVM-X300の1,000nitピークと比較し、プロジェクターでスクリーンに投影した映像の輝度は、200nit程度の輝度が限度。そのため暗部の明るさも1/5まで圧縮されてしまい、暗部の階調が失われてしまう。そこでプロジェクターでの輝度において最適化し、暗部の明るさを持ち上げたカーブを採用、暗部の階調表現を改善させた。なおこの設定はHDR10だけでなく、HDRリファレンスモードにも適用されている。
デモでは『レヴェナント: 蘇えりし者』の夜の焚き火のシーンを視聴したが、焚き火の影になっているような暗部についても階調の表現があることが確認できた。より自然な見え方になったほか、立体感や奥行きも感じることができる。
■コストパフォーマンスに優れたVW555
VW555は、1,800lmのランプ光源を搭載したスタンダードモデル。レンズはVW745と同様のプラスチックレンズ1枚+ガラスレンズ13枚の構成。垂直+0.85V/-0.80V、水平±31%まで可能な広域レンズシフトにも対応する。アドバンスドアイリス3も搭載し、35万:1のコントラストを実現した。
そのほか、前述したHDRリファレンスモードや、暗部の階調表現の改善も行われている。なおHDRリファレンスモードは、今回同時発表されたVW255に搭載しているほか、現行機種のVW745にも搭載されている。暗部の階調表現については現状では今回発表の3モデルのみが対応している状況。従来の機種でも技術的に対応は可能ではあるが、現時点で対応の予定はないという。
この機種を含めた通常モデル・エントリーモデルには前面吸気、背面排気方式が採用されていないが、これは製品のコンセプトによるものだという。背面排気の場合は背面にある程度の空間を確保する必要があるため、設置性を考えて(壁にある程度くっつけて設置できるよう)前面排気を採用しているとのことだ。
こちらの機種でもVW855と同じ映像を一通り視聴したが、クリアで迫力のあるHDR映像を楽しむことができた。回路や基板のチップが上位機種と同等になったことが大きく画質に貢献しているのだという。『オブリビオン』のように2Kからアップコンバートされた4K UHDコンテンツにおいても、リアリティークリエーションといった超解像により解像感のある映像も体験できた。映像の解像感は、ARC-Fとデジタルフォーカスオプティマイザーを搭載したVW855には一歩譲るが、VW855の300万円と比べ、本機種では90万円という3倍以上の値段差があることを考えると、非常にコストパフォーマンスの良いモデルだと感じた。
今回の3モデルは、ソニー独自のネイティブ4K(4,096×2,169)パネルの『SXRD』を搭載していることに加え、回路や基板のチップなどを共通化。VPL-VW855だけでなく、VPL-VW555・VPL-VW255といった標準・入門モデルにもハイエンド機種である「VPL-VW5000」と同じ回路を搭載して画質にこだわったという。また、同じ回路を使用することで、3機種とも18Gbps入力に対応。HDMI 2.0に対応し、4K/60fpsの信号伝送が可能としている。
新しい機能として、より快適なゲームが楽しめるという「遅延低減モード」を搭載。このモードをオンにすることにより、遅延を通常の80msから27msまで少なくすることができる。これはネイティブ4Kパネル搭載機の中では最速の値とのことだ。また、4K用のモーションフローを搭載し、滑らかな映像を楽しむことができ、強度は強/弱/オフで切り替えが可能としている。
データベース型の超解像処理LSI「リアリティークリエーション」や「フルHD 3Dグラス イニシアチブ」準拠の無線方式3Dは、従来機種同様に全機種搭載。HDR10やHLGにも対応する。カラースペースのモードは、BT.2020とBT.709を選ぶことが可能。
■“パーフェクトモデル”のVW855
「VW745にVW1000のレンズを搭載した製品が欲しいという声にこたえた製品だが、性能的にはVW1000の後継機と名乗ってもよい」と商品設計を担当した宮野京介氏は話す。
レンズにはハイエンド機種のVW5000(800万円/税抜)と同じ、湾曲を抑えスクリーンの「すみずみまでカキっとフォーカスが合う」というARC-Fレンズ(VPLL-Z7013)を搭載。このレンズは150万円ほどするもので、前モデル「VPL-VW745」が170万円だったことを考えると、本機種の300万円という価格は単純な合計よりも安い。
ARC-Fレンズは、4Kデジタルシネマ、フローティングフォーカスシステム、大口径エクストラ低分散ガラスなどの技術を用いた15群/18枚のガラスレンズから構成されたもの。フローティングフォーカスレンズは、5年ほど前である1000番台の機種から用いられているものだが、「最新技術ではないが、とてもいい技術」として現在まで採用してきているという。また、レンズは短焦点レンズ「VPLL-Z7008(約150万円/税抜)」に交換することも可能。
レーザーダイオードの光源は、VW745から200lm向上し、2,200lmとなった。明るさを上げると排熱でファンノイズが大きくなるが、調整により従来と同じ24dBを維持したという。VW745以上の機種で採用されている全面吸気、背面排気方式は、本機にも採用。排気の熱された空気がスクリーン上に映る“陽炎(かげろう)現象”の影響による画質低下を抑えた。
