ガジェット【連載】佐野正弘のITインサイト 第57回
20万円の高性能スマホに消費者は限界、「ミドルクラスより上」が注目の的に
2023年に入っても中々新機種の投入がなかったスマートフォン。だがゴールデンウィークが明け、夏商戦が近づいたこともあってか、ようやくメーカー各社からスマートフォン新機種の発表がなされている。
なかでも、各社がこの時期に重点を置いているのが、自社技術をふんだんに取り入れて性能が非常に高いハイエンドモデルだ。既にサムスン電子が、2億画素のカメラを搭載した「Galaxy S23 Ultra」を投入しているが、他のメーカーも高い性能を持つフラッグシップモデルを相次いで発表している。
先日5月9日に新機種を発表したシャープは、前年のフラッグシップモデル「AQUOS R7」の後継モデルとして新たに「AQUOS R8 pro」を発表している。1インチの大型のイメージセンサーと、ライカカメラと共同開発したレンズを搭載している点はAQUOS R7と変わっていないのだが、新たに「14chスペクトルセンサー」を搭載、光の強さや色合いを測定し、より人間の見た目に近い色合いで撮影できるようになった。
それに加えて、新しいAIエンジンの搭載によって、被写体をより緻密に判定し適切な補正ができるようになったほか、新たにペットの認識にも対応するなど、幅広い被写体を撮影しやすくなっている。カメラのリング部分を放熱に活用する「サーモマネジメントシステム」も、カメラ部分が特徴的なデザインとなっているAQUOSシリーズならではの特徴といえるだろう。
また、本日5月11日に新機種を発表したソニーの新しいフラグシップモデル「Xperia 1 V」も、カメラ性能のさらなる充実に注力。新たに自社独自開発の新しいイメージセンサー「Exmor T mobile」を、メインカメラに採用したことが大きなポイントとなっている。
Exmor T mobileは、イメージセンサーの大型化が図られただけでなく、新たに画素を2つの層に分割することで、光を取り込む量を増やすとともに耐ノイズ性能を最大化。加えて、有効画素数が4,800万に拡大したことを活かし、複数の画素を組み合わせてより多くの光を取り込む「ピクセルビニング」の技術をXperia 1シリーズで初めて取り入れることにより、暗い場所での撮影性能を前機種の「Xperia 1 IV」と比べて2倍向上させているという。
同じく日本時間の5月11日に、開発者向けイベント「Google I/O」で新機種を発表したグーグルも、従来にない新しいモデルとして「Pixel Fold」を発表している。これは、グーグル初投入となる横開きタイプの折り畳みスマートフォンだ。
Pixel Foldは開いた状態では5.8インチ、開いた状態では7.6インチの大画面を利用できるが、開いた状態での薄さが6mm、折り畳んだ状態でも12mmと薄く、折り畳んでも通常のスマートフォンと同じ感覚で使えることに力が入れられている。加えて、Pixelシリーズで人気のAIを活用したカメラ機能や、開いた状態でも操作や画面の分割などがしやすいインターフェースなど、ソフト面でも使い勝手の向上に力が入れられているようだ。
確かにいずれのスマートフォンも、各社が得意とする技術を生かした進化がなされており魅力は大きいのだが、非常に気になるのが価格だ。なぜなら、いずれのスマートフォンも軒並み20万円に匹敵、あるいは20万円を超えるなど非常に値段が高いのだ。
実際Xperia 1 Vは、オープン市場に向けたSIMフリー版の価格が19万5,000円前後とされているし、Pixel Foldは折り畳み型ということもあって25万3,000円と一層値段が高い。AQUOS R8 proは、発売が7月上旬以降とやや先であることもあってまだ価格が出ていないが、Galaxy S23 Ultraも約20〜25万円という非常に高額な値付けがなされていたことから、各社の最上位モデルは20万円くらいがスタンダートとなりつつあることが分かるだろう。
その背景には円安に加え、機能進化により使用する部材が高騰するなどいくつかの要因が働いているようだが、20万円もするスマートフォンを購入する人は、かなり明確な目的を持った人に限られてしまう。多くの消費者にとってフラグシップの最上位モデルは、もう手が届かない存在となってしまったことは間違いない。
それだけに重要になってきているのが、最上位モデルほどの機能・性能は持たないにしても、消費者が手にできるレベルの価格を実現したスマートフォンだ。その代表例となるのは、ミドルクラスのスマートフォンであり、サムスン電子が既に「Galaxy A54」を発表しているが、ソニーも同様に今回の発表に合わせて、ミドルクラスの新機種「Xperia 10 V」を同時発表している。
