いち早く新製品のサウンドをチェック
Astell&Kern、初のR-2R DAC搭載DAP「A&futura SE300」先行試聴会。VEコラボIEM「AURA」も
アユートは、Astell&Kernから今夏登場予定のDAP「A&futura SE300」、および独Vision EarsとのコラボIEM「AURA」の先行試聴会を、本日5月27日に開催した。
「A&futura SE300」は、Astell&Kernの製品ラインナップの中でも、新しい技術をいち早く採用し、ブランドの革新性を体現するDAPのプレミアムライン “A&futuraシリーズ” から登場する第4弾モデル。“アナログの音をより高度に再現する” ことをコンセプトに、設計段階からDAC部とアンプ部の融合に挑戦したという。
注目トピックは、Astell&Kernとして初のR-2R DACの搭載、自社開発のFPGAテクノロジーをデジタル信号回路に採用、Class-A/AB デュアルアンプモード、およびOS(オーバーサンプリング)モード/NOS(ノンオーバーサンプリング)モードの搭載だ。
まず、R-2R DACはそもそも、抵抗器を梯子状に配置することで、自然でダイナミックなHi-Fiサウンドを実現できるが、一方で、抵抗器の精度や電流管理など、技術的な難易度も高いという。
Astell&Kernでは数年におよぶ開発と試行錯誤の末に、誤差0.01%の超精密抵抗器を48組/96個使用した完全ディスクリート構成のR-2R DACを開発。使用する抵抗器には、温度変化の影響を受けにくい低TCRのものを厳選して採用する。このDAC搭載により出力を強化し、ノイズを除去しながら消費電力の削減も実現したと説明される。
FPGAは、SE300専用に独自に開発したものを搭載。R-2R DACと組み合わせることで、「ハードウェアとプログラムに合わせて緻密に設計された最も理想的」なOS/NOSモード切り替えを実現した。
OSモードは、デジタル信号に部分的な処理を施して帯域を拡張、細部まで鮮明でクリアなサウンドを再生し、広大な空間表現も両立。NOSモードでは、デジタル信号の処理を一切行わず、R-2R DACがデコードした真の無加工の原音が楽しめるとする。
Class-A/AB デュアルアンプでは、AK PA10に搭載されるA級アナログアンプを活用。歪みが少なく自然で、より解像感の高いサウンドを実現し、原音忠実なサウンドを高効率に再生するAB級アンプとあわせて、好みやシーンに応じて切り替えられる。
さらに、主要回路を一体化する独自のサウンドソリューション「TERATON ALPHA」も搭載。同技術およびFPGAを通じてR2R DACやClass-A/AB デュアルアンプの回路構成を最適化しているという。
さまざまな技術的特徴を有するSE300のデザインは、筐体左右が滑らかなカーブを描いており、手に持った際のフィット感が高い仕上がり。ボリュームホイールも操作しやすく、内蔵LEDライトによりアンプモードや再生中のbit深度などが確認できる。
実際、比較的手の小さい編集部員でも持ちやすく、また本体サイズと見た目の重厚感に反して軽く感じられ、ポータビリティーにも優れている印象だった。
同じく先行試聴会に登場した「AURA」は、ダイナミック/BAドライバーを合計11基用いたハイブリッド構成のユニバーサルIEM。ドイツのプレミアムIEMブランド・Vision Earsとのコラボレーションによるもので、両社がお互いの音に対する価値観と卓越した技術力を深く尊重した上で、共通のビジョンのもとで開発に取り組んだとする。
ドライバーには、8mm径アルミニウム・マグネシウム合金ダイナミックドライバー×2基、BAドライバー×8基、BAスーパートゥイーター×1基を採用。ダイナミックドライバーは対向配置した独自のアイソバリック構成とすることでサウンドを増幅、力強い低域再生を実現するとのこと。
さらに、BAスーパートゥイーターで超高域もしっかりカバー。また、各ドライバーの最適化を図る特殊回路構成とした5wayクロスオーバー、排圧コントロール用のアルミ製アコースティックメッシュ、ドライバーのスピード感と音楽性を両立させる内部容積を持つスペシャルチャンバーの採用により、パワフルかつ良バランスの優れたサウンドを追求したという。