ダイナミックレンジの表現では、VW745に搭載の「ダイナミックレーザーコントロール」に加え、アイリスコントロール「アドバンスドアイリス3」を搭載。2つの機能が連動して動くことで、より広いダイナミックレンジを表現し、ダイナミックコントラスト∞:1を実現した。
今回、新機能として「デジタルフォーカスオプティマイザー」が初搭載。前述のARC-Fレンズにより画面全域にわたり隅まで安定した画質を実現しているが、シフトによりレンズの周辺部を使用した場合、レンズの収差により解像感の低下が起こってしまう。これは光学上避けられないことであり、それを改善するために、従来のデータベース型超解像処理LSI「リアリティークリエーション」に加えるかたちで、デジタルフォーカスオプティマイザーが搭載されている。
デモでは、岩が地面にある森の写真が映し出されたが、この機能をオンにした途端、全体的に解像感が増した印象を受けた。木々の葉の細かさはもちろんのこと、岩のざらざらとした質感がより伝わってくる。補正するためのデータは事前に計測された座標と収差による画質のパターンのデータを用いており、シフトやズームを使用といった設置状況にかかわらず、安定した映像を実現できるという。
ちなみにシフトは、垂直±80%、水平±31%まで対応する。なお、このデジタルフォーカスオプティマイザーの効果は、再生する映像によって変えるとのこと。解像度が高くないシーンや、部分に対しては効果を弱め、もともとの映像に影響を与えないように配慮されている。
また、製作時の設定に忠実な映像を再現するという「HDRリファレンスモード」を搭載。これは同社製造のマスターモニター「BVM-X300」と同じ特性になるように1,000nitで切られたカーブを搭載するものだ。現在の映画製作では400〜4,000nitピークが混在しており、HDR10ではそれをカバーするカーブとなっている。しかし今後は1,000nitピークであるBVM-X300に集約する見通しがあり、このHDRリファレンスモードを使用することにより、製作者の意図に近いHDRを再現できるという。
『スパイダーマン:ホームカミング』でこの機能を試してみたが、明るさのピークに近いネオンの看板の部分で顕著な差がみられた。HDR10では白く飛んでいるようで、わずかに薄いブルーの色が付いていることがわかるくらいであったが、HDRリファレンスモードでは青が濃くなり、その中に描かれていた女性の色まではっきりとわかる。このHDRリファレンスモードは、HDRのオート設定では選択されず、ユーザーが個別に設定する必要があるとのこと。
さらに暗部の階調表現にも改善が行われた。「昨年のモデルではHDRにおいて、暗部が微妙という声があり、それを改善させた」と広報の相澤眞人氏は話す。
HDR10のPQカーブは、BVM-X300のものが用いられているが、BVM-X300の1,000nitピークと比較し、プロジェクターでスクリーンに投影した映像の輝度は、200nit程度の輝度が限度。そのため暗部の明るさも1/5まで圧縮されてしまい、暗部の階調が失われてしまう。そこでプロジェクターでの輝度において最適化し、暗部の明るさを持ち上げたカーブを採用、暗部の階調表現を改善させた。なおこの設定はHDR10だけでなく、HDRリファレンスモードにも適用されている。
デモでは『レヴェナント: 蘇えりし者』の夜の焚き火のシーンを視聴したが、焚き火の影になっているような暗部についても階調の表現があることが確認できた。より自然な見え方になったほか、立体感や奥行きも感じることができる。
■コストパフォーマンスに優れたVW555
VW555は、1,800lmのランプ光源を搭載したスタンダードモデル。レンズはVW745と同様のプラスチックレンズ1枚+ガラスレンズ13枚の構成。垂直+0.85V/-0.80V、水平±31%まで可能な広域レンズシフトにも対応する。アドバンスドアイリス3も搭載し、35万:1のコントラストを実現した。
そのほか、前述したHDRリファレンスモードや、暗部の階調表現の改善も行われている。なおHDRリファレンスモードは、今回同時発表されたVW255に搭載しているほか、現行機種のVW745にも搭載されている。暗部の階調表現については現状では今回発表の3モデルのみが対応している状況。従来の機種でも技術的に対応は可能ではあるが、現時点で対応の予定はないという。
この機種を含めた通常モデル・エントリーモデルには前面吸気、背面排気方式が採用されていないが、これは製品のコンセプトによるものだという。背面排気の場合は背面にある程度の空間を確保する必要があるため、設置性を考えて(壁にある程度くっつけて設置できるよう)前面排気を採用しているとのことだ。
こちらの機種でもVW855と同じ映像を一通り視聴したが、クリアで迫力のあるHDR映像を楽しむことができた。回路や基板のチップが上位機種と同等になったことが大きく画質に貢献しているのだという。『オブリビオン』のように2Kからアップコンバートされた4K UHDコンテンツにおいても、リアリティークリエーションといった超解像により解像感のある映像も体験できた。映像の解像感は、ARC-Fとデジタルフォーカスオプティマイザーを搭載したVW855には一歩譲るが、VW855の300万円と比べ、本機種では90万円という3倍以上の値段差があることを考えると、非常にコストパフォーマンスの良いモデルだと感じた。