HD 650との比較試聴も
【レビュー】SHURE初の開放型ヘッドホン「SRH1840」を聴く
SRH1840の音の全体の印象を先に述べると、音の傾向から言えば、モデル名は「SRH1840」より「SRH1940」の方が似つかわしいと感じた。滑らかで、かつ鋭い高域とハイスピードな低域は、SRH940に通じるものがある。
細かなところを述べていこう。ジャズのピアノ・トリオ、Helge Lien Trio「Hello Troll」は、硬質な音調での緊張感溢れる演奏が特徴だ。
ピアノは期待通りにキンと硬質で、その音が周囲の張り詰めた空気を震わす。豊かに描き込まれた空気感も、本機の大きな特長だ。
シンバルの強打は直線的に耳に飛び込んでくる。一方でソフトタッチの場面ではさわさわと細やかな感触で、表現の幅が広い。高域側ではスネアドラム裏面の金属線の存在感が際立ち、スネアの音色に、ザザッっと粗い金属の質感が生々しく強めに加わる。
ウッドベースやドラムスなど低音は、すっと立ち上がりすっと収まる。開放型ならではの音抜けもあいまって、低音域はすっきりとクリアで、演奏者の指先の感触まで伝わってくる。
やくしまるえつこ「ノルニル」のボーカルは、ややシャープに描き出される。彼女独特のきめ細かなささくれや息遣いの感触を強く引き出し、距離感が近い。ボーカルの描き込み、質感描写も“迫真”と言える域に達している。