HOME > レビュー > 共振を排除しきった、堂々とスケール感豊かで雄大な音 - 「MD-VI」を大橋伸太郎がレビュー

申し分のない低域の伸びと分厚さ

共振を排除しきった、堂々とスケール感豊かで雄大な音 - 「MD-VI」を大橋伸太郎がレビュー

公開日 2011/11/09 11:53 大橋伸太郎
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広州に本拠工場を持つCAVは、業務用システムが中国のシネコンで非常に高い使用率を誇るスピーカーメーカーで、「アジアのJBL」と形容したくなる、中国で一頭抜けた存在である。一方でCAVジャパンは、国内オーディオメーカーでの数々のスピーカーシステムやアンプ名機の設計に携わった名設計者、ベテラン企画マンが中枢を占めている。そんなCAVジャパンが自信をもって国内導入を決めた中国CAV企画のハイエンドスピーカー「MD-VI」。日本のオーディオのプロを「惚れさせた何か」がそこにはあるに違いない。


MD-VI
一言で表現すれば、剛体設計の正しさと物量の投入が見事に反映された、共振を排除しきった堂々とスケール感豊かで雄大な音だ。音のにじみ、滞留がない。空気のグリップ感が高く、波動を淀みなく正確に生み出しているのを感じさせる。帯域の広さ、特に低域の伸びと分厚さは申し分がない。朗々と流れ出る量感はあらためて「映画館育ち」を思わせるが、CAVジャパン担当者の話では「日本市場向きにやや締めた」のだそうだ。

今回はアキュフェーズの「C-3800」と「A-65」でドライブ。セルゲイ・エデルマンの『ベートーヴェン・ピアノソナタ第4番』(SACD)、アンジェラ・ヒューイットの『ベートーヴェン・ピアノソナタ第8番「悲愴」』(SACD)、アンドラーシュ・シフの『J.S.バッハ・平均律クラヴィーア曲集第2巻』等を試聴すると、試聴室前方にコンサートグランドが堂々と結像するようだ。今回は、試聴部屋の天井高に余裕がなかったために、録音現場の「高さ」の表現まで味わえなかったのが残念だが、水平方向の広がり感と音像の輪郭の鮮明さ、前後の奥行きの深さ、総合的な密度は十分で、暫し時間を忘れて聴き入ってしまった。


前面下部には、中国CAVのロゴがしるされている
なお、CAVのハイエンドスピーカーには「DX-8」という上位機があるが、音の厳しいリアリズムという点ではそちらに一歩を譲る。MD-VIはあくまで外向的、DX-8は内省表現も加わったスピーカーシステムと性格付けすることが出来る。

中国と聞くと、国土の豊かさと人件費の有利を生かした「世界の工場」と考えるかもしれないがその時代は終わった。未来への確信に満ちたパワーが渦巻く大国だから生み出すことの出来る、鬱屈せずに喜怒哀楽を朗々と歌う力強いポジティブな音楽再生がここにある。アメリカや日本のスピーカーもかつてはそうでなかったか。オーディオの初心を気付かせるMD-VIとの出会いであった。

<大橋伸太郎 プロフィール>
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。

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