高橋敦が徹底テスト
ノートPCの音を良くするならコレ! OlasonicのUSBスピーカー「TW-S7」に注目すべき理由
■小型スピーカーには難しい低音再現も難なくこなす
ジャズ・ボーカルの高音質盤、Jacintha「Lush Life」から聴き始める。
まずボーカルのフォーカスの良さと立体感に驚かされる。実際のスピーカーの設置位置よりも一歩奥にボーカルがスッと立つ。歌声は極端にクリアにはせず、空気感を生かしてふわっと広げる描き方。歌の抑揚も誇張はせず、適切に伝えてくれる。
ピアノのアルペジオからは、左右方向の広がりの良好さ、音色のひとつひとつの粒立ちと定位が明瞭であるがゆえの、フレーズの心地よい浮遊感を感じられる。
シンバルの音色は尖らせずに穏やか。音の粒子は適度な湿り気を帯びている。音場全体の柔らかさや落ち着きは、高域のこの感触によるところが大きい。
試聴曲のウッドベースは低いポジションでのフレーズが多く、小型スピーカーには厳しい音源だ。パソコン内蔵スピーカーでは、そもそも聞き取れない場合もあるほどだ。しかしTW-S7では、ベースラインがしっかり聞き取れる。細かなパッセージでも一音一音が明瞭で、アンサンブルの土台を崩さない。安心できる低音再生能力だ。
そのほかジミ・ヘンドリックス、相対性理論なども試聴したが、立体感や定位感に優れ、柔らかな音調という印象は変わらない。またエレクトリックのベースはウッドよりもさらに良好な描写。ゴリゴリさせずに適度な丸みを帯び、しなやかに弾む。
■2chで映画音場も再現する驚異的な能力
続いて映画も見てみようと、DVD「イノセンス」の一場面を試聴。すると「これは良い!」と思わず膝を叩いた。
サラウンド収録の映画は、もちろん5.1ch環境での再生がベスト。しかし定位感や空間性に優れたTW-S7であれば、2chのみでも相当の映画音場を実現できる。
背景に広がる通奏低音的なスコアの不穏な広がり。音場の各所に散りばめられる何気ない効果音、そのひとつひとつに込められた緊張感。電子ノイズやガラスが砕け落ちる音は、やはり嫌な鋭さは出さずにどこか暖かみを出す。これはTW-S7の特質と言ってよいだろう。
また「キル・ビル」のゴーゴー夕張の場面では、派手なサラウンド効果が連続するが、ここでもTW-S7の映画との相性の良さを確認できた。特に前後奥行の定位、距離感の良好さのおかげと思うが、夕張の振り回すチェーンハンマーの回転音が、サラウンドを彷彿とさせる移動感を伴う。2ch再生でこの感覚を得られるとは驚きだ。
正直に言えば、本機を最初に見たときの印象は「デザイン家電かな?」といったようなものだった。しかし音を聴くと、これは立派なオーディオ機器だ。つまりこれは、デザイン家電の趣を持った高音質オーディオ。デスク上を無骨にせず、スマートに、上質なサウンドを実現できる。
音楽にせよ映画にせよ、パソコンの再生音質への不満を募らせている方は、ぜひ検討してみてほしい製品だ。
高橋敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、アップル製品、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。