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「夏のヘッドフォン祭 mini 2024」にも登場

KuraDa、革新3Dプリント技術と最新素材を採用した開放型ヘッドホン「KD-Q1」。税込22万円

公開日 2024/07/19 12:50 編集部:長濱行太朗
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飯田ピアノは、同社のKuraDaブランドから開放型ヘッドホンの上位モデル「KD-Q1」を8月5日(※8月12日に延期)に発売する。価格はオープンだが、市場予想税込価格は220,000円前後としている。全国の家電量販店、オーディオ専門店で購入でき、7月22日から予約受付を開始する。また、静岡県三島市のふるさと納税の返礼品として、9月頃からの登録も予定している。

「KD-Q1」

本稿では、メディア向けに開催された発表会の内容も含め、KD-Q1の特徴を紹介していく。

本モデルならではの高音質技術として、「Ultra-Responsive Diaphragm(ウルトラレスポンシブダイアフラム)」を採用した53mm ダイナミック型ドライバーを搭載する。PET素材の薄型ダイヤフラム、OFCボイスコイルを導入することで、軽量で高い応答性を叶え、前モデルのKD-P1で課題に挙げられていた低音域の特性も向上させた。再生周波数帯域は20Hz - 20kHz、インピーダンスは75Ω、感度は84dB、最大入力は1000mW。

「Ultra-Responsive Diaphragm(ウルトラレスポンシブダイアフラム)」

ドライバーユニットの背面部

新開発「3次元形状立体縫製イヤーパッド」も採用する。低反発ウレタンを3次元形状にカットしたもので、人間の頭の形に沿うように設計され、立体的に縫製されている。長時間の使用でも疲れにくく、音漏れを最小限に抑え、圧力伝播を最適化している。

「3次元形状⽴体縫製イヤーパッド」

耳に当たる感触も柔らかく、長時間の装着でも快適な印象を与える

快適な装着と高音質を両立する筐体設計も採用する。人間工学デザインで頭部に自然にフィットし、長時間の使用でも快適なうえ、軽側圧設計で圧迫感が弱く、3D形状のイヤーパッドが密閉度を保つため、快適性と音質の両方を実現。併せて、音響透過性ダンパーを吟味して最適な音響レジスターを設定しており、ドライバー背面と前面の圧力を最適化し、正確なピストンモーションも可能にしている。

軽側圧設計を採用している

LRの表記はヘッドホンの内側に印字

質量は296g、入力端子にLEMO社製 0B型 2極コネクタを採用しており、1.2mケーブルと6.3mmステレオプラグを付属する。

ヘッドホンケーブルの接続部

KuraDaは2012年創立、静岡県三島市に拠点を置き、全ての部品に日本製のもの使用している。「聞くことの喜びを通じて人々の生活に豊かさをもたらす」ことコンセプトしている。また、新しい素材や製造方法を常に模索していることもブランドの特徴だという。そして、“ものづくりにおける3つの哲学”として、「常に最良であれ」「常に謙虚であれ」「常に革新的であれ」を掲げている。

有限会社飯⽥ピアノ オーディオ事業部 KuraDa 代表 飯⽥良平氏

KuraDaブランドが掲げる3つの理念

同ブランドでは、2013年に登場した密閉型ヘッドホン「KD-FP10」を皮切りに、2014年に密閉型ヘッドホン「KD-C10」、2015年に“全開放型ヘッドホン”として打ち出した「KD-P1」、全3機種のヘッドホンを開発してきた背景がある。

前モデルの「KD-P1」

KD-Q1は、同ブランドから約6年振りに登場した開放型ヘッドホンとなる。先述した「常に革新的であれ」という哲学を具現化し、「質実剛健」をテーマに設計されている。大きな特徴として挙げられるのが「3Dプリント」による製造と「新開発音響設計」を施した点の2点だ。

従来まで、木材ハウジングのモデルやA7075(超々ジェラルミン)といった素材を用い、切削加工による設計を行ってきた。切削加工は高精度な加工が可能な点が大きなメリットだが、高コストであり、複雑形状の量産が難しく、そして材料効率が悪いというデメリットもあったとのこと。

しかし、今回新たに採用した3Dプリント技術を用いることで、非常に高い背品デザインの自由度を備えながらも、低コストを実現し、また複雑形状のものを一度に製造可能で材料効率も非常に高いという、製品開発において、大きなメリットを得られたとアピールする。

3Dプリンティングソリューションには、“HP Jet Fusionシリーズ”の「HP Jet Fusion 4200」を使用。従来の3Dプリント技術を比較して最大10倍のスピードで製造できる高速生産を実現している。さらに材料の粉末に対して高精度の液体エージェントを噴射し、熱を加えることで層を形成するため、高速なだけでなく、精度の高さも兼ね備えており、複雑な形状のパーツでも一度に、そして大量に製造することが可能という。

「HP Jet Fusion」の技術特徴

一度に多数のパーツを効率的に製造できる点は高いコスト効率にも繋がっている。併せて、材料の無駄を最小限に抑えることができるため、環境への配慮もクリアした、今度も持続可能な製造プロセスを実現した説明する。

3Dプリンター造形材料には、「HP 3D High Reusability PA12GB」が採用されている。ポリアミド素材の中でも最も低密度な素材であり、融点に優れ、吸水性が低く、そして耐寒衝撃性も高い特徴をもつ「PA12」に、40%のガラスビーズを混合させることで、高い引張強度と熱変形温度を実現しているとのこと。「GB」は“Glas Beads”を意味している。

