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ガジェット【連載】西田宗千佳のネクストゲート 第14回

Mac版『バイオハザード ヴィレッジ』先行プレイ。ノート型でも高画質で遊べる喜び

Gadget Gate
公開日 2022/10/28 16:22 西田宗千佳
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Image:CAPCOM
Mac版の『バイオハザード ヴィレッジ』が、10月28日から発売になる。それに合わせ、先行してテストプレイを行った。その感想をお伝えしていきたい。

ゲームといえば現状、やっぱりWindowsの方が有利ではある。だが、特にAppleシリコン投入以降、Macの性能と消費電力の比率は劇的に向上しており、「この性能をゲームで活かせれば」と思ったことは何度もある。

Mac版の『バイオハザード ヴィレッジ』は、現在のMacにおける「ゲーム向けの性能」を測るにはちょうどいい存在と言える。パフォーマンスを測るためにちょっとした「おまじない」も聞いたので、それを使いつつ、いろいろチェックしてみた。

『バイオハザード ヴィレッジ』Mac版登場に至る道



まず『バイオハザード ヴィレッジ』について少しご紹介しておこう。『バイオハザード』といえば、みなさんご存知の大ヒット・サバイバルアクションゲーム。その最新作として、2021年5月に発売されたのが『バイオハザード ヴィレッジ』だ。「Village」の綴りの最初の4文字が「VIII(8)」っぽく見えるように仕込まれており、最新ナンバリングタイトル、という扱いでもある。

Windows PCや家庭用ゲーム機用としてはすでに発売済みではあるのだが、高性能な製品に向けたハイエンド・グラフィックタイトルであり、とにかくリッチなグラフィックが魅力の作品でもある。Windows PCで動かす場合も、いわゆるゲーミングPCで遊ぶことを前提としている。

というわけで、今まではMacには提供されてこなかったのだが、今回、ついにMac版の提供が実現した。

Image:CAPCOM

その背景には、3つの要素がある。1つは、カプコンが独自のゲームエンジン「RE ENGINE」を持っており、『バイオハザード ヴィレッジ』も、この上で動作していること。

2つ目は、RE ENGINEがアップルのグラフィックスAPIである「Metal」をサポートしたこと。特に最新の「Metal3」は、Windows上で動作するグラフィックスAPIにかなり近い機能を持つようになっており、対応作業は以前より楽になっていたはずだ。

そして3つ目が、AppleシリコンのGPU性能の高さだ。アップルはiPhoneからハイエンドのMacまで、すべて同じアーキテクチャを採用するようになっており、GPUも基本的に、価格や位置付けで性能は違うが、構造は近い形になっている。単純なピーク性能ではNVIDIAやAMDの最新ハイエンドGPUに敵わない部分もあるが、ことノート型のボディに入るレベルの性能でいえば、他社を凌駕するレベルになっている。

だから、カプコンとしても『ヴィレッジ』のMac版を作る環境は整っていたわけだ。もちろん、アップルのバックアップもあっただろう。

Image:CAPCOM

結果として、今年6月の年次開発者会議「WWDC 2022」では、カプコン・技術研究開発部技術開発室 室長の伊集院勝氏が、基調講演の中で『バイオハザード ヴィレッジ』のMac版開発を発表することになった。このことは、カプコンが作るような最先端のグラフィックスを備えたゲームがMacで動かせることのアピールであり、同時に、カプコン製ゲームのMac版発売が今後容易になることを期待させる出来事でもあった。

4KでもWQHDでもOK、ただしレイトレーシングは動かない



さて、では実際のゲームはどうなっているのだろうか?

Mac版はMac AppStoreを経由し、Appleシリコン搭載のMacでのみ動作するものとして提供される。インテルCPUのMacでは動作しない。価格は5000円(税込)。ゲームの内容は基本的に、すでに発売されている他機種版と同じである。

今回はM1 Pro搭載のMacBook Pro(14インチと16インチ)を用意し、試してみた。

まず驚くのは「HDRのすごさ」だ。『バイオハザード ヴィレッジ』はHDRに対応している。そして、M1 Pro/Max搭載のMacBook ProはディスプレイがミニLED搭載液晶なので、ディスプレイがHDRに対応している。なので、『バイオハザード ヴィレッジ』のHDR出力を存分に楽しめる。


もちろん他機種においても、HDR対応のテレビやディスプレイを用意できれば同じ体験はできるのだが、「ノート型でハイクオリティなHDR体験ができる」というのはかなり新鮮な驚きがある。

なお、同じMacでもMacBook Airや13インチMacBook Proの場合には、HDRを体験するには外付けのHDR対応ディスプレイが必要になる。

ネタバレもしたくないので、ゲームの内容にはあえて触れない。ゲームの性質上、明暗の強いシーンの多い作品ではある。そのため、HDRが特に映える部分もある。

最近のゲームはグラフィックオプションが充実しているのが常だが、『バイオハザード ヴィレッジ』も同様。基本的にPC版と同じ項目だが、細かく設定を変えられる。迷ったら「グラフィックス自動設定」から「おすすめ」を選べばいい。