ただ、ミドルクラスのスマートフォンも価格高騰が進んでおり、以前の主流だった3万円台から、最近では5〜6万円という水準にまで上昇しているにもかかわらず、性能面では依然、ハイエンドモデルと比べ開きがある。日常的な利用には十分満足できる性能を持つことから、ミドルクラスが市場のボリュームゾーンであることに変わりはないが、ゲームやカメラなどであと一歩高い性能を求める人達を満足させるには至らないのが実状だ。
一方で、ミドルクラスよりは高い性能が欲しいが、20万円はとても出せないという人に向けたスマートフォンは、これまであまり力を入れていなかったメーカーもあり、選択肢がやや乏しくなっている。そこで、今回の各社の新機種からは、超高性能なフラグシップモデルとミドルクラスの間を埋めることに力を入れる動きも出てきている。
その1つが、シャープが新たに発表した「AQUOS R8」である。こちらはチップセットの性能や、シャープ独自開発の有機ELディスプレイ「ProIGZO OLED」、そしてライカカメラ監修のカメラを搭載する点などはAQUOS R8 Proと共通しているのだが、一方でイメージセンサーは1インチではなく1/1.55インチのものを採用し、画面サイズやRAMを変えるなどして価格を抑えている。
それとはやや異なるアプローチで、高性能と低価格を実現しているのがGoogleの「Pixel 7a」だ。Pixelシリーズの「a」が付いたモデルは廉価版と位置付けられているのだが、Pixel 7aは上位モデルの「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」と同じGoogle独自のチップセット「Tensor G2」を搭載。性能面では上位モデルと共通しているのだが、それでいて廉価モデルらしい6万2,700円という非常に安い価格を実現している。
為替がかつての水準にまで戻れば、スマートフォンの価格は多少安くなるかもしれないが、各社がフラグシップモデルに技術の粋を注ぐ傾向が一層強まっていることを考えると、最上位モデルが20万円を大きく下回る可能性は低いと筆者は見る。
とはいえ、20万円を超えるスマートフォンを購入できる消費者が大幅に増えるとも考えにくく、最上位より下のラインナップの重要性が今後一層高まることは間違いないだろう。
■各メーカーがスマートフォン新機種を立て続けに発表
なかでも、各社がこの時期に重点を置いているのが、自社技術をふんだんに取り入れて性能が非常に高いハイエンドモデルだ。既にサムスン電子が、2億画素のカメラを搭載した「Galaxy S23 Ultra」を投入しているが、他のメーカーも高い性能を持つフラッグシップモデルを相次いで発表している。
先日5月9日に新機種を発表したシャープは、前年のフラッグシップモデル「AQUOS R7」の後継モデルとして新たに「AQUOS R8 pro」を発表している。1インチの大型のイメージセンサーと、ライカカメラと共同開発したレンズを搭載している点はAQUOS R7と変わっていないのだが、新たに「14chスペクトルセンサー」を搭載、光の強さや色合いを測定し、より人間の見た目に近い色合いで撮影できるようになった。
それに加えて、新しいAIエンジンの搭載によって、被写体をより緻密に判定し適切な補正ができるようになったほか、新たにペットの認識にも対応するなど、幅広い被写体を撮影しやすくなっている。カメラのリング部分を放熱に活用する「サーモマネジメントシステム」も、カメラ部分が特徴的なデザインとなっているAQUOSシリーズならではの特徴といえるだろう。
また、本日5月11日に新機種を発表したソニーの新しいフラグシップモデル「Xperia 1 V」も、カメラ性能のさらなる充実に注力。新たに自社独自開発の新しいイメージセンサー「Exmor T mobile」を、メインカメラに採用したことが大きなポイントとなっている。
Exmor T mobileは、イメージセンサーの大型化が図られただけでなく、新たに画素を2つの層に分割することで、光を取り込む量を増やすとともに耐ノイズ性能を最大化。加えて、有効画素数が4,800万に拡大したことを活かし、複数の画素を組み合わせてより多くの光を取り込む「ピクセルビニング」の技術をXperia 1シリーズで初めて取り入れることにより、暗い場所での撮影性能を前機種の「Xperia 1 IV」と比べて2倍向上させているという。
