PCI Express接続の最上位機を聴く
まさに“オーディオファン向け”カードの実力 − クリエイティブの最新モデルをレビュー
■バランス良くまとまったアナログ出力。音像にたしかな密度感
それでは実際にそのサウンドを試聴していこう。今回は2ch音源の再生に限定してチェックしていく。再生プレーヤーはfoobar2000を使用。標準的な環境を考慮し、出力はDirectSoundのままで行った。
まずはアナログライン出力の確認である。全体的にバランスよいサウンドで、低域の適度な制動感とすっきりとヌケの良い中高域のトーンが融合し、聴きやすく、整った音色だ。クラシックの音場も雑味なく、浮き上がりの自然な管弦楽器が展開。低域は適度な引き締めがあり見通しも良い。高域の響きは豊かでゴージャスな余韻が楽しめた。
ジャズピアノはアタックの粒がまろやかで、余韻はクリアに響く。ウッドベースの弦はむっちりとした弾力感を押し出し、胴鳴りも腰高に描写。女性ボーカルはソリッドな傾向で倍音のエッジ感を際立たせている。ロックでも鮮明な定位感とキレの良いリズム隊、ソリッドなリフを刻むエレキが浮き立っている。
各音像は若干フォーカスが緩めではあるものの、基本的に輪郭をキッチリと鮮やかに描き、クリアな音場を作り出している。ノイズ感は一切なく、ピュアオーディオ機器と比べても遜色ないクオリティが得られている。96kHz/24bitのハイレゾ音源を聴くとさらに質感は向上し、生々しい滑らかなトーンのボーカルや楽器のクリアなディティールが楽しめる。潤いと艶のある音像の存在感は、ローコストなシステムでは得られない、たしかな密度が感じられる。
■デジタル出力はS/Nに優れ、ソリッドに引き締まる
ここで光デジタル出力を直接AVアンプに接続。デジタルのダイレクトなサウンドを確認していく。DACのグレードに依存する部分はあるものの、今回使用したミドルクラスのAVアンプでは、圧倒的にクリアな音場が得られ、奥まで見通しが深い。静寂感も充分に感じられ、S/N感の良さを実感する。
クラシックの音像は立ち上がりがスムーズで、余韻もグラデーションがきめ細かく、消え入り感も見やすい。全体的に音像が引き締まっており、ハーモニーにまとまりが出ている印象だ。ジャズにおいてもウッドベースの胴鳴りをタイトにして、空間のクリアさが際立つが、たわみ感の余韻はしっかりと残しており、ソリッドになり過ぎない。
女性ボーカルは質感の滑らかさをより強調しており、肉付きも程良く感じられる。ロックサウンドはより鮮烈なエッジが際立つようになり、エレキのピッキングもキレが増すなど、付帯感のないクリアなトーンに満ちている。ハイレゾ音源では音像の定位感もリアルになり、瑞々しさに溢れる音場が広がる。音の分離も良いが音像の厚みも充分に感じられる。伸びやかで活き活きとした表情豊かなボーカルが立体的に浮かんでくる。
■ヘッドホン出力はまろやかで穏やかなトーン
最後にヘッドホンを直接繋いで試聴してみたが、倍音感が豊かに感じられるようになり、ボーカルや弦楽器が艶やかに浮き立ってくる。粒立ちもまろやかで、クラシックのオーケストラやジャズトリオもバランスよく鳴らしてくれる。ロックサウンドはふっくらとした厚みのある中低域の質感を感じさせ、アダルトオリエンテッドな穏やかさに溢れたトーンとなっている。
■実力をさらに引き出せそうな懐の深い本格モデル
今回、実際に「Sound Blaster X-Fi Titanium HD」のサウンドを聴いてみたところ、そのクリアで鮮やかなトーンに驚かされた。
今回の試聴は一般的な環境を考慮したので、高音質再生にこだわったわけではない。設定を詰めていけば、さらにクオリティの高いサウンドも望めるということで、懐の深さを実感させられた。これならばサウンドカードを軸とした高品位PCオーディオ環境の構築ということも十分考えられ、選択肢に幅が出てくる。同社が「オーディオ向けカード」を謳う理由がよく理解できるクオリティとポテンシャルを備えている。
またTHX TruStudio PCなどの機能は、PCを中核としたホームシアターシステムの構築に更なる迫力をもたらしてくれそうだ。
こういったPCパーツを購入し、標準品からステップアップしようと考えるユーザーなら、PCの自作ができるほど知識が豊富な方も多いだろう。そうした自作マシンのサウンドカードには、組み立て当初から本製品のような高音質モデルを用意しておくことをおすすめしたい。
特に高音質なPCを構築しようとするなら、ファンレス環境も含めた静音化、シールド性の良い強固なシャーシや安定した電源ユニット、そしてSSDを初めから搭載するなど、内蔵サウンドカードにとって有利な状態を整えることで、さらに高音質なPCオーディオ環境が実現できるはずだ。
多様性のあるPCの世界だからこそ、空きスロットやパーツ交換などをうまく利用し、システム全体を発展させることができるサウンドカードやオーディオカードの可能性も、また無限なのである。
既存の概念を取り払って、今回紹介した製品に触れてみてはいかがだろうか。新たな高音質オーディオの世界を体験できることは間違いない。
岩井喬
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。