ドルビービジョン・アトモスの魅力をアピール
オスカー獲得、山崎貴監督が語る『ゴジラ-1.0』UHD BDの魅力。「テレビは光が『ガンッ』とくる」
ドルビージャパンは、本日4月12日、ドルビーシネマ上映作品として制作された『ゴジラ-1.0』の各種ディスクメディア発売に先立ち、同作の監督を務めた山崎貴氏の特別取材会を、白組の調布スタジオで実施した。
『ゴジラ-1.0』は「ゴジラ生誕70周年記念作品」として2023年11月3日に全国ロードショー。今もスクリーンでの上映は続いており、4月7日までの157日間で興行収入73億円、観客動員483万人の大ヒットを記録している。
各所で報じられているように、本作は国内展開に留まらず、2023年12月1日からは2,000館を超える規模で全米の劇場で封切られ、34年ぶりに全米での歴代邦画実写作品興収No.1を塗り替えた。さらに、3月に行われた第96回アカデミー賞授賞式では、「アカデミー賞視覚効果賞」をアジア映画として初めて受賞。ゴジラシリーズのみならず、日本映画史に大きな足跡を残した。
そんな『ゴジラ-1.0』のディスクメディアは5月1日に発売が決定されており、4K Ultra HD Blu-rayはドルビービジョン、およびドルビーアトモスで収録されている。Blu-rayもドルビーアトモス収録となる。モノクロ版の『ゴジラ-1.0/C』については4K盤(豪華版付属)、Blu-ray共にドルビーアトモス仕様となる。
特別取材会では、『ゴジラ-1.0』の制作にあたって感じた「ドルビービジョン/ドルビーアトモスの利点」をテーマに展開。ドルビージャパンのマーケティング シニア・マネージャー、金重聡一郎氏の進行で、ドルビーシネマで制作した経緯や、ドルビーの技術について山崎監督が語ってくれた。
山崎監督は映画制作において、2019年の『アルキメデスの大戦』から、ACES(Academy Color Encoding System)という、異なる入力ソース間の色空間を標準化するために作られたフォーマットを採用している。山崎監督曰く、本フォーマットはドルビービジョンへの変換が容易とのことだ。
音については7.1chダビング後、ドルビーアトモスへのアップミックスを行なってはいるものの、画音の両側面で「そもそもの作り方がドルビーシネマと非常に相性が良かった」と語る。それゆえ、ドルビーシネマ版制作も「特別に色々なことをする必要はなかったので、すんなりやれた」のだという。
ACESフォーマットの使用については、本作のカラーリストであるARTONE FILMの石山将弘氏に早い段階からプレゼンを受けていたとのこと。採用に至ったポイントとしては「黒の締まりと輝度の高さ、白の中に反射している白」とコメント。よりフォトリアルな質感と「スクリーンの向こう側にもう一つの世界」を感じられる高い描画の高さに手応えを感じたという。
なお、山崎監督のドルビーシネマ原体験は、2015年の上映当時は国内に対応館の無かった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』とのことで、ひと目見て「画の奥行き感と本物感が全然違った」と感じたという。「いつか自分の作品でやりたい」という気持ちと共に作品を作り出してきたが、その想いが『ゴジラ-1.0』で身を結んだと振り返った。
様々なシーンがある中、ドルビービジョンの効果が一番表出していたシーンはどこか? という質問については、大戸島でゴジラ(呉爾羅)が出現するシーンの暗さだと山崎監督。その理由は「闇が本当に真っ暗で、そこからヌッと出てきた時の怖さ」だという。夜のシーンが少ない映画ではあるが、と前置きしたうえで、「通常フォーマットでは表現できない黒の描画がゴジラの怖さに貢献してくれている」と自信を覗かせた。
音についても「リッチさ」がゴジラの恐怖感を担保してくれているとのことで、音響効果で特に周りからの評判が良いシーンとして、エンドクレジット中に流れる、ゴジラが歩く地鳴り音を挙げた。この演出は山崎監督のディレクションでは無く、音響チームによる提案とのことで「限定された情報だと神経をフォーカスできる、音に意識が飛ぶようなエンドクレジットは良い構成」と高く評価していた。
ドルビーフォーマットは対応機器を揃えることで、家庭の環境でも最適化されたクオリティで作品を楽しめるというのが大きな特徴だ。ディスクへのドルビービジョン/ドルビーアトモス収録決定について山崎監督の関与はなかったとしながら、「あらゆるものを全部詰め込むという想いがあったのでは」と語る。
特に「3D映画とは異なる画の奥行き感」を体験してもらいたいとのことで、「テレビやスクリーンの形をした窓から本物の風景を見ている感覚を味わえるような立体感」を楽しんでいただきたいと熱弁。劇場環境との違いについては、プロジェクター投影するスクリーンと比べ、自ら発光するテレビの特性を指して「一番光っている部分が“ガンッ”ってくるのが素晴らしい」とコメントした。
