自由な視聴スタイルが可能。サラウンド再生力も十二分
【レビュー】“インナーイヤー型”の7.1chサラウンドヘッドホン「ATH-DWL3300」を試す
インナーイヤーならではの柔軟な視聴と高音質を実現
オーディオテクニカが発売した新提案の7.1chヘッドホンシステム「ATH-DWL3300」は、サラウンド視聴用のラインナップのなかでも極めて独自性に富んだモデルだ。トランスミッター部とレシーバー部を独立させた構成で、ヘッドホン部にはポータブルリスニングで用いられるインナーイヤータイプのカナル型を採用。より気軽にサラウンドが楽しめるスタイルをユーザーに提供している。
サラウンドシステムとしての設計は、同社が培ってきたサラウンドヘッドホンシステムオーバーヘッドタイプ「ATH-DWL5500」のテクノロジーを踏襲している。音声信号のインプットは2系統の光デジタル入力端子を搭載し、AACフォーマットで送信されている地上デジタル放送の音声もサラウンドで受けることが可能だ。
サラウンドテクノロジーには同社のワイヤレスヘッドホンとしても採用実績のある「ドルビーヘッドホン」だけでなく、2chステレオ/5.1chサラウンド音声を7.1chにまで拡張可能な「ドルビープロロジックIIx」も採用。コンパクトなカナル型を中心としたシステムでありながら、カジュアルなエントリー層だけでなくミドルレンジ層もカバーする仕様となっている。
本システム付属のカナル型ヘッドホンのドライバー直径はφ14.5mmで、ポータブル製品用カナルとしては極めて異例の大型サイズ。さらに、システム全体での音質チューニングも施されている点が大きな特徴だ。ジャック自体は汎用タイプなので普段使用している手持ちのヘッドホンでももちろん使用可能なので、音質傾向の違いを楽しむこともできる。
リモコン兼用となるコンパクトなレシーバー部は、インプット選択やバスブースト、サラウンド方式のセレクトも操作可能だ。2.4GHzデジタル無線伝送方式を採用し、たトランスミッター部とレシーバー部の通信距離は、最大で約30mを確保している。
実際に筆者の自宅でハンドリングしてみた。部屋の中を移動しながらの視聴、まっすぐ画面に向かいながらのベーシックな視聴、ソファーで寝転んだりするなどの楽な姿勢での視聴、信号伝送の信頼性は確かなものであることを実感。個人的な感覚としては、ポータブルオーディオプレーヤーで音楽を聞くスタイルに近いように感じた。カナル型ならではの耳を覆わない構造なので、例えば3Dメガネ装着中でも鑑賞の妨げになることはない。大画面テレビ+ヘッドホンという組み合わせで3Dコンテンツを楽しむ際の、サラウンドのデファクトシステムとして本機を推奨したい。
深夜のスポーツ観戦で十二分に活躍してくれた
さて、本機の音質インプレッションに移ろう。日常的なリスニング、ソースを替えながらのリスニングを平行して試してみた。
音楽CDではステレオベースで高音質に聞かせる音作りが特徴と感じた。サラウンド製品に多い低域方向に過剰に振った迫力重視の設計にではなく、Hi-Fi的なバランスも考慮されているようで、一般的な音楽再生にも適していると感じた。システム全体としての全体的なバランスが整えられた丁寧な音質チューニングに好感が持てる。6段階で切り替えられるバスブーストも良い意味で控え目で、不自然な装飾感はない。リモコン操作でカスタマイズできるのも良い。
映像と組み合わせたリスニングでは、スポーツ中継に大活躍してくれた。7月1日まで連日深夜〜早朝にかけてオンエアされていたサッカー「EURO2012-欧州選手権」の視聴で本製品を何回か使用してみた。
