ジャズ喫茶でクリニックin「キャンディ」
【AGS vs ジャズ喫茶】全国にその名を轟かせる“名物”オーナーに「シルヴァン」の効果は通用するのか!?
■キースとコルトレーンを最上の音で鳴らすジャズ喫茶
オーディオマニアの医師宅で様々な音質のグレードアップを試みるオーディオアクセサリー誌の不定期連載「クリニックでクリニック」が再びファイル・ウェブに特別出張(前回の様子)。今回は趣向を少し変えて日東紡音響エンジニアリングのルームチューニング材「シルヴァン」を設置して、すでに半年経つという千葉市稲毛区のジャズ喫茶「キャンディ」にお邪魔した。
「キャンディ」と言えばJBL/DD66000をいち早く導入したジャズ喫茶としてその名を全国に轟かせた。今も噂を聞きつけて「キャンディ詣で」の客が引きも切らない。しかし何と言ってもこの店の“名物”は女性オーナーの林 美葉子さんだ。
「キース・ジャレットとジョン・コルトレーンを最上の音で鳴らす」というジャズオーディオ界最大のタブーに挑む林さんは、自他ともに認める(本人は強く否定するが……)強烈なオーディオマニアである。2002年に現在の場所にお店を建てる前はJR稲毛駅の反対側にあった。その頃から公私共々常連であった僕は、お店のオーディオの変革を傍らから見てきた。
ある時はJBLのユニットを「イルンゴ」のオリジナル・エンクロージャーに納めたり、吸音パネルをスピーカーの後ろにいくつも立てかけてあった時期もあった。「FMアコースティックのパワーアンプの音がキツくて気に入らないので、今日は店を開けたくない」と言われた日もある。そんな七転八倒の日々の(他人事なので楽しい)話もJBL/DD66000を導入した2007年の夏を境にバッタリと聞かなくなった。
■二重の扉の先には偶然の出会いが待っていた
そんな平和な日々を過ごしていた「キャンディ」にある日、日東紡音響エンジニアリングの山下さんが現れた。
「キャンディ」の稲毛という地名に注目して欲しい。そう、昨年オープンした、日東紡音響エンジニアリングの千葉試聴室は目と鼻の先なのだ。元々ジャズファンであった山下さんは噂のキャンディのドアを恐る恐る開けた訳である。ところが何たる偶然、そこに「シルヴァン」愛用者のお客さんがいたから話は早かった。
「今回、我が社ではこんな物を……」とパンフレット片手に山下さんは熱弁を振るった(…に違いない)。
大いに興味を持った林さんは「そんなに凄いなら一度うちのお店で聴かせて下さい」何度も言うが会社はすぐ目と鼻の先である。翌日にはドド〜ンと2基のシルヴァンが届いた。
■高さ調整用の台を製作する衝撃的な音の変化を体験!
早速、両スピーカーのすぐ外側に置いた。しかし林さんの感想は「木の響きが強すぎて全部の音に乗っている」。
また、DD66000は台の上に設置されているが、シルヴァンを床に直接置いたらホーンより低くなってしまった。そのため「音の定位が下に引っ張られる感じ」と散々であった。
もちろん山下さんはすぐに行動に出た。「シルヴァン」本体と同じタモの木で高さ調整用の台を製作。ベストなポジションもどうにか見つかった。その時の音の変化はかなり衝撃的だった、と林さんは振り返る。
「いつもオーディオチェックに使うキース・ジャレットのソロピアノをかけたら、そこにピアノがあるなんてものではなく、部屋全体がピアノになったように鳴り始めた」
また、「コルトレーンのインパルス盤では全ての楽器のバランスが良く、特にコルトレーンのテナーとマッコイ・タイナーのピアノが抜群の存在感」。それから「音がほぐれて高域も低域もス〜ッて伸びていく感じ」と言う言葉も林さんは付け加えた。
■2基だけでは満足できないシルヴァン・シンドローム
さて、ここまでは「シルヴァン」を導入した半年程前の話である。では現在はどうなのであろうか?
「はっきり言ってもうシルヴァンがあって当たり前。先日試しに外してみたけど直ぐに戻しました」
ところで先日、林さんが日東紡の千葉試聴室に見学に行った時に、全壁面に敷き詰められたシルヴァンを体感。「全面は無理にしても、正面のスピーカーとスピーカーの間(パワーアンプの後ろ)には是非ともシルヴァンを入れたい。サイズも測ってもらおうかしら……」次の目標は決まった。
実は近頃僕の周りには部屋中にシルヴァンを何基も置いている知り合いが数人いる。どうやら最初は2基で満足していたのがどんどん増やしたくなるらしい。僕はそれを「シルヴァン・シンドローム」と呼んでいる。どうやら「キャンディ」の林さんもめでたくその仲間(患者?)入りの様だ。
※後日、シルヴァンよりひとまわり大きい壁面設置タイプの「ANKH(アンク)」を導入したとの報告があった。先述の“次の目標”が早くも実現したようだ。