付属のケーブルやイヤーチップは専用品。Effect Audioによるカスタムメイドケーブルは、UP-OCC純銅リッツ線2本、純銀リッツと純銅リッツのハイブリッド線2本の計4本の線材を使用。EPO技術により音質に影響を与えることなく、優れた柔軟性を実気したという。筐体カラーに合わせたグレージュカラーも印象的だ。イヤーチップはAZLA製で、100%医療用シリコン採用の肌に優しいタイプを同梱する。
試聴会ではこのほか、5/20に発売されたばかりのクアッドDAC搭載DAP「A&norma SR35」、オリジナルIEMの「AK ZERO2」や、qdcのイヤホン各種も展開。qdcのイヤホンは、6/3発売予定の8BA構成+チューニングスイッチ搭載のユニバーサルIEM「Hifi Gemini-S」も並び、いち早く試聴体験できるようになっていた。
今回はじめて国内ユーザーがじっくり試聴できる機会を設けられた「A&futura SE300」(以下、SE300)と「AURA」。取材に訪れた記者もさっそく、それぞれの目玉となる音の特徴を重点的に確かめてみた。
まずSE300の音の特徴は、ややシャープめな音の輪郭、スッキリとした透明感のある鳴り方を基本としつつ、アンプモード/OS(オーバーサンプリング)モードごとに異なるニュアンスが楽しめる。
アンプモードについては、クラスABモードではギターやボーカルのクッキリさが際立ち、押し出しが強いサウンドに。一方のクラスAモードでは音の輪郭がやや丸くなって耳への刺激が減り、低音の重心も下がって、大人びた雰囲気のサウンドとなる。演奏の細部までじっくり聴き込みたければクラスA、ライブ録音のような勢いのある音源を楽しみたければクラスABの相性がよさそうだ。
OSモードについては、高音域の伸びやクッキリ感はOSモードが、音の消え際や残響といった細やかな描写力ではNOSモードが、それぞれ得意な印象。たとえば弦楽器や管楽器はOSモードの方がよく透って聴こえるし、一方ジャズでスネアドラムをこするブラシの音をNOSモードで聴くと、ワイヤーの1本1本の動きまで想像してしまうような質感の再現が心地よい。
個人的にはクラスA+NOSモードの組み合わせが、情報量の多さをゆったりと味わえるようで最も好みだったが、他のモードもその日の気分や聴く音源、使うイヤホン/ヘッドホン次第で十分選択肢にあがる魅力がある。各モードは画面をスワイプして出てくるメニューからワンタッチで瞬時に切り替えることができ、切り替え時には一瞬無音になるだけで待たされない手軽さも好印象だ。
また、SE300を手に取って印象に残ったのが、持ちやすさ。“A&futura”ラインのDAPでは、これまでにもデザインに曲面を取り入れていたが、SE300でも側面に軽くくぼみを付けるようなデザインが採用されている。
ここに指や手のひらの膨らみがちょうど収まるので、とくに力加減を意識せずともしっかりと握っていられる安心感があった。もちろん、保護ケースに入れる場合は隠れてしまうのだが、ケース無しで使ってみてもいいかな……という考えが浮かんでしまうくらいには手に馴染んだ。
もう一方のAURAの特徴だが、何よりも圧倒的なのが低域の迫力だ。ジャズやロックのベースラインの骨太感、バスドラムの沈み込みは、いままで聴いたことのあるイヤホンの中でもトップクラス。音の鳴り始めも素早く、引き締まった印象を与える。オーケストラのティンパニーの連打などは、文字通り轟くように響きわたる。
この低音を生み出す秘密のひとつが、向かい合わせに配置された2つの8mmダイナミックドライバー。このアイソバリックという構造は、もともとスピーカーのウーファー/サブウーファーで用いられていたのだから、低域の凄さにも納得がいくというものだ。
このように書くと重低音に偏った、いわゆるクラブ系イヤホンのようだが、実際のところ全体的なバランスはきちんと取られている。試聴した中では聞き苦しい音楽ジャンルは無く、あらゆるジャンルの“低音好き”に一度は聴いてみてもらいたいイヤホンだ。
「A&futura SE300」は、Astell&Kernの製品ラインナップの中でも、新しい技術をいち早く採用し、ブランドの革新性を体現するDAPのプレミアムライン “A&futuraシリーズ” から登場する第4弾モデル。“アナログの音をより高度に再現する” ことをコンセプトに、設計段階からDAC部とアンプ部の融合に挑戦したという。