ドルビーシネマでは108nits(通常のフォーマットでは48nits程度)のところが、テレビだとピーク輝度1300nitsのモデルもあると金重氏が補足。それを踏まえてドルビービジョンフォーマットのおかげで家庭でも劇場に一番近い表現を再現できる技術進歩を評価した。
山崎監督が4K Ultra HD Blu-rayの『ゴジラ-1.0』の一番の見所として挙げたのは、銀座襲撃のシーン。「怪獣が明るい光の中に出てくるというシチュエーションに挑戦した」とのことで、体表の鱗の反射などが繊細かつダイナミックレンジ広く表現されていると自信を見せた。「何度もチェックいただきたい」と太鼓判を押していた。
これから携わる作品の中で、ドルビービジョンやドルビーアトモスを効果的に使えそうな作品については? という質問については「作品の内容によって変わってくるもの」と回答しつつ、「ドルビービジョンでは米軍機などのジェラルミンの光沢を表現してみたい」とアピール。そのほか、ロートーンの暗いシーンであっても、黒の階調を保持する素晴らしさも高く評価。一方で、通常上映だと黒くて潰れてしまうという問題があり、そこにフォーカスし過ぎるのも難しいという。
今後の作品に付随するものとして過去の作品でHDR化・音響のドルビーアトモス化したい作品は?という質問に対しては、ACESフォーマットを使用し始めた『アルキメデスの大戦』は観れるものに仕上がるだろうとコメントしつつ、「なかなかそういう機会もないんですよね…」と、同席している関係会社にアピールする一幕もあった。
余談ではあるが、記者質問の段で時間的制約や、ビジネス的な要素を考慮せずに、「ACESフォーマット利用作に限らず、過去作品でHDR(ドルビービジョン)化、サウンドのドルビーアトモス化にトライしてみたい作品は?」と聞いてみた。すると「(古い作品は)本編をフィルムで撮っているので4K化と相性が良い」と前置きし、2Kで作成されたCG素材を多く活用していることから画質を統一するという観点で部分で難しいとしながら『宇宙戦艦ヤマト』『永遠の0』といったタイトルをピックアップした。
さらに記者が、ディスクメディア化がDVDで足踏みをしている『ジュブナイル』『リターナー』の話題を出したところ「自分でもテレビで録画したやつ見てますね(笑)…。(再度ディスク化)してくれないかな、自分ですればいいか」とのコメントを頂けた。
『ゴジラ-1.0』のアカデミー視覚効果賞受賞をきっかけに、山崎貴監督の過去作品の高画質ディスク化の機運が高まることを期待したい。
『ゴジラ-1.0』は「ゴジラ生誕70周年記念作品」として2023年11月3日に全国ロードショー。今もスクリーンでの上映は続いており、4月7日までの157日間で興行収入73億円、観客動員483万人の大ヒットを記録している。
各所で報じられているように、本作は国内展開に留まらず、2023年12月1日からは2,000館を超える規模で全米の劇場で封切られ、34年ぶりに全米での歴代邦画実写作品興収No.1を塗り替えた。さらに、3月に行われた第96回アカデミー賞授賞式では、「アカデミー賞視覚効果賞」をアジア映画として初めて受賞。ゴジラシリーズのみならず、日本映画史に大きな足跡を残した。
そんな『ゴジラ-1.0』のディスクメディアは5月1日に発売が決定されており、4K Ultra HD Blu-rayはドルビービジョン、およびドルビーアトモスで収録されている。Blu-rayもドルビーアトモス収録となる。モノクロ版の『ゴジラ-1.0/C』については4K盤(豪華版付属)、Blu-ray共にドルビーアトモス仕様となる。
■『スター・ウォーズ』で識るドルビーシネマの衝撃。山崎監督の語るドルビーフォーマット採用の経緯
特別取材会では、『ゴジラ-1.0』の制作にあたって感じた「ドルビービジョン/ドルビーアトモスの利点」をテーマに展開。ドルビージャパンのマーケティング シニア・マネージャー、金重聡一郎氏の進行で、ドルビーシネマで制作した経緯や、ドルビーの技術について山崎監督が語ってくれた。
山崎監督は映画制作において、2019年の『アルキメデスの大戦』から、ACES(Academy Color Encoding System)という、異なる入力ソース間の色空間を標準化するために作られたフォーマットを採用している。山崎監督曰く、本フォーマットはドルビービジョンへの変換が容易とのことだ。
音については7.1chダビング後、ドルビーアトモスへのアップミックスを行なってはいるものの、画音の両側面で「そもそもの作り方がドルビーシネマと非常に相性が良かった」と語る。それゆえ、ドルビーシネマ版制作も「特別に色々なことをする必要はなかったので、すんなりやれた」のだという。
ACESフォーマットの使用については、本作のカラーリストであるARTONE FILMの石山将弘氏に早い段階からプレゼンを受けていたとのこと。採用に至ったポイントとしては「黒の締まりと輝度の高さ、白の中に反射している白」とコメント。よりフォトリアルな質感と「スクリーンの向こう側にもう一つの世界」を感じられる高い描画の高さに手応えを感じたという。