PB12GBの材質解説

剛性が必要なカバー/ハウジング/ケース/ブラケットを開発する上で最適な素材であり、高剛性、寸法精度、耐熱性を成し得ていることが、素材の採用に至ったポイントだとしている。最大70%の余剰パウダーの再利用率によって、無駄を削減した製造ができる点も利点のようだ。

先進の3Dプリント技術である「Multi Jet Fusion方式」、高性能な「PA12GB」材料を採用することで、軽量かつ高強度なボディを実現し、優れた音響特性と環境配慮を両立できたと説明した。

今回、SOLIZE(ソライズ)株式会社の協力のもと、HP社が開発したMJF(Multi Jet Fusion)方式により製造。SOLIZEは、3Dプリント技術によるKD-Q1の開発・製造において立役者といえる。

SOLIZEの強力でKD-Q1の開発が実現

SOLIZE株式会社 デジタルマニュファクチャリングサービス事業部 AMサービスビューローブ 部署長 太田 亨 氏

SOLIZEは1990年に設立、東京都千代田区に本社を置き、Global Engineering Center-Yamato 大和営業所・大和工場(神奈川県大和市)をはじめ、豊田工場・豊田営業所(愛知県豊田市)、横浜工場(神奈川県横浜市)と計3つの工場をもつ。今回の発表会は、大和営業所・大和工場で実施された。

「デジタルマニュファクチュアリング」が事業ドメインのひとつとしてあり、デジタルものづくり、3Dプリンター装置の導入などのサービスを展開する。同社は3Dプリンターをはじめ注型・鋳造、切削等に対応した3Dプリント試作品製作、HP Jet Fusionを活用した3Dプリント最終品製作などの技術を備えており、試作から完成段階までSOLIZEで一貫して対応できる強みがKD-Q1の開発に活きたという。

3Dプリンターで製品の試作から最終品の製作まで対応できる

HP Jet Fusionを5台保有しており、国内自動車メーカーの認定サプライヤーとしても活躍している。なかでもトヨタ自動車のLEXUS「LC500」ではオートマチックトランスミッション(AT)オイルクーラーダクトの量産パーツとして、SOLIZEで生産した3Dプリントパーツが国内初採用されたことも高く評価されているようだ。

トヨタ自動車のオイルクーラーダクトの量産パーツとして採用されている

また、材料物製の安定化やバラつきの最小化などによる量産品質の確立、造形レイアウトの最適化といった形状提案によるコスト低減、品質と稼働の安定化を叶える量産工場としての環境・ルール整備、これらを徹底していくことで、少量のものづくりにおいても3Dプリント技術がひとつのツールとして活用できる仕組みを成功させたこともSOLIZEの魅力だ。

3Dプリント技術において課題とされていた「意匠性」と「コスト」のバランスにおいて、素材選びも大きなポイントになると示す。KD-Q1で採用されたPA12GBは、造形方向の最適化によって意匠面の表面品質向上を成し得ており、また製造における造形レイアウトの最適化を図ることでコスト低減も両立した。

SOLIZE株式会社 デジタルマニュファクチャリングサービス事業部 マーケティング&セールス部 北山成志 氏

PA12GBは意匠性とコストのバランスに優れる


Global Engineering Center-Yamato ⼤和営業所・⼤和⼯場に設置されていた「HP Jet Fusion 4200」

黒色で印字されているのがパーツで、光を通しながら造形している


HP Jet Fusion 4200のジョブ画面

PA12GB


3Dプリントされ、HP Jet Fusion 4200から出てきたパーツ。PA12GBが粉として付着している状態

PA12GBの粉を拭きとったパーツ。少しザラツキのある肌ざわり


HP Jet Fusion 4200から出した状態のロゴパーツと製品版のロゴパーツ。製品版は塗装が施されている

発表会では、オーディオ・ビジュアル評論家である麻倉怜士氏がKD-Q1について、「手に持った時にぴっくりしたのが軽量さ。見た目からは想像できない飛ぶような軽さで、装着するとさらに軽さを実感できる。手触りも非常に良く、また装着した際にイヤーパッドからの圧迫感の無さが、さらに軽いという印象を高めてくれる」と、まず物理的な良さについてコメントした。

オーディオ・ビジュアル評論家 麻倉怜士氏

そして音質について、「ジャズヴォーカリスト・情家みえさんの楽曲では、低音の量感とキレがよく、ベースの音階がよく聴きとれるほど。時間軸の駆動がしっかりしているような印象で、それが音の立ち上がり・立ち下がりのよさに表れている。ヴォーカルの明瞭感も優秀で、微小信号まで立ち上がりが良いため、情家さんの感情的な歌声も描き切っている。音楽が軽妙で心地よく楽しめるサウンドだ」とインプレッションを語ってくれた。

飯田ピアノの担当者である飯田良平氏は、「従来まで3モデルのヘッドホンを開発してきたが、KuraDaとしてのブランドの特徴を備えながらも、より幅広いユーザーに手に取って、KuraDaのサウンドを体感してもらえる、同ブランドの基準となるような“ニュースタンダード”としてKD-Q1を楽しんでもらいたい」と、意気込みを言葉にしてくれた。

KD-Q1は、7月27日に開催される「夏のヘッドフォン祭mini 2024」に出展予定。飯田ピアノブースにデモ機が並ぶので、実際に手に取り、試聴も可能だという。

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