同じく日本時間の5月11日に、開発者向けイベント「Google I/O」で新機種を発表したグーグルも、従来にない新しいモデルとして「Pixel Fold」を発表している。これは、グーグル初投入となる横開きタイプの折り畳みスマートフォンだ。
Pixel Foldは開いた状態では5.8インチ、開いた状態では7.6インチの大画面を利用できるが、開いた状態での薄さが6mm、折り畳んだ状態でも12mmと薄く、折り畳んでも通常のスマートフォンと同じ感覚で使えることに力が入れられている。加えて、Pixelシリーズで人気のAIを活用したカメラ機能や、開いた状態でも操作や画面の分割などがしやすいインターフェースなど、ソフト面でも使い勝手の向上に力が入れられているようだ。
確かにいずれのスマートフォンも、各社が得意とする技術を生かした進化がなされており魅力は大きいのだが、非常に気になるのが価格だ。なぜなら、いずれのスマートフォンも軒並み20万円に匹敵、あるいは20万円を超えるなど非常に値段が高いのだ。
実際Xperia 1 Vは、オープン市場に向けたSIMフリー版の価格が19万5,000円前後とされているし、Pixel Foldは折り畳み型ということもあって25万3,000円と一層値段が高い。AQUOS R8 proは、発売が7月上旬以降とやや先であることもあってまだ価格が出ていないが、Galaxy S23 Ultraも約20〜25万円という非常に高額な値付けがなされていたことから、各社の最上位モデルは20万円くらいがスタンダートとなりつつあることが分かるだろう。
その背景には円安に加え、機能進化により使用する部材が高騰するなどいくつかの要因が働いているようだが、20万円もするスマートフォンを購入する人は、かなり明確な目的を持った人に限られてしまう。多くの消費者にとってフラグシップの最上位モデルは、もう手が届かない存在となってしまったことは間違いない。
■価格高騰によって注目を集めるミドルクラスモデル
それだけに重要になってきているのが、最上位モデルほどの機能・性能は持たないにしても、消費者が手にできるレベルの価格を実現したスマートフォンだ。その代表例となるのは、ミドルクラスのスマートフォンであり、サムスン電子が既に「Galaxy A54」を発表しているが、ソニーも同様に今回の発表に合わせて、ミドルクラスの新機種「Xperia 10 V」を同時発表している。
ただ、ミドルクラスのスマートフォンも価格高騰が進んでおり、以前の主流だった3万円台から、最近では5〜6万円という水準にまで上昇しているにもかかわらず、性能面では依然、ハイエンドモデルと比べ開きがある。日常的な利用には十分満足できる性能を持つことから、ミドルクラスが市場のボリュームゾーンであることに変わりはないが、ゲームやカメラなどであと一歩高い性能を求める人達を満足させるには至らないのが実状だ。
一方で、ミドルクラスよりは高い性能が欲しいが、20万円はとても出せないという人に向けたスマートフォンは、これまであまり力を入れていなかったメーカーもあり、選択肢がやや乏しくなっている。そこで、今回の各社の新機種からは、超高性能なフラグシップモデルとミドルクラスの間を埋めることに力を入れる動きも出てきている。
その1つが、シャープが新たに発表した「AQUOS R8」である。こちらはチップセットの性能や、シャープ独自開発の有機ELディスプレイ「ProIGZO OLED」、そしてライカカメラ監修のカメラを搭載する点などはAQUOS R8 Proと共通しているのだが、一方でイメージセンサーは1インチではなく1/1.55インチのものを採用し、画面サイズやRAMを変えるなどして価格を抑えている。
それとはやや異なるアプローチで、高性能と低価格を実現しているのがGoogleの「Pixel 7a」だ。Pixelシリーズの「a」が付いたモデルは廉価版と位置付けられているのだが、Pixel 7aは上位モデルの「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」と同じGoogle独自のチップセット「Tensor G2」を搭載。性能面では上位モデルと共通しているのだが、それでいて廉価モデルらしい6万2,700円という非常に安い価格を実現している。
為替がかつての水準にまで戻れば、スマートフォンの価格は多少安くなるかもしれないが、各社がフラグシップモデルに技術の粋を注ぐ傾向が一層強まっていることを考えると、最上位モデルが20万円を大きく下回る可能性は低いと筆者は見る。
とはいえ、20万円を超えるスマートフォンを購入できる消費者が大幅に増えるとも考えにくく、最上位より下のラインナップの重要性が今後一層高まることは間違いないだろう。