ただ、他機種版と異なる点としては、現状「レイトレーシング」がオンにできない。その点だけは留意が必要だ。

解像度は3840×2160ドット(いわゆる4K)から640×480ドットの間で設定可能。基本的には、M1なら1920×1080ドット、M1 Pro/Maxなら2560×1440ドット(WQHD)くらいがおすすめの範囲らしい。ただしM1 Proで4Kを動作させても、もちろん問題はなかった。

「MetalFX Upscaling」の効果は劇的、ぜひVenturaでプレイを



気になるのはパフォーマンスだろう。そこで今回はちょっと、パフォーマンスチェック用の裏技を教えていただき、フレームレートなどの変化をみながら遊んでみた。ネタバレ配慮もあり、スクリーンショットとして公開しているのは「ものすごく序盤」のものだけになっているので、その点はご理解を。

前述のように、HDRのクオリティが素晴らしい。レンダリング品質も、PlayStation 5版やWindows PC版とそこまで差はないように見える。

WQHDでプレイしてみたところ、ノーマルな設定ではフレームレートが毎秒30コマから40コマに落ち込むことがあった。4Kでも似た傾向だ。

MetalFX Upscalingオフ

では高画質動作が厳しいのか? というとそうではない。macOSの最新版である「Ventura」で動作させた場合には「MetalFX Upscaling」という技術が使えるようになるからだ。

MetalFX Upscalingは、処理負荷を下げるために低い解像度でレンダリングした映像に処理をかけて擬似的に高解像度化する技術だ。これは最新の他のGPUにもある機能なのだが、画質劣化を最低限に抑えつつフレームレートを上げるには有効なものである。

今回も、MetalFX Upscalingをオンにすると、フレームレートが一気に上がった。MetalFX Upscalingの設定には「Quality(画質重視)」と「Performance(速度重視)」の2つがある。前者は過去の映像も参照して高画質化する「MetalFX Temporal Upscaling」、後者は同じフレームの中だけを見て高画質化を行う「MetalFX Spatial Upscaling」だと思われる。

「Performance」設定

フレームレートは明確に「Performance(速度重視)」の方が安定しており、ほとんどのシーンで毎秒60フレームを維持できていた。「Quality(画質重視)」でもかなりの範囲が60フレームだったが、ときおりフレームレートが下がることもあった。どちらにしろ、MetalFX Upscalingをオンにしない時からは毎秒10から20フレーム分違う。

MetalFX Upscalingオフ

「Performance」設定

「Quality」設定

品質については、「Quality(画質重視)」だとプレイ中もまず差には気付かない。「Performance(速度重視)」だと一部にモアレが出ることもある。ただ、ごく小さな範囲なので、それが致命的という話ではない。

「Quality」設定

どちらにしろ、Mac版をプレイする上でMetalFX Upscalingをオンにしない理由はない。だから、OSはVenturaにアップデートしてからのプレイをお勧めする。

バッテリーでも快適に遊べるAppleシリコンの実力



そしてなにより大きいのは、プレイ中も「Macが非常に静かである」ことだ。

Appleシリコン搭載のMacBook Proは、相当な負荷をかけない限りファンの音が聞こえてくることはない。発熱が気になることもない。それが『バイオハザード ヴィレッジ』のようなヘビー級タイトルでどうなるのか……と思ったのだが、正直拍子抜けするくらいなにも起きなかった。

Image:CAPCOM

もちろん、かなりの負荷でMacが回り続けることになるので、本体中央のアルミ部分などを触ると熱を感じる。しかし、うるさいファン音とは無縁で、ずっと静かな状態を維持していた。

WindowsのゲーミングPCの場合、GPUがどうしても電力を大量に使うので、ファンでしっかり冷やさないと厳しい。だからどうしても音は大きくなる。静音性に配慮した機種ならいいが、ノート型だと「静かにプレイする」のはちょっと難しい。また、バッテリーで動作させるとパフォーマンスが顕著に落ちる。

しかしMacBook Proの場合、バッテリーでも問題なくゲームができた。もちろん、ウェブを見るときに比べると消費量は多いのだが、4、5時間は普通に遊べそうだ。

Image:CAPCOM

今回は機材や評価用ソフトの準備の関係もあり、M1やM2のMacBook Airではプレイできていない。しかし、過去のパフォーマンスチェックの経験から考えると、解像度さえフルHD程度に抑えれば、それらの機種でも十分快適にプレイできると予想できる。

ゲームのタイトル数でMacが不利なのは間違いない。しかし、これだけ「ノート型でも快適にプレイできる」ことがわかると、考え方を変えるメーカーも出てくるのではないだろうか。あとは、開発の手間に見合うだけゲームが売れるか、という点だろう。

そういう意味も込めて、Macでもっとゲームがしたい人は、ぜひ『バイオハザード ヴィレッジ』をプレイしてみていただきたい。大丈夫、怖くないから。他のバイオに比べれば。

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