12月1日よりお台場と新宿でサービス開始
映画館のプレミアム化が加速。日本初「フレックサウンド」と新宿エリア初「ドルビーシネマ」を一足先に体験してきた
■日本初登場の音響体感プレミアムシート「フレックサウンド」
つづいて、ユナイテッドシネマの「FLEXOUND Augmented Audio(フレックサウンド・オーギュメント・オーディオ。以下、フレックサウンド)」。同社のアクアシティお台場に日本初登場となる。 映画の音を拡張して体感できる「音響体感プレミアムシート」によって、まったく新しい映画の楽しみ方を得られるというもの。開発したのは、2015年にフィンランドでスタートアップし、その技術が社名ともなっているFLEXOUND社。すでに「フレックサウンド」は、フィンランド、韓国、マレーシア、サウジアラビア、フランス・カンヌの映画館に導入されている。
料金は1作品につき「通常鑑賞料金+200円」の座席指定となっている。アクアシティお台場にある13のうち10スクリーン(2〜7と、9〜12)に全部で85席が導入される。1スクリーンあたり8〜9席がシアター中央一列に配置される。ゆったりとしたサイズで座り心地のいい座席で、独立シートなのでひじ掛け両サイドにドリンクホルダーがある。今回フレックサウンドが導入されなかったスクリーン8は「4DX」、スクリーン13は「SCREEN X」があるためで、スクリーン1は、すでに中央列に配置されている「ペアシート」が人気があるため見送られた。
■実際に聴いてみた。ヘッドレストからの直接音と、座面が振動して身体全体で音を感じる
実際に聴いてみた。音響体感プレミアムシートは、FLEXOUND社の特許技術による音と振動を発生させるスピーカーが内蔵された椅子で、ヘッドレスト付近からの直接音と、背中から腰にかけての座面が振動して身体全体で音を感じることができる。大雑把には、ヘッドレスト付近にある5p前後のユニット2chから中高音とセンターチャンネル要素が直接音として再生され、500Hz以下の低音が振動成分に変換されてシート内部の合板を揺らすことで、背中から腰にかけてのシートが振動するという仕組みだ。
特別にデモンストレーションとして映画館の通常メインサラウンドをオフにして、フレックサウンドだけで聴く機会も得られた(通常上映は両方がオンのまま)。しっかりと身体がサウンドに包まれる。これだけでも十分楽しめる。耳元に聞こえる音はニアフィールド効果もあって、通常の映画鑑賞時よりもクリアになる。小さく細かい音も聞き分けることができるようになる。ビートを刻む音楽のベースやドラム音は座面の振動として伝わってくる。
映画館のメインスピーカーとサラウンドシステムを通常どおり再生してみる。フレックサウンドはマイクキャリブレーション済みなので、メインシステムとのディレイのタイミングも問題ない。むしろほとんどのチャンネル成分がまとめてシートから出てくるので、セリフの分離が心配になるが、センターチャンネル成分だけは抑えめでスクリーン方向から音像が得られた。好みも問題もあると思うが、少し頭をシートから離すとバランスが変わる。
フレックサウンドのシステムは、バックヤードにあるプロセッサーに入った音を、専用のディレイをかけるアンプを通してシートに出力されている。映画が何チャンネルのソースであっても、基本的には同じ処理がなされるので、毎回チューニングしたりする必要はない。「フレックサウンド」は音響拡張の特許技術のことを指し、専用イスそのもののことではない。今回のブルーシート仕様はユナイテッドシネマ独自のデザインで、世界各国の映画館でシートのデザインは異なるそうだ。またフレックサウンド技術は、家庭用のソファやクッション、自動車向け車載システムなどにも展開されている。
■映画館のスイートスポットであるプレミアム席がたったの+200円
フレックサウンドによる新しい音響体感もさることながら、実はシートがスクリーンの「中央一列」に配置されているというのが、大きな魅力のひとつである。本来フレックサウンドは独立した再生システムなので専用シートはどの場所でもいい。ところがアクアシティお台場のフレックサウンドは中央一列を陣取っている。映画館におけるスイートスポットともいえる鑑賞ポジションで、プレミアム席が+200円だと考えることもできる。他シネコンでのプレミアシートの相場は+1,000円〜+3,000円だったりするので、黙ってフレックサウンド席を選んでおけば、「豪華シートのいい場所取り」の意味合いにもなる。家族連れの子供料金にフレックサウンドの組み合わせでもお財布に優しい。
アクアシティお台場のロビーには音響体感プレミアムシートの デモンストレーションコーナーを設置されており、チケット購入前に体験視聴をすることができる。ユナイテッドシネマではフレックサウンド社との協業を発表済みであるが、現時点(2022年11月)でエクスクルーシブ(独占契約)ではないとのこと。また他のユナイテッドシネマ系列館への導入は、お台場での反応次第で広げることを検討するという。