注目トピックは、Astell&Kernとして初のR-2R DACの搭載、自社開発のFPGAテクノロジーをデジタル信号回路に採用、Class-A/AB デュアルアンプモード、およびOS(オーバーサンプリング)モード/NOS(ノンオーバーサンプリング)モードの搭載だ。
まず、R-2R DACはそもそも、抵抗器を梯子状に配置することで、自然でダイナミックなHi-Fiサウンドを実現できるが、一方で、抵抗器の精度や電流管理など、技術的な難易度も高いという。
Astell&Kernでは数年におよぶ開発と試行錯誤の末に、誤差0.01%の超精密抵抗器を48組/96個使用した完全ディスクリート構成のR-2R DACを開発。使用する抵抗器には、温度変化の影響を受けにくい低TCRのものを厳選して採用する。このDAC搭載により出力を強化し、ノイズを除去しながら消費電力の削減も実現したと説明される。
FPGAは、SE300専用に独自に開発したものを搭載。R-2R DACと組み合わせることで、「ハードウェアとプログラムに合わせて緻密に設計された最も理想的」なOS/NOSモード切り替えを実現した。
OSモードは、デジタル信号に部分的な処理を施して帯域を拡張、細部まで鮮明でクリアなサウンドを再生し、広大な空間表現も両立。NOSモードでは、デジタル信号の処理を一切行わず、R-2R DACがデコードした真の無加工の原音が楽しめるとする。
Class-A/AB デュアルアンプでは、AK PA10に搭載されるA級アナログアンプを活用。歪みが少なく自然で、より解像感の高いサウンドを実現し、原音忠実なサウンドを高効率に再生するAB級アンプとあわせて、好みやシーンに応じて切り替えられる。
さらに、主要回路を一体化する独自のサウンドソリューション「TERATON ALPHA」も搭載。同技術およびFPGAを通じてR2R DACやClass-A/AB デュアルアンプの回路構成を最適化しているという。
さまざまな技術的特徴を有するSE300のデザインは、筐体左右が滑らかなカーブを描いており、手に持った際のフィット感が高い仕上がり。ボリュームホイールも操作しやすく、内蔵LEDライトによりアンプモードや再生中のbit深度などが確認できる。
実際、比較的手の小さい編集部員でも持ちやすく、また本体サイズと見た目の重厚感に反して軽く感じられ、ポータビリティーにも優れている印象だった。
同じく先行試聴会に登場した「AURA」は、ダイナミック/BAドライバーを合計11基用いたハイブリッド構成のユニバーサルIEM。ドイツのプレミアムIEMブランド・Vision Earsとのコラボレーションによるもので、両社がお互いの音に対する価値観と卓越した技術力を深く尊重した上で、共通のビジョンのもとで開発に取り組んだとする。
ドライバーには、8mm径アルミニウム・マグネシウム合金ダイナミックドライバー×2基、BAドライバー×8基、BAスーパートゥイーター×1基を採用。ダイナミックドライバーは対向配置した独自のアイソバリック構成とすることでサウンドを増幅、力強い低域再生を実現するとのこと。
さらに、BAスーパートゥイーターで超高域もしっかりカバー。また、各ドライバーの最適化を図る特殊回路構成とした5wayクロスオーバー、排圧コントロール用のアルミ製アコースティックメッシュ、ドライバーのスピード感と音楽性を両立させる内部容積を持つスペシャルチャンバーの採用により、パワフルかつ良バランスの優れたサウンドを追求したという。
付属のケーブルやイヤーチップは専用品。Effect Audioによるカスタムメイドケーブルは、UP-OCC純銅リッツ線2本、純銀リッツと純銅リッツのハイブリッド線2本の計4本の線材を使用。EPO技術により音質に影響を与えることなく、優れた柔軟性を実気したという。筐体カラーに合わせたグレージュカラーも印象的だ。イヤーチップはAZLA製で、100%医療用シリコン採用の肌に優しいタイプを同梱する。
試聴会ではこのほか、5/20に発売されたばかりのクアッドDAC搭載DAP「A&norma SR35」、オリジナルIEMの「AK ZERO2」や、qdcのイヤホン各種も展開。qdcのイヤホンは、6/3発売予定の8BA構成+チューニングスイッチ搭載のユニバーサルIEM「Hifi Gemini-S」も並び、いち早く試聴体験できるようになっていた。
「A&futura SE300」&「AURA」をいち早く試聴!サウンドの印象は?
