AIのデータ処理増加と温暖化対策を両立
ソフトバンク、ESG説明会を開催。AIと共存する時代の次世代インフラを構築へ
■AIとの共存社会へ準備が必要
ソフトバンクは、同社のESG(環境・社会・ガバナンス)に対する取り組みへの理解を深めてもらうことを目的に、同社初となる「ESG説明会」を開催した。
説明会の中で宮川潤一社長は、同社のESG経営に対する考え方として「情報革命で人々を幸せにするという経営理念と世界に最も必要とされる会社とのビジョンを持ち、そこからマテリアリティを特定し、事業を通じて対応していくことで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上の両立を目指していく」と訴えた。
この目標を実現するため「デジタル化社会の発展には不可欠となる次世代社会インフラを提供する会社になることが必要」と述べ、社長就任時より10ヵ年計画を立てて取り組むという。その背景として強調したのは、AIとの共存社会への準備だ。「AIは秒単位で進化し、人類の生活はこれまで経験したことのない世界へと大きく変わっていく。その裏側では膨大なデータが生成され、大量のデータ処理が必要になってくる」と説明する。
日本のデータ処理に必要な計算能力は、2030年には1,960エクサFLOPSという単位になると予測され、今の300倍強もの膨大なデータ処理となり、そのために必要とされる電力量は大型火力発電所6基分に相当するという。
現実的にその電力をどう確保していくのか。火力発電が中心となる日本では温暖化する二酸化炭素を排出することからもこれ以上増設するべきではなく、原子力発電も地震大国の日本では注意して利用する必要があるとして、「AIのデータ処理の需要増加と地球温暖化対策とを両立できる新たなインフラの構造作りが必要」と語る。
日本の再生可能エネルギーの導入ポテンシャルは、北海道を筆頭に東北、九州など地方に分散している。一方でデータ処理は、海底ケーブルを陸揚げする場所などといった物理的な問題から東京と大阪に集中している。「再エネを地方で発電し、都市部に送ればよいと思われる方も多いが、実は送電網の容量がボトルネックとなり大量の送電は困難」と、次世代を支えるに際して、現在のインフラは大きな課題を抱えていると指摘した。
この課題を解決するために同社は、北海道や九州など再エネの豊富な地域にデータセンターを分散して配置する、次世代社会インフラの構築を目指す。実現に必要となるテクノロジーを一つ一つ特定し、取り組みを展開。再エネの豊富な北海道に、次世代社会インフラのデータセンターの要となるCore Brainを構築し、全国に分散したデータセンター間をつなぐ光電子結合ネットワークの全国展開を完了した。
また動詞は「AIと共存する社会が始まると、新たに発生し得るリスクにも経営として先回りして備える必要がある」と語り、「現時点でも自動運転車の事故、個人情報の流出など様々なリスクが予想されているが、予測が困難な時代だからこそ、そのリスクに備えるためには、先を見据えた進化し続けるAIガバナンスが必要不可欠だ」と訴えた。
さらにAI倫理ポリシーをグループ企業72社に展開し、e-learningなどを活用して社員教育を徹底するなど、AIリスクの管理に取り組んでいる。一方では積極的にAIを活用し、全社をあげての生成AIコンテスト、マルチモーダル対応の国産LLMの開発、自らをAIを実装する実験場としてノウハウを商品化して外販するなど、「『AIをもっともうまく使う会社』を目指して頑張っている。AIのリスクへの適切な処理と管理とAIの積極的な活用・事業化の推進、この両輪で責任あるAIの実践を進めている」と胸を張る。
AIガバナンスの推進体制強化へ向けて、4月には外部有識者の入ったAIガバナンス委員会の設置を予定している。変化の激しいAI領域において、迅速に知見を採り入れる、進化するAIガバナンスを目指し、経営のリスクに備えていく構えだ。
宮川社長は「AIと共存する社会の準備のために、次世代社会インフラの構築を進めていくとともに、進化し続けるAIガバナンスの体制を整え、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指していく。その結果が、世界に最も必要とされる会社というビジョン、情報革命で人々を幸せにという経営理念の実現つながるものと考えている」と力を込めた。