ヤマハ新AVアンプRX-V3067/V2067/RX-V1067を一挙チェック!高橋 敦が各モデルのポイントを整理&レビュー
ヤマハから10月上旬発売となる新AVアンプ「RX-V3067」「RX-V2067」「RX-V1067」。外観やインターフェースではなく、内蔵DACのグレードなどクオリティ面に差異をつけ、「音質・画質に対するこだわりの度合いで選んで欲しい」と語られる新モデルだが、それぞれどのような差異があるのだろうか? 高橋 敦氏が3機種の特徴を整理。音質の違いをチェックする。
■まずは全モデル共通の主なポイントを整理
ヤマハからミドルクラスAVアンプ3モデルが一気に発売される。ハイエンドで培われた高音質化ノウハウを着実に導入し、機能や操作性の面での進歩や挑戦も見られる、意欲作だ。
まずは全モデル共通の主なポイントを見ていこう。
外観と入出力端子の数は全モデル共通。HDMI端子は入力8/出力2系統。入力の1系統はフロントに配置。HDMI出力を備えるデジカメなどを想定したのだろう。そのHDMI端子はver.1.4仕様で、3D映像信号のパススルーとオーディオリターンチャンネルに対応。USB端子も装備され、USBメモリーなどの再生も可能だ。当初「iPodのデジタル接続にも対応する。」と記述していましたが、これは誤りでした。iPod接続にはドックポート経由で別売のiPod用ユニバーサルドック「YDS-12」や、iPod用ワイヤレスシステム「YID-W10」などを使用する必要があります。なおこの場合もiPodデジタル接続には対応しません。訂正してお詫び致します。(10/14)
機能面での最大のトピックは、DLNA 1.5とWindows 7に準拠する、同社いわく「ピュアオーディオグレードのネットワークレシーバー機能」だ。再生形式としてFLAC、しかも96kHz/24bitにまで対応していることに注目したい。高音質配信の主流と言える形式・仕様であり、そちら方面に興味のある方には大きな魅力となるだろう。
加えて操作性も良好。画面のメニューからアーティスト名やアルバム名などをたどっていくときの、リモコン操作へのレスポンスが軽快で、ストレスを感じない。アーティスト名などの日本語表示にも完全対応する。
そしてこのネットワーク再生機能は、DLNAのプレーヤーとしてだけではなく、レンダラーとしても機能。iPhoneなどで動作するコントローラーソフト(PlugPlayerなど)を使って、ライブラリのブラウズ〜曲の再生の操作を行えるわけだ。その際のレスポンスも良好。ちなみにネットワーク再生機能を使う場合、テレビはもちろんオフにして、本体はピュアダイレクトモードがおすすめだ。
操作性と言えば、アンプ自体の操作メニューの表示形式も刷新された。RX-V767に先行採用されていたが、再生中の画面にメニューバーをオーバーレイ表示。視聴の流れを損なうことなく、設定の確認や変更を行えるようになった。
では3モデルの差異はどこにあるのか?
細かく見ていけばこれも多々ある。例えば自動音場補正は、最大8地点での計測結果を総合的に判断・評価するマルチポイント計測に加え、初期反射音を制御するYPAO-R.S.C .(Yamaha Parametric Room Acoustic Optimizer Reflected Sound Control)を備えた新世代YPAOとなっているが、1067のみYPAO-R.S.C.は非搭載。また、3067のみ視聴位置から見た各スピーカーの位置関係を把握してシネマDSP再生時の音場調整に反映させるスピーカー角度計測に対応する。
しかし、いちばんのポイントは「音」。もちろん上位モデルに根本的な優位はあるが、各モデルでチューニングの方向性が異なる。下位モデルの音に好ましさを感じる方もいるかも知れないわけだ。
とはいえまずは、「上位モデルに根本的な優位はある」とした部分について理由を説明しよう。V3067とV2067はフラグシップモデルDSP-Z11の筐体設計を踏襲。主要パーツの左右対称配置とH型クロスフレームによる、制振・高剛性シャーシだ。V3067はさらに、ダブルボトム構造や高剛性メタルレッグなども採用する。その他、採用パーツのグレードや最大出力なども、上位モデルの優位と言える。
では各モデルの試聴印象をレビューしていこう。
■上位モデルが必ずしも”好い音”であるとは限らないのがこのシリーズの面白味
RX-V1067の良さは、音場全体のなじみ具合や一体感、その中での勢いだ。作品のサウンドデザインの緻密さも引き出しつつも、ドンッという大きな迫力感の方が印象的。