なお、山崎監督のドルビーシネマ原体験は、2015年の上映当時は国内に対応館の無かった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』とのことで、ひと目見て「画の奥行き感と本物感が全然違った」と感じたという。「いつか自分の作品でやりたい」という気持ちと共に作品を作り出してきたが、その想いが『ゴジラ-1.0』で身を結んだと振り返った。
■ディスクで繰り返し観てもらいたいのは「銀座襲撃」。ドルビーフォーマットの恩恵を語る
様々なシーンがある中、ドルビービジョンの効果が一番表出していたシーンはどこか? という質問については、大戸島でゴジラ(呉爾羅)が出現するシーンの暗さだと山崎監督。その理由は「闇が本当に真っ暗で、そこからヌッと出てきた時の怖さ」だという。夜のシーンが少ない映画ではあるが、と前置きしたうえで、「通常フォーマットでは表現できない黒の描画がゴジラの怖さに貢献してくれている」と自信を覗かせた。
音についても「リッチさ」がゴジラの恐怖感を担保してくれているとのことで、音響効果で特に周りからの評判が良いシーンとして、エンドクレジット中に流れる、ゴジラが歩く地鳴り音を挙げた。この演出は山崎監督のディレクションでは無く、音響チームによる提案とのことで「限定された情報だと神経をフォーカスできる、音に意識が飛ぶようなエンドクレジットは良い構成」と高く評価していた。
ドルビーフォーマットは対応機器を揃えることで、家庭の環境でも最適化されたクオリティで作品を楽しめるというのが大きな特徴だ。ディスクへのドルビービジョン/ドルビーアトモス収録決定について山崎監督の関与はなかったとしながら、「あらゆるものを全部詰め込むという想いがあったのでは」と語る。
特に「3D映画とは異なる画の奥行き感」を体験してもらいたいとのことで、「テレビやスクリーンの形をした窓から本物の風景を見ている感覚を味わえるような立体感」を楽しんでいただきたいと熱弁。劇場環境との違いについては、プロジェクター投影するスクリーンと比べ、自ら発光するテレビの特性を指して「一番光っている部分が“ガンッ”ってくるのが素晴らしい」とコメントした。
ドルビーシネマでは108nits(通常のフォーマットでは48nits程度)のところが、テレビだとピーク輝度1300nitsのモデルもあると金重氏が補足。それを踏まえてドルビービジョンフォーマットのおかげで家庭でも劇場に一番近い表現を再現できる技術進歩を評価した。
山崎監督が4K Ultra HD Blu-rayの『ゴジラ-1.0』の一番の見所として挙げたのは、銀座襲撃のシーン。「怪獣が明るい光の中に出てくるというシチュエーションに挑戦した」とのことで、体表の鱗の反射などが繊細かつダイナミックレンジ広く表現されていると自信を見せた。「何度もチェックいただきたい」と太鼓判を押していた。
■山崎貴監督とドルビーフォーマットの今後。『ジュブナイル』『リターナー』のメディア化についても……?
これから携わる作品の中で、ドルビービジョンやドルビーアトモスを効果的に使えそうな作品については? という質問については「作品の内容によって変わってくるもの」と回答しつつ、「ドルビービジョンでは米軍機などのジェラルミンの光沢を表現してみたい」とアピール。そのほか、ロートーンの暗いシーンであっても、黒の階調を保持する素晴らしさも高く評価。一方で、通常上映だと黒くて潰れてしまうという問題があり、そこにフォーカスし過ぎるのも難しいという。
今後の作品に付随するものとして過去の作品でHDR化・音響のドルビーアトモス化したい作品は?という質問に対しては、ACESフォーマットを使用し始めた『アルキメデスの大戦』は観れるものに仕上がるだろうとコメントしつつ、「なかなかそういう機会もないんですよね…」と、同席している関係会社にアピールする一幕もあった。
余談ではあるが、記者質問の段で時間的制約や、ビジネス的な要素を考慮せずに、「ACESフォーマット利用作に限らず、過去作品でHDR(ドルビービジョン)化、サウンドのドルビーアトモス化にトライしてみたい作品は?」と聞いてみた。すると「(古い作品は)本編をフィルムで撮っているので4K化と相性が良い」と前置きし、2Kで作成されたCG素材を多く活用していることから画質を統一するという観点で部分で難しいとしながら『宇宙戦艦ヤマト』『永遠の0』といったタイトルをピックアップした。
さらに記者が、ディスクメディア化がDVDで足踏みをしている『ジュブナイル』『リターナー』の話題を出したところ「自分でもテレビで録画したやつ見てますね(笑)…。(再度ディスク化)してくれないかな、自分ですればいいか」とのコメントを頂けた。
『ゴジラ-1.0』のアカデミー視覚効果賞受賞をきっかけに、山崎貴監督の過去作品の高画質ディスク化の機運が高まることを期待したい。