今回はじめて国内ユーザーがじっくり試聴できる機会を設けられた「A&futura SE300」(以下、SE300)と「AURA」。取材に訪れた記者もさっそく、それぞれの目玉となる音の特徴を重点的に確かめてみた。
まずSE300の音の特徴は、ややシャープめな音の輪郭、スッキリとした透明感のある鳴り方を基本としつつ、アンプモード/OS(オーバーサンプリング)モードごとに異なるニュアンスが楽しめる。
アンプモードについては、クラスABモードではギターやボーカルのクッキリさが際立ち、押し出しが強いサウンドに。一方のクラスAモードでは音の輪郭がやや丸くなって耳への刺激が減り、低音の重心も下がって、大人びた雰囲気のサウンドとなる。演奏の細部までじっくり聴き込みたければクラスA、ライブ録音のような勢いのある音源を楽しみたければクラスABの相性がよさそうだ。
OSモードについては、高音域の伸びやクッキリ感はOSモードが、音の消え際や残響といった細やかな描写力ではNOSモードが、それぞれ得意な印象。たとえば弦楽器や管楽器はOSモードの方がよく透って聴こえるし、一方ジャズでスネアドラムをこするブラシの音をNOSモードで聴くと、ワイヤーの1本1本の動きまで想像してしまうような質感の再現が心地よい。
個人的にはクラスA+NOSモードの組み合わせが、情報量の多さをゆったりと味わえるようで最も好みだったが、他のモードもその日の気分や聴く音源、使うイヤホン/ヘッドホン次第で十分選択肢にあがる魅力がある。各モードは画面をスワイプして出てくるメニューからワンタッチで瞬時に切り替えることができ、切り替え時には一瞬無音になるだけで待たされない手軽さも好印象だ。
また、SE300を手に取って印象に残ったのが、持ちやすさ。“A&futura”ラインのDAPでは、これまでにもデザインに曲面を取り入れていたが、SE300でも側面に軽くくぼみを付けるようなデザインが採用されている。
ここに指や手のひらの膨らみがちょうど収まるので、とくに力加減を意識せずともしっかりと握っていられる安心感があった。もちろん、保護ケースに入れる場合は隠れてしまうのだが、ケース無しで使ってみてもいいかな……という考えが浮かんでしまうくらいには手に馴染んだ。
もう一方のAURAの特徴だが、何よりも圧倒的なのが低域の迫力だ。ジャズやロックのベースラインの骨太感、バスドラムの沈み込みは、いままで聴いたことのあるイヤホンの中でもトップクラス。音の鳴り始めも素早く、引き締まった印象を与える。オーケストラのティンパニーの連打などは、文字通り轟くように響きわたる。
この低音を生み出す秘密のひとつが、向かい合わせに配置された2つの8mmダイナミックドライバー。このアイソバリックという構造は、もともとスピーカーのウーファー/サブウーファーで用いられていたのだから、低域の凄さにも納得がいくというものだ。
このように書くと重低音に偏った、いわゆるクラブ系イヤホンのようだが、実際のところ全体的なバランスはきちんと取られている。試聴した中では聞き苦しい音楽ジャンルは無く、あらゆるジャンルの“低音好き”に一度は聴いてみてもらいたいイヤホンだ。