解像度志向の音質で実況をクリアに聞かせつつ、「ドルビープロロジックIIx」によるサラウンド効果と相まってスタジアムの広がり感が巧みに演出されていた。ATH-DWL3300であれば、まもなく始まるロンドン・オリンピック視聴でも十分活躍してくれそうだ。EURO同様、日本時間に当てはめると深夜の競技進行が多いので、本機が効力を発揮するシチュエーションは多いはず。コンパクトなカナル型ならではの柔軟なリスニングスタイルが可能なので、肩肘を張ることなくスポーツ観戦に使える。
次に映画を観てみよう。5.1chネイティブソースとしてBD『MIB2』をチェック。サラウンドの音作りとしては上下方向の再現性に力を注いでいることが分かった。エフェクトあるいはサウンドトラックと台詞が同タイミングで流れる映画では、全体のバランス感が非常に大事なのだが、本機ではBGMでの低音からのグルーブ感が出せる上に、サラウンドは頭中をめぐるようにソリッドに抜けていた。3D映画『アバター』視聴では画面を縦横無尽に移動する感覚も正確に再現され、オーバーヘッドと比してまったく遜色ない没入感を感じることができた。
視聴ジャンルを問わない対応力を持った音作りがなされ、オーバーヘッドタイプでは難しいフレキシブルなエンターテインメント体験も可能な本機が、クオリティ志向のAVユーザーに対しても高い満足感を得ることができる稀有な製品であると言えよう。
ATH-DWL3300
【SPEC】<トランスミッター部>●対応デコード:ドルビーデジタル/ドルビーEX/DTS Digital Surround/AAC/ドルビープロロジックII x ●入力端子:光デジタル×2/RCAピンジャック×1 ●出力端子:光デジタル×2 ●外形寸法:151W×43H×127Dmm ●質量:約325g
<レシーバー部>●外形寸法:32W×100H×24Dmm ●質量:約50g
<付属イヤホン部>●ドライバー:φ14.5mm/ダイナミック型 ●再生周波数帯域:5Hz〜25kHz ●最大入力:100mW ●インピーダンス:16Ω ●付属ケーブル:Y型タイプ/コード長0.6m ●質量:約5.7g
(折原一也)
オーディオテクニカが発売した新提案の7.1chヘッドホンシステム「ATH-DWL3300」は、サラウンド視聴用のラインナップのなかでも極めて独自性に富んだモデルだ。トランスミッター部とレシーバー部を独立させた構成で、ヘッドホン部にはポータブルリスニングで用いられるインナーイヤータイプのカナル型を採用。より気軽にサラウンドが楽しめるスタイルをユーザーに提供している。
サラウンドシステムとしての設計は、同社が培ってきたサラウンドヘッドホンシステムオーバーヘッドタイプ「ATH-DWL5500」のテクノロジーを踏襲している。音声信号のインプットは2系統の光デジタル入力端子を搭載し、AACフォーマットで送信されている地上デジタル放送の音声もサラウンドで受けることが可能だ。
サラウンドテクノロジーには同社のワイヤレスヘッドホンとしても採用実績のある「ドルビーヘッドホン」だけでなく、2chステレオ/5.1chサラウンド音声を7.1chにまで拡張可能な「ドルビープロロジックIIx」も採用。コンパクトなカナル型を中心としたシステムでありながら、カジュアルなエントリー層だけでなくミドルレンジ層もカバーする仕様となっている。
本システム付属のカナル型ヘッドホンのドライバー直径はφ14.5mmで、ポータブル製品用カナルとしては極めて異例の大型サイズ。さらに、システム全体での音質チューニングも施されている点が大きな特徴だ。ジャック自体は汎用タイプなので普段使用している手持ちのヘッドホンでももちろん使用可能なので、音質傾向の違いを楽しむこともできる。
リモコン兼用となるコンパクトなレシーバー部は、インプット選択やバスブースト、サラウンド方式のセレクトも操作可能だ。2.4GHzデジタル無線伝送方式を採用し、たトランスミッター部とレシーバー部の通信距離は、最大で約30mを確保している。
