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「ものづくりだけに頼る時代は終わり」

エプソンは「期待を超える新しい価値提供」を目指す。2019年度に向けた抱負を発表

公開日 2019/02/14 18:20 Senka21編集部 徳田ゆかり
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セイコーエプソン(株)は、同社社長および役員による記者懇談会を開催。代表取締役社長の碓井 稔氏が、2018年度の同社の取り組みと2019年度に向けた抱負についてプレゼンテーションを行った。以下その模様をお伝えする。

セイコーエプソン(株)代表取締役社長 碓井稔氏

より良い世界の実現に、エプソンが中心的役割を果たす

「平成はグローバリズムとインターネットを始めとする技術革新が凄まじい勢いで進展した時代。世界も大きく変化しようとしている一方、米中の対立や極端なナショナリズムの先鋭化が世界に暗い影を投げかけている」と語る碓井氏。「世界は、こんな時代だからこそ真に人々を幸福にする新しい未来の創造に期待を寄せ、その受け入れに貪欲になっていると考える」とし、「より良い世界の実現に中心的な役割を果たせるエプソンを、長期的視点に立ちスピード感をもって作り出していきたい」と意気込んだ。

同社の掲げる「Epson 25」は、それを実現するための長期ビジョンと位置付けられ、2025年のエプソンのありたい姿を描いたもの。「特に情報通信技術の進化によるサイバー空間の拡大はエプソンにとっての大きなチャンス」とする。「人々が暮らすリアルな世界とサイバー空間の接点として、人やモノと情報がつながる。我々が提供する情報関連機器の重要性は、ますます増していく」と碓井氏。

長期ビジョン「Epson 25」

エプソンは、省・小・精の価値を実現するものづくりの力、グローバルに展開する販売のネットワークという強みを生かし、リアルなものづくり企業として、「インクジェット」「ビジュアル」「ウェアラブル」「ロボティクス」の4領域でイノベーションを起こし、価値ある商品やサービスをお届けすることを目指している。2016年度から始まった「Epson 25」の第1期中期経営計画の最終年度である当2018年度が終了目前となった今、これら4領域での取り組みが紹介された。

2018年度、展開する4つの領域で意欲的な取り組みを果たした

「インクジェットイノベーション」では、成長の核となるのが高速ラインインクジェット複合機。発売から1年半が経過し、販売体制の整備に加え、印刷性能や消費電力、消耗品交換の頻度の低さなどの環境性能を訴求し、販売を伸ばした。また大容量インクタンクモデルは昨年6月に世界累計販売台数3,000万台を達成した。新興国のみならず、ラインナップの拡大などにより先進国でも販売を伸長、今年度は前期比18%増の920万台の販売を見込む。

成長の核となる高速ラインインクジェット複合機が販売を伸ばした

また産業分野向けインクジェットデジタル捺染(なっせん)機は、欧州に加え日本でも製造を開始。グローバルの販売体制構築も進む。大判インクジェットプリンターも設置性や使い勝手を高めた新製品投入で多様なラインナップを揃えた。商業、産業印刷の色再現性を高める技術「Color Control Technology」も開発・発表。「これらによって、サイネージ、テキスタイル、ラベルの戦略分野で、アナログ印刷からデジタル印刷へとシフトする市場を捉え、3年前と比較して2倍近い売上げを見込めるまでに成長した」。

産業分野向けでも成長を果たす

「ビジュアルイノベーション」では、昨年スポットライトとしても活用できるライティングモデルのプロジェクターを発売し、テーマパークやレストランでも導入された。レーザー光源搭載プロジェクターのラインナップ強化を実施、特に高光速プロジェクターのラインナップを拡充した結果、明るさ10,000ルーメン以上の分野でもシェアを伸長。またテクノロジスト集団であるチームラボとのコラボによるデジタルアートミュージアム「Epson teamLab Borderless」を昨年6月オープン、プロジェクターの新規市場の開拓を進めている。

新市場開拓などを推進するプロジェクター分野

「ウェアラブルイノベーション」では、ウォッチブランド「TRUME」、「ORIENT」のビジネスが軌道に乗ってきている。また「ロボティクスイノベーション」では、産業用ロボットTシリーズなどを投入。お客様の製造現場に足を運んでの困りごと・要望解決につながるソリューション営業で需要を取り込んでいる。

ウォッチブランドや産業用ロボット展開も好調に推移

各領域の成長のための生産基盤も整備

また2025年に向けた「SDGs」への貢献についても紹介された。2015年に国連本部で採択された「SDGs」は、社会課題の解決に向け持続可能な社会を実現するための持続可能な開発目標。そこで掲げられた17の目標項目のうち、エプソンは13項目に関わっているという。オフィスの環境対策に貢献した高速ラインインクジェット複合機、紙に新たな価値を与え循環型社会の実現に貢献した乾式オフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」が事例として掲げられた。

「SDGs」が掲げる13項目に関わる

オフィスの環境対策に貢献した高速ラインインクジェット複合機の事例


紙に新たな価値を与え循環型社会の実現に貢献した乾式オフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」の事例

2019年度の抱負:ものづくりだけに頼り、競合他社との技術競争に明け暮れる時代は終わり。期待を超える新しい価値提供を


そして、第2期中期経営計画の初年度となる2019年度に向けた抱負が語られた。碓井氏は「外部環境は厳しく、中国経済が想定以上に減速、新興国での通貨下落や停滞が継続。先進国で競合によるインクカートリッジモデルの価格攻勢も続く」と直近の課題を認識。第2期は、「成果を出して利益成長を実現する3年間」と位置付ける。「品質、性能、納期、コストにも優れた製品、サービスによってイノベーションを加速させ、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造するといった方向性に変更はないが、環境変化に俊敏に対応し、目標達成のための活動を推進する」とした。



直近の課題とその対策を「商品化のスピードアップ、ソリューション提案型への体制強化を加速する。大容量インクタンクモデルの拡販施策を実施」とした上で、「エプソンはBtoBへのシフトを強力に進めている。そのために、お客様に密着してお困りごとをいかに解決するか。喜んでいただけるかをしっかりと理解し、お客様の立場に立った提案活動が重要になる」と強調する。

B to Bへのシフトを強力に推進

「単なるものづくり企業というだけでなく、作り出したものを用いてお客様に新しい価値をご提供できるサービスも併せて作り出していかなくてはならない。ものさえ作っていればいい時代ではない。ものづくりだけに頼る時代はすでに終わっている。ソフトウェアやITの強化を徹底し、事業構造を単品売りから、お客様の課題に正面から向き合ったソリューション提案型に変えていかなくてはならない。今までなかなか手の届かなかった分野、新しい分野である協業やオープンイノベーションの取り組みを強化して、サイバー空間の拡大を私たちの力に変えていく」。

ソリューション提案の事例

「我々は、競合他社との技術競争に明け暮れるのではなく、常にお客様の期待を超える新しい価値を提供し、感動いただけるエプソンでありたい。志を高くもち、目標達成に向けた取り組みを進める。世の中になくてはならない会社を目指す」と締めくくった。

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