「ソニーの本気」を見た
【レビュー】音質は? 使い勝手は? ソニー初のポタアン「PHA-1」を野村ケンジがチェック
ポータブルヘッドホンアンプ、通称ポアタンが静かなブームとなっていることは、機会があるごとに紹介させてもらっているが、その人気のほどを決定づける存在ともいうべき製品が登場した。それがソニーの「PHA-1」だ。
そう、ガレージメーカーではなく、名だたる家電メーカーであり、充実したヘッドホンラインナップを有するソニーがポアタンをデビューさせてきたのだ。しかもヘッドホンアンプとしての機能性だけでなく、iPodデジタル接続やUSB DAC機能も併せ持つ、多機能モデルに仕上げられているという。この内容を知れば、筆者だけでなく多くの人が期待を膨らませることだろう。早速「PHA-1」のサンプル機をオーダーしたところ、数日ながらも借用することができたので、そのインプレッションをお届けしよう。
■音質にこだわったパーツをあらゆる部分に奢る
感想をお届けする前に、まずは「PHA-1」の基本スペックから。冒頭でも触れたとおり、「PHA-1」はバッテリーを内蔵したポータブルユースのヘッドホンアンプ。67W×26H×130Dmmほどのアルミ製ボディは、ダークメタリックとも呼ぶべきシックなカラーリングとヘアライン仕上げが施され、フロント部分にはボリュームやヘッドホン接続端子を保護する目的で、亜鉛ダイキャスト製のダンパーが付属されている。そういった凝った作りのおかげもあって、外観はかなりの上質感がある。
いっぽう、その内部には、ウォルフソン製の高級DAC「WM8740」を搭載。iPod/iPhone/iPadとのデジタル接続に対応するほか、microUSBポートでパソコンと繋げば、最高96kHz/24bitのファイル形式に対応するUSB-DACとしても活用できる。当然ながらアナログ入力も用意されており、これ1つで様々なプレーヤー(やパソコン)から音楽再生できるのはありがたいかぎりだ。
いっぽう、音質についてもかなりのこだわりが見られる。まず、先に紹介したウォルフソンのWM8740は、ホームオーディオ用を想定した音質重視の高級パーツだし、このほかにも電圧増幅部(入力段とも呼ばれるパート)にTI社製の「LME49860」(昨年ナショナルセミコンダクタ社がTIに買収されたため今はTI社製となる)、出力段に電流帰還型の高級ヘッドホンアンプIC「TPA6120」、35μm厚の銅箔プリントを採用する6層基板、薄膜抵抗など、ありとあらゆる部分に音質にこだわったパーツが奢られている。
使い勝手もなかなかだ。ポタアンを使い慣れていない人にはちょっとした大きさに思えるかもしれないが、高級モデルとしてはごくごく一般的なサイズだし、付属のシリコンベルトによって、iPhoneやウォークマンなどが収まりよく固定できるため、意外なほど煩雑さは感じない。また、ボディ自身にもシリコンガードがあしらわれていて、固定したプレーヤーが(金属同士の接触で)傷つかないよう配慮されている点もうれしい。
■「ここにソニーの本気を見いだした」
さて、実際のサウンドを確認すべく、まずはiPod touch(第3世代)を接続して試聴をスタート。ある程度は想像していたものの、デジタル出力ならではの良質なサウンドクオリティーに思わず驚いた。
ポアタンでの接続にふだん利用するアナログ出力のドック接続とは、解像度感もダイナミックレンジも桁違いのレベル。聴き慣れたはずのSE535がさらに迫力を増した、それでいて階調表現が丁寧なピュア系サウンドがグッと迫ってくる。これはいい。
調子に乗ってシュア「SRH1840」を接続してみたところ、さらにシルキーな、響きの心地よいサウンドが聞こえだした。ゲインをHIGHにすれば、音質重視派の高級ヘッドホンでも必要十分なボリュームは確保されている。
続けて、付属のWM-PORTドックケーブルを使ってウォークマンXシリーズをアナログ接続してみる。ソニー製品同士なのに(しかもiPodがデジタル接続なのに)アナログ接続というのはこれいかに、と思わないでもなかったが、そんな残念な気持ちは一瞬で霧散した。デジタル接続したiPod touchよりも遙かに音の響きが美しい、聴き心地の良いサウンドが聞こえてきたのだ。
解像度感も悪くないし、表現も丁寧。聴感上のSN感もほとんど劣化しておらず、ダイナミックレンジだけ上手に高まってくれているので、アナログ接続となるウォークマンでもPHA-1を使う意義は十分にある。
いや、ウォークマン直差しだと高域がちょっときつく感じる、と思っていた人には、PHA-1がベストなサウンドコンディションに整えてくれることだろう。
最後に、MacBookAirとUSBケーブルで接続、USB DACとしてのクォリティも確かめてみた。こちらもなかなかにいい。
iPod touchやウォークマンXシリーズなどに対して、解像度感、SNが高まり、さらに抑揚感に秀でた、それでいてヴォーカルやメイン楽器がしっかりと前に出てくる印象的なサウンドを聴かせてくれるのだ。そうそう、これこそウォルフソンならではのサウンド。WM8740好きは、自宅で小型USB DACとして活用するのがいちばんの幸せかもしれない。
