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MUSIC BIRDは「高いポテンシャルを秘めている」

【レビュー】音楽専門衛星デジタルラジオ「MUSIC BIRD」の魅力とは? 山之内正が“高音質な”新チューナー2機種を体験

公開日 2012/09/06 10:53 山之内 正
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■ハイエンドオーディオ機器を思わせる作りの「C-T1CS」

次に、港北ネットワークサービス社による「Conclusion(コンクルージョン)」という新しいブランドから登場したもう1台の高音質チューナー「C-T1CS」(メーカー公式情報ページ)を聴いてみよう。こちらは標準チューナーをまるごと内蔵したうえで筐体を一から再設計し、チューナーのデジタル出力から最良のクオリティを引き出すというのが基本コンセプトだ。

C-T1CS(参考売価129,800円/税込)

NSD-100Aとのサイズ比較

フルサイズの堅固な筺体を採用した外見が目を引くと同時に、細部を見るとこだわりの強さに驚かされる。フロントパネルには肉厚のアルミ材を使用、さらに三点支持の真鍮削り出しフットを奢るなど、まさにハイエンドオーディオ機器を思わせる隙のない作りだ。

三点支持の真鍮削り出しフットを採用

心臓部のD/AコンバーターにはウォルフソンのWM8741をデュアルで搭載して変換精度を追求、さらに外部クロック入力(12.288MHz)を装備するなど、マニアックかつ妥協のない作り込みが行われている。

内部の様子。銀色のカバーに覆われている部分に標準チューナーが設置されている

CSチューナー用電源トランスとは別にDAC以降のアナログ回路用に専用のRコアトランスを積み、電源回路間の相互干渉を抑えている点にも注目したい。そうしたアプローチはいずれも高級オーディオ機器ではおなじみのものだが、衛星ラジオのチューナーとしては異例のこだわりと言っていい。

DAC以降のアナログ回路用に専用のRコアトランスを搭載

C-T1CSの再生音はどっしりとした重心の低さと緻密なディテール再現が両立し、標準チューナーの音とはまるで別物というべきサウンドを聴かせる。音源の形式に由来する制約があるのでさすがに情報量が大きく向上するということはないのだが、量感と質感が同時に向上することによって表現に余裕が生まれるのか、まるで音数が増えたような変化を聴き取ることができる。

ピアノ独奏を標準仕様のチューナーと聴き比べると、低音部の量感と木質の柔らかい響きに本機のアドバンテージがあり、楽器を取り替えたような響きの違いを聴き取ることができる。オーケストラは音場の見通しがスピーカー後方まで一気に開かれ、なんとなく並んでいた楽器群の配列が整然と揃うようになった。

背面端子部

サンプリング周波数を選択可能

筐体の剛性を上げるなど振動対策を徹底したことや電源部を強化したことが、音場再現力を向上させたのであろう。MUSIC BIRDの再生音からここまでの空間描写を引き出すことに驚かされるが、チューナー側で音を追い込めば音源にそなわる情報を無理なく引き出せる好例だ。

ジャズチャンネルでピアノトリオを聴くと、オリジナル仕様に比べてベースのアタックにスピードが乗り、テンポ感が軽快になっていることに気付く。ピアノの和音がクリアに響くのは低音の付帯音が整理されたことに理由がありそうだが、ベースもピアノも低音域の量感には不満はなく、重心の低いバランスをキープしている。

本機はアナログ出力と複数のデジタル出力を装備するが、そのいずれにおいてもサンプリング周波数を48kHzと96kHzのいずれかに切り替えることができる。操作は電源投入時のみだが、音色が微妙に変化するので、聴き比べてみると面白い。特にアコースティックを重視した録音では音の変化が顕著に聴き取れるので、クラシックやジャズの音源で音に潤い感が欲しいときなど、96kHzサンプリングを選んでみることをお薦めする。

■MUSIC BIRDの再生音は「高いポテンシャルを秘めている」

デジタル放送やネットワークでは様々な形式の圧縮音源が流通し、ビットレートが異なる複数の伝送が混在している。しかし、形式やビットレートなど数値化できる指標だけでは音の優劣が決まらないことが次第に明らかになりつつある。マスターのクオリティやエンコードの品質、そして受信機や再生機のクオリティによっても最終的な音質は大きく変化するのだ。

今回は標準仕様の製品も含めた3台のチューナー間に予想を上回る音質差があることが明らかになった。デジタル圧縮を経た放送音源を再生する場合でも、ある一定の水準を満たした音源であれば、再生機の音質チューニングが重要な役割を演じることが実証されたと言っていいだろう。

チューナー間の差を細かく聴き取ることができたという事実は、MUSIC BIRDの再生音がビットレートの数値から想像する以上に高いポテンシャルを秘めていることを意味する。

特にジャズやクラシックのプログラムでは空間再現や臨場感など、微小信号の再現性に関連する要素が予想以上に大きく変化した。いずれも音楽を楽しむうえで非常に重要な要素で、精度の高い再生システムであれば容易に違いを聴き取ることができる。

MUSIC BIRDのリスナーのなかには、時間をかけて追い込んだシステムを使っている人も少なくないと思う。そうした熱心な音楽ファンにはC-T1CSをお薦めする。デジタル出力を取り出して手持ちのD/Aコンバーターにつないだり、外部クロックジェネレーターをつないで音質のグレードアップを図るなど、システムを発展させる楽しみもある。

もっと気軽に音楽に浸りたいというリスナーはNSD-100Aを選ぶとよい。最小限の投資で確実なグレードアップが図れるので、放送を聴く楽しみが広がるに違いない。

「MUSIC BIRD」公式情報
サムネイル加入ガイド「MUSIC BIRD 早わかり」

サムネイル加入申し込みオンライン受付ページ

サムネイルConclusion「C-T1CS」公式情報

サムネイルニュースペースデザイン「NSD-100A」公式情報

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