実際に筆者の自宅でハンドリングしてみた。部屋の中を移動しながらの視聴、まっすぐ画面に向かいながらのベーシックな視聴、ソファーで寝転んだりするなどの楽な姿勢での視聴、信号伝送の信頼性は確かなものであることを実感。個人的な感覚としては、ポータブルオーディオプレーヤーで音楽を聞くスタイルに近いように感じた。カナル型ならではの耳を覆わない構造なので、例えば3Dメガネ装着中でも鑑賞の妨げになることはない。大画面テレビ+ヘッドホンという組み合わせで3Dコンテンツを楽しむ際の、サラウンドのデファクトシステムとして本機を推奨したい。
深夜のスポーツ観戦で十二分に活躍してくれた
さて、本機の音質インプレッションに移ろう。日常的なリスニング、ソースを替えながらのリスニングを平行して試してみた。
音楽CDではステレオベースで高音質に聞かせる音作りが特徴と感じた。サラウンド製品に多い低域方向に過剰に振った迫力重視の設計にではなく、Hi-Fi的なバランスも考慮されているようで、一般的な音楽再生にも適していると感じた。システム全体としての全体的なバランスが整えられた丁寧な音質チューニングに好感が持てる。6段階で切り替えられるバスブーストも良い意味で控え目で、不自然な装飾感はない。リモコン操作でカスタマイズできるのも良い。
映像と組み合わせたリスニングでは、スポーツ中継に大活躍してくれた。7月1日まで連日深夜〜早朝にかけてオンエアされていたサッカー「EURO2012-欧州選手権」の視聴で本製品を何回か使用してみた。
解像度志向の音質で実況をクリアに聞かせつつ、「ドルビープロロジックIIx」によるサラウンド効果と相まってスタジアムの広がり感が巧みに演出されていた。ATH-DWL3300であれば、まもなく始まるロンドン・オリンピック視聴でも十分活躍してくれそうだ。EURO同様、日本時間に当てはめると深夜の競技進行が多いので、本機が効力を発揮するシチュエーションは多いはず。コンパクトなカナル型ならではの柔軟なリスニングスタイルが可能なので、肩肘を張ることなくスポーツ観戦に使える。
次に映画を観てみよう。5.1chネイティブソースとしてBD『MIB2』をチェック。サラウンドの音作りとしては上下方向の再現性に力を注いでいることが分かった。エフェクトあるいはサウンドトラックと台詞が同タイミングで流れる映画では、全体のバランス感が非常に大事なのだが、本機ではBGMでの低音からのグルーブ感が出せる上に、サラウンドは頭中をめぐるようにソリッドに抜けていた。3D映画『アバター』視聴では画面を縦横無尽に移動する感覚も正確に再現され、オーバーヘッドと比してまったく遜色ない没入感を感じることができた。
視聴ジャンルを問わない対応力を持った音作りがなされ、オーバーヘッドタイプでは難しいフレキシブルなエンターテインメント体験も可能な本機が、クオリティ志向のAVユーザーに対しても高い満足感を得ることができる稀有な製品であると言えよう。
ATH-DWL3300
【SPEC】<トランスミッター部>●対応デコード:ドルビーデジタル/ドルビーEX/DTS Digital Surround/AAC/ドルビープロロジックII x ●入力端子:光デジタル×2/RCAピンジャック×1 ●出力端子:光デジタル×2 ●外形寸法:151W×43H×127Dmm ●質量:約325g
<レシーバー部>●外形寸法:32W×100H×24Dmm ●質量:約50g
<付属イヤホン部>●ドライバー:φ14.5mm/ダイナミック型 ●再生周波数帯域:5Hz〜25kHz ●最大入力:100mW ●インピーダンス:16Ω ●付属ケーブル:Y型タイプ/コード長0.6m ●質量:約5.7g
(折原一也)