また声の帯域、描写力が特に充実。アクションの場面でも台詞が太く抜けてきて、力強い存在感。映画であれ音楽であれ、主役は人の声である場合が大半。その充実はすなわち、アンプとしての総合点を大きく引き上げることになる。
音調としては、高域側を無理に稼いでいないこともあり、少し柔らかめ。低域側は適度に緩め、ジャズのウッドベースの太さや量感も十分に楽しめる。
RX-V2067では、中高域の抜けっぷりがさらに増す。クラッシュや爆発場面で、その届き方が速い。そして同時に破片の数や質感が増し、大迫力かつ高解像度な描写だ。
声の太さや存在感は、こちらも良好。大柄な男性の胸の響きの豊かさや、アニメでのつるっと適度に無機質な感触も好い。
音楽を聴くと、特に高域の伸びや抜けの良さをさらに実感できる。端的に言えば、シンバルの透明感や抜けがV1067より上だ。低域側では、特にロックで顕著だが、ベースとドラムスのアタックのスピード感と音圧が増す。それもやはり、中高域の抜けのおかげだろう。
RX-V3067は明らかにワイドレンジでフラットバランス。V1067とV2067は一工夫したチューニングとも感じられるが、V3067は原音忠実再生を純粋に突き詰めたものと感じられる。
クラッシュや爆発な大音響の中低域は、下位モデルよりもぐっと引き締められた印象だ。しかしアタックの瞬間は引き締めつつも響きは豊かで、物足りなさはない。ヘリが墜落して炎上する轟音サラウンドには、ゴロゴロゴツゴツという硬質な凄みと、音場全体に広がる爆音が同居する。
低域の引き締めやS/Nの向上もあってか、音場全体のクリアさもシリーズ随一。細かな物音やそのディテールもより浮かび上がってくる。
僕なりに3モデルの印象をまとめると、
シンプルな勢いを楽しめるRX-V1067
気持ちよい抜けっぷりを満喫できるRX-V2067
ハイエンド的な高音質を発揮するRX-V3067
というところだ。
繰り返すが、上位モデルが必ずしも”好い音”であるとは限らないのがこのシリーズの面白味。僕はV2067が好みだと感じた。それぞれ機能的には大きな差はないので、心置きなく、自身の音の好みで選んでほしい。
高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。
■まずは全モデル共通の主なポイントを整理
ヤマハからミドルクラスAVアンプ3モデルが一気に発売される。ハイエンドで培われた高音質化ノウハウを着実に導入し、機能や操作性の面での進歩や挑戦も見られる、意欲作だ。
まずは全モデル共通の主なポイントを見ていこう。
外観と入出力端子の数は全モデル共通。HDMI端子は入力8/出力2系統。入力の1系統はフロントに配置。HDMI出力を備えるデジカメなどを想定したのだろう。そのHDMI端子はver.1.4仕様で、3D映像信号のパススルーとオーディオリターンチャンネルに対応。USB端子も装備され、USBメモリーなどの再生も可能だ。当初「iPodのデジタル接続にも対応する。」と記述していましたが、これは誤りでした。iPod接続にはドックポート経由で別売のiPod用ユニバーサルドック「YDS-12」や、iPod用ワイヤレスシステム「YID-W10」などを使用する必要があります。なおこの場合もiPodデジタル接続には対応しません。訂正してお詫び致します。(10/14)
機能面での最大のトピックは、DLNA 1.5とWindows 7に準拠する、同社いわく「ピュアオーディオグレードのネットワークレシーバー機能」だ。再生形式としてFLAC、しかも96kHz/24bitにまで対応していることに注目したい。高音質配信の主流と言える形式・仕様であり、そちら方面に興味のある方には大きな魅力となるだろう。
加えて操作性も良好。画面のメニューからアーティスト名やアルバム名などをたどっていくときの、リモコン操作へのレスポンスが軽快で、ストレスを感じない。アーティスト名などの日本語表示にも完全対応する。
そしてこのネットワーク再生機能は、DLNAのプレーヤーとしてだけではなく、レンダラーとしても機能。iPhoneなどで動作するコントローラーソフト(PlugPlayerなど)を使って、ライブラリのブラウズ〜曲の再生の操作を行えるわけだ。その際のレスポンスも良好。ちなみにネットワーク再生機能を使う場合、テレビはもちろんオフにして、本体はピュアダイレクトモードがおすすめだ。
操作性と言えば、アンプ自体の操作メニューの表示形式も刷新された。RX-V767に先行採用されていたが、再生中の画面にメニューバーをオーバーレイ表示。視聴の流れを損なうことなく、設定の確認や変更を行えるようになった。
では3モデルの差異はどこにあるのか?
