データベース型複数枚超解像など高画質化技術の実力はいかに!?
ソニー 新〈ブラビア〉に搭載の新高画質回路「X-Reality PRO」の真価とは − 貝山知弘・折原一也が見た次世代エンジンの実力
折原 同感ですね。私は、YouTubeのようなネット動画での効果の高さも強調したいと思います。
YouTube自体は、最近では4K2Kの映像などにも対応していますが、投稿されている映像の多くは320pなど、かなり低クオリティなものが大半です。こういったものを大画面テレビで見ると、画質の悪さがますます目立ってしまうわけですが、これまでは妥協するしかなかった、というところではないでしょうか。
それが「X-Reality PRO」の処理ですと、斜め線の見え方や、スケーリングしただけでは解決できないような輪郭情報というのを上手く補間していると感じました。ソースにもよりますが、一見しただけではYouTubeのソースとは思えないほど高画質になるものもありました。
貝山 私もネット動画への効果は凄まじいものだと感じましたね。ノーマルのままだと洋服の輪郭がギラギラしますし、肌もノイズだらけですし。あのままでは女性が怒りますよ(笑)。
折原 現在は世界的に、テレビでネット動画を見るという視聴スタイルが相当多くなってきていますから、やはりそういったところへの対応は必要ですよね。
貝山 そしてもうひとつ凄いなと思ったのが、例えば道を歩いている人と、道路の見え方ですね。遠近感の表現力です。
本来、映像に補正をある程度かけてしまうと、どうしても遠近感がなくなりがちです。遠くにある背景が手前に引き寄せられてしまうんですね。「X-Reality PRO」ではこういった悪影響を感じません。
ソニー そう仰って頂けたのは、我々が忠実な補正を心がけているからだと思います。我々がやっている超解像処理は、基本的にエンハンスはしないという考え方でアルゴリズムを作っています。
エンハンスというのは本来ある信号をもっと大きいレベルにするものですが、我々が行っている超解像処理では、基本的に信号レベル自体は変えず、トランジェントをきちっとオリジナルに近づけます。
それに加えて、テレビ設計事業部での、画作りの段階でのレベル調整も関係してきます。非常に高い評価を頂きましたが、それはエンジンがよく働いているということに加えて、画作りのバランスが良いことも理由なのかな、と感じています。
折原 1080iの、いわゆる一般的な放送ソースを視聴した際に気づいたのは、ノイズリダクションの向上が非常に大きいことですね。
放送ソースですとMPEGに由来するチラつきなどもかなり入ってきますし、今回視聴したソースは、撮影時のノイズも加わって、全体にノイズ感が強いものでした。
一般的なノイズリダクションですと、そういったものは周辺の画素情報から推測してノイズを除去するわけですが、データベース型複数枚超解像を使った低ノイズ化は「ノイズを除去している」というよりも、「本来あるべき信号に復元している」といった感じで好ましいですね。また映像の一体感や緻密さに関しても、放送のものとは思えないほどのレベルに達していました。
貝山 従来のように、動く映像の中でフィードバックをかけるようなやり方ですと、どこか基準が失われてしまうという感覚もありました。超解像技術については従来から私も高く評価していたのですが、その点がどこか不安でした。「X-Reality PRO」では、そのあたりが非常に正確に処理できていますね。
■「X-Reality PRO」は“進化の過程を2ステップ越えてしまった画期的な技術”
折原 とにかく今回の視聴で、「X-Reality PRO」を搭載した〈ブラビア〉の画質が、昨年のものから進化していることが実感できました。
貝山 そうですね。しかも、これまで培ってきたものがそのまま進化したというレベルではありません。それは別の形で活かしつつ、今回はこれまでを1ステップか2ステップか越えてしまっている。それを実現した「X-Reality PRO」は画期的な技術だと感じています。
折原 昨年モデルは、HXシリーズ(HX900/800)がビジュアルグランプリ2011の審査員特別大賞に選出されました。私も審査委員の一人として選ばせて頂きましたが、エントリーシリーズとは異なる、フラグシップ機ならではの画質エンジンを搭載し、その性能が高いことも理由のひとつでした。
そのエンジンを遙かに凌駕する「X-Reality PRO」が、今回はフラグシップだけでなく、その下のミドルクラスにも搭載されている。これは大変にお得ですね。
貝山 確かにお買い得ですよね。「X-Reality PRO」が最上位の「KDL-HX920」だけでなく、「KDL-HX820」や「KDL-HX720」にも搭載されているわけですから。
― 本日はどうもありがとうございました。
「X-Reality PRO」の性能に好印象を持った様子の貝山氏と折原氏。いよいよ次回からは実際に確認した製品の実力を詳細にレビュー!BDなどの高画質ソースに対する適応力を貝山氏が、ネット動画など低画質ソースへの超解像処理能力を折原氏がそれぞれ徹底的に解説する。