このように、「PHA-1」はヘッドホンアンプとしての高い実力はもちろん、機能的にも十分なスペックを持ち合わせているなど、魅力に溢れた製品に仕上がっている。これが4万円を切る値段で入手できるのは、はっきりいってお買い得だ。ここにソニーの本気を見いだしたり、そういいたくなる秀逸な製品だ。
そう、ガレージメーカーではなく、名だたる家電メーカーであり、充実したヘッドホンラインナップを有するソニーがポアタンをデビューさせてきたのだ。しかもヘッドホンアンプとしての機能性だけでなく、iPodデジタル接続やUSB DAC機能も併せ持つ、多機能モデルに仕上げられているという。この内容を知れば、筆者だけでなく多くの人が期待を膨らませることだろう。早速「PHA-1」のサンプル機をオーダーしたところ、数日ながらも借用することができたので、そのインプレッションをお届けしよう。
■音質にこだわったパーツをあらゆる部分に奢る
感想をお届けする前に、まずは「PHA-1」の基本スペックから。冒頭でも触れたとおり、「PHA-1」はバッテリーを内蔵したポータブルユースのヘッドホンアンプ。67W×26H×130Dmmほどのアルミ製ボディは、ダークメタリックとも呼ぶべきシックなカラーリングとヘアライン仕上げが施され、フロント部分にはボリュームやヘッドホン接続端子を保護する目的で、亜鉛ダイキャスト製のダンパーが付属されている。そういった凝った作りのおかげもあって、外観はかなりの上質感がある。
いっぽう、その内部には、ウォルフソン製の高級DAC「WM8740」を搭載。iPod/iPhone/iPadとのデジタル接続に対応するほか、microUSBポートでパソコンと繋げば、最高96kHz/24bitのファイル形式に対応するUSB-DACとしても活用できる。当然ながらアナログ入力も用意されており、これ1つで様々なプレーヤー(やパソコン)から音楽再生できるのはありがたいかぎりだ。
いっぽう、音質についてもかなりのこだわりが見られる。まず、先に紹介したウォルフソンのWM8740は、ホームオーディオ用を想定した音質重視の高級パーツだし、このほかにも電圧増幅部(入力段とも呼ばれるパート)にTI社製の「LME49860」(昨年ナショナルセミコンダクタ社がTIに買収されたため今はTI社製となる)、出力段に電流帰還型の高級ヘッドホンアンプIC「TPA6120」、35μm厚の銅箔プリントを採用する6層基板、薄膜抵抗など、ありとあらゆる部分に音質にこだわったパーツが奢られている。
使い勝手もなかなかだ。ポタアンを使い慣れていない人にはちょっとした大きさに思えるかもしれないが、高級モデルとしてはごくごく一般的なサイズだし、付属のシリコンベルトによって、iPhoneやウォークマンなどが収まりよく固定できるため、意外なほど煩雑さは感じない。また、ボディ自身にもシリコンガードがあしらわれていて、固定したプレーヤーが(金属同士の接触で)傷つかないよう配慮されている点もうれしい。
■「ここにソニーの本気を見いだした」
さて、実際のサウンドを確認すべく、まずはiPod touch(第3世代)を接続して試聴をスタート。ある程度は想像していたものの、デジタル出力ならではの良質なサウンドクオリティーに思わず驚いた。
ポアタンでの接続にふだん利用するアナログ出力のドック接続とは、解像度感もダイナミックレンジも桁違いのレベル。聴き慣れたはずのSE535がさらに迫力を増した、それでいて階調表現が丁寧なピュア系サウンドがグッと迫ってくる。これはいい。
調子に乗ってシュア「SRH1840」を接続してみたところ、さらにシルキーな、響きの心地よいサウンドが聞こえだした。ゲインをHIGHにすれば、音質重視派の高級ヘッドホンでも必要十分なボリュームは確保されている。
続けて、付属のWM-PORTドックケーブルを使ってウォークマンXシリーズをアナログ接続してみる。ソニー製品同士なのに(しかもiPodがデジタル接続なのに)アナログ接続というのはこれいかに、と思わないでもなかったが、そんな残念な気持ちは一瞬で霧散した。デジタル接続したiPod touchよりも遙かに音の響きが美しい、聴き心地の良いサウンドが聞こえてきたのだ。
解像度感も悪くないし、表現も丁寧。聴感上のSN感もほとんど劣化しておらず、ダイナミックレンジだけ上手に高まってくれているので、アナログ接続となるウォークマンでもPHA-1を使う意義は十分にある。
いや、ウォークマン直差しだと高域がちょっときつく感じる、と思っていた人には、PHA-1がベストなサウンドコンディションに整えてくれることだろう。
最後に、MacBookAirとUSBケーブルで接続、USB DACとしてのクォリティも確かめてみた。こちらもなかなかにいい。
iPod touchやウォークマンXシリーズなどに対して、解像度感、SNが高まり、さらに抑揚感に秀でた、それでいてヴォーカルやメイン楽器がしっかりと前に出てくる印象的なサウンドを聴かせてくれるのだ。そうそう、これこそウォルフソンならではのサウンド。WM8740好きは、自宅で小型USB DACとして活用するのがいちばんの幸せかもしれない。
このように、「PHA-1」はヘッドホンアンプとしての高い実力はもちろん、機能的にも十分なスペックを持ち合わせているなど、魅力に溢れた製品に仕上がっている。これが4万円を切る値段で入手できるのは、はっきりいってお買い得だ。ここにソニーの本気を見いだしたり、そういいたくなる秀逸な製品だ。