ハイエンドスピーカーに連なるサウンドを追求
final、新フラグシップイヤホン「A8000」を約20万円で12/13発売。“トゥルーベリリウム振動板”搭載
また、イヤホンの音のキャラクターを左右する大きな要素として「音圧周波数特性」と「時間応答性」の2つがあるが、このうち「時間応答性」こそが“トランスペアレントな音”の再現に大きく関わるという。
音圧周波数特性に関してはチューニングで変えることができるが、時間応答性の良し悪しはチューニングではほとんど変化しない。細尾氏は「ハイエンドスピーカーが良い例で、周波数特性を弄っても変わることがない音の特徴を持ち、そこが評価される部分でもある」と言う。
“トランスペアレントな音”をいかにイヤホンで実現するか、言い換えれば、いかに優れた時間応答を実現するかが、A8000の開発目標となっている訳だ。
時間応答を高めるにあたり、同社は「PTM(Perceptual Transparency Measurement)」という測定/評価方法から独自に研究した。従来から存在する測定/分析手法は悪い点を特定するには有効だが、測定数値を改善したところで必ず音質が向上する訳ではなく、数値と主観的な音質評価が結び付いた、音質改善に直結する手法を求めた為だ。
このPTMの研究だけで2年かかり、論文として公表するにはまだ検証が必要とのことだが、時間応答と音質を向上させる手がかりや優先順位を明確にすることができた。そのひとつが、昔から言われ続けている「振動板の軽さ/剛性の高さ/伝搬速度の速さ」や「適切な磁気回路設計」であり、トゥルーベリリウムドライバー採用のきっかけとなったという。
音質に関わる詳細のほか、デザインや付属品についても言及があった。同社では基本的に音質と使い勝手を最優先にデザインを決定しており、「デザイナーの遊び心は許容せず、エモーショナルさを生むまでひたすら論理的に追求する」という方針をとっている。また、CADのようなソフトウェアに頼らず、すべて人が考案した曲線で構成している。これに関しては、CADに任せていると自然と他の製品に似通ってしまう為とのことだ。
今回新たに設計されたイヤーフック、および「MMCX ASSIST」は同じ技術者の手によるもので、細尾氏は「すでにMMCX ASSISTを1,000個ほど作った後で、改良したいので作り直させて欲しいと提案しに来るほど熱意にあふれた人物」というエピソードも紹介した。
細尾氏は最後に、「これまでマルチBAモデルの流行の陰に隠れていたODM/OEMメーカーの中には、まだまだ面白い技術を持ったところがある。そういったメーカーと協力した製品を出していければと考えている」と今後について語っていた。