細かく見ていけばこれも多々ある。例えば自動音場補正は、最大8地点での計測結果を総合的に判断・評価するマルチポイント計測に加え、初期反射音を制御するYPAO-R.S.C .(Yamaha Parametric Room Acoustic Optimizer Reflected Sound Control)を備えた新世代YPAOとなっているが、1067のみYPAO-R.S.C.は非搭載。また、3067のみ視聴位置から見た各スピーカーの位置関係を把握してシネマDSP再生時の音場調整に反映させるスピーカー角度計測に対応する。
しかし、いちばんのポイントは「音」。もちろん上位モデルに根本的な優位はあるが、各モデルでチューニングの方向性が異なる。下位モデルの音に好ましさを感じる方もいるかも知れないわけだ。
とはいえまずは、「上位モデルに根本的な優位はある」とした部分について理由を説明しよう。V3067とV2067はフラグシップモデルDSP-Z11の筐体設計を踏襲。主要パーツの左右対称配置とH型クロスフレームによる、制振・高剛性シャーシだ。V3067はさらに、ダブルボトム構造や高剛性メタルレッグなども採用する。その他、採用パーツのグレードや最大出力なども、上位モデルの優位と言える。
では各モデルの試聴印象をレビューしていこう。
■上位モデルが必ずしも”好い音”であるとは限らないのがこのシリーズの面白味
RX-V1067の良さは、音場全体のなじみ具合や一体感、その中での勢いだ。作品のサウンドデザインの緻密さも引き出しつつも、ドンッという大きな迫力感の方が印象的。
また声の帯域、描写力が特に充実。アクションの場面でも台詞が太く抜けてきて、力強い存在感。映画であれ音楽であれ、主役は人の声である場合が大半。その充実はすなわち、アンプとしての総合点を大きく引き上げることになる。
音調としては、高域側を無理に稼いでいないこともあり、少し柔らかめ。低域側は適度に緩め、ジャズのウッドベースの太さや量感も十分に楽しめる。
RX-V2067では、中高域の抜けっぷりがさらに増す。クラッシュや爆発場面で、その届き方が速い。そして同時に破片の数や質感が増し、大迫力かつ高解像度な描写だ。
声の太さや存在感は、こちらも良好。大柄な男性の胸の響きの豊かさや、アニメでのつるっと適度に無機質な感触も好い。
音楽を聴くと、特に高域の伸びや抜けの良さをさらに実感できる。端的に言えば、シンバルの透明感や抜けがV1067より上だ。低域側では、特にロックで顕著だが、ベースとドラムスのアタックのスピード感と音圧が増す。それもやはり、中高域の抜けのおかげだろう。
RX-V3067は明らかにワイドレンジでフラットバランス。V1067とV2067は一工夫したチューニングとも感じられるが、V3067は原音忠実再生を純粋に突き詰めたものと感じられる。
クラッシュや爆発な大音響の中低域は、下位モデルよりもぐっと引き締められた印象だ。しかしアタックの瞬間は引き締めつつも響きは豊かで、物足りなさはない。ヘリが墜落して炎上する轟音サラウンドには、ゴロゴロゴツゴツという硬質な凄みと、音場全体に広がる爆音が同居する。
低域の引き締めやS/Nの向上もあってか、音場全体のクリアさもシリーズ随一。細かな物音やそのディテールもより浮かび上がってくる。
僕なりに3モデルの印象をまとめると、
シンプルな勢いを楽しめるRX-V1067
気持ちよい抜けっぷりを満喫できるRX-V2067
ハイエンド的な高音質を発揮するRX-V3067
というところだ。
繰り返すが、上位モデルが必ずしも”好い音”であるとは限らないのがこのシリーズの面白味。僕はV2067が好みだと感じた。それぞれ機能的には大きな差はないので、心置きなく、自身の音の好みで選んでほしい。
高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。