「極めて高いコストパフォーマンス」
オンキヨーの最高峰サウンドカード「SE-300PCIE」レビュー − USB-DACや他社製カードとも比較試聴
■サウンドカードとUSB-DACのメリット、デメリット
ネットオーディオにスポットが当たるようになってから、本機のようなサウンドカードとUSB-DACが比較されることも多いようだが、サウンドカードであるSE-300PCIEの大きなメリットは、高いデータ転送速度を持つPCI Expressインターフェースを採用していることにある。
たとえばPCゲームの場合、映像はグラフィックボード、音声はサウンドカードで役割分担をするが、USBなどを使って外部でオーディオ信号だけを処理する場合には、音声だけタイムラグが生じ、快適にゲームが楽しめないことがある。ジッター対策などでDAC側にクロックを持たせたモデルでは、特にこの問題が顕著に見られるため、オーディオだけでなく、ゲームやDVDなどの映像ソフト再生もPCで行うユーザーにとっては、サウンドカードのクオリティアップが重要になってくる。
また本機はASIO2.0にも対応(96kHzまで)しており、よりいっそう遅延の少ないダイレクトなサウンドを楽しめることもメリットとなる。最短でPCと接続できるボード型であるので、USB-DACで必要となるケーブルによるサウンド変化の心配がないという点も優位と言えるだろう。
さらに本機ではCPUの負担を減らし、高い応答性を実現させるハイエンドDSPチップ「クリエイティブ20K2 X-Fi」とDDRメモリを搭載。EAX ADVANCED HD 5.0に対応した最高7.1chサラウンドによる3D音場再生も可能になっている。そのため、サウンドカード本体以外にマルチ入出力拡張ボードが用意されている。
■ボードタイプであることを感じさせない音質の高さ
肝心の音質だが、まずはS/Nの良い、透明感に溢れた音質で、繊細で鮮やかな音像の際立ちが、まずは印象的だ。
音場表現力はボードタイプであることを感じさせないグレードの高さ。クラシック音源ではオーケストラの広がりや奥行きも深く響き、管弦楽器は粒を細やかに描写し、抜けの良いハーモニーを聴かせてくれる。ジャズでは楽器の輪郭が際立ち、ウッドベースは弦のたわみを正確にトレースしつつ、胴鳴りの適度な弾力感も逃さない。
ピアノはヌケが良く、くっきりとした浮き上がりを見せつつも、音色は丸みのある耳馴染みの良い傾向に収めている。ドラムも分離良く、音場の見通しは深い。ポップスのピアノは一層ハードエッジな輪郭であるが、余韻は澄んでおり、ドライながらも僅かに艶やかさを感じさせる鮮やかなボーカルとの対比も美しい。
ベースのアタックは腰高で、適度な引き締めを感じさせるが、リリースが太く、伸び良い量感とバランスよく両立させている。ブラスのパンニングもスムーズに見通すことができ、空間の透明度と微少レベル時の繊細な描写力も備えている。
ロックでは、太さとキレのバランスよいキックとベースを始め、鮮やかで倍音のクリアなアコギと、鋭いリフが際立つエレキのフレーズが一層スピード感を演出。ボーカルはボトムの太さを感じさせながら口元のハリ艶をリアルに描写している。バンドの前後感を粒立ち細やかに描き、左右の配置